Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

6 / 195
Z-ONE、ワンショットキルする

 この場を支配する大型シンクロモンスター《魔王龍ベエルゼ》に残されたヴァルキューレの生徒達は明らかに飲み込まれた様子でした。焦りだす子、固まる子、様々な反応でしたが、大半が魔王龍ベエルゼを前に闘志が潰えたようでした。

 

「どどど、どうしよう……!?」

「ゲヘナの風紀委員長がいるだなんて聞いてないよぉ!」

「ままま待って待って! まだ慌てる時間じゃない! 大丈夫、挽回できる!」

 

 一人だけの例外は最上級生でしょうか。彼女は後輩達を叱咤し、バイクを加速させて前へと躍り出ます。

 

「《魔王龍ベエルゼ》の攻撃力は3,000! ならまだ勝ち目がある!」

 

 彼女は2体目の《ジュッテ・ナイト》を召喚し、まだフィールドに残っていた自分の《ゴヨウ・ガーディアン》にチューニングします。

 

「シンクロ召喚! 出会え、《ゴヨウ・キング》!」

 

 我々の世界でも《ゴヨウ・キング》を扱えるセキュリティは凄腕やベテランばかりでしたから、彼女がエース格なのでしょう。

 

「効果で攻撃力の上がった《ゴヨウ・キング》で《魔王龍ベエルゼ》を攻撃!」

 

 《ゴヨウ・キング》の攻撃を受けて《魔王龍ベエルゼ》は吹っ飛ばされたものの、魔王は破壊されませんでした。体勢を立て直して再び《ゴヨウ・キング》と対峙します。心做しかどことなくヒナに似ている《魔王龍ベエルゼ》の人の部分が笑みを浮かべたようでした。

 

「無駄。《魔王龍ベエルゼ》は戦闘・効果では破壊されない」

 

 愕然とするヴァルキューレの最上級生。

 冷たく追走者を見据えるヒナ。

 

 戦闘破壊出来ない相手に戦闘破壊でコントロール奪取するポリスモンスターは完全に無力。私の知る限りゴヨウを初めとするポリスモンスターでこの魔王龍を真正面から突破するのは不可能ですね。

 

「だけど戦闘ダメージは受けてもらう!」

「むしろ好都合。《魔王龍ベエルゼ》は戦闘ダメージ分攻撃力をアップする」

「なにっ!?」

「《ゴヨウ・キング》には魔王の贄になってもらう。《魔王龍ベエルゼ》で攻撃」

 

 《ゴヨウ・キング》が例え相手のターンでも攻撃力をアップする能力だったとしても《魔王龍ベエルゼ》の自爆特攻で一方的に破壊されるだけ。勝ち目などなく、ヴァルキューレ生の切り札は魔王の胃の中に消えていきました。

 

 決闘ではないリアルソリッドビジョンの影響で最上級生のバイクも制御を失って失速。みるみるうちにその姿が遠くなっていきます。

 

「も、もう駄目だぁ、おしまいだぁ……!」

「泣き事言ってないで早く応援を呼んで! デュエルじゃないんだからみんなで一斉にかかればまだ勝機はあるから!」

「は、はいっ!」

 

 顔を引き攣らせたヴァルキューレの生徒達はここで諦めるかと思いきや、インターチェンジから続々とヴァルキューレ生が加勢してきます。そして共にゴヨウシンクロモンスターを召喚。数の暴力に訴えてきますか。

 

「はぁ……めんどうくさい。どうする先生? 【DD】は大量展開に秀でてるからこのままちまちまと削ってもいいけれど」

「あまり時間がかかるのも問題ですね。少し強引な手に出ますか」

「同時攻撃可能なモンスターでも召喚するの?」

「こうします」

 

 私はデュエルディスクを操作しました。具体的にはとある申請をしたのです。

 

 するとどうしたことでしょうか。ハイウェイの追い越し車線と走行車線の間に壁が生え出します。一般乗用車は慌てて走行車線へと逃げ、我々の前にはただひたすら道が伸びているだけとなりました。

 

「おい」

 

 圧倒されるばかりのヴァルキューレ生に向けて私は密かに言ってみたかった言葉を発したのです。

 

「デュエルしろよ」

 

 

 ◇◇◇

 

 

『デュエルが開始されます。デュエルが開始されます。ルート上の一般車両はただちに退避してください。繰り返します……』

 

 まっすぐに伸びるハイウェイ上にデュエルレーンが構築されていくにつれてヴァルキューレの生徒達は慌てふためきました。人数だけなら有利な立場にいるにも関わらずこの反応。どうやらキヴォトスではライディングデュエルは一般的ではないようですね。

 

「デュエルって、まさかライディングデュエル!?」

「どどど、どうしよう!? あたし普通の白バイなんだけど!?」

「問題ありません。私の方が貴女達に速度を合わせましょう」

 

 私の提案にヴァルキューレ生は頭にきたのか、「やってやろうじゃん!」と口々に発しながら腕に付けたデュエルディスクをハンドルに固定。アクセルを吹かしてこちらへと追いすがってきます。

 

「デュエ――」

「ライディングデュエル、アクセラレーション!」

 

 私は《スピード・ワールド2》をフィールド魔法ゾーンにセットしようとし、ヴァルキューレ生達が普通に手札5枚をドローしているようでした。どうやらキヴォトスでのライディングデュエルは通常のデュエルと同じように進行させるようですね。

 

 私もまたデュエルディスクにセットした山札からカードを5枚ドローして……一瞬自分の目を疑ってしまいました。

 

 本来の私のデッキは【時械神】。キヴォトスに来てからそれぞれの時械神のテキストが書き換わっているのは確認しましたが、デッキ構築自体はさほどいじっていません。なので一枚は《時械神》カードを引けるかと思っていたのですが……。

 

「《スピード・ウォリアー》? 《調律》?」

 

 明らかに私のデッキではない、というより【シンクロン】デッキの主軸となるカードではありませんか。

 まさかこのデッキは不動遊星の……むしろかつて私自身が不動遊星として使っていたデッキなのですか?

 

 結局誰一人として救えず、絶望のあまりにあのカードを握り潰して以降は使っていませんでしたが、まさかキヴォトスで再び手にすることになるとは。

 私を召喚したエラーの差し金か、それとも時械神または赤き竜の導きか……。

 

「陸橋を先にくぐったので私が先攻を貰います。ドロ……」

「先生。キヴォトスでは先攻ドローは廃止になってる」

「……。そうでしたか」

 

 ヴァルキューレ生のフィールドには既に《ゴヨウ・ガーディアン》がいます。モンスター同士でヒナと戦っていたので伏せカードは無し。これならいくらでも展開出来そうですが、さすがに抑え気味にしますか。

 

「手札から《調律》を発動。デッキから《クイック・シンクロン》をサーチしてデッキから一番上のカードを一枚墓地に送ります。手札から《レベル・スティーラー》を墓地に送って《クイック・シンクロン》を特殊召喚」

「先生。キヴォトスでは《レベル・スティーラー》は禁止カード」

「デュエルディスクが警告を発しないので問題は無いでしょう」

 

 デュエルディスクが開発された武藤遊戯の時代には既に不正防止機能があり、例えばデッキ以外のカードを使おうとすると警告音を発します。今回は墓地に《レベル・スティーラー》を送ってもきちんと処理されました。コメントしたヒナは若干呆れた様子ですが良しとします。

 

「墓地の《レベル・スティーラー》の効果を発動。《クイック・シンクロン》のレベルを1つ下げ、《レベル・スティーラー》を特殊召喚します」

 

 ちなみにシンクロ召喚を主体にするデッキでは回転率が高いのですが、トランプゲームのソリティアをやっているようだと揶揄されることもあります。そういえばミレニアムでは「不動性ソリティア理論」なる講義まであるそうですが。

 

「墓地に送られた《ボルト・ヘッジホッグ》の効果を発動して特殊召喚。《スピード・ウォリアー》を通常召喚」

「先攻1ターン目から!?」

「レベル1の《レベル・スティーラー》にレベル4になった《クイック・シンクロン》をチューニング」

 

 ソリッドビジョンの《クイック・シンクロン》の前にシンクロンのチューナーモンスターカードが回転し、《クイック・シンクロン》が《ジャンク・シンクロン》を射抜きました。

 

「集いし星が新たな力を呼び起こす。光さす道となれ!」

 

 《クイック・シンクロン》が4つのリングとなり、《レベル・スティーラー》が1つの星となり、それらが収束して同調、光を放ちます。

 

「シンクロ召喚! いでよ、《ジャンク・ウォリアー》!」

 

 現れたのは不動遊星の代名詞的シンクロモンスター。召喚された《ジャンク・ウォリアー》は脚を大きく開き、右の拳を前に突き出しました。もはやどれほど久しい召喚でしょうね。とても感慨深いものがあります。

 

「《ジャンク・ウォリアー》はシンクロ召喚時に自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分攻撃力がアップする。パワー・オブ・フェローズ」

「ひいいっ、攻撃力が《ゴヨウ・ガーディアン》を上回った!」

「更に手札から速攻魔法《スクラップ・フィスト》を発動。このターン、《ジャンク・ウォリアー》が与える戦闘ダメージは倍になります」

「生徒相手に大人げないんじゃない……?」

 

 ヴァルキューレの生徒の驚愕とヒナのツッコミは気にしないことにして、バトルフェイズに移りますか。積み込んだのではないかと思うぐらいに手札が充実していましたから、せっかくなのでこのターンで決めさせてもらいましょう。

 

「バトル。《ジャンク・ウォリアー》で《ゴヨウ・ガーディアン》を攻撃」

「む、迎え撃て《ゴヨウ・ガーディアン》!」

「ダメージ計算時、最後の手札の《ラッシュ・ウォリアー》を墓地に送って効果発動。《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力をダメージ計算時に倍にします」

「はああっ!?」

「スクラップ・フィストぉ!」

 

 《ジャンク・ウォリアー》が一回転しながら突撃、《ゴヨウ・ガーディアン》の十手を弾きながらその身体に拳を突き立てます。爆発四散する《ゴヨウ・ガーディアン》、ヴァルキューレ生はその爆風に飲み込まれます。

 

 キヴォトスではライフは8,000だそうですが、ワンショットキルですね。

 

「うわああっ!?」

 

 勝負が決して対戦相手のヴァルキューレ生は急減速し、姿が小さくなりました。

 残った追走者達は1ターンも保たなかった決闘の結果に戦慄したようです。

 私はフィールドと墓地のカードを回収してデッキに戻しました。カードがデュエルディスクによって自動的にシャッフルされます。

 

「さて、次はどなたが来ますか?」

 

 どうやら私もまだまだこのデッキでやれるようですね。




本概念ではキヴォトスの日常でデュエルはあまり起こりません。遊戯王DMでもあったようにリアルファイトのためにモンスターを召喚して戦わせるor一緒に戦うケースが大多数を占めるからです。

◇Z-ONE
デッキは【遊星】。
エースモンスターは《スターダスト・ドラゴン》と《ジャンク・ウォリアー》。
切り札は《シューティング・スター・ドラゴン》と……。

ご意見、ご感想お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。