Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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サオリ、補習授業部入りする

 ◆三人称視点◆

 

「へー、これが噂の"先生"かー。ふん、私は結構良いと思う!ナギちゃん的にはどう?」

「……ミカさん、初対面でそういった話はあまり礼儀がなっていませんよ」

「うぅっ、それはまぁ確かに……。先生ごめんね? これからよろしくね!」

"こちらこそよろしく"

 

 トリニティのティーパーティーは他校の生徒会に相当する。過去に複数の学校が統合されたことで開校されたため、生徒会長に相当する立場は3名いる。それぞれ過去トリニティを構成した学校に端を発する派閥の長だ。

 

 フィリウス派リーダーの桐藤ナギサ。

 パテル派リーダーの聖園ミカ。

 そしてサンクトゥス派リーダーの百合園セイア。

 

 本来のホストだったセイアは入院中のため、暫定的にナギサが務めている。

 もっとも、ナギサはセイアがヘイローを破壊されたと認識しており。

 そしてミカはセイアが実は匿われてると把握している。

 

 ティーパーティーは複数の学校の代表者が集う場を指していたが、トリニティ結成時に伴ってその在り方を変えている。ただ、滅多に部外者を招待しないとう点では一貫しており、シャーレの"先生"が招待されたのはその例外に該当した。

 

「では改めて。こうして先生をご招待したのは、少々お願いしたいことがありまして」

"お願い?"

「おおっ、ナギちゃんいきなりだね!? もうちょっとこう、アイスブレイクとか要らないの? ほら、ティーパーティーって基本的には社交界なんだし?」

「ミカさん、そういったことはあなたがホストになった際に追及してください」

 

 シャーレの"先生"がトリニティにおける生徒会長について聞き、ナギサが説明しようとしたところにミカが口を挟んできたのでナギサがロールケーキぶち込みます宣言をした。ミカは「いやー、怖い怖い……」と少し反省の意を見せる。

 

 そんな光景をサオリは委縮しながら眺めていた。別に余計な口を挟めばロールケーキを口にぶち込まれることを恐れてではない。むしろナギサのロールケーキはアリウスでは決して味わえない逸品なので大歓迎だ。喉につまらせるのはアレだが。

 

 サオリもティーパーティーのメンバーなので"先生"とのお茶会に参加すること自体は何ら不思議でもないのだが、サンクトゥス派に籍を置く彼女のいつもの位置はセイアの斜め後ろ。そのセイアが不在かつサンクトゥス派はリーダー代理を立てていないため、セイアの席は本来空席の筈だった。

 

「え? サオリちゃんがサンクトゥス派リーダー代理でしょう? きちんと自分の椅子に座らないと駄目じゃん」

 

 と、笑顔でミカに肩を掴まれて無理やり席に座らされなければ。

 

「私がサンクトゥス派リーダーの代理? 他の先輩方を差し置いて?」

「だってセイアちゃんが欠席してる間にサンクトゥス派が提出する書類はサオリちゃんが確認サインしてるんでしょう? サイナーをリーダーと見なすならサオリちゃんが該当するよね」

「止めてください。後で私が先輩方から何を言われるか分かりません。報復して反省室送りになるのはあまり……」

「じゃーん。これなーんだ?」

 

 それでもなお固辞するサオリに対してミカはにこやかに一枚の紙を彼女へ差し出した。それを目にしたサオリ、驚きのあまりに目を見開く。ミカから紙を受け取って何度読み直しても書いていることは変わりない。

 

「それは、セイア様からの委任状!? 一体いつ……!?」

「この前セイアちゃんに会って来た時に貰ってきたんだ。さすがに限定委任みたいだけれど、セイアちゃんの代理としてセイアちゃんの席に座るのは全然問題無いよ」

 

 これには他のサンクトゥス派ティーパーティー所属者は黙るしかなかった。ミカが自分に都合の良い人物を担ぎ上げようとしているのではないかと疑ったが、手書きの委任状の筆跡は彼女達も良く知るセイアのものだった。

 

 ただ一点。日付だけは襲撃される前のものなので嘘である。

 

「しかし、セイア様は何故私に委任を……?」

「サオリちゃんが真面目に仕事をこなすのもあるんだろうけど、将来の勉強のためじゃないかな?」

「将来の勉強……?」

「ほら、例えばアリウス派が立ち上がった時とかさ」

「……!?」

 

 アリウス派。

 そんなものはトリニティには存在しない。

 何故ならサンクトゥスもフィリウスもトリニティに統合したから派閥として残っているのであって、合併を拒絶したアリウスがトリニティに派閥を作れるわけもない。

 

 だが、それは今までの話だ。

 もし過去の清算としてアリウスがトリニティと統合したらどうなる?

 過去のサンクトゥス等と同様、派閥として残っていくのではないか?

 

「ミカ様……そんなことが可能なのですか?」

「じゃあサオリちゃんはアリウス分校をアリウスのまま復興させられるの? トリニティ結成時にアリウスが取った選択の結果が今なんだから、遅くなっててもトリニティに加わっていいと思うんだ。勿論、サオリちゃんがティーパーティーの一員として死ぬ思いで調整しないと駄目じゃないかな」 

「私が、ですか……。トリニティでは受け入れられないと思っていたものですから、初めから選択肢から外していました……」

 

 無論、いざ統合となった場合の問題点は山ほどあるだろう。責任者には双方を知っているサオリが抜擢されるだろうし、今以上の膨大な量の仕事が待ち構えているに違いない。一体徹夜を何度すればいいだろうか? そもそも大人しくトリニティに加わることを良しとするアリウスの生徒がどれほどいるかも分からないのに。

 

 しかし、そんな苦難を差し引いてもようやく目指してきたアリウスの未来が見えてきた事実が嬉しくてたまらなかった。これでもう誰も憎まず誰とも争わずに済む。そう思えばやる気も出てくるというものだろう。

 

「そろそろ本題に入りましょうか。私たちが先生にお願いしたいのは、簡単なことです。補習授業部の顧問になっていただけませんか?」

"補習授業部?"

「はい。つまり、落第の危機に陥っている生徒たちを救っていただきたいのです」

「私たちとしてはちょっと困ったタイミングでっていうか……」

「昔から「文武両道」を掲げる歴史と伝統が息づく学園、それがトリニティです。それなのにあろうことか、成績の振るわない方がなんと5名もいらっしゃいまして……」

「その時にちょうど見つけたの! 新聞に載ってたシャーレの活躍っぷりを!」

 

 キヴォトスにおいてはBDで学習するのが普通。各学校に職員や教授こそいれど、先生という概念はとても珍しい。それこそ"先生"やZ-ONEが生徒を導く役割を持つ先生として赴任したことが特別と考えられるぐらいに。

 

 そう、キヴォトスにおける普通は……アリウスでは普通ではなかった。上級生が下級生を指導するのが当たり前。教材も戦闘や作戦行動に支障が出ない範囲しか学ばせてもらえなかった。よくもまあトリニティの入学試験に合格したものだ、とサオリは振り返る。

 

「尊敬の対象、あるいは生きる指針としてみんなに手を差し伸べ、導く……これはぴったりだなって思って!」

「「補習授業部」は常設されているものではなく、特殊な事情に応じて創設され、救済が必要な生徒たちを加入させるものです。なのでシャーレの超法規的な権限をお借りしつつ……といった形で、ですね」

「どう、先生? 助けが必要な生徒たちに、手を差し伸べてくれない?」

"私にできることであれば、喜んで"

「やったぁ! ありがとう先生!」

「ありがとうございます。ではこちらを」

 

 ナギサは"先生"に補習授業部に属することになる5名の名簿を渡した。ミカ曰く「トリニティの厄介者」、ナギサ曰く「愛が必要な生徒たち」。それに目を通した"先生"は以前アビドスで出会ったとある生徒の他に、ある生徒が目についた。

 

 "先生"が視線を向けた先の相手はあさっての方を向いてごまかすが、動揺しているのがバレバレだった。ナギサはため息を一つこぼし、ミカは苦笑いを浮かべる。そして視線を向けられた張本人、サオリは観念して頭を掻いた。

 

「試験中居眠りして赤点を食らったあげくに補習授業部入りを命じられた錠前サオリです。これからよろしく頼みます」

「サオリちゃんったら今いないもう一人の生徒会長、セイアちゃんの代わりを務めて忙しかったからね」

「だからって試験最終日の半分近くを寝てしまうのはティーパーティーの一員として示しがつきません。大人しく追試を受けてきてください」

「……。承知しました」

 

 そう、アリウス対策で色々と準備と計画を立て、セイアの代役を務めつつ自分の仕事もこなし、試験勉強も疎かにしなかったサオリの疲労は限界に来ていた。試験最終日に緊張の糸が切れた彼女はリスニング試験中にとうとう夢の世界へ旅立ってしまったのだった。

 

 なお、サオリの名誉のために補足すると、他の科目は平均点以上かつ幾つかは優秀な成績を収めている。なのでサオリが一生の不覚だと今も後悔しているのは言うまでもないだろう。

 

(補習を受けてる暇なんて無いのに……)

 

 こうなってしまっては仕方がない。さっさと追試を受けてクリアしてしまおう、とサオリは腹をくくった。SRTとの打ち合わせやアリウスの動向の調査、エデン条約調印当日をどう乗り切るか、等はその後でこなせばいいだろう。

 

 しかし、この時点でサオリは補習授業部が創設された真の目的にまで思い至ることはなかった。それはサオリがなまじ事情を知っているせいで補習授業部の5名の共通点を割り出せなかったからだ。

 

 補習授業部、それはトリニティの裏切り者を退学させるために作られた。

 5名はエデン条約を阻むかもしれない、言わば容疑者。

 ナギサは"先生"に裏切り者を探してもらうためにトリニティに呼び出したのだ。

 

 このような動きはセイアが襲撃されたことを受けてになる。タイミングからしてエデン条約締結を阻むためなのは明らか。未だ犯人が捕まっていない現状、再びテロ行為を起こす計画を立てているかもしれない。

 

(一番怪しいのは……)

 

 ナギサにとっての第一容疑者は無論、目の前にいるサオリだ。セイアの傍にいることの多い彼女ならいつでもその寝首をかける。それにサオリはここ最近トリニティの外へ出かけて連邦生徒会で何か打ち合わせを行ったのも把握している。

 

(彼女がクーデターでトリニティを掌握するつもりでセイアさんのヘイローを破壊したなら、それはセイアさんへの最大の裏切り。絶対に許しませんし決して容赦はしません)

 

 普段の、またはアリウス時代のサオリならナギサから向けられる敵意に気付けただろうが、あいにく仕事と勉強づくめでヘロヘロなサオリは失態を侵さないように頑張るのが精一杯。観念して少しの間勉強に専念しよう、としか考えていなかった。

 

(あー、やっぱりサオリちゃんが疑われちゃったかー)

 

 一方のミカ。ナギサが疑心暗鬼に陥っている気持ちも分かるしサオリがそれを察せない事情も理解している。そのうえで面倒事を押し付けられた、とげんなりしつつも、そもそも自分がセイアにちょっと痛い目見てもらうつもりでアリウスを招き入れたのが発端なので、文句も言えなかった。

 

(ナギちゃんをフォローしなきゃいけないしサオリちゃんの計画も進めなきゃいけない。両方やらなきゃいけないのが辛いなー。セイアちゃん早く戻ってきてよー!)

 

 三者三様の思惑は優雅なお茶会で表に出ることなく、"先生"は補習授業部の先生となった。




眠気には勝てなかったよ……。実際疲れ果ててる時に試験に臨んだらリスニング問題とか催眠術みたいなものですからね。

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