◆三人称視点◆
キヴォトス史に残る歴史的発見をした、とヴェリタスがZ-ONEへと連絡して一日が経過したが、Z-ONEから返信は無かった。それもその筈、Z-ONEはリオから呼び出された後<key>へのアクセスの準備、接触に専念していたため、メッセージを読んでいなかったのだ。
一方で同じように連絡が入ったゲーム開発部の4人は特に火急の予定も無かったことから、次回作を作るにあたってのインスピレーションになればとYesと返事した。
その結果、ゲーム開発部の4人だけでヴェリタスの部室を訪れることになる。
「それでハレ先輩。例のブツって?」
「ああ、それなら……これ」
ヴェリタスの部室内に転がるロボットは部室にいた誰もが初めて見る形をしていた。一定の法則により設計されただろう共通のデザインはしていたが、ミレニアム在校生や卒業生の誰とも一致していなかった。
その場にZ-ONEがいたならそれぞれの個体名を言い当てていただろう。
《機皇兵ワイゼル・アイン》
《機皇兵グランエル・アイン》
《機皇兵スキエル・アイン》
《機皇兵廠オブリガード》
そして、《機皇枢インフィニティ・コア》
いずれもモーメントが人類抹殺のために生産した機皇軍団のロボットだった。
モモイ達が機皇兵の状態を眺めるも、どの機体もシャットダウンしたまま微動だにしなかった。ヴェリタスも懸命に調べたものの起動方法は分からずじまい。何かしらの方法で遠隔操作しないと無理だろうとの結論に至った。
「アリス……見たことがあります」
不思議な物体を見る様子なゲーム開発部やヴェリタスの面々に対し、アリスは秘められた使命に導かれるように機皇兵に近寄っていく。アリスのただならぬ様子に気付いたユズがアリスに呼びかけるが、アリスの耳には入っていなかった。
そんな時、D.U.から飛行してきた《機皇帝スキエル∞》に騎乗した<key>がヴェリタスの部室がある棟に降り立つ。<key>の発した指令によりさほど距離の離れていなかった停止状態の機皇兵は再起動をする。
顔に同じ文様を輝かせて立ち上がる機皇兵のロボット達。絶望の前兆がゲーム開発部とヴェリタスへと襲いかかろうとしていた。
「機皇兵達。王女を捕らえなさい。阻む者は全て排除して構いません」
<key>の最優先は王女たるアリスの確保でありアリスを惑わせたゲーム開発部の解除など選択肢にも入っていなかった。故に起動した機皇兵達は一斉にアリスへと襲いかかっていく。
「アリス、危ない!」
いち早く反応したヴェリタスのコタマが迎撃に移り、ハレ、マキも続く。そのうちにチヒロがアリスを機皇兵から引き離し、ゲーム開発部の方へと突き飛ばした。よろけるアリスをモモイとミドリが受け止める。
「ごめん。こんな風になることを想定してなかった私らが甘かった……!」
「コイツ等の狙いはアリスみたい。私達が食い止めとくから、今のうちに逃げて」
「あたし達なら大丈夫だから、早く!」
ヴェリタスのチヒロ、ハレ、マキに強く言われたモモイ達は一瞬たじろいだものの、すぐにアリスの手を取ってヴェリタスの部室から逃げ出した。後ろから聞こえる銃声や爆音には耳をふさぎながら。
「ごめんなさい先輩、すぐ助けを呼ぶから……!」
「え、と、保安室に連絡して、それから……」
「モモイ、ミドリ、アリスちゃん……」
モモイとミドリが慌てて連絡を取ろうとする矢先、ユズが絞ったようなか細い声でそれぞれの名を呼んだ。
彼女の視線は突如現れた人物に釘付けになっていた。その雰囲気はヴェリタスの部室内で行われる戦闘とは対称的に無機質で静寂だった。
「アリスが二人……?」
その少女の外見はアリスと瓜二つだった。
唯一異なるのは瞳の色だろうか。
しかし、それでいて表情が全く異なるために違った印象を覚えさせた。
「アリス、ドッペルゲンガーに出会っちゃいました! 次見たら死んじゃうんですか!?」
「……王女、見つけましたよ。障害は排除します」
もう一人のアリス、<key>はリアルソリッドビジョンで再現した光の剣:スーパーノヴァを急速充電する。エンジニア部謹製である光の剣の仕組みを<key>は知らないが、性能だけを再現するなら王女本来の武装である《機皇神マシニクル∞》左腕の武装を参考にすれば良い。
「ザ・キューブ・オブ・ディスペアー」
「ひ、光よ!」
<key>の砲口から絶望の閃光が発射。直後にアリスも迎撃のために光の剣より希望の閃光を発射する。双方の破壊光線は中間付近で衝突するも、充電量の差で<key>の攻撃に軍配が上がる。
結果、アリス達を巻き込んでヴェリタスの部室があった棟は破壊された。
アリスが瓦礫を取り除いて這い出ると、部室のあった建屋は崩壊していた。周りを見渡すとヴェリタスの三名は無事。ゲーム開発部の三人の安否を確認するも、モモイの姿が見あたらない。
「……有機体の生存を検知。失敗を確認しました」
そして、破壊をもたらした元凶、<key>は感情のない冷たい眼差しでアリス達を見据えていた。
「もう一人のアリスはもう一人のアリスですか? 実は生き別れになった姉妹機ですか? それとも本当にドッペルゲンガーですか?」
「……。私の呼称は<key>。王女を玉座へ誘う従者です」
「ケイですね。記録しました。ケイはどうしてこんなことをしましたか?」
「いえ、王女。発音が違います。私の呼称は<key>で……」
「ケイの攻撃でモモイ達がダメージを受けました。どうしてですか?」
「……。ケイでいいです」
抑揚のない声で発したのとソリッドビジョンの身体なのもあってアリスには発音が上手く伝わらなかった。しかし今この場においては呼称が誤っていようと後で修正すればよい、と<key>ことケイの方が引き下がる。人、それを諦めと呼ぶ。
「私と王女は二つで一つ。さあ、今こそ一つに」
「昔のカードテキストぐらい意味不明です。もっと詳細な説明を求めます!」
「王女が忘れている使命を思い出させることが私の使命。阻む存在は全て排除します。先ほどの一撃はそのためのもの。説明を終了します」
ケイは最低限に事情を明かしてアリスの方へと歩み寄る。未だZ-ONEのデュエルディスク内にデータが隔離された状態のケイはアリスと接触することでアリスのボディへと侵入し、己の使命を果たすつもりだった。
「《デコード・トーカー》、阻んで!」
それを阻むようにチヒロがリンク召喚した《デコード・トーカー》が剣を振りかざしてケイへ向かうものの、その行く手を機皇兵共が立ち塞がる。しかしチヒロの意図はケイの注意をそらすこと。周囲への警戒がおろそかになればいい。
「ドッペルアリスちゃん、ごめん!」
チヒロのリンクモンスターに向けて光の剣に再充電し始めるケイの不意をつくようにマキが奇襲を仕掛ける。回避行動によりチャージの中断を余儀なくされたケイだったが、すかさず障害と認識したマキを持ち前の身体スペックで殴り飛ばした。
《デコード・トーカー》が機皇兵を切り伏せている間にケイは再充電を完了。ヴェリタスの面々へと砲口を向ける。そして一切の慈悲も無く、そして躊躇も容赦も無く、命ぜられた使命のままとどめを刺そうとする。
「リロード完了。発――」
「おい、偽チビ。そこまでだ」
そんな絶体絶命の状況下、現れた人影が一つ。
彼女はケイの背後に回り込んで意識を刈り取ろうと試みる。
ケイは身を翻しつつ健在だった《機皇枢インフィニティ・コア》を身代わりに危機を逃れた。代わりに乱入者の攻撃を受けた《機皇枢インフィニティ・コア》は傷一つついていない。
「ん? 破壊されてねぇな。一回だけ戦闘破壊されない効果か。かったるい効果しやがって、よ!」
「リバースカードオープン、罠発動。《スパーク・ブレイカー》」
彼女、C&Cのネルが銃弾の雨あられをお見舞いして《インフィニティ・コア》が破壊される直前、ケイは自分から《インフィニティ・コア》を効果破壊する。
「《インフィニティ・コア》が破壊されたことで効果発動」
《インフィニティ・コア》が効果破壊されたことでケイを守って他のC&C部員に応戦していた他の機皇兵全てが《インフィニティ・コア》のカードテキストに記されていない効果で破壊されていく。それはまるでZ-ONEがリオ相手に見せなかった《スカイ・コア》もう1つの効果のように。
「効果破壊されたら自分の他のモンスターを巻き添えにする効果? どんな意図だか知らねえけど、これでガラクタ共は片付いて残るは偽チビだけだな」
「任意の機皇帝パーツ5枚をデッキ・手札・墓地から特殊召喚します。私は《機皇帝グランエル∞》、《グランエルA》、《グランエルT》、《グランエルC》、《グランエルG》を選択」
ケイの言葉と共に虚空より5つの物体が出現。この場にいる誰も知らない、しかしアリスは見たこともないのに知っている、黄色いロボットのパーツにネルや他のC&Cメンバーは警戒心を強めた。
「合体せよ、機皇帝グランエル」
◇ケイ
使用デッキは【機皇】
エースモンスターは3体の《機皇帝(TF版、OCG版を併用)》
切り札は3体の《機皇神(アニメ版)》
◇各務チヒロ
使用デッキはサイバース族で統一した【Playmaker】
エースモンスターは《デコード・トーカー》、《ファイアウォール・ドラゴン》
切り札は《アクセスコード・トーカー》、《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード》
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