Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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"先生"、ZEXAL化する

 ◆三人称視点◆

 

 ゲマトリアとは、観察者であり、探求者であり、研究者である。

 

 構成員はいずれもキヴォトス外部の者、しかし"先生"やZ-ONEとはまた違った領域の存在であり、構成員同士もまた違った領域の存在だ。各々でキヴォトスを解釈する方法もまた違っている。

 

 アビドスで接触した黒服、ペロロジラの件で接触したゴルコンダについては"先生"は認識している。この他にも数名いると思われ、そのうちの一人は今まさに対処中のアリウスで領域を獲得したベアトリーチェではないかと当たりをつけている。

 

 アリウスがゲヘナのマコトを唆してエデン条約調印式の会場を古聖堂に指定させたのは戒律を守護せし者、ユスティナ聖徒会を複製するためだが、それはゲマトリアの一人、マエストロがベアトリーチェに協力したことで実現した。

 

 マエストロは芸術を理解しないアリウスの生徒たちに何ら興味は無いし、ただしアツコをベアトリーチェの作品とみなすのなら一定の評価をしてもいい、彼ら究極の目的である「崇高」に至るための実験に過ぎない。

 

 そんなマエストロの興味は"先生"へと向けていた。彼なら自分の「崇高」を理解できるに違いない、と確信して。それを確認、相手を観察、そして自分の芸術を理解してもらうには作品を見せなければ失礼に値する。

 

 ゆえに、マエストロはそんな衝動をもって、"先生"への挨拶の準備をした。

 そんな些か過激な挨拶に対し、"先生"も大人のカードという名刺で挨拶を返す。

 大人のカード。人生を、時間を代価として得られる力はその源、限界共にゲマトリアでも把握できていない。

 

 では、時間を代価として得られる力とは何か? 最適な未来の前借りだろうか? それとも最適な未来へと導く因果律の操作か? それともいずれ結ぶだろう絆を今に顕現させることか?

 

「そんなのは彼女の力の一端に過ぎない」

 

 マエストロの作品、ヒエロニムスがカタコンベを通ってアリウスへ向かおうと"先生"たちに立ちはだかる。子どもの生徒では対処しようもない脅威を前に、"先生"は大人のカードを取り出した。

 

 そんな光景を観劇するのは、Z-ONEをキヴォトスに招いたエラーを名乗る者。彼女は最初にZ-ONEに見せた、そしてアロナがアツコへのカウンターのために密かに発動していたフィールド魔法カードを手にしている。

 

「天地創造されてからの全ての事象、想念、感情が記録されているという世界の設計図。万物の根源。アカシックレコード。呼び方は色々とあるけれど、大人のカードの力とはそんな森羅万象にアクセスして自由に書き換えられるものだもの」

 

 大人のカードの正体は世界の全てを作り出した1枚のカード、世界の過去と現在と未来の全てが刻まれた《ヌメロン・コード》の力の一端だ。丁度エラーが視界の端で眺めるフィールド魔法《ヌメロン・ネットワーク》と同等の領域の力を持つ。

 

 なぜエラーを名乗る者がヌメロンの力を所持しているのか。アロナがヌメロンの力を行使できる理由は何か。エラーが彼女と呼ぶ存在は何者か。そんな疑問を投げかける者はこの場にはいない。エラーがいる事自体誰も気づいていないのだから。

 

 そんな万能の力を行使する代価をただの人である"先生"は払わなくてはいけない。アビドスで黒服が"先生"を止めたのもそのため。連邦生徒会長が"先生"にこれを支給したのは、それほど今後キヴォトスで巻き起こる事件の解決が困難だと見越してだろうか。

 

「今の生徒では手に負えない相手に対してシャーレの先生が未来の生徒を呼び出す?  ううん、彼女が選んだ"先生"がそんな危ない真似を生徒にさせるわけがない。子どもが困った問題は大人の先生が解決しなきゃ」

 

 そうですよね、"先生"? と語りかけたエラーの言葉にはどこか期待が込められていた。頭部の後ろでわずかな間だけヘイローを出現させながら。

 

 

 ◆◆◆

 

 

「これは……まさか"太古の教義"?」

「これは、レベルが違う……」

「せ、先生。これは……マズい、逃げないと……!」

"……どうやら、反則みたいだね。出さないで終わらせたかったけれど……"

 

 ヒエロニムスと対峙した"先生"は大人のカードを取り出した。

 そして"先生"はそれをDパッドにセットする。

 

"私はフィールド魔法《大人のカード》を発動"

 

 大人のカードは一見するとただのクレジットカードにしか見えない。当然そんなものをデュエルディスクにセットしたところでデュエルディスクは認識しない。それどころかエラーを警告するだろう。

 

 しかし大人のカードはデュエルディスクが認識した。ソリッドビジョンでも魔法カードの効果が発動された投影がされたが、そこにはフィールド魔法《ヌメロン・コード》とカード名が記載され、テキスト欄には何も記されていなかった。

 

"いくよ、アロナ"

「はい、先生!」

 

 "先生"の言葉は一体誰に向けられたものか。

 傍にいた生徒が首をかしげた直後だった。

 その場にいた者たち全員はとんでもない現象を目の当たりにする。

 

"私は……私自身とアロナでオーバーレイネットワークを構築!"

 

 なんと"先生"自身がモンスターエクシーズをエクシーズ召喚する時のように異次元への穴へと光になって吸い込まれていったのだ。その際、"先生"が所持していたシッテムの箱ももう一つの光となって渦へと飛んでいった。

 

"遠き2つの魂が交わる時"

「語り継がれた力が現れます!」

"「エクシーズチェンジ、ZEXAL!」"

 

 そして薄暗いカタコンベの中、太陽と見間違うほど強烈な光が発生し、その中心から現れたのはこれまでどの生徒も目撃したことのない、未知の衣装を身にまとい、髪や瞳の色が変化した"先生"だった。

 

「どういう……ことだ? まさか"先生"はタブレットの中にいた何者かと合体し、「崇高」に至ったというのか?」

 

 これには観劇していたマエストロも驚嘆し、そして歓喜に打ち震えた。

 それほどの現象をもって自分の作品と向き合ってくれたことに感謝を。

 ならばこちらも礼儀を尽くさねば無作法というもの。

 

 マエストロの意志に呼応するようにヒエロニムスが動き出す。

 それを受けて"先生"は手札となる5枚のカードをデッキから引くべく、デッキに手をおいた。

 

"「最強のデュエリストのデュエルは全て必然。ドローカードさえもデュエリストが創造する!」"

 

 ヒナは目の錯覚かと思って目を擦ったが、やはり目にする現象は変わらない。

 "先生"のデッキ、そして"先生"の手が光り輝いている。

 

"「シャイニング・ドロー!」"

 

 ドローの瞬間の様子はまるで流星が流れたようだった、と後にヒナは語った。

 

"「私は《ゴゴゴゴブリンドバーグ》を召喚して効果発動。デッキから《ゴゴゴギガース》を特殊召喚。そしてレベル4の《ゴゴゴゴブリンドバーグ》と《ゴゴゴギガース》でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろNo.39! 光の使者《希望皇ホープ》!」"

 

 2体のモンスターが異次元の渦の中へと消えていき、「No.」特有のニュートラル体が出現。すぐさま展開されて一体の戦士が召喚される。攻撃力は上級モンスター相当の2,500でしかないが、生徒一同は何よりも頼もしく感じた。

 

"「そして私は《希望皇ホープ》でオーバーレイネットワークを再構築!」"

「何……!? 「RUM」無しにランクアップだと……!?」

"「宇宙の秩序乱されしとき、混沌を照らす一筋の希望が降臨する! シャイニング・エクシーズチェンジ!」"

 

 《希望皇ホープ》が光に包まれたかと思うとその形態を進化させていく。

 より雄々しく、よりスタイリッシュに。

 

"「見参、SNo.39! 《希望皇ホープONE》!」"

「そうか"先生"、それが"先生"の境地か。しかしいかに新たなホープが強力であってもヒエロニムスは聖徒会の複製を出現させる戒律を所持している。無限に湧く壁を前にどう攻撃を届かせる?」

"「《希望皇ホープONE》の効果を発動! オーバーレイユニットを全て消費して私のライフを1にする代わりに相手モンスターを全て除外する! パンドラーズ・フォース!」"

「何!? しかし……」

 

 《ホープONE》が全身で発光し始め、集まった光を両手へと収束させていく。そして光を迸らせたかと思ったら、湧き上がったユスティナ聖徒会の複製が次から次へと消失していった。何なら今まさに出現しようとした瞬間の個体まで。

 

 全てを浄化するほどの強烈な光だったが、光が収まった先には何も残っていない、かと思われたが、ヒエロニムスだけは一切の影響も受けておらず健在。これにはセイアも驚きの声を上げる。

 

「ヒエロニムスは効果では破壊・除外されない。更にフィールドに居る限り効果ダメージを無効にする。"先生"、ヒエロニムスは戦闘で倒すしかないぞ」

"「なら、私は《RUM-シャイニング・フォース》を発動! フィールドにいるSNo.をランクアップさせる!」"

「何!? ここから新たなランクアップマジックだと……!」

"「一粒の希望よ! 今電光石火の雷となって闇から飛び立て! シャイニング・エクシーズ・チェンジ!」"

 

 再び《ホープONE》の身体が光り輝いたかと思うと、カタコンベの中で雷が発生。轟音が壁や天井に反響して鳴り響く。そして雷が落ちた中心に光の柱がのぼり、新たな光の戦士が誕生した。

 

"「現れろ、SNo.39! 《希望皇ホープ・ザ・ライトニング》!」"

 

 太陽のごときその戦士の存在感は先程の《ホープONE》と引けを取らない。その鋭き双眸がヒエロニムスを睨みつける。

 

「だがヒエロニムスの攻撃力はデュエルモンスターズでの4,000相当。普通に考えればホープでは敵わないのだが……そうではないのだろう?」

"「シャイニング・エクシーズ・チェンジして《ホープONE》をオーバーレイユニットにしている《ホープ・ザ・ライトニング》の攻撃力は自分のランク×1,000になる!」"

「攻撃力5,000だと!?」

 

 カードテキスト外効果により攻撃力を上昇させた《ホープ・ザ・ライトニング》は両手に持つ双剣を振り上げる。ヒエロニムスが妨害しようと攻撃を繰り出すが光の戦士はびくともしない。

 

"「行け! 《ホープ・ザ・ライトニング》で攻撃! ホープ剣ライトニング・スラッシュ!」"

 

 巨大な稲光とともに《ホープ・ザ・ライトニング》が二振りの剣を振り下ろした。ヒエロニムスが両断される。脱力したその身体が光の粒子となって消えていく。それはカタコンベという薄暗い環境なのもあってか、天に召されるかのようだった。

 

「……。心から感謝しよう"先生"。不完全な姿でお見せしてしまったことは汗顔の至りだが、すぐに完成させてみせる。では"先生"。そなたにまた会える時を、心待ちにしている」

 

 マエストロは"先生"とヒエロニムスとの決闘の決着を見届け、姿を消した。

 

 

 ◆◆◆

 

 

「ZEXAL……"先生"が大人のカードを使って初めてヌメロンの力を行使出来るようになる奇跡……。アロナがちょっと負担を請け負っててもキツさは半端じゃない筈なのに」

 

 エラーは生徒と喜び合う"先生"を眺め、踵を返した。

 

「私自身で色々とやっちゃいたいけれど、我慢我慢。それが彼女との決闘の条件だものね。先生が生徒と頑張って青春の物語を綴っていくのがいいんでしょう?」

 

 エラーの姿が闇へと消えていく。

 

「頑張ってまた私に絶望を献上してね。今は……アロナ、だったっけ?」

 

 そして、初めから誰もいなかったかのようにその場所は無人となった。




《大人のカード》
フィールド魔法
このカード名はルール上「ヌメロン・コード」として扱う。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、
(3)(4)の効果はデュエル中に1度しか使用できない。
(1):自分メインフェイズに、
発動条件を満たしている「ヌメロン」または「ゼアル」魔法カード1枚をデッキから墓地へ送って発動できる。
この効果は、その魔法カード発動時の効果と同じになる。
(2):自分メインフェイズに、
フィールド魔法カード1枚をデッキから墓地へ送って発動できる。
このカードはエンドフェイズまで、そのフィールド魔法カードと同じ効果を得る。
(3):自分メインフェイズにLPを半分払って発動できる。
「連邦捜査部 S.C.H.A.L.E」のカード名が記されたモンスターをデッキ・手札から可能な限り自分フィールドに特殊召喚する。
(4):戦闘ダメージによって自分のライフが0になる場合、その戦闘ダメージを0にし、ライフポイントを1にして発動できる。このターン戦闘破壊された自分のモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターが自分フィールドに存在する場合、ライフポイントは1のままとなり、自分フィールドから離れた場合、自分はデュエルに敗北する。

《ヒエロニムス》
儀式・効果モンスター
星10/光属性/天使族/攻4,000/守3,000
「太古の教義の儀式」により降臨
このカードは「太古の教義の儀式」の効果でしか儀式召喚できない。
(1):このカードはカードの効果では破壊・除外されない。
(2):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、
相手から受ける効果ダメージは0になる。
(3):1ターンに1度、メインフェイズ2に発動できる。
自分フィールドに「聖徒会複製トークン」(アンデット族・闇・星4・攻1600/守0)を可能な限り攻撃表示で特殊召喚する。
(4):このカードがモンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。
このカードにウルガータカウンターを1つ置く(最大1つまで)。
(5):自分・相手ターンに1度、自分のウルガータカウンターを全て取り除いて発動できる。
相手フィールドの全ての攻撃表示モンスターの攻撃力・守備力をターン終了時まで0にする。
このターン相手が受ける戦闘ダメージは0になる。

これでエデン条約編3章相当が終わりました。あとは4章を突っ走るだけです。
先生とアロナでZEXALになる展開はZ-ONEと先生を両方出すことにした際にひらめきました。これでプレ先との戦いも構想練れました。

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