Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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Z-ONE、新たな時械神をシンクロ召喚する

 ◆三人称視点◆

 

 要塞都市エリドゥへと侵入したケイは途中で立ち塞がる防衛システムを迎撃しながら侵攻していた。しかし想定を超える規模の抵抗は受けておらず、順調に王女のいる中央タワーとの距離を縮めていた。

 

 そんなケイを見上げる人影が、5つ。

 

「随分と遅い到着だったな。どっかで道草でも食ってたか?」

 

 ミレニアムの誇るC&Cの部員達。

 華麗なる戦闘メイドがケイの前に立ちはだかる。

 うち4名は先日に戦闘済み。更に初めて見る新顔共々先に戦闘を経ているようで既にダメージを負っている。データと照合して危険度は高くないと判断。

 

「そう言やてめぇにも相当借りがあったな。今丸ごと返してやるよ」

「随分と大きく出ましたが先日機皇帝一体相手に手も足も出なかったのを忘れましたか?」

「人、三日会わざれば刮目して見よ。山海経辺りの言葉だったか? まあいいか。とどのつまり、今日のあたし等をなめるんじゃねえぞ」

「……やれ、機皇帝達」

 

 ケイが引き連れていた機皇帝ワイゼルと機皇帝グランエルがそれぞれネル達に襲いかかる。そんな迫りくる危機に対し、C&Cの5人は迎撃に移るどころか迎撃体制にもにも入らない。ただ一人、ネルだけがカードをフィールドにセットした。

 

「さあて。リオの仮説が正しいんなら、これでいいはずだよなぁ?」

 

 ネルが召喚したモンスターが機皇帝ワイゼルと機皇帝グランエルの間をすり抜けて飛翔した。機皇帝は反応も出来ず、それどころかスリープ状態に入って地面へと降下していくではないか。

 

 ケイは素早く周囲を窺ってその正体を目視する。そのドラゴンは先日機皇帝グランエルで吸収したシンクロモンスターに似ていながらも異なる姿をしていた。より正確には存在感、力強さ、優雅さ、あらゆる要素が正統に進化していた。

 

「レベル10、《クリスタルクリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!」

「アクセルシンクロモンスター……!」

 

 データベースにも存在しない新たなアクセルシンクロモンスターの出現にケイは警戒心を高める。しかし、ケイにとってはデータにはありながらも決して認めたくない現象が起こり始めた。

 

 《クリスタルクリアウィング》が通り抜けた機皇ロボット達が次々とその機能を停止して無力化していくではないか。まるで《クリスタルクリアウィング》が機皇ロボットに搭載されるモーメントの回転を正常化させていくように。

 

「……。マジかよ。クリアマインドはともかくこっちは眉唾だったんだがなぁ」

「忌々しいクリアマインド……! 今更人類が反省したところで何だと言うんですか……!」

 

 ケイ自身が相手をすれば良い話だが、それでは他のメイド共にも対処しなければならなくなる。これ以上の時間はかけられない。

 そう判断したケイは第2の切り札を切る決断を下す。

 

「3つの絶望を重ね、究極の神の降臨を知らしめる! 現れろ絶望の化身、《機皇神龍アステリスク》!」

 

 ケイはその場を第2の機皇神に任せてC&Cの上を通過、中央タワーへと突入した。機皇神の登場でモーメントが反応したのか、他の機皇帝や機皇兵も再起動し始める。

 

 ケイはあえて素通りさせたが機皇軍団の足止めには成功している状況。しかし、C&Cのメイド達はだからと時間稼ぎに終止する気など毛頭なかった。

 

「なあトキ。あのデカブツの攻撃力、いくらぐらいだ?」

「フィールド上の攻撃表示の機械族モンスターの攻撃力の合計になるようですから、機皇の数からして100,000以上は確実かと」

「カリン。あたしの《クリスタルウィング》、効果は何だったか?」

「レベル5以上の相手モンスターと戦闘する際に相手モンスターの攻撃力分攻撃力をアップする」

「……《クリアウィング》の効果は見せてたよなぁ? なのに最上級大型モンスターを置いてくとか、あのチビは馬鹿なのか?」

 

 《クリスタルクリアウィング》が咆哮を上げ、流星と化して飛翔。《クリスタルウィング》の効果を発動してその輝きを増し、《機皇神龍アステリスク》へと突撃し、その巨体を貫いた。

 

 なお、ネルは後日《クリスタルクリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のカードテキストを確認して顔を引き攣らせた。何故ならテキスト上の効果はそんな戦闘能力に優れたものではなかったのだから。ネルは知らずのうちにノリと勢いで《クリスタルウィング》としての神秘を引き出し、《クリスタルクリアウィング》のテキスト外効果として発動していたことになる。

 

「ん?」

 

 《機皇神龍アステリスク》のコアから放たれたビームが機皇兵一体を照らす。破壊を無効にする身代わり効果だと気づいたネルはすかさず《クリスタルクリアウィング》の《クリアウィング》としての効果を発動。モンスター効果の発動を無効化し、《機皇神龍アステリスク》を破壊した。

 

 なお、そんな効果も《クリスタルクリアウィング》のカードテキストには記されていない。完全にネルの思い込みによるゴリ押しの結果である。

 後日「はぁ!? コイツ、召喚に手間ばっかかかって使いどころねぇじゃねぇか!」とネルが大声を上げて堪忍袋の緒が切れたのはご愛嬌だ。

 

「ダイクロイックミラー、ってな」

 

 本来機械族モンスターの数だけ破壊されることはない《機皇神龍アステリスク》も蘇生効果を無効化されて炎上、その巨体が地面に倒す。残すは未だクリアマインドの影響で動きがぎこちない機皇軍団のみ。こうなってしまうともはやネル達にとっては的当てを通り越して単なる掃除に過ぎない。

 

「んじゃ、あの木偶の坊共を掃討すっぞ。数だけは多いから気合入れろよ!」

「りょーかい」「了解」「了解です」「イエス、リーダー」

 

 5名の瀟洒なメイド達が夜の摩天楼の足元を駆け抜ける。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「着いた!」

「ここがエリドゥ中央タワーの最上階……」

「……ごくっ」

「地図によるとここのどこかにアリスがいる筈です」

「そう、アリスならここにいるわ」

 

 ようやく目的地までたどり着いたゲーム開発部パーティーは再びリオと対峙します。今度はAMASを従えておらず、代わりに左腕にデュエルディスクを付けています。我々に到達されたからと負けを認めるつもりが無いのは明らかでした。

 

「それで、モモイ。私からの課題は出来たと言っていたけれど、嘘ではないわね?」

「勿論! 何だったら見せてもいいんだよ」

「そう。なら早速採点を……」

「――ザ・キューブ・オブ・ディスペアー」

 

 モモイ達とリオがそれぞれデッキに手を添えようとしたその時でした。我々の乗ってきたエレベータの方から声が聞こえたかと思うと、部屋全体を光が埋め尽くしました。直後に発生する衝撃波が部屋の壁を破壊します。

 

「《速攻のかか――」

「《攻撃の無力――」

「セットしてた罠カード《D・スクランブル》を発動! 攻撃を無効にして手札の《D・モバホン》を特殊召喚するよ!」

 

 しかし迫りくる破壊光線は私やリオより先んじてカード効果を発動したモモイの機転で防がれます。

 エレベータから降りた攻撃者、ケイは光の剣の再充電はせず、しかし構えたままで私たちの前に現れました。

 

「来たわね。名もなき神々の王女を覚醒させる鍵」

「アクセルシンクロモンスター使いが2人ですか。邪魔をしないでもらいましょう」

「そう言われて私たちがどく確率は計算済みなのでしょう?」

「ええ。ですから力付くで押し切ります」

 

 ケイがモンスターゾーンにカードをセットし、その巨体は竜巻となって姿を現しました。モモイが召喚していた《D・モバホン》は破壊され、私はリオを引っ張って飛び退き、モモイ達も慌てながら伏せることに成功したようです。

 

 ケイが召喚したモンスターは《機皇神龍アステリスク》……いえ、どちらかと言うとアポリアのDホイールに形は似ていますか。これは私も目にしたことがない新型ですね。それとも私が知らなかっただけでアポリアは独自に自分のデッキに入れていた? いずれにしても厄介な。

 

「破壊された墓地の機皇モンスター3体を除外し、第三の機皇神、《機皇神龍トリスケリア》を特殊召喚」

 

 こんな狭い屋内で召喚するモンスターでもないでしょうに。現に空間に入り切らないせいで《トリスケリア》が少し動くだけで周囲の機材が破壊されていきます。このままではモモイ達が危険ですね。

 

「リオ。あの機皇神を外へ誘導してください。私が対処します」

「いえ、あの機皇神の効果は未知数。一人で対処するのは合理的ではないわ。私がサポートに回るから」

「それは頼もしい。ではサポートを任せます」

 

 私が駆け出すと《トリスケリア》は私に狙いを定めたのかすぐさま追ってきました。《トリスケリア》が放ったレーザー光線が中央タワーの壁を破壊し、部屋が外気にさらされます。私は瓦礫を踏み越え、空へと飛び立ちました。

 

「《スターダスト・ドラゴン》!」

 

 そしてすぐさま《スターダスト・ドラゴン》を召喚して飛翔させます。《トリスケリア》もまた私を追って中央タワーから飛び出し、飛行し始めました。機皇帝も普通に浮いていたので不思議でもありませんか。

 

 そんな《トリスケリア》は三つの頭からレーザー光線を放ちました。《スターダスト・ドラゴン》で回避しようとするも追尾性があるのか、すぐに私を……いえ、正確には私のデッキをサーチします。

 

「先生、大変よ! その機皇神の効果の解析が終わったけれど、とんでもないものだったわ!」

 

 デュエルディスクの通信機能を介してリオの声が聞こえてきました。中央タワーに空いた大穴からこちらの様子を窺っているのが小さく見えます。声の様子からしてとても焦っているようでした。

 

 その間に《トリスケリア》は私のデッキを探り、1枚のカードを抜き取ります。それは……《シューティング・スター・ドラゴン》!? 強制召喚された《シューティング・スター・ドラゴン》はトラクタービームで拘束され、《トリスケリア》へと引き込まれていきます。

 

「その機皇神は攻撃宣言時にエクストラデッキのモンスターを1体吸収する効果を持ってるわ! これじゃあ、まるで……」

「アクセルシンクロする前にアクセルシンクロモンスターを吸収する……。さしずめアクセルシンクロキラーですか」

「逃げてちょうだい! シンクロモンスターを吸収したその機皇神は複数回攻撃出来るようになるわ!」

「殺意が高いですね。よほどモーメントを鎮めてきた《シューティング・スター・ドラゴン》を意識しているのか」

 

 《シューティング・スター・ドラゴン》を吸収した《トリスケリア》はエネルギーを収束。ターゲットは《スターダスト・ドラゴン》。《シューティング・スター・ドラゴン》の攻撃力を上乗せした《トリスケリア》の攻撃を受ければひとたまりもないでしょう。

 

 ……仕方がありません。あまりこのカードを【遊星】デッキでは使いたくはなかったのですが。機皇神の攻撃をしのぎきるにはこの手が最良ですね。リオやケイからは非難されそうですが。

 

「永続罠《シェイプシスター》と罠カード《緊急同調》を発動。これによりレベル2チューナー罠モンスター《シェイプシスター》を特殊召喚し、シンクロ召喚を行います。レベル8《スターダスト・ドラゴン》にレベル2《シェイプシスター》をチューニング」

 

 《スターダスト・ドラゴン》の身体が透けてレベル分の8つの星が見えてきました。そして2つの緑色の輪になった《シェイプシスター》を《スターダスト・ドラゴン》がくぐり抜けていきます。

 

「集いし願いが新たな時空の扉を開く、光さす道となれ! シンクロ召喚!」

 

 そして同調して光となった後、現れたシンクロモンスターは《ジャンク》でも《ウォリアー》でも、そして《スターダスト》でもありません。

 

 現れたのは鎧のような空っぽの器。しかしその鎧の中に守護天使が降臨することで神へと至ります。

 私も初めて召喚したので初体験ですが、やはり迸る力、そして存在感に圧倒されるばかりです。

 

「現れよ、《時械神祖ヴルガータ》」

 

 別の可能性を持ったシンクロモンスターの時械神。

 それを今降臨させたのです。




Z-ONEに《時械神祖ヴルガータ》をシンクロ召喚させる。これも本概念でやりたかったことの1つです。
ちなみにネルがアクセルシンクロしないで《クリスタルクリアウィング》を召喚したのはZ-ONEがアニメでの回想シーンで機皇帝を無力化するために《シューティング・スター・ドラゴン》を召喚したのと同じ理屈です。

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