Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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サオリ、ブリーフィングを開く

 ◆三人称視点◆

 

 エデン条約調印式当日。

 古聖堂に向けて両学園の主要人物が次々と集まっていく。

 

 警備体制は盤石。ゲヘナの風紀委員会、トリニティの正義実現委員会、それに加えて連邦生徒会からヴァルキューレも応援に駆けつけ、更にはカイザーPMCも動員される徹底ぶり。もはやこのエデン条約は結ばれるものと誰もが確信するほどだった。

 

 その裏で、トリニティでは2つの重大な作戦が実行されようとしていた。

 

 一つは古聖堂防衛作戦。アリウスが仕掛ける巡航ミサイル発射の阻止、並びにアリウスの部隊からの強襲を退ける。この2つを達成し、無事にエデン条約を締結させなければいけない。

 

 その肝となるのが古聖堂地下に広がるカタコンベでの防衛。防衛の準備はカタコンベ内に塹壕を何重にも掘って待ち構える徹底ぶり。既に正義実現委員会と風紀委員会、そしてSRTの数個小隊の面々が待機済みだ。

 

 巡航ミサイル発射場所3ヶ所へはSRTの小隊が既に出発済み。古聖堂にナギサたちが到着する頃には制圧が終わる予定だ。3ヶ所ともトリニティ自治区内なのだから相当トリニティを舐めている、とナギサは憤る。

 

 そして、もう一つはアリウス攻略作戦。こちらはトリニティ構内からカタコンベに突入してアリウス自治区へ入り、そのまま攻め落とすもの。こちらの主力は正義実現委員会とSRT。決して少なくない人数が割り振られている。

 

 最大の問題となったのがカタコンベをどう通ればアリウス自治区へ行けるか、だった。単に広大なだけなら時間をかけてマッピングすれば済む話。しかしカタコンベ内の本当に出入り口は数百あるうちのごくわずか。それも一定周期で変わってしまう。普段活用するアリウスの生徒ですら正しい入口とルートは暗号で教えてもらわないといけないぐらいだった。

 

「逆に言えば、その法則性を割り出せばカタコンベは攻略したも同然だ」

 

 サオリ、スズミ、アズサといったアリウス出身者がかつて与えられた暗号。先日のトリニティ襲撃で拘束したアリウスの生徒達から没収した暗号。それら膨大なデータをもとに解読し、最終確認としてサオリがミサキから聞き出した最新の暗号と合致するか照らし合わせた。

 

 なお、その解析にはZ-ONEのつてを借りてミレニアムに依頼した。あいにく受験組のサオリはトリニティ単独で問題を解決しようとする意地など無い。問題が解決できるならそれに越したことはないのだ。

 

「トリニティ総合学園、正義実現委員会のイチカっす。今回トリニティ側のアリウス攻略部隊は私が取りまとめることになったんで、よろしくっす!」

「SRT特殊学園FOX小隊隊長、七度ユキノだ。今回の作戦ではアリウス攻略部隊のSRT側の隊長を任せられている。よろしく」

「んじゃあ早速ブリーフィングをやって出発しちゃいますか。司令部は最初はトリニティに設置、アリウス自治区までカタコンベを突破できたらそっちに移設する予定っす」

「了解した。作戦の参加者は我々と正義実現委員会のみと聞いているが、正しいか?」

「あー、当初はその予定だったんっすけどねー。まあまずはブリーフィングルームで主要人物との顔合わせでもしましょう」

 

 SRTの部隊を引き連れて現れたユキノはイチカにトリニティ構内のブリーフィングルームへと案内される。ユキノにとって初見の者と顔を合わせた者または資料で見た者で半々といったところだった。

 

 トリニティ総合学園ティーパーティー所属、聖園ミカと錠前サオリ。

 連邦生徒会連邦捜査部シャーレ所属の先生、Z-ONE。

 あとの2名はユキノが知らない顔だ。見た目からゲヘナ生か。

 

「ハーハッハッハ! 遅かったじゃあないかSRT! あと少し遅かったら我々だけで先に行くつもりだったぞ」

「なんでよりによって彼女たちと一緒に仕事することになってるのよ……。ヒナにバレたらただじゃすまないわよ絶対……」

「ん? アル社長はヒナ委員長から聞いてないのか? 我々がシャーレの手伝いに来たのはヒナ委員長と取引したからだぞ。釈放してやるから手助けしてこい、ってな。だが未開の土地を調査出来るというのだから喜んで参加しようじゃあないか!」

「な、何ですってー!? そんなの聞いてないわよ!」

 

 ゲヘナ生二名はそれぞれ鬼怒川カスミと陸八魔アルを名乗った。

 

 この両者はゲヘナの温泉開発部部長と便利屋68社長で、どちらもゲヘナにおける要注意対象かつ風紀委員会から指名手配されている問題生徒だ。特にカスミは温泉開発部を急速に発展させて悪名をキヴォトス中に轟かせた、ゲヘナ随一の要注意人物扱いされている。

 

 何故ゲヘナの生徒が参加することになったか? それはナギサがトリニティを代表してシャーレのZ-ONEに正式に出張を要請しにシャーレを訪ねた時のこと。運がいいのか悪いのか、その日のシャーレ当番はよりによってヒナだったのだ。

 

 なお、シャーレからはゲヘナの生徒としか指定していない。多忙なヒナが来たのは完全に万魔殿の嫌がらせである。

 

「なるほど。それならゲヘナからも人員を出す」

 

 ナギサとZ-ONEの打ち合わせの議事録をまとめるヒナがそう提案した。

 エデン条約締結を妨害しようと目論むアリウスの問題なら本件はゲヘナ側も関わるべきだ、とヒナは主張する。

 

「ヒナ委員長。申し訳ないのですがアリウスへの先制防衛はトリニティの問題。ゲヘナの風紀委員会から人を出していただくわけにはいきません。万魔殿のマコト議長から古聖堂警備に更に人員を出すよう言われたばかりと聞いていますし、古聖堂警備に尽力していただければ充分です」

「問題ない。なにもゲヘナの戦力は万魔殿と風紀委員会だけじゃない。あの連中はいつも迷惑ばかりかけてるんだからたまには役に立ってもらう」

「……。嫌な予感がするのですが、どんな組織を派遣するつもりか聞いても?」

「温泉開発部と便利屋68」

 

 ナギサの顔がひきつったのは言うまでもない。

 何故ならエデン条約が必要になった理由の半分近くを温泉開発部と便利屋68の2つだけで占めているからだ。もしここに美食研究会が加わっていたら豪華3点セットが勢ぞろいするところだった。

 そんな彼女たちにエデン条約締結の一端を担わせるとは皮肉が効いている。

 

「温泉開発部には私から指示するから便利屋68にはZ-ONE先生から派遣要請してもらえるかしら? あと、どちらも名目上はシャーレからの依頼で派遣したことにして。私からにすると後でマコトに何言われるか分かったものじゃないもの」

「分かりました。アルたちは中々優秀なようですから、頼もしいでしょう」

「実力はゲヘナ全体を悩ませるだけあって折り紙付きよ」

「そ、そうですか……。作戦指揮を任せるミカさんとサオリさんには良く説明しておきます」

 

 そんな経緯で参戦が決定。トリニティにとってはいいとばっちりである。

 現にミカはずっとふくれっ面だしサオリは両手で頭を抱えている。

 なお、ナギサはいい笑顔でミカ達を見送り、セイアは「ご愁傷さまだ」と苦笑した。

 

 しかし便利屋68はヒナ無し風紀委員会を退けられる実力を持ちヒナ本人にも状況次第で善戦出来る程。温泉開発部の規模はゲヘナ内の部活でもトップレベル。無碍にするには惜しい戦力なのだから余計たちが悪い。

 

 そして最後の一人、シャーレの先生Z-ONE。

 

 ユキノはシャーレという組織も赴任した2人の先生も情報だけは耳にしたし資料を読んでいたが、実際に会うのは初めてだった。顔を合わせてみると成程、銃を持って戦えないのは明らかだがデュエリスト特有の気配を感じる。

 

 一通りの挨拶が終わったところで今回の作戦の趣旨を作戦責任者のサオリが説明する。トリニティのティーパーティーメンバー2名を襲撃したアリウスに対して先制防衛を仕掛ける、という表向きの理由を堂々と語った。

 

「アリウスはエデン条約調印式の会場になる古聖堂へのテロも計画していて、それに合わせて我々の作戦を決行する。アリウスがどれほどの人員をアリウス防衛に当てるかは未知数だが、在校生は二割にも満たないと予測される」

「ちょっと。在校生はって限定するのは何でよ? まさかミレニアムみたいに自動防衛システムとかあるんじゃないでしょうね?」

「アリウスの生徒会長は元キヴォトス人の異形のモンスターを従えている可能性が高い。それらの無力化も必要だ」

 

 サオリはアリウスの卒業生が「デスピア」モンスター化した件も包み隠さず説明した。ぞっとするアル、不愉快げにむっとするカスミ。ユキノは事前にサオリから資料を提供されていたので一読していたが、やはり気分はあまり良くなかった。

 

「一応聞くけれど、アリウスの卒業生たちは遠慮なくやっつけちゃっていいのね?」

「問題ない。助けられるかも分からない相手の心配をする余裕は私たちには無い。だからといって見捨てるつもりもなくて、拘束したあとで治療の方法を模索する予定だ」

「言っておくがそんな事情なんて我々ゲヘナは知らないぞ。助けたければトリニティで勝手にやってくれ。ま、道中邪魔をする奴の片付けは任せたまえ!」

「ゲヘナはそれで構わない。あとSRTにもトリニティから戦術面の注文を入れるつもりはないから、任務に専念してくれ」

「了解した。我々は我々の判断で任務を遂行する」

「それから……」

 

 サオリはタブレットの外付けキーボードを打ちながらメモを取るZ-ONEへと視線を向けた。Z-ONEもまたそれに気づいてサオリへと視線を向け返す。

 

「Z-ONE先生には私たちの引率を務めてもらいます。これは生徒同士の争いですからあまり介入しないで欲しいのが本音です。ですが……」

「アリウスの生徒会長を大人が務めている以上、どちらかの先生が付き添うのは正しいでしょう。心配せずとも邪魔になるつもりはありませんよ」

「ところで、ナギサ様からデスピア化したアリウス卒業生の治療について相談をしましたけれど、何か目処はありましたか?」

「2点ほど考えてきましたので、遭遇した際に試そうかと思っています」

 

 一通りの説明とすり合わせが終わり、サオリは改めて一同を見渡した。

 

「今回はアリウスの……いや、私のわがままに付き合ってくれてありがとう。この作戦は私がアリウスから争いを無くしたいがために立案した。知っての通り私はアリウス中等部を卒業してトリニティに入学した。今の私にとってはどちらも大事な母校だ。そんなかつてと今の自分の居場所が争う状況をどうにかしたい。その一心で今ここにいる。協力してほしい。よろしく頼む」

「カタコンベ内のアリウスへ続く道は各部隊に資料渡してるから、絶対にそれ通りに進んでね。でないとカタコンベ内で迷ってでられなくなっちゃうから。途中で引き返すかアリウスまで突破すること。これ守ってね」

「では、今から作戦開始とする。健闘を祈る」

 

 サオリの合図を皮切りに各々が動き出した。

 目指すはアリウス自治区。そして現体制の倒閣だ。

 しかし、この先に待ち受ける試練をまだサオリは知らない。




ゲヘナ側を参戦させようと色々考えてたら温泉開発部が頭の中で急浮上してきました。

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