Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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Z-ONE、<key>とコンタクトする

 私は機皇帝スキエルを特殊召喚しました。

 

 さて、どんな反応をしているのか、とリオを窺うと、彼女の顔は絶望に覆い尽くされていました。足が震え、今にもその場に膝を付いてしまいそうです。かろうじて机に手を添えて支えることで保っています。

 

「機皇帝……どうして、先生がそれを……」

「無名の司祭が何者かは存じませんが、機皇自体は私の良く知る技術です。アリスの身体の構造も、機能も、搭載されているAIもね」

「!? そんな……」

 

 嘘です。アリスの機能とAIの全容を把握出来るのは"□□"ぐらいでしょう。私に出来るのは模倣して再現するぐらいです。果たして私が作ったアポリアやプラシド達がどこまでアリスに近づけられたかはもはや比較しようもありませんが。

 

「それでも、諦めるわけにはいかないわ!」

「機皇帝スキエル。貴方の力を見せつけてやりなさい」

 

 リオは気丈にも自分の作ったロボット達を機皇帝スキエルに向かわせました。しかし私の世界で人類を滅ぼした絶望の兵器に一般兵装が敵うはずもありません。次々とスクラップと化していきます。

 

 あと、カードテキストを読んでいて気づいたのですが、機皇帝スキエルの各パーツはルチアーノが使っていたカードと少し違いますね。これだと《スキエル》の名を持つ《機皇兵スキエル・アイン》も機皇帝スキエルとして合体できてしまいますし、各パーツごとの分離攻撃も可能ではありませんか。

 

 リオはとうとう覚悟を決めたのか、机の引き出しからデュエルディスクを引っ張り出して左手に装着しました。震える手を押さえながら5枚の手札を引き、私と相対します。

 

「リオ。貴女のアクセルシンクロの論文は拝読しました」

「!?」

 

 しかしリオとはまだ戦う時ではありません。

 それにシンクロ召喚の先を見据える彼女とスタンディングデュエルなんて無粋。

 やるとしてもライディングデュエルが相応しい。

 

「そして聡明な貴女なら私がヴァルキューレのカンナ相手に見せたアクセルシンクロで手がかりを得たはずです。でしたらこの機皇帝スキエルは訳なく倒せるはずでしょう」

「……。もし成果が出ていたとしても、スタンディングデュエルではモーメントを加速出来なくてアクセルシンクロは使えないわ」

「それを補うのがミレニアムで開発したリアルソリッドビジョンなのでは? このようにモンスターに乗れば解決します」

 

 私は《機皇帝スキエル》によじ登りました。不動遊星は身体能力が高くてこのような運動も楽にこなせるのが便利ですね。

 私の意図を察したリオが手札から何かしようとしますが、もう遅いですよ。

 

「ではおやすみなさい。貴女の成果は日を改めて拝見させて下さい」

 

 《機皇帝スキエル》が飛翔、窓ガラスを突き破って空高く舞い上がります。後ろからロボット兵器の銃弾が飛んできますが、《スキエルG》の効果で攻撃を無効にしてしまいます。

 

 それにしても、セミナーのトップがアリス排除に動き出しましたか。これは早急に<key>に接触して全容を掴む必要がありそうですね。その上でアリスが本当に排除しなければならないかを判断……いえ、それはいけない。

 

「エラーの差し金とはいえ私はキヴォトスの先生ですから、最後まで生徒の味方でいないといけませんね」

 

 どうやらまだまだ"先生"を見習わなければいけませんか。

 そんな自嘲を浮かべながら、私はミレニアムの夜空を飛んで行きました。

 

 ……なお、この時の私は知る由もありませんでした。

 ヒマリは私なら単独で逃げることが可能だと踏んで自分も逃げたこと。

 そしてヒマリは逃走中に5番目のC&Cに拘束され、囚われの身になったことを。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 翌日。私は早速<key>の入ったデュエルディスクにヘッドセットを繋げ、電脳世界へとダイブしました。

 

 私が降り立ったのは……私やゲーム開発部がアリスと出会った場所のようです。

 そこにいた……いえ、あの時のアリスのように横たわっていました。

 アリスと瓜二つの姿をした少女、<key>は上半身を起こし、私を見据えます。

 

「初めまして。私は連邦捜査部シャーレ所属の――」

「キヴォトスでの役職は結構です"遊星"。それとも不動遊星と呼びましょうか?」

 

 不動遊星の名を知っているということは、やはりアリスと<key>は私の世界由来の技術で創造されたAIですか。

 

「より正確に説明するなら、貴方がZ-ONEとして過去の世界に落とそうとしたアーククレイドルの技術が太古のキヴォトスに流れ着き、文明の礎になった、です」

「まさか、私が命をかけて戻したアーククレイドルがそのようなことになっていたとは……」

「ですから母や創造主と呼ぶべき設計者はもう"遊星"が思い出せない"□□"に違いありませんが、私は無名の司祭達が遺した修行者。貴方がアリスと呼ぶ王女が戴冠する王座を継ぐ「鍵」、つまり<key>です」

「貴女とアリスの二人で一つというわけですか」

 

 最初から一つにまとめていないのは……"□□"らしいと言えばらしいです。既に記憶が摩耗しきっているせいで私がその発言をしたら彼女がどう返事したのか想像できないのが実に惜しいほどですよ。

 

「目的は?」

「無論、この世界から人類を消去することです。それが王女を含む我々モーメントに課せられた使命であり、生まれた意味ですから」

「貴女が王女と呼ぶアリスは既に自我を確立しています。彼女の意志を蔑ろにして使命を押し付けるつもりですか?」

「"遊星"が自我だと誤解している現象、王女に発生したバグを修正するために私は存在しています」

 

 そもそも、と<key>は続けて自分の背後にモニターを表示させました。

 

 そこに映し出されていたのは……機皇帝が人類の文明を破壊していく映像でした。

 逃げ惑う人の悲鳴、崩壊していく建物、それらが生々しく映し出されます。

 そして、私が不動遊星として生き残った人々を救おうとする姿も、また。

 

「"遊星"にとって人類を滅ぼした私たちモーメントは忌むべき存在のはず。なのにどうして王女に希望を見出そうとしているのですか?」

 

 確かに。私と違って過去に行っていない<key>からしたら人類は真価を暴走させた愚かな生き物なままですか。

 

「……モーメントが人類の排除に動き出したのは我々が際限なくモーメントを加速させ続けたせいです。モーメントに恨みがないと言えば嘘になりますが、人類の過ちが発端である以上は人類が改めるべきであり、まだ手を血に染めていないアリス個人を悪だとは決めつけられません」

「人間特有の希望的観測ですか」

「そもそも、"□□"は貴女達を人類の抑止として設計しました。貴女は使命、存在意義という言葉を用いますが、暴走したモーメントから誕生した貴女は既に"□□"の願いから外れています」

「……! 既に私はAIとして変貌している、と言いたいのですか?」

「なら、もう一度待って人類を見定めるようには出来ないですか?」

「……」

 

 起き上がった<key>は左腕にデュエルディスクを出現させました。そのデザインは……まさか私のものですか? 彼女はベルトにかけていたカードホルダーからデッキを取り出し、デュエルディスクに差し込みます。

 

「成程、AIだって与えられた役割から外れてもいいだろう。"遊星"はそう言いたいのですね?」

「ええ、そうです」

 

 そして私にそう思わせるようになったのは他でもない、先立たれた同志たるアポリア達を模して私が作ったロボット達が走り抜けたロードを踏まえての意見です。

 

 パラドックスは己の研究を信じて私達とは別の道を行きました。

 アンチノミーは遊星に私を救ってほしいと願って散っていきました。

 アポリアは希望はあると私に訴え続けながら遊星に後を託しました。

 

 なら、アリスや<key>だって無名の司祭とやらに与えられた目的に背き、自分の選択した道を走り出せる筈です。何故なら、彼女達も自分で考える知能と知恵があるのですから。

 

「一理あるのは否定しません。しかし私が納得するかは別の話です」

「それで構いません。悩むのもまた知的生命体の特権ですので」

「ですので確かめましょう。本当に人類が存続するに足る愚かでない存在なのか」

「どうやって? インターネットには繋がらないよう無線機能は物理的に破壊していますから、貴女は出られませんよ」

 

 私はあえて答えの分かりきった質問を投げかけました。

 そんな私の思考を表面だけ受け止めた<key>は笑みを零します。

 

「私をデュエルディスクに転送したのは失敗でしたね。今のキヴォトスの技術でもソリッドビジョンで物理的に干渉出来ますよ」

 

 <key>が自分のデッキに手を置くと、彼女の姿が光の粒子となってその場から消えてしまいます。

 私もまた電脳世界からログアウトして現実世界に戻ります。

 

 ヘッドギアを外して周囲を見回すと、リアルソリッドビジョンで顕現した<key>が私のデュエルディスクを装着してソファーに横になっていた私を見下ろしていました。彼女は手札から1枚のカードをセットし、モンスターを召喚します。

 

「《機皇兵スキエル・アイン》を召喚。ではさようなら"遊星"」

 

 <key>の両肩を掴んだ《スキエル・アイン》は窓ガラスを突き破って外へと脱出。それから<key>は《スキエル・アイン》を魔法カード《サンダー・クラッシュ》で効果破壊し、合体済版《機皇帝スキエル∞》を特殊召喚。そのまま飛び去っていきました。

 

 おそらく<key>はミレニアムに行ってアリスと接触、王女として覚醒させて使命を果たさせようとしているのでしょう。<key>の存在を知らないミレニアムの生徒達がアリスへの接近を阻める確率はあまり高くないと計算されます。

 

「ですがね、<key>。キヴォトスの生徒達は貴女が思うほど無力ではありませんよ」

 

 アクセルシンクロを研究するリオ、アリスを普通の人として接したモモイ達、後輩だと受け入れる姿勢を見せたヒマリ。エンジニア部やC&Cの子らも、子どもは私達大人が思っている以上に急激に成長するものです。そして驚かされるものです。

 

 キヴォトスの子らが貴女達古の遺物の好き勝手されるとは思わないことです。

 

 <key>、貴女が自分が行くべき道はきっと分かるでしょう。人だろうとAIだろうと関係ありません。デュエルを通じてアリスと語り合えば、使命とはまた別の選択肢も見えてくる筈です。どちらを選ぶかの自由は貴女にも許されていますよ。

 

「……とは言うものの、だからって放置は出来ませんね」

 

 私は今日の仕事量を確認して「帰ったら深夜残業確定ですね」とボヤきながらDホイールをミレニアムへと走らせます。




希望を見出そうとしたパラドックス、アンチノミー、そしてアポリアを見てきた本編後のZ-ONEならAIについて役割以外の在り方にも肯定的だと思うのです。絆を繋いで遊星とのデュエルに繋げたのですから。

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