◆三人称視点◆
「《E・HEROシャイニング・ネオス・ウィングマン》で《デスピアン・クエリティス》を攻撃します。ラス・オブ・シャイニング・ネオス!」
「《V・HEROトリニティ》で《デスピアン・プロスケニオン》を攻撃! トリニティー・クラッシュ!」
行く手を立ちはだかるモンスターを戦闘破壊したサクラコとミネのモンスター。周りではツルギやハスミ達正義実現委員会の委員がユスティナ聖徒会の複製を掃討しており、トリニティ一同の進路を妨害する存在を片付けていく。
「順調だね。あと少しで古聖堂に到着出来るだろう」
「それまでアズサさんたちが無事ならいいのですが……」
雨が降り続ける悪天候の中、セイア率いるトリニティの者たちは足を早めた。
「《DDD超視王ゼロ・マクスウェル》をリリースして《DDD運命王ゼロ・ラプラス》を特殊召喚。《深淵の獣アルバ・ロス》を攻撃。《ゼロ・ラプラス》の攻撃力は相手モンスターの攻撃力の倍になる」
一方のゲヘナの風紀委員会一同もヒナを筆頭に遭遇するモンスターを撃破し続けて進行を止めない。ヒナが立ち直った以上はもはや彼女達を止める手立てなどアリウス……いや、アツコには残されていなかった。
結果、アツコはアズサやヒフミ達、トリニティ、ゲヘナに包囲される形となった。
「天使と悪魔が大集合、ってところかな?」
笑みをこぼすアツコと彼女が従えるモンスターを確認したセイアはツルギに目配せした。ツルギは無言で頷き、デュエルディスクを構える。
「《凶導の白き天底》……サオリの情報通りだね。ツルギ。任せるよ」
「畏まりました。《神の居城-ヴァルハラ》の効果を発動して、《堕天使スペルビア》を特殊召喚。リリースして《堕天使ディザイア》をアドバンス召喚。《堕天使ディザイア》の効果発動。《凶導の白き天底》を墓地へ送る」
ツルギが召喚した堕天使はたちまちに《凶導の白き天底》を地中へと埋葬してしまった。エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターには無類の強さを持つ異型の怪物もメインデッキの大型モンスターの前には無力だった。
「【ドラグマ】デッキがメインデッキ主体のデッキに弱いのは情報共有済み。私はペンデュラムスケール0の《DD魔導賢者コペルニクス》とペンデュラムスケール10の《DD魔導賢者ニュートン》でペンデュラムスケールをセッティング」
ヒナは普段《魔王龍ベエルゼ》を多用してゲヘナの治安維持に務めているが、本来【DD】デッキとは次元を超越した悪魔族モンスターで構成された多彩な召喚法と圧倒的な展開力が特徴だ。エクストラデッキメタのデッキが相手だろうと難なく対処できる。
「私の魂揺らす大いなる力。この身に宿り、闇を引き裂く新たな光とならん。ペンデュラム召喚。現れなさい、全ての王をも統べる3体の超越者。《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》」
便利屋68のアルや温泉開発部のカスミが目の当たりにしていたら「積み込みじゃないの!/だぁ!」と悲鳴を上げるぐらいに綺麗に揃った手札で攻撃力3,000のモンスター3体がフィールドに現れた。
「《妖眼の相剣師》の効果で手札の《教導の天啓アディン》を特殊召喚するね」
「1体目の《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》で《灰燼竜バスタード》に自爆特攻する。2体目の効果発動して1体目の元々の攻撃力分攻撃力をアップする。2体目で《灰燼竜バスタード》を攻撃。3体目で《妖眼の相剣師》を攻撃する」
「《灰燼竜バスタード》の効果で《アルバスの落胤》を特殊召喚。その効果でアルバスと《DDD死偉王ヘル・アーマゲドン》を素材に――」
「無駄。永続魔法《常闇の契約書》の効果で《アルバスの落胤》は融合素材に出来ない。これで後続のアルバス融合竜は封じた」
「……!」
アツコの顔が一瞬だけ引きつった。
「《エンドレス・オブ・ザ・ワールド》を見せることで手札の《魔神儀-キャンドール》、デッキの《魔神儀-タリスマンドラ》を特殊召喚する! 儀式魔法《エンドレス・オブ・ザ・ワールド》を発動! 《タリスマンドラ》の効果で手札に加えた《破滅の美神ルイン》を儀式召喚! お前の2体のモンスターを攻撃する!」
「……戦闘破壊された《教導の天啓アディン》の効果でデッキから《教導の大神祇官》を守備表示で特殊召喚するよ」
「《魔鍵憑神-アシュタルトゥ》の効果を発動。オーバーレイユニットを1つ取り除いてそのモンスターは除外します」
いかに後続の呼び出しに優れた【ドラグマ】デッキでもこれだけの人数総掛かりでは焼け石に水だった。まだトリニティとゲヘナが集結してからそう時間も経たずにアツコを守るモンスターは一掃されてしまった。
地上に潜伏していたアリウスの部隊はとっくに捕縛されてしまった。カタコンベから強襲する部隊は未だ地上に出られず。サオリとアズサはアツコから離れているし、ミサキとヒヨリはアツコのために加担して捕まっている。
今のアツコは孤独だった。
「もう、やめませんか?」
「ヒフミ……」
皆を代表するようにヒフミがアツコに語りかける。
「どうしてこんな悲しいことをするんですか? どうしてみんなが苦しくなることをするんですか? そんな暗くて憂鬱なお話、私は嫌なんです」
その場にいた誰もがヒフミの言葉に耳を傾けた。
戦力的にはそれほどでなくても彼女の言葉にはそうさせるだけの力があった。
ただ一人、アツコだけは歓喜に身を震わせてヒフミを見やった。
「それが真実で、この世界の本質だって言ってあげる。私は好きだよ」
「私が好きなのはそんなんじゃありません! 平凡で大した個性もない私ですが……自分が好きなものについては絶対に譲れません!」
「友情を裏切って苦難を押し付けて、努力は報われないで、辛いことを恨んで友達と憎しみ合って……」
「苦しいことがあっても……誰もが最後は、笑顔になれるような! そんなハッピーエンドが私は好きなんです!」
「サオリたちがなんて言おうと、何度だって言い続ける。私たちの書くお話は、大人が勝手に決めるの。だからこれで終わらせようよ。続けるなんて虚しいだけ」
ヒフミの宣言に対してアツコは小さく呟く。彼女が何を言っているか聞こえた者は幸か不幸か誰もいなかった。しかしアズサとスズミだけは薄々と察してしまい、悲痛な面持ちでアツコの名を呟いた。
「「私たちの物語……私たちの、青春の物語を」!!」
夜明けとともに、空が晴れ渡った。
先程地面を濡らしていた雨は止み、雲は消えた。
ただの気象の操作ではない。奇跡が起こったわけでもない。この現象は……、
"ここに宣言する"
「……! まさか……!」
"私たちが、新しいエデン条約機構"
この場にいる者が全員で手繰り寄せて起こした必然だった。
「まさか「シャーレ」が連邦生徒会長を代行するようエデン条約の解釈を捻じ曲げた? 条約の主体であるゲヘナ、トリニティが集まって、かつて古聖堂があった廃墟で……"先生"が楽園の名を冠する約束を、再現した……?」
とりわけ驚嘆したのはセイアだった。
まさかこのような「大人」のやり方で状況を打開してくるとはそれこそ文字通り夢にも思っていなかったから。
「ふ……ふふふ……、あっはははは!!」
そんな"先生"の宣言を受けたアツコは笑い出した。
アズサがこれまで見たことがなかったぐらいに、恐怖心を覚えるほどに。
他はぎょっとする者、気が触れたかと思う者と様々な反応。
しかし共通点はある。警戒に値すると誰もが身構えた。
「いい台詞ね。感動的だよ。でも残念、無意味」
アツコはリバースカードをオープンした。それを見た一同は驚き、ヒフミを初めとして半数近くが青ざめる。
「カウンター罠《神の通告》を発動。発動したエデン条約宣言を無効にして"先生"を破壊する!」
その完璧とも言えるカウンター攻撃がもたらすのは絶望。
ヒフミは頭が真っ白になり、歯が震えだし、身体から力が抜けていく。膝が崩れそうになるその身体を今度はアズサが抱えた。
「せ……"先生"っ!」
「誰かがカウンター罠を伏せてても無駄だよ。私のもう一枚の伏せカードは《神の宣告》だからその発動を無効に出来る」
「そ、そんな……!」
「どうもありがとう、"先生"。おかげで素敵なものを見れた」
"……っ"
アツコはこの場にあまりにも似つかわしくないほど丁寧に、そして丁寧にお辞儀をした。こんな状況においても彼女はサオリたちの言う姫そのもの。ベアトリーチェにナニカサレタ状態でもそれは不変……いや、一層際立っている。
「さあ、それじゃあ特に誰も何もしないようならカード効果の解決を……」
その時、不思議なことが起こった。
アツコが発動した筈の《神の通告》のソリッドビジョンが急速な勢いでテキスト、絵図、カード名が変化していったのだ。
《神の通告》はやがて《ドラグマ・エンカウンター》へと化した。
「は……?」
アツコは作戦開始してから初めて動揺した。
アツコは一体どういうことか全く理解できなかった。彼女は確かに《神の通告》を発動していたはずなのにカードが書き換わったのだ。
デュエルディスクの実物のカードを手にしたがこれも《ドラグマ・エンカウンター》へと変わっている。あまりに信じられない現象にアツコは《ドラグマ・エンカウンター》を地面に落とす。
「私はデッキからカウンター罠《ヌメロン・リライティング・トラップ》を発動していました」
その声を聞いたのは"先生"だけだった。
声の主は"先生"の持つシッテムの箱から発せられた、アロナのものだった。
普段の幼くも頑張る子どもの調子ではなく、真剣味を帯びていた。
「相手が罠カードを発動した時、その罠カードの発動と効果を無効にして発動。相手のデッキから罠カード1枚をランダムに相手フィールド上にセット、すぐに発動します。《神の通告》の効果を無効にしたのはコストですから、《神の宣告》でチェーンしても無効は止められません」
"《神の通告》を書き換えたんだね。アロナ、ありがとう"
「どういたしまして。"先生"、頑張ってください!」
ユスティナ聖徒会の複製は二つのエデン条約機構により戒律が意味を無くしつつあり、出現頻度はおろか顕現すら保てなくなくなってきた。有限となった亡霊のシスターたちでは脅威とはならない。
アツコのフィールドはセットカードも無くなり、手札も残り1枚。これが《凶導の葬列》だったとしても「ドラグマ」儀式モンスターではトリニティとゲヘナの布陣に敵うとは思えなかった。アツコにはもう1枚まだ召喚していない切り札があるが、《常闇の契約書》が封じている。アツコ自身は戦闘を得意としていない。
万策尽きた状況をアツコは見渡し、天を仰いだ。その拍子にフードが脱げて頭部や隠れていた目もとがあらわになった。澄み切った青空がとてもすがすがしく、肌を撫でるそよ風がとても優しく、照りつける太陽がとても温かい。
「あーあ。これだけはやりたくなかったんだけれどなぁ」
アツコは残った手札を発動した。
一同は身構えたものの、ソリッドビジョンで表示された魔法カードは《融合》だった。手札にもフィールドにもモンスターはいない状況下での発動に首を傾げる者も現れたが、次に起こった現象に度肝を抜かれる。
「私は私自身と残ったユスティナ聖徒会の複製全てを融合するよ」
「「「!!?」」」
なんと、ユスティナ聖徒会の複製がアツコへと集結していく。複製が次から次へと手を足を組んでいき、身体が折り重なっていく。やがてシスターの集合体は巨大な竜を形作り、アツコの背後に彼女と繋がった状態で出現した。
「融合召喚。《赫焉竜グランギニョル》」
邪竜と一体化した堕ちた聖女の誕生にアツコ自身が祝福した。
先生のエデン条約宣言に神宣のようなカウンター罠でカウンターしようとする展開はずっと考えてました。
ちなみに昨日のyoutubeでの5D's一挙放送は見ましたか? 自分は大満足です。
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