Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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リオ、アクセルシンクロに成功する

「何だよ、妨害2つだけじゃんか」

 

 大量にシンクロモンスターを展開したリオでしたが、ネルの評価は辛辣。全く落胆を隠せていません。

 

 それもそうでしょう。《TG》モンスターは制圧効果をほとんど持ちません。先攻で大量に展開しても相手には容易く形勢逆転されてしまいます。何なら《ブラック・ホール》や《サンダー・ボルト》1枚で片付けられますし。

 

 かと言って他に展開しようと思っても《TGトライデント・ランチャー》の効果でランク5モンスターエクシーズやリンク召喚にも繋げられません。レベル5シンクロモンスターだけでは【TG】デッキは貧弱だと言わざるを得ません。

 

「てっきりリオのことだからレベル10の大型シンクロモンスターでも開発してるのかと思ってたんだがな。【センチュリオン】みたいな簡単にレベル12シンクロモンスターを出せるテーマデッキを開発してる暇があるならよ」

「リオ様の伏せカードの1枚が《緊急同調》のような相手ターンでシンクロ召喚する効果の罠カードだったりは?」

「あの布陣だとあからさまに伏せカードで備えてますってばらしてるようなもんだろ。リオがそんな間の抜けた展開するかぁ?」

 

 ネルがトキとリオのプレイングについて意見を交わしています。二人の意見は概ねリオへの信頼感から伏せカードか残った手札で何かもくろんでるに違いないで一致していました。

 

 ふと、アリスが心配そうにモニターを見続けている姿が目に映ります。私はアリスの肩に手を置きます。アリスがこちらを向いたので私は頷きます。

 

 リオの意図はこの布陣を見れば分かります。このデュエル、単にアリスの行く末を決める他にも意図があるのでしょう?

 

「どんなゲームだってまずはプレイしてみないと分からないからね! わたしのターン、ドロー!」

 

 モモイは臆することなくDホイールを走らせ続けます。何も考えていないのではなく相手が待ち受けていることを承知のうえで踏み越えていくつもりなのでしょう。

 

「だったらこっちもガンガン回しちゃうよ! まずはフィールド魔法《シンクロ・ワールド》を発動するんだから!」

 

 モモイが発動したフィールド魔法はまるで《スピード・ワールド2》のような効果を持つカードでした。《SP》以外の魔法が使えなくならないよう調整済のようです。

 

「《D・モバホン》を召喚して効果発動! サイコロを振ってー、出た目は……4! 4枚デッキからドロー! 《D・スコープン》を特殊召喚して効果発動! 手札の《D・ラジカッセン》を特殊召喚するよ」

 

 モモイの初動はG.Bibleを見つけ出すために廃墟に行った際の展開と同じ。どうやらキヴォトスでのディフォーマーは《D・モバホン》が主軸のようですね。

 

「レベル4の《D・ラジオン》にレベル3の《D・ラジカッセン》をチューニング! 鋼の逆鱗に触れたい人はご自由に! シンクロ召喚! 《機械竜パワー・ツール》だ!」

 

 姿を現した鋼のドラゴン。1ターンでエースモンスターを出せたなら不動遊星の時代ではそれなりに優秀だったのでしょうが、キヴォトスではパワー不足。現にモモイの手札はそんなに減っておらず、余力がまだあるようです。

 

「シンクロ召喚に成功したようね。《TGハイパー・ライブラリアン》の効果で1枚ドローするわ」

「ええっ!? その効果って相手ターンに相手のシンクロ召喚にも使えるのぉ!? インチキ効果もいい加減にしてよぉ!」

「嫌ならシンクロ召喚は控えることね」

「うー、悔しい……!」

 

 モモイは不満を爆発させますがリオは平然とした顔でモモイ達の前を疾走します。

 

「手札の《D・ステープラン》を除外して《D・スキャナン》を特殊召喚するね。レベル1《D・モバホン》にレベル6《D・スキャナン》をチューニング!」

「太古の森よりフィールドを制圧する精霊よ、かりそめの姿にその身をやつし降臨せよ。シンクロ召喚! 《妖精竜エンシェント》!」

「1枚ドロー」

 

 今度召喚口上を述べたのはミドリの方。もしやモモイのデッキはモモイとミドリのカードが混合しているのでしょうか?

 

 現れたのはやはりシグナー竜の1体《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の亜種。しかしシグナー竜の《エンシェント》がいかにも精霊らしかったのに対してこちらの《エンシェント》は些か闇を発しているようにも感じられます。

 

「《妖精竜エンシェント》の効果を発動して、《TGハイパー・ライブラリアン》を破壊します! 何かありますか?」

「……そうね」

 

 ミドリがチェーンしてのカードの効果を発動するかリオに確認したところ、リオは特にリバースカードをオープンすることもなく、後ろを振り向いてモモイとミドリを見据えました。

 

「魔王を覚醒前に討伐する、とさっきは例えたけれど、覚醒してしまった魔王はどう倒せばいいかしら? ちなみに光の剣は魔王に奪われてるわね」

「えっ!?」

「別にアリスには限定しないわ。一般的なゲームで考えて頂戴」

 

 デュエルとは関係ない唐突な、しかし先程までの問答の延長である問いかけ。モモイとミドリは顔を見合わせ、少し考えてから答えました。

 

「え、と。別の伝説の剣を見つけるか伝説の素材から別の凄い剣を作って、必殺の奥義で倒す、とかどう?」

「なら今から見せてあげるわ。魔王を鎮める勇者の奥義をね」

 

 リオは再び前方を見据え、さらなる加速を初めます。

 

「"透き通った世界"を見通す透き通る心の境地、クリアマインド!」

 

 その様子は誰の目にも異様に見えたことでしょう。

 しかしリオは前人未到の何かを成し遂げようとしている。それだけは観客に伝わっているようでした。

 

「リオのやつ、一体何をするつもりだ……?」

「アリス……分かります。これは凄いのが来ます……!」

「リオ、その境地に到達しましたか。見せてもらいますよ。貴女の成果を」

 

 私を含めて皆が固唾を飲んで見守ります。

 

「レベル5《TGオーバー・ドラグナー》にレベル5シンクロチューナー《TGスター・ガーディアン》を、続けてレベル5《TGハイパー・ライブラリアン》にレベル5シンクロチューナー《TGワンダー・マジシャン》をチューニング!」

 

 リオと彼女が召喚した4体のシンクロモンスター達が先へ先へと突き進みます。

 

「リミッター解放、レベル10。メイン・バスブースター・コントロール、オールクリアー。無限の力、今ここに解き放ち、次元の彼方へ突き進め!」

 

 加速が限界まで達し、速度が乗り切ったところでリオはエクストラデッキからカードを2枚取りました。

 

「アクセルシンクロ、承認!」

 

 白紙のカードが書き換わるその瞬間、リオは光となってコースの遥か彼方へと姿を消します。

 

「き、消えた!?」

「ど、どこに? どこに行っちゃったの?」

 

 辺りを見渡すモモイとミドリの背後より光とと共にリオが出現し、瞬く間にモモイ達を追い抜いていきます。彼女が従えたモンスターはリンクモンスター以外様変わりしていました。シンクロの先を駆け抜けて。

 

「随行しなさい、《TGブレード・ガンナー》!」

 

 4体のシンクロモンスターは2体のアクセルシンクロモンスターに進化し、リオへと並び立ちました。圧倒されるのは対戦相手のモモイとミドリだけではなく、このデュエルを見守る観客全員が前人未到のシンクロ召喚に息を飲みました。

 

「これ、まさか会長が論文で発表してた、シンクロを超えたシンクロ……!」

「そう。これがアクセルシンクロよ。それを可能としたのがモーメントの回転を正しく制御するクリアマインドの境地。そして魔王を無力化する勇者の奥義なの」

「え? え? どういうこと?」

「モーメントを正しく回転させられる、つまり人類を滅ぼすベクトルを持つ機皇ロボット共のモーメントを鎮静させられるのよ。それは先日貴女達が痛い目を見た機皇帝、そして王女のアリスも例外じゃないわ」

 

 ネルとトキの視線が思わずアリスの方へと向けられました。そのアリス当人はリオに、そしてリオが召喚したアクセルシンクロモンスターを見つめ続けています。手は無意識のうちに胸元、心臓に相当する動力部のモーメント付近に添えられていました。

 

「で、でも! 対抗策が出来てるなら何もアリスちゃんを殺す必要なんてないじゃないですか!」

「あいにくこのクリアマインドで発生する現象は分析出来てないの。システムや装置に落とし込めるのはだいぶ先の話よ。それまでアリスが魔王に覚醒しそうになる度に私が大急ぎで駆けつけてこの境地で沈めろ、とでも言うつもりなの? 全く合理的ではないわ」

「え、えーっと、それならそのクリアマインドって奥義を私達に伝授してくれれば私達がアリスに付きっきりになるから!」

「王女を覚醒させる鍵がいつまた襲ってくるか分からないのに? 先日は機皇帝で済んだけれど、今度は機皇神を引き連れてくるかもしれないわ。機皇神のスペックまでは私も分析出来ていないの。この《TGブレード・ガンナー》でも対抗出来るかは未知数。余裕が無いわね」

 

 リオはモモイ達を指差します。と同時に指を三本立ててみせました。

 

「三日。どんなにタイムリミットを伸ばしてもそれが待てる限界。それまでにゲーム開発部の部員の誰かがクリアマインドまたはもう一つの境地に目覚める。それがアリスを解放する条件よ」

「……!」

 

 それがリオが提示できるギリギリの妥協点。しかしその猶予を与えたことは彼女にとって最大の譲歩とも言えます。アリスを無事なまま危機を乗り越える、そんな奇跡にも近い可能性を彼女も捨てきれていないのでしょう。

 

「貴女達ではアクセルシンクロモンスターを突破出来ないわ。これ以上のデュエルの続行は非合理的。サレンダーしなさい」

「そんなの、やってみないと分からないじゃん! 装備魔法《団結の力》を《パワー・ツール》に装備して《TGブレード・ガンナー》に攻撃!」

「リバースカードオープン、罠カード《バトル・スタン・ソニック》を発動。その攻撃を無効にしてデッキから《TGスクリュー・サーペント》を特殊召喚するわ。《TGスクリュー・サーペント》の効果発動。墓地から《TGドリル・フィッシュ》を特殊召喚」

「嘘ぉ!? 後続呼ばれた……!」

 

 一発逆転を狙った装備魔法での強化はあっさりとリオの対処されてしまいました。あまりに伏せカードを警戒しなさすぎましたね。《エンシェント》では《ブレード・ガンナー》を倒せませんので、あとやれることはメインフェイズ2でフィールドを固めるぐらいですか。

 

「……。どうしよう?」

 

 結局モモイ達はその後も上手く攻めきれず、リオが次々とシンクロモンスターを展開して矢継ぎ早の攻撃を仕掛けられ、敗北を喫したのでした。

 

 モモイはライフを0にされた時に「悔しい悔しい! 《地砕き》があればぁ!」とか言ってましたが、《ブレード・ガンナー》を処理出来たって大量展開を得意とする【TG】ではすぐに立て直してきますよ。




キヴォトスでアクセルシンクロさせるならリオが最適。これは本概念を思いついた時に真っ先に考えつきました。"透き通った世界"を見通す境地がクリアマインド。これも本概念を思いついた初期の頃にひらめいたものです。

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