◆三人称視点◆
無限に発生するユスティナ聖徒会の複製。
温泉開発部は前回の防衛戦と同じく特殊召喚を起点にバーンダメージが発生するようにコンボを組んで自動的に撃破出来るようにした。
SRTは粛々と迫りくる敵を排除していく。理性の無い現象でしかない聖徒会の複製に戦術面で勝るSRTの防衛を突破するどころか揺るがすことすら叶わなかった。
大聖堂にてアンブロジウス等と対峙するアル達はというと、
「灼熱の鎧を身にまとい、アウトローここに降臨よ! 出なさい! 《レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター》!」
アルはシンクロ召喚した《レッド・デーモンズ・ドラゴン》に対して罠カード《バスター・モード》を発動。ドラゴンとしての趣は残しつつも新たにマッシブになった《レッド・デーモン》を特殊召喚する。
「《レモン/バスター》が相手を攻撃したダメージ計算後に発動、フィールドの他のモンスターを全部破壊するわ! クリムゾン・ジ・エンド!」
そしてたった一体の聖徒会複製を倒したと同時に《レッド・デーモン》が吐き出す灼熱の業火に焼かれて他の複製は消失していった。次から次へと発生する複製も同じように一体倒すだけで一掃出来るため、楽に処理出来ている。
なお、《レッド・デーモン》の効果は自分のフィールドにも及ぶ場合が多い。なのでアルが《レッド・デーモン》に効果を発動させる度にイチカたちのモンスターも破壊対象になるのだが……、
「《M・HEROヴェイパー》はカードの効果で破壊されないっすから、じゃんじゃんやってくれちゃっていいっすよ」
正義実現委員会委員は全員《マスク・チェンジ・セカンド》と《フォーム・チェンジ》のコンボで、効果破壊耐性のある《M・HEROヴェイパー》を変身融合して複製を倒し回っている。臨機応変な立ち回りが可能なもの「HERO」の特徴だ。
一方、便利屋68の社員たちは《レッド・デーモン》を使役するアルに複製を近づけさせないよう立ち回っている。勿論自分たちのモンスターもアルの《レッド・デーモン》の巻き添えを喰らわないよう対策は怠っていない。
「効果破壊耐性を持つ《デーモンの降臨》は破壊されません。そのまま攻撃します……消えてください消えてください消えてください!」
「私の《滅亡き闇ヴェイドス》も効果破壊されないよ!」
「破壊されたペンデュラムモンスターは表側表示でエクストラデッキに行くから。ペンデュラム召喚。また出番だよ、《魔界劇団-ビッグ・スター》」
このように終始に渡ってアルやイチカたちが優勢のまま戦闘は進んでいった。
◆◆◆
ミカとバルバラの戦闘は拮抗していた。
単体の戦闘能力ではミカの方が上回っていたが、ユスティナ生徒会の複製が的確にミカを妨害する。どうやら同じ複製でもバルバラは特別なようで、他のシスターたちとの巧みな連携攻撃がミカを襲う。
対するミカは最初は《天穹覇龍ドラゴアセンション》を高速召喚して一気に薙ぎ払おうとしたが、下級モンスターを召喚した途端にシスターの一斉射撃で潰されてしまう。なら、とバルバラに一点集中の攻撃を仕掛けると、なんとシスターがバルバラを庇って被弾する有り様。
敵は体力も動員数も無尽蔵。一方ミカは単独かつ体力や残弾数にも限りがある。互角なようだがミカの方が徐々に追い込まれているように見えるだろう。
しかし当のミカ本人は全く焦る様子がなかった。
「《天輪の魔道士》が破壊されたことで1枚ドローするね。これで墓地に《天輪の魔道士》は3体……そろそろ動こっか。私はレベル1《天輪の葬送士》を召喚して効果発動、蘇らせたレベル1チューナーモンスター《天輪の剣士》でチューニング。シンクロ召喚、《天輪の調律士》。罠カード《天輪増札》の効果で1枚ドロー」
ミカは相手側の攻撃が和らいだことを受けて素早くシンクロ召喚へと繋げた。現れた天使族シンクロモンスターが効果を発動すると、シスターやバルバラが銃の引き金を引こうとする指が動かなくなる。
「無駄だよ。《天輪の調律士》がフィールドに存在する限り、シンクロモンスター以外のモンスターは攻撃出来ないからね。私自身も無理だけれど」
ミカはいたずらしたように笑ってみせた。対するバルバラはその場から大きく飛び退く。やや遠くまで距離を置くと重火器の銃口を《天輪の調律士》へと向ける。《天輪の調律士》の効果範囲外に逃れて攻撃するつもりのようだった。
ミカはその間《天輪の葬送士》を召喚して再び《天輪の剣士》を墓地から釣り上げた。そして《天輪の調律士》が破壊された直後、2体でシンクロ召喚を行い、《天輪の双星道士》をフィールドに出現させる。
「《天輪の双星道士》の効果を発動して《天輪の魔道士》3体と《天輪の調律士》を特殊召喚するね。そしてレベル2天使族モンスター4体にレベル2シンクロチューナー《天輪の双星道士》をチューニング! 天、運命、事象の理! 巡る天輪に乗せ此処に結実しなよ! シンクロ召喚! 《天穹覇龍ドラゴアセンション》!」
そしてミカのエースモンスターである光の龍が降臨する。そして《ドラゴアセンション》が光り輝いたかと思ったら、光を浴びたシスターたちが次々と消滅していった。「アルティメット・アセンディング・ウェーブ!」と高らかに技名を宣言したミカはどこか楽しそうだった。
バルバラは他のシスターたちと共に新たに出現した大型シンクロモンスターに攻撃を集中。デュエルではない戦いでは攻撃力が低いモンスターでも高いモンスターを傷つけること自体は可能なため、数の暴力によって《ドラゴアセンション》を仕留めることに成功する。
しかし、《ドラゴアセンション》が昇天した直後、天よりシンクロ素材となった《天輪の双星道士》ら5体のモンスターが出現した。バルバラたちが当惑する間などなく、再び《天輪の双星道士》たちはシンクロの星と輪へと変化した。
「ヘブン・リンカーネーション。《ドラゴアセンション》は破壊されたらシンクロ素材をフィールドに残してエクストラデッキに帰還する。つまり、こういうこと☆」
《天穹覇龍ドラゴアセンション》、再臨。
バルバラがカードテキストを読めていたら《ドラゴアセンション》に不死身の効果は備わっておらず、ミカが神秘を引き出していると分かっただろう。輪廻から筈れない限り《ドラゴアセンション》は死なず、更に復活する度に《天輪増札》の効果で1枚手札が増えて攻撃力を増していく。
「複製がデュエルモンスターズまで出来てたら全然違ったんだろうなぁ。カードの枚数だけ戦術があるデュエルモンスターズにかかれば無限湧きする敵ってそこまで脅威じゃないんだよね」
光の龍が強くなる度にバルバラたちが一方的にやられるようになっていく。もはや複製が再び顕現するよりも《ドラゴアセンション》が光の彼方に消し飛ばす方が早くなっていき、やがてバルバラを守るシスターたちはいなくなった。
バルバラが決死の覚悟で《ドラゴアセンション》を破壊し、シンクロ素材が5体蘇る。《ドラゴアセンション》を再召喚する前にミカを仕留めることに望みをかけたバルバラだったが、ミカ本人の銃口が自分へと向けられていると気づいた時には遅かった。
「あなた達のために……祈るね」
ミカの放った連撃はバルバラを穿つ。実体を維持しきれなくなったバルバラは銃火器を取り落とし、膝を付いた。しかし彼女もまた聖徒会の複製であるからして、時間を置けば再び出現してミカとの戦いに挑むだろう。
だからミカはバルバラへのとどめを自分でも《ドラゴアセンション》でもなく、これまでナギサにしか見せたことのなかった奥の手で刺すことにした。ミカは再びレベル2のモンスター5体でシンクロ召喚を行ったが……、
「集いし祈りが迷える魂を救済して星となる。光さす道になれ! シンクロ召喚!」
現れたシンクロモンスターは黄金の巨人だった。神秘的な空気を纏う全身は星屑を散りばめたように光り輝く。その面持ちは怒っているようにも微笑んでいるようにも見えた。きっと目にする者によって感じ取る印象は異なるだろう超越者だった。
「光来せよ、《スターダスト・ディヴィニティ》!」
ミカによって召喚された《スターダスト・ディヴィニティ》がバルバラに向けて手のひらをかざすと、光の粒子がバルバラやシスターたちへと降り注がれる。光の粒子を浴びたシスターたちは同じ光の粒子へと変わって天へと昇っていく。
「《スターダスト・ディヴィニティ》の効果を発動するね。このカードの直接攻撃で相手のライフを0にした場合、マッチに勝利する」
マッチキルモンスター。キヴォトスでのデュエルは公式大会を含めてほぼシングル戦で占められており、その重要性と影響力は限りなく低い。大会の景品として贈呈されるような記念品として主に扱われている。
しかし、実戦でそのモンスターの神秘を引き出せるなら話は別だ。何故ならデュエルではなくマッチで勝利する効果は、すなわち相手からの再戦を封じる効果となる。バルバラは蘇ってもミカにはもう指一本触れられなくなるのだ。
それは、意志なき兵隊としての命令からの解放でもある。
「うん……そうだね……。今度はお友達として会いたいな」
最後のバルバラが消え、再びユスティナ聖徒会の複製が現れることはなかった。
◆◆◆
ルルワリリスとZ-ONEの戦いは、Z-ONEの方が追い込まれていた。
理由は単純で、デュエルではない決闘ではZ-ONE本人が狙われやすいからだ。
もちろん不動遊星へと己を改造したZ-ONEは不動遊星の身体能力と技術を会得している。サテライトでのリアルファイトやバイクの乗り回しなども含めて一般的な不良程度は寄せ付けない実力を持っている。
しかしそれが騎士に通用するかは全く別の話。Dホイールでのバイクアクションでルルワリリスの攻勢をしのぎつつ《ジャンク・ウォリアー》で反撃を仕掛ける。そんな戦いが続けられた。
「《くず鉄のかかし》! 攻撃を無効にして再セットします」
それでもルルワリリスの剣がZ-ONEへと振り下ろされようとする時は防御札で危機を脱する。Z-ONEは別のシンクロモンスターを召喚しようとも試みたが、下級モンスターは召喚した瞬間にルルワリリスに一刀両断されてしまう。
それと、Z-ONEはルルワリリスを敵として処理することにためらいが生じていた。
(なんでしょうか。このルルワリリスから感じられる念は……。悲しみ? 嘆き? 一体何に対しての? 彼女がベアトリーチェの戦闘マシーンではないのは間違いなさそうですが、彼女の意図が掴めませんね)
そもそもベアトリーチェが語ったルルワリリスの正体も気になっている。先程の説明が正しいなら目の前の彼女はアリウス分校の生徒会長を務めた一族の集合体。しかしユスティナ聖徒会のような複製ではないように見受けられた。
だとしたらベアトリーチェが接触していた約十年前にはまだ生きていた生徒会長の一族を素体として作り出したのだろうか? Z-ONEの世界における魂(バー)と精霊(カー)の概念がキヴォトスにもあるとすれば、どことなくアツコに似たこのルルワリリスは……。
「私はルルワリリスの攻撃を《ジャンク・ウォリアー》で受け止め、罠カード《シンクロ・スピリッツ》を発動。墓地の《ジャンク・ウォリアー》をゲームから除外して《ジャンク・シンクロン》と《シールド・ウィング》を特殊召喚します」
Z-ONEはあえてルルワリリスの攻撃を《ジャンク・ウォリアー》で防ぎつつシンクロ素材となった2体のモンスターをフィールドに特殊召喚する。しかしZ-ONEの目的は壁の数を増やすことではなく、フィールドからも墓地からもシンクロモンスターをなくすことだった。
「これにより発動条件は整いました。私は速攻魔法《シンクロ・コントロール》を発動! ライフポイントを1000払い、シンクロモンスター《赫聖の妖騎士》のコントロールを得る!」
「何ですって!? そんな真似をさせるものですか……!」
「隙ありだマダム! 《RR-レヴォリューション・ファルコン》で攻撃する! レヴォリューショナル・エアレイド!」
「ぐっ……!」
ただならぬ予感がしたベアトリーチェがZ-ONEを阻もうとするも、彼女は異形へと変わった姿にはまだ慣れていないようでカードのプレイングももたついている。そのため汎用防御札を発動しようとする隙を狙ってサオリが攻勢を強めた。
Z-ONEはコントロール奪取カードの発動を妨害されず、ルルワリリスは攻撃を止めた。しかし当のルルワリリスはむしろ正気を取り戻したような真剣な面持ちで、そして救いを求める悲しみに満ちた視線をZ-ONEに向けた。
Z-ONEはルルワリリスの目から思考を読み取ろうと試みる。彼女が自分に攻撃を命じてほしいのは明白。チャンスはコントロール奪取している1ターンのみ。望みはベアトリーチェへの強襲か……いや、おそらく違う。
「では、《赫聖の妖騎士》でアツコを拘束する磔台を攻撃します」
ルルワリリスとなった彼女が望むのは……血縁者の救出だ。
ルルワリリスの大剣がアツコを束縛する茨や柱から解放した。
◇鬼方カヨコ
使用デッキは【魔界劇団】
エースモンスターは《魔界劇団-ビッグ・スター》
切り札は《魔界劇団-デビル・ヒール》
◇浅黄ムツキ
使用デッキは【灰滅】
エースモンスターは《灰滅せし都の英雄》
切り札は《滅亡き闇ヴェイドス》
◇伊草ハルカ
使用デッキは【デーモンの召喚】
エースモンスターは《デーモンの召喚》
他3体の《デーモンの召喚》派生カードを使いこなす
ご意見、ご感想お待ちしています。