Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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アリス、リオに弟子入りする

「モモイ、ミドリ……」

「先生……このままじゃあアリスが……」

 

 ライディングデュエルが終わり、リオ達が戻って来るまでの間、アリスはモニターの前で何やら呟き続けます。勇気を振り絞ってこの場に姿を見せていたユズは私に縋るように眼差しを送ってきました。

 

「リオが提示した条件を満たし、リオを見返すしかないでしょう」

「でも……リオ会長だってアクセルシンクロを成功させるのに何年間もかけて……」

「それはリオが手本のいない先駆者だからです。ユズ達はリオの背中を追いかけてゆけばいいだけですから」

「そんな……」

 

 悲観にくれて打ちひしがれるユズ。トキに制圧された己の無力さに苛立ちを隠しきれないネル。デュエルが終了してブラックアウトしたモニターへまだ視線を落とし続けるアリス。そんな我々の元に無情にもリオが戻ってきます。

 

「デュエルの結果は絶対。アリスを庇っていたモモイ達は負けた。さあ、アリス。来なさい」

「……。アリスをどこに連れて行きますか?」

「王女を処分する、つまりアリスのヘイローを破壊するにはそれなりの準備と設備が必要。ゲーム開発部に突き付けた期間中は私のもとで拘束させてもらうわ」

「リオはアリスにずっと付きっきり。合っていますか?」

 

 リオが軽く動揺したのは、アリスが己の正体を突き付けられて悲しみと絶望に染まるだろうとの予想が外れたからでしょう。モニターから顔を上げたアリスの面持ちは決して諦めない思いが表れていました。

 

「ええ。そうよ。三日の間にケイに襲撃されても迎え撃てるようにね」

「ゲーム開発部の部員がクリアマインドに目覚めたらアリスはゲーム開発部に戻れる。合っていますか?」

「正しいわ。ただし、もしネルやトキがその境地に到達してゲーム開発部と兼部したって認めないわ。無論、Z-ONE先生が専属顧問になったってね。アリスの傍にいる者でなければ意味がないもの」

「アリス、クエストの条件を理解しました。そのクエストを受けます」

 

 アリスはリオの方へと歩み寄ります。モモイ達はなにか言いたいようでしたが何も言えず、ネルも悔しがるだけで手が出せません。私は……あえて手も口も出しません。私はアリスの選択を尊重します。

 

 そしてリオのもとに来たアリスの行動は、この場にいた皆を驚かせました。

 一番衝撃を受けたのはきっとリオだったでしょう。

 

「アリス、リオに弟子入りします」

「……。何ですって?」

 

 何故なら、アリスから手を差し伸べられたのですから。

 

「ゲーム開発部部員のアリスがリオに弟子入りしてクリアマインドを学びます。魔王を鎮める奥義クリアマインドを会得してクエストクリアです」

「ちょっと待ってちょうだい。アリス本人がクリアマインドを覚える……?」

 

 迂闊だった、とリオは自分の発言を後悔したようです。何故ならリオがモモイ達に提示した条件にはアリス自身だって含まれていましたから。

 そして彼女もようやく気付いたようです。それでも目的を達成出来てしまう、王女が世界を滅ぼす未来を回避出来る、と。

 

「おお、偉大なる賢者師匠よ! 未熟な勇者の卵を導きたまえ!」

「……。こうなるのはさすがに想定外よ。Z-ONE先生の入れ知恵かしら?」

「いえ。私は単に魔王の宿命に縛られる必要はない、と述べただけです。この選択はアリスの決断ですよ」

「……っ。分かったわ。覚えられるものなら覚えてみなさい」

「はいっ! アリス、クリアマインド習得ミッションに挑みます!」

 

 リオはAMASと共に取り囲みながら撤収していきました。

 自分の意志で同行するアリスと共に。

 それを見送るモモイ達は一つの決意に満ち溢れていました。

 

「モモイ、ミドリ、ユズ。アリス、行ってきます。アリスは勇者の奥義を会得して帰ってきます」

「アリス、待っててね。三日となんか言わずにすぐに迎えに行くから。それでリオ会長をぎゃふんと言わせてやるんだから!」

 

 自分たちが先にクリアマインドに目覚めてアリスを連れ戻すんだ、と。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 リオがアリスを連れ去った場所をセミナーのユウカとノアに調べてもらっている間、私は集ったC&Cとヴェリタスの生徒達にアリスの真実について説明しました。そしてリオが提示してきた条件も。

 

「シンクロモンスター同士をシンクロさせるクリアマインドか……」

「シンクロモンスターに更にダブルチューニングするバーニングソウルを会得することがアリス解放の条件、ですか?」

「ええ。そのどちらかの境地でモーメントを正しく回転させ、世界を終焉に導く機皇軍団……つまり魔王軍を無力させる。それがリオがこれまで取り組んできた研究の真の目的です」

「んー。ヴェリタスとゲーム開発部を合併させたとしても、リンク召喚の方に力を入れてた私達じゃあ習得は無理そうかなぁ」

 

 私はデッキから2枚のカードを取り出しました。それはアリスにも1枚譲ったシンクロチューナーの《フォーミュラ・シンクロン》、そしてアクセルシンクロモンスターの《シューティング・スター・ドラゴン》です。

 

「へえ、これが会長が躍起になってたアクセルシンクロモンスターなんだ」

「アクセルシンクロモンスターはクリアマインドの境地に至って創造されるもの。このカードを複製しても意味は無いでしょう。しかし……」

「シンクロチューナーは違う。そしてアクセルシンクロに適したシンクロチューナーをデッキに入れるには、まずはカードの開発が必要なのね」

「ヴェリタス総出で徹夜で突貫作業しても1体の開発が限界です」

「じゃあ誰のデッキ用のシンクロチューナーを作ろうか?」

「あたしのにしてくれ」

 

 前に進み出たのはネルでした。そして彼女はためらわずに自分のデッキをチヒロに渡します。チヒロは軽く目を見開いて渡されたデッキとネルへ交互に視線を送りましたが、ネルの決意はゆるぎませんでした。

 

「あの後輩には良いようにやられちまったからな。リベンジマッチするにも3種類の《クリアウィング》じゃ力不足だ。なあに、リオに出来たんだからあたしにだって出来るようになるさ」

「命より大事なデッキ預かっていいの? 開発に失敗したら駄目になっちゃうかもしれないのに」

「ああ。頼んだぜ」

「……分かった。責任を持って作業にとりかかるよ」

 

 ちなみにネルがアクセルシンクロに挑んでもアリスの救出条件は満たさない、と私が指摘したところ、ネルは笑いながらこう言いました。

 

「んなもん楽勝だろ。あのチビに異変が起こりそうになったらすぐ駆けつければ済む話だ。ならあたしがゲーム開発部に名前貸せば条件クリアだろ」

 

 リオだったら屁理屈だと抗議しそうですがネルならゴリ押しするだろうとの確信もあります。

 ともあれこれでアリスとネルの2人がアクセルシンクロ習得に挑むことになります。私個人はこの2人ならそう悲観することもないと思っていますが、だからとモモイは他人任せにするつもりは微塵も無いようでした。

 

「ウタハ先輩、手伝って!」

「シンクロチューナー開発に? 実に興味をそそられるチャレンジだね。それで、D(ディフォーマー)のシンクロチューナー開発に協力すればいいのかな?」

「ううん。もっと別の考えがあって――」

「ふむふむ、なるほど……。ならいっそ――」

「それいいね、採用! あ、でもこんな高レベルだと――」

「大丈夫。モンスター効果で――」

 

 モモイとウタハが私に聞こえないように相談します。私に内緒なのは驚かせたいからなのは察します。モモイの進化の方向性が私の知る龍亞と同じ方向なのかまたは未知のものなのか、それは楽しみにさせてもらいましょう。

 

 そして、肝心のリオが向かった先ですが、ユウカから想像以上の答えが帰ってきました。なんとセミナーの予算を横領して終焉に備えるための要塞都市「エリドゥ」を建設しており、そこに向かったのだろうと推測されるとのことでした。

 

「この要塞都市には機皇の軍勢を撃退出来るほどの防衛兵器があるのかな?」

「いえ。おそらくこれは……サーキットですね」

「サーキット?」

「ライディングデュエルのコース、電子回路。複数の意味があるでしょう。この都市にクリアマインドに目覚めた人たちを避難させることで巨大なモーメントとし、機皇兵器を寄せ付けず、侵入した機皇兵器も無力化するための巨大設備かと」

「これだけ準備してるのにどうしてアリスを殺さなきゃなんないのさ?」

「間に合わなかったからですよ」

 

 おそらくリオがアクセルシンクロの概念を提唱した時点では王女が目覚める前に複数名はクリアマインドの境地に達していると想定していたのでしょう。しかし目論見が外れて今日までずれ込んでしまった。

 

「これだけの規模のモーメントを動かすにはリオ一人がクリアマインドに到達したところで稼働しません。王女に占拠されれば逆にモーメントが乗っ取られ、世界滅亡の起点になりかねません」

 

 一同は息を呑みました。単純にアリスを連れ戻すだけではなく事態は深刻だとは皆に分かってもらうべきです。でなければ我々がアリス個人を重要視したばかりに一人で気負ってきたリオの行動を無下にすることになりますから。

 

「Z-ONE先生。衛星からの映像ですと数時間前から厳戒態勢が敷かれているようです。これもケイって子の襲来に備えてなんでしょうか?」

「ええ。リオが提示した三日という期間はアリスをケイから守りきれる制限時間という側面もあるかと」

「え、じゃあ思ってた以上にやばいじゃん! クリアマインド覚えて迎えに行っても通してもらえないかも……!」

「自力でアリスのもとまで行くしかありませんか……」

 

 想定される防衛兵器の規模はリオが引き連れていたAMASから計算するに突破もそう難しくはないでしょう。問題はネルを制圧したトキ。条件を達成したからアリスを返してくれと言ったところで彼女が大人しく道を開けるでしょうか?

 

「なら陽動作戦だな。あたしらC&Cが正面から突っ込んで騒ぎを起こしてやる。その間にお前達がチビに会いに行け。どうだ? 簡単な話だろ?」

「後方から潜入するのはその他、ゲーム開発部と私たちエンジニア部かな?」

「私たちヴェリタスは遠隔で支援するね」

「防衛システムのハッキングは私たちに任せて!」

「私たちセミナーが協力できるのはここまでですが、何かあればすぐ連絡下さい」

「よし、じゃあこれで行こっか!」

 

 方針が決まり、この場は解散となりました。これからは時間との勝負、ヴェリタスとエンジニア部がシンクロチューナーを開発し次第エリドゥへと侵入する運びとなります。

 

 ばらける皆を見届け……ようとその場にいましたが、モモイだけが立ち止まってこちらに向いていました。ミドリが「お姉ちゃん」と呼びかけても「ちょっと待ってて!」と告げます。

 

「Z-ONE先生はさ、あのケイって子のことどう思う?」

「彼女はソースコードに記された通り動くだけのプログラムではありません。AI、つまり電子生命体とでも言いますか。つまり、アリスと同じです」

「じゃあケイも私たちの仲間にならないのかな?」

「アリスとケイの決定的な違いは己の使命を覚えているか否かです。ケイを諦めさせない説得が必要でしょう。ですが……」

「ですが?」

「アリスが生徒になれたならケイだって生徒になれます。未来の生徒のために動くのも先生のやることです」

 

 そう本心を明かすとモモイは見るものを明るくさせ希望を持たせる笑顔を見せて「うん!」と頷いてミドリの方へと駆け出しました。

 

 モモイ。気づいていますか?

 アリスもネルもリオもケイすらも、貴女を中心に動いているのですよ。

 

 そういえば、モモイがアリスにプレイさせたゲームのうち「ドラゴンテスト5」では主人公と勇者が別でしたか。なら、アリスが勇者ならモモイこそ主人公、なのかもしれませんね。




誰が何のデッキを使うのか考えるのは楽しいですが、パヴァーヌ編を機皇と関わらせるならトップ層はアクセルシンクロ使わせたい、といった理屈でリオとネルのデッキは決めました。雰囲気はそれっぽいかと思います。

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