Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ネル、トキと死闘を繰り広げる

 ◆三人称視点◆

 

 要塞都市エリドゥ外壁部。その外周に張り巡らされたセンサーが侵入者を検知。すぐさまエリドゥが厳戒態勢に切り替わった。

 

 本来外壁での防衛は破壊力を伴う現代兵器を前にはほぼ無力ではあるが、リオは守備力3,000のモンスターとして扱う永続罠カードのような効果を付与させている。これで機皇兵はおろか機皇帝も通さない算段を立てていた。

 

 機皇の軍勢を率いて現れたケイは高くそびえる城壁を見据え、《一族の結束》を発動。5つの機皇帝パーツが合体してその攻撃力の合計が攻撃力となる機皇帝ワイゼル、機皇帝スキエルの攻撃力が大幅にアップする……筈だった。

 

「無駄だよ。機械族サポートのカードを使うことは読めていたから、この城壁の周辺一帯には《アンデット・ワールド》の効果が発動しているらしい」

「墓地のモンスターは全て機械族ですよね? ではアンデット族扱いになった機皇ロボットの攻撃力は上がりませんよ!」

 

 城壁の上からケイを見下ろすのはエンジニア部の三名。そしてケイにとっては奇天烈な造形をするロボット兵器だった。

 

 機皇帝のパーツを組み替えてもやすやす突破出来そうにない性能だとロボット兵器、エンジニア部が修理改造したアバンギャルド君Mk.2を分析したケイは、しかし当初の予定通り城壁を破壊しての正面突破を試みた。

 

 激突する機皇兵・機皇帝とエリドゥの防衛システム。その間にケイは機皇帝スキエルに乗って城壁を飛び越えようとするも、アバンギャルド君Mk.2から射出されたレールガンの直撃を受けてしまった。

 

 幸いにも《スキエルC》に相当する部位の効果で攻撃を無効化出来たものの、次の発動可能になるクールダウン速度では追撃に間に合わない、とケイは計算する。

 

「まさか始めから切り札を1枚切ることになるなんて……!」

 

 ケイはあらかじめ伏せてあった罠カードをオープンして発動する。

 

「罠カード《機皇創世》を発動。墓地の《ワイズ・コア》、《グランド・コア》、《スカイ・コア》を1枚ずつゲームから除外して、王女の武装を召喚条件を無視して特殊召喚する」

 

 ケイの傍に現れたのは白色、青色、黄色の卵のような物体。それぞれが分解され3つのコアとなる。更にその3つのコアを起点に新たなマシンのボディが形成されていった。先日モモイ達が遭遇した機皇帝グランエルを凌ぐ大きさの、絶望の魔人がここに降臨する。

 

「《機皇神マシニクル∞》!」

 

 ケイは召喚した《機皇神マシニクル∞》をアバンギャルド君Mk.2に襲わせ、自分自身は機皇帝スキエルに乗ったままエリドゥの城壁を突破した。そんなケイに他の機皇ロボット達が飛行して後に続く。

 

「機皇神。これがリオ会長が危険視してた王女の武装か」

「私たちエンジニア部がお相手いたしましょう!」

 

 こうしてケイは機皇軍団の何割かと《機皇神マシニクル∞》を費やして城塞都市エリドゥへの侵入を果たした。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 要塞都市エリドゥの中央タワー。ここの下で待ち受けていたのはネルが相手していたはずのトキでした。どうやらネルと交戦して不利になったために仕切り直し退却をしたそうです。

 

「トキ。現時刻をもって「アビ・エシュフ」の使用を許可するわ」

「……リオ様。それは」

「ええ。本来は「名もなき神々の王女」との戦闘用だけれど……仕方ないわ」

「……イエス、マム」

 

 リオからの指令を受けてトキが呼び出したのはロボット兵器ではありませんでした。飛来したそれにトキは乗り込み、動かし始めたのです。

 

「パワードスーツシステム「アビ・エシュフ」、起動」

 

 トキの武装アビ・エシュフはエリドゥ全体のバックアップを受けた攻撃の無効化と膨大な演算による未来予測。これらによりこちらの攻撃は当たらず相手側からの攻撃は必中する、まさに一方的な戦いが行えます。

 

 ネル達C&Cの四名が総出で返り討ちにあい、トキはこちらへと向かってきます。モモイとミドリがいくら銃弾を浴びせても弾丸が見えない障壁で弾かれたり軌道が曲がってやはり届かず、足止めにもなりません。

 

「旋風のヘルダイブスラッシャー!」

 

 アビ・エシュフの手がこちらに伸びようとした瞬間、トキはその場から大きく飛び退きました。直後、トキのいた場所を巨大な何かが高速で通り抜けていきます。衝撃波がこちらに襲いかかり、飛ばされかけたユズ達を支えます。

 

 トキが見上げた空中を飛翔していたのは《クリアウィング・シンクロドラゴン》。そしてその白きドラゴンに騎乗したネルでした。ネルは《クリアウィング》を旋回させ、再びトキへと突撃させます。

 

「地上での平面上の戦闘だと厄介なのはよーく分かった。だったら空中戦と洒落込もうじゃねえか!」

「ぐっ……!」

 

 以前、ネルはアリスを相手した時に言っていました。デュエルをしながら戦うのがキヴォトスでの戦闘の常識。モンスターとの連携攻撃が肝心だ、と。《クリアウィング》に乗って大空を縦横無尽に飛び回るネルはまさに人馬一体。これこそが第一線級だと見せつけるようでした。

 

 トキは地上での迎撃は諦め、飛行モードに切り替えて空へと飛び立ちます。しかしどうやら地上戦での運用を前提とした性能だったらしく、明らかに先程のような未来予知に匹敵する演算に基づく立ち回りが出来ていません。《クリアウィング》とのドッグファイトも付いていくのがやっとのようです。

 

「おらおらぁ! どうしたどうしたぁ!?」

「《スタンドアップ・センチュリオン!》の効果で《騎士皇レガーティア》をシンクロ召喚、これなら……!」

 

 たまらずにトキは先日に見せたレベル12の超大型シンクロモンスターをシンクロ召喚。すかさず《クリアウィング》へと接近し、捉えた《クリアウィング》一撃で撃破しました。

 

 高い位置から落下するネルにとどめを刺すべくトキが距離を縮めますが、ネルは焦るどころか犬歯を見せて笑います。

 

「とうとう出しやがったな。じゃあお礼参りといこうじゃねえか。あたしは戦闘ダメージを受けたんで《SR-OMKガム》を特殊召喚。んでお前がダイレクトアタックを仕掛けてきたんで《SRメンコート》を特殊召喚して守備表示に変更、と」

「!?」

 

 アリスに仕掛けたダイレクトアタック対策と同じ手口でトキの挙動が強制的に防御姿勢になりました。再び姿勢制御が出来た頃にはネルと距離が離れており、ネルの次の一手には間に合いません。

 

「レベル4《SRメンコート》にレベル1《SR-OMKガム》をチューニング! シンクロ召喚! レベル5、《HSRグライダー2》! んで、こいつの効果で墓地の《クリアウィング・シンクロドラゴン》を特殊召喚するぜ。敵を討つべくその翼再び翻せ、《クリアウィング》!」

 

 シンクロ召喚したシンクロモンスターによって蘇生された《クリアウィング》にまたがったネルは再び空を舞います。

 

「いくら《クリアウィング・シンクロドラゴン》を蘇らせたところで私と《騎士皇レガーティア》の敵ではありません」

「はっ。それはどうかな?」

「何ですって?」

「じゃあ、リオご所望の境地、あたしも見せてやるよ」

 

 今度こそネルを撃ち落とすべくアビ・エシュフ装備のトキと《騎士皇レガーティア》が肉薄しますが、《クリアウィング》は更に速度を上げてトキを引き離し始めました。まるでトキを振り切るほどの加速ですが、その目的は真逆です。

 

 ネルは一呼吸おいて精神を統一、開眼してはるか先を見据えます。

 

「明鏡止水、クリアマインド!」

「!?」

「レベル7《クリアウィング・シンクロドラゴン》にレベル5シンクロチューナー《HSRグライダー2》をチューニング! 燦然と輝くその翼世界を照らし、光を超え未来を突き進め!」

「まさか、リオ様と同じ……!」

「アクセルシンクロぉ!」

 

 ネルは2体のシンクロモンスターと共に光となって空の彼方へと消え去っていきました。そして直後、追尾していたトキの後ろから現れ、たちまちに彼女達を追い抜いていきます。1体のアクセルシンクロモンスターと共に。

 

「レベル12、《クリスタルクリアウィング・オーバー・シンクロ・ドラゴン》!」

 

 そのドラゴンは《クリアウィング》や《クリスタルウィング》の正統な進化形態と言える姿をしていました。外見もさることながら特筆すべきはその速さ。本当に流星のごとき速度で飛翔するため、もはやトキはおろか《騎士皇レガーティア》でも追いつくことが出来ません。

 

「バトルだ! 《クリスタルクリアウィング・オーバー・シンクロ・ドラゴン》で《騎士皇レガーティア》に攻撃! 神風のオーバーストライクスラッシュ!」

「くっ、《騎士皇レガーティア》で反撃! 崇高なるフレイム・ウォール!」

 

 《クリスタルクリアウィング・オーバー・シンクロ・ドラゴン》が《騎士皇レガーティア》に突撃。《騎士皇レガーティア》もまた反撃の構え。

 両者、激突。

 どうやら攻撃力は同じだったようで、互いにモンスターは戦闘破壊されました。

 

 生じた爆発の中からいち早く出てきたのはトキでしたが、そんな彼女にネルは上から襲いかかります。アビ・エシュフは激しい損傷を受けておりネルを引き剥がせません。制御を失ったトキはネルとともに急速な勢いで落下していきます。

 

「これでてめぇのフィールドはがら空き! あたしはあたし自身でてめぇにダイレクトアタックだ!」

「と、罠カード《騎士魔防陣》を発――」

「させるかよぉ! これはターン制のデュエルじゃねえんだぜ! 実戦経験の少なさが露骨に現れたなぁ!」

 

 もはやもみ合いになった至近距離での戦いでカードのプレイングは出来ません。そして懐に潜り込まれたトキはアビ・エシュフの取り回しが効かず、ネルからの銃弾を受け放題です。

 

 ネル達は高層ビルに激突。そのまま窓ガラスを次々と割りながら下へと転がり落ち、終いには地面に衝突します。耳をつんざくほど激しい轟音。C&Cの三名がすぐさま傍へと駆け寄ります。

 

 凹んだアスファルトの地面の中央に横たわるトキ。大破こそしていませんがアビ・エシュフは機能を停止しています。一方でふらつきながらも自分の足で立つネル。どちらが勝ったかは明白でした。

 

「ぺっ。ケッ、大したことねぇな」

 

 口の中を切ったのか、ネルが吐き出した唾には血が多く混ざっていました。

 

「凄い凄ーい! アレがリーダーのアクセルシンクロなんだね!」

「パラシュートも抜きにあんな高度からの落下なんて無茶ですよ」

「部長、応急手当を」

「後でいいからコイツを先に手当てしてやってくれ。あたしは少し休む。くっそ、身体中しびれるし頭もふらつく……」

 

 ネルは倒れる前に自分から地面に座り込んで背中を丸めました。それでも気絶寸前とは思えないほど強い眼差しがモモイ達に向けられます。

 

「あたし等はここまで繋いだ。後はチビどもの出番だ。必ずあのチビを連れて戻ってこいよ」

「勿論! あとは私たちに任せて!」

 

 ネルは擦り傷に消毒液を、打ち身に湿布を、切って血が流れる箇所に絆創膏を自分で貼っていきます。トキはアカネに支えられながらも意識ははっきりしているようですね。カリンとアスナは空の彼方遥か遠くを見据え続けています。

 

 モモイ達ゲーム開発部の三人は中央タワーへと突入。私は彼女達の後を追う前にネルへと駆け寄りました。

 

「ネル。皆さん。お気をつけて」

「はっ。言われるまでもねぇよ。こっちはこっちの仕事をやるまでだ。先生こそチビどもの引率しっかりやれよ」

「分かりました。この場は頼みます」

 

 ネルは返事をしない代わりに手を振って見せました。

 それを見届けて私もモモイ達に続いて中央タワーへと入っていきました。




本概念でのネルはしょっちゅう《クリアウィング》に乗って空中戦を仕掛ける戦闘スタイルです。キヴォトス広しといえど空中戦でネルに敵う者はほぼいません。アクセルシンクロを会得したのでもはや空中戦では敵なしです。

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