Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ナギサ、悪意には時械神でお返しする

 ◆三人称視点◆

 

「……可哀そうに、眠れないのですね」

「っ!?」

「動くな」

「……!」

 

 深夜。セーフハウスに隠れ潜んでいたナギサのもとにハナコとアズサがやってくる。数十カ所あるセーフハウスの位置やローテーションを割り出し、更には警備を全員片づけてきたのだ。

 

「白洲アズサさん、浦和ハナコさん……まさか……裏切り者は二人……!?」

「……ふふっ、単純な思考回路ですねぇ♪ 私もアズサちゃんも、ただの駒に過ぎませんよ。指揮官は別にいます」

「……! それは、誰ですか……!」

「そのお話の前にナギサさん……ここまでやる必要、ありましたか? 最初から怪しかった私やアズサちゃん、サオリちゃんは仕方ありません。ですが……ヒフミちゃんやコハルちゃんに対してはあんまりだと思いませんか?」

「……。責任から逃げてきたハナコさんには分かりませんよ」

「……っ。特にヒフミちゃんとは仲が良かったじゃないですか。ヒフミちゃんがどれだけ傷つくのか、考えなかったのですか?」

「……。そう、ですね。ヒフミさんには悪いことをしたかもしれません。ですが、後悔はしていません。全ては大義のためです。確かに彼女との間柄だけは守れればと思っていましたが……私は……」

「……ふふっ♪」

 

 ふと、ハナコの脳裏でサオリからの願いがリピートされた。出来るだけ穏便にことを成してくれ、というもの。

 

 だが補習授業部発足や第二次特別学力試験での理不尽、そして次の第三次特別学力試験での仕打ちを受けたのだ。反省を促すためにもちょっと懲らしめてしまえ。そんな考え……いや、魅力にハナコは自然と笑みがこぼれた。

 

「では改めて、私たちの指揮官からナギサさんへ、メッセージをお伝えしますね」

 

 故に、気付かない。

 送り主と受け取り手が抱く印象は全く異なるのだと。

 つい先ほどサオリが嫌悪したトリニティ共通の醜悪さが滲み出たことを。

 そして、取り返しのつかない亀裂となったことに。

 

「「あはは……えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様とのお友達ごっこ」とのことです♪」

「……っ!?」

 

 アズサは近距離で発砲。ナギサを気絶させて確保するためだったが……、

 

「「!?」」

 

 その凶弾は、アズサとナギサの間に割って入った巨大な手に全て防がれる。

 

 手だけではない。やがて腕、胴体、鏡面、翼を形作っていく。そして巨大な空っぽの器の中に守護天使が宿り、鏡面に顔が現れた。

 突如現れた大型モンスター……いや、モンスターを超越した何かを前にハナコは驚くしかなかった。

 

「じ……時械神……」

 

 そして、アズサはたじろぎ、危うく腰を抜かしそうになった。

 ナギサを守るために召喚された神、《時械神ラフィオン》の降臨によって。

 

(時械神を知っている……? 私がZ-ONE先生から渡されたこのカードはキヴォトスでは出回っていない神のカード……。私も知らなかったのにアズサさんは知る機会があった。それもこの取り乱しよう……使われた側のようですね。そして、私より前にアズサさんの前で時械神を召喚した者がいるとしたら、そしてその結果は……)

 

 そんなアズサの反応を見たナギサ、ようやく大体の事情を察する。

 

「成程。セイアさんのヘイローを破壊しそこなったのはアズサさんでしたか」

「!?」

「この《時械神ラフィオン》とは別の時械神に阻まれたのでしょう? 戦闘・効果では破壊できない上に戦闘ダメージを0にしますから。そして同時期に行方がわからなくなったミネ団長に匿われてる、辺りですか」

 

 ナギサは手に持っていたティーカップを皿の上に乱暴に置いた。その拍子にせっかく入れたのに不安でいっぱいだったせいで口を付けていなかった紅茶がこぼれる。それに構わずナギサはアズサを指差す。

 

「《時械神ラフィオン》の効果を発動。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズの終了時、このカードと戦闘を行った相手の攻撃力分のダメージを与えます」

「なっ!?」

 

 ラフィオンの鏡面に映し出された守護天使の口から猛吹雪が吹き荒れ、アズサへと襲いかかる。アズサはその場で踏ん張るがやがて冷気が体温を奪い、降り注ぐ雪が全身を覆っていく。

 アズサはたまらずに壁へと叩きつけられた。

 

「ぐ、ぁ……!」

「アズサちゃん……!?」

「そしてハナコさんと同行していて"先生"がいない点からも、私に隠し事をしていたにせよアズサさんは真の裏切り者ではなかった、とみなして良さそうですね」

 

 ナギサは《時械神ラフィオン》が自身の効果でデッキに戻っていくのを確認したあと、椅子から腰を上げる。そしてハナコの横を通り過ぎた。

 慌てて振り返ったハナコだったが、ナギサはもうハナコを見ようともしない。

 

「そちらが私を確保する気なんでしたら私の方から出向きますので、出迎えは結構。貴女たちはテーブルの上に残った冷めたお茶と食べかけのお菓子でも堪能してて下さい」

「ナギサさん……!」

「――失望しましたよ。浦和ハナコさん」

「……っ!」

 

 ハナコはナギサが部屋から出ていくのをただ見ているしかなかった。声をかけようにも口から洩れるのは乾いたかすれ声だけ。伸ばす手は震えてしまって届かない。足を動かしたくてもふらつくばかりだった。

 

 アズサが雪を振り払ってハナコへと駆け寄ってくる。眩暈で倒れそうになったハナコをアズサが支える。ハナコは顔色を真っ白にして口元に手を持っていく。気持ち悪さが湧き上がる、涙が止まらない。

 

「ハナコ……行こう。まだやらなきゃいけないことは沢山ある」

「え、ええ……うぷっ」

 

 やってしまった。サオリに注意されていたのに。

 自分が最も忌み嫌っていた「トリニティの生徒」になってしまった。

 ハナコは耐えきれなくなり、胃の中のものを全て戻した。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 トリニティ構内に侵入したアリウスの部隊はアズサのトラップでその数を徐々に減らしていく。さらにはサオリやアズサの巧みな立ち回りによって徐々に体育館へと集結していった。

 

 体育館で待機する"先生"やヒフミ達の前にナギサが姿を現す。ハナコと一緒でないのをヒフミは驚くが、ヒフミが何かを言う前にナギサは"先生"のもとへと歩み寄り、"先生"を見上げる。

 

"ナギサ"

「ナギサ様……」

「"先生"、状況を手短に教えて下さい」

"アリウスの部隊がナギサを狙ってトリニティ自治区に侵入してきてる。本来はアズサがナギサのヘイローを破壊するヒットマンの役だったんだけど、アズサは裏切り者じゃないよ"

「アズサさんはトリニティ……いえ、補習授業部の皆さんを選んだんですね。それで、どうやらこの体育館に誘い込むような動きがありますが、何か作戦が?」

"起死回生の一手はハナコに任せてるよ。私たちはここで時間が来るまでナギサを守れば勝ちだ"

「……。言いたいことは山程ありますが、それは後ほど」

 

 ナギサは状況確認を終えると左腕のデュエルディスクを展開、自分の【代行者】デッキをホルダーに入れる。当然ながらZ-ONEに渡された《時械神ラフィオン》もデッキの中だ。

 

 やがてハナコが、そしてサオリとアズサが戻って来る。ナギサとハナコの様子から何かがあったと察したサオリはアズサへと視線を投げかけるが、アズサは申し訳無さそうに視線をそらすだけだった。

 

 体育館まで侵入したアリウスの部隊に"先生"の指揮下で応戦する補習授業部の生徒たち。ナギサに何かがあったと察した正義実現委員会が出動するまで粘り続けるが、一向にアリウスの勢いが衰える気配がない。それどころか増援部隊が次々と来襲する始末だった。

 

「……数が多い、大隊単位だ。多分、アリウスの半数近くが……」

「あうぅ……! こ、これだけたくさんの方が、平然とトリニティの敷地内に……!?」

「まだ正義実現委員会が動く気配が無い……?」

「それは仕方がないよ」

 

 補習授業部を包囲しながらも攻めあぐねるアリウスの部隊が割れる。

 その奥から優雅に歩いてきた少女は、"先生"やナギサへと微笑んだ。

 愕然とするナギサ、動揺するハナコ、顔を険しくする"先生"。

 

「だってこの人たちはこれから、トリニティの公的な武力集団になるんだから」

"ミカ……?"

 

 ティーパーティの一人、聖園ミカ。

 彼女がアリウスの部隊を前にして優雅に歩み寄ってきた。

 

「やっ、久しぶり"先生"。また会えて嬉しいな。そうそう、正義実現委員会は動かないよ。私があらためて待機命令を出したから。「私やナギちゃんが何を言っても待機は維持。じきに来るセイアちゃんからの指示に従うこと」ってね」

「……!」

 

 今日、学園が静かだったのはミカが正義実現委員会以外の邪魔をティーパーティー権限で全て片付けたから。ナギサへの襲撃作戦を邪魔されたら困るから。ミカは嬉しそうに自白する。

 

「聖園、ミカさん……」

「まあ簡単に言うと、主犯登場☆ってところかな? 私が本当の、ナギちゃんの言う「トリニティの裏切り者」の一人だよ」

「ミカ、さん……どうして……」

 

 ナギサは気丈にもミカを睨みつける。ミカは一瞬だけナギサから視線をそらすも、すぐにナギサを見据える。

 

「んー? 聞きたい? そうだね、そろそろナギちゃんにも教えちゃっていいかな」

「やはりエデン条約の締結を阻止するために私たちを排除しようと……?」

「エデン条約? あー、ゲヘナの角が生えた奴らと握手するなんて考えるだけでゾッとしちゃうけれど、私の意見は変わってないよ。ナギちゃんが推進する限り私は消極的賛成の立場だ、って」

「なら、アリウスをセイアさんと私にけしかけたのは……?」

「私がアリウスと和解しようって言ったらセイアちゃんもナギちゃんも猛反対してきたじゃん。聞く耳を持たないって言うか。そこにエデン条約が結ばれたらもうアリウスとは仲良く出来なくなる。ゲヘナなんかよりトリニティの仲間だったアリウスを優先させた。順位の問題だよ」

 

 ミカは待機するアリウスの部隊の前を右に左とゆっくり歩きながら説明する。一見隙だらけなので不意打ちしようかとアズサは考えたか、リスクが大きすぎると判断して我慢する。

 

「だからセイアさんと私を排除して、ホストの座を手に入れようと?」

「うん? ……うん、確かに。これはクーデターとも言えるかもね。セイアちゃんとナギちゃんを一時的に失脚させて、私がティーパーティーのホストになるんだから。それで、白州アズサをナギちゃんを襲った犯人に仕立てあげれば大団円!」

「……っ!」

"……すべては、ティーパーティーのホストになるため?"

「ううん、違うよ。やりたいことをやりたくて、そのためにホストの座がほしかっただけ。何ならアリウスとの統合が済んだらナギちゃんに返していいし。あ、でもアリウスがゲヘナに向ける憎悪はトリニティよりも上だったっけ。ならアリウスが加わった新トリニティが望むならゲヘナに全面戦争を仕掛けても良いかも!」

 

 その時、"先生"がミカに向けた顔をサオリは当分忘れられないだろう。

 

 全ての生徒の味方だと公言する"先生"を本気で怒らせるとここまで怖い眼を出来るのか、と。マダムといい"先生"といいZ-ONEといい、大人という存在は大きいものだと思い知る他無かった。




ミカは原作と違ってセイア生存が分かってるので黒幕ムーブはノリノリで演じてます。ちなみにミカは一言も嘘は言ってません。本当のことを全部明かしてないだけで。

◇桐藤ナギサ
使用デッキは【代行者】
エースモンスターは《マスター・ヒュペリオン》
切り札は《マスターフレア・ヒュペリオン》
《大天使クリスティア》等の大型天使族モンスターも自分の手足のように従える

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