Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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サオリ、宿命に決着をつける

 ◆三人称視点◆

 

「アツコは取り戻したぞ。マダム、大人しくサレンダーしたらどうだ?」

「子どもの分際で生意気な……!」

 

 サオリ一人程度なら容易く処理できるだろうと考えていたベアトリーチェだったが、計算外な点が2つあった。

 

 1つは想定以上にサオリが実力を上げていたこと。もしサオリがアリウス分校高等部に進学していればアリウススクワッドのリーダーは間違いなく彼女にしていただろう程度には評価していたが、まさか今の自分に追い縋れるほどに成長していたとは。

 

 もう1つは自分が考えていたほどには高位の存在になれていないこと。確かに儀式は時間をかけるほど高位へと昇り詰めていくものだが、しかし、たかがキヴォトスの生徒一人を相手に圧倒出来ないレベルなのはもどかしい。

 

 切り札だったバルバラは追い詰められてライフコストを肩代わりさせていたアツコは救出されてしまった。じきにミカとZ-ONEが加勢するのは明白。ここで手を打っておかなければ目論見が全て水の泡だ。

 

「ふっ。手駒が足りないというのなら増やすまでです」

「デスピアモンスターを召喚するつもりか?」

「当たらずとも遠からずですね」

 

 ベアトリーチェは虚空からカードを1枚発動した。デュエルディスクを介さないカードプレイング自体はゲマトリアが"先生"にけしかける異変たちも行ってきたのでさほど驚く行為ではなかったが……、

 

「儀式魔法《凶導の福音》を発動。対象は錠前サオリを選択」

「なにっ!?」

「さあ、貴女もロイヤルブラッドのように私の傀儡となりなさい!」

 

 「色彩」のステンドグラスの前に大きく広がった真っ黒な孔がサオリを見つめた。少なくともサオリにはそう感じられた。恐怖であり安堵であり希望であり絶望である、全ての感情が同時に襲いかかってきてぐちゃぐちゃだった。

 

 処理しきれない膨大な情報量に耐えきれなくなったサオリの意識は暗転した。

 

 夢か現か分からないが、サオリは終焉を目の当たりにした。

 

 雨が降りしきる崩壊したキヴォトスにて、1体の巨大な竜が暴れていた。巨大な竜は多数のドラゴンを従えてキヴォトス中を破壊し尽くす。その中にはサオリが見たことのあるドラゴンの姿もあった。

 

 トリニティのアズサが使う《覇王眷竜ダーク・リベリオン》。

 ミレニアムのネルが使う《覇王眷竜クリアウィング》。

 ゲヘナのハルナが使う《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》。

 そしてアビドスのホシノがたまに使う《覇王眷竜オッドアイズ》。

 

 巨大な竜の正体は確か《覇王龍ズァーク》。そんな滅びをもたらす存在の頭部から生える人の上半身。竜と一体化して虚ろな眼差しで崩壊するキヴォトスを見つめるその生徒は、サオリのよく知る人物だった。

 

「アズサ……!?」

 

 一体どうしてこうなった? 自分は、補習授業部のみんなは、先生たちはどこで何をしているんだ?

 場面が変わり、アズサは他の皆がどうなったかを思い知らされる。

 

 補習授業部は退学になっていた。

 ハナコはトリニティに愛想を尽かして去っていった。

 セイアは病院で廃人になっていた。

 ミカはナギサの亡骸を前に泣きながら笑っていた。

 アツコはヘイロー破壊爆弾で殺されていた。

 ミサキは自殺を成功させていた。

 そして、サオリはアツコに代わって儀式の生贄になっていた。

 

 ほんの少しの選択が違っただけで悪夢のような終焉を迎えるかもしれなかった。それは認めよう。しかし……だからといってこの先に続く未来にある無限の可能性までは否定させやしない。

 

 運命は定められていて全ては虚しい。

 けれど虚しい中でもあがけば光差す道となる。それはアズサが証明してみせた。

 きっかけが時間を超越した神によるものだったとしても、選択は自分でしてきた。

 

 なら、子どもを食い物にする悪い大人になんて負けるわけにはいかない――!

 

「私はこの終幕だって乗り越えてみせる! この世界のアズサ! 私やこっちのアズサたちの未来の糧になれ!」

 

 サオリがとっさに出したのは白紙のカードだった。

 

 すると《覇王龍ズァーク》が……いや、滅びへと向かう世界そのものが白紙のカードへと取り込まれていく。世界のアーカイブ化によって新たに生まれたカードをデッキに収め、虚無の空間の中で輝く一筋の光明に向けてサオリは歩みだした。

 

「私は……」

 

 サオリが目を覚ますと目の前には先ほど……と表現するには途方もない時間を過ごしたような感覚に襲われたが……まで対峙していたベアトリーチェがいる。ミカやZ-ONEが必死に何か呼びかけてきているようだった。

 

 サオリはベアトリーチェを睨みつけた。鋭い眼光にベアトリーチェはただごとではないと警戒感を強める。

 

「私は速攻魔法《ЯRUM-レイド・ラプターズ・フォース》を発動!」

「そんな、儀式の影響を受けていないと!?」

「絶望の終着点なら見てきたさ。これはその報告書代わりだ!」

 

 サオリは新たに手に入れたカードの1枚をデュエルディスクにセットした。デュエルディスクはエラーを出すことなくカードの効果を処理する。どうやら無事にカードの創造に成功したようだった。

 

「フィールド上のランク4《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》と墓地のランク6《RR-レヴォリューション・ファルコン》、そしてランク3《RR-デビル・イーグル》を対象とし、そのランクの合計と同じランクを持つ「RR」モンスターエクシーズをエクシーズ召喚する!」

「ランク4と6と3の合計……? いくら何でもアリウスでは算数ぐらい教えていましたよ。ランク12が最大なのにランク13など……いや、まさか……!?」

「漆黒の闇より出でし隼よ、天壌無窮の翼翻し、今再び反逆せよ! ライズランクアップ・エクシーズ・チェンジ!」

「「崇高」に至ったというのですか……貴女が!」

 

 フィールドと墓地の「RR」モンスターが異世界へと吸い込まれていき爆発する。エクシーズ召喚の演出がソリッドビジョンでされたことでベアトリーチェは「ありえない」と呟きながら後ずさった。

 

「超越せよ、ランク13! 《RR-ライジング・リベリオン・ファルコン》ッ!!」

 

 本来あり得なかったランク13モンスターエクシーズの誕生にZ-ONEは「限界を超えたのですね」と、ミカは「わーお」と感嘆の声を漏らした。サオリも自然と顔がほころんで笑顔が浮かびそうになったが、今一度気を引き締める。

 

「《ライジング・リベリオン・ファルコン》がエクシーズ召喚に成功した場合、相手フィールドを全て破壊する! ライトニング・レボリューション・バースト!」

「くっ、小癪な! 私は私自身のデッキマスター能力を発動し、効果破壊を無効にして《ライジング・リベリオン・ファルコン》を破壊します!」

「《ライジング・リベリオン・ファルコン》は他のカードの効果を受けない。デッキマスター能力も例外じゃない」

「完全耐性ですって!?」

「《ライジング・リベリオン・ファルコン》のさらなる効果を発動! オーバーレイユニットを3つ取り除き、墓地の《RR-ライズ・ファルコン》の効果を得る! マダムも完全耐性のようだが、効果の対象には出来るはずだ。《RR-ライズ・ファルコン》の効果でマダムの攻撃力分だけ《ライジング・リベリオン・ファルコン》の攻撃力を上昇させる! トリーズン・ディスチャージ!」

 

 《ライジング・リベリオン・ファルコン》がベアトリーチェから攻撃力を吸収させ、発するオーラの量が増大した。今のベアトリーチェに口があったなら歯ぎしりしていたことだろう。

 

「バトルだ! 《ライジング・リベリオン・ファルコン》でマダムにダイレクトアタック!」

「馬鹿な! 「崇高」に到達したこの私が……!」

「レボリューショナル・リベリオン・ソニック!」

「ああぁぁああっ!?」

 

 《ライジング・リベリオン・ファルコン》が翼を翻して飛翔、ベアトリーチェへ体当たりを仕掛けた。衝撃波を伴った高速の突撃攻撃をまともに受けたベアトリーチェはその巨体がふっとばされ、「崇高」のステンドグラスに直撃。色とりどりのガラスが音を立てて砕け落ちる。

 

 サオリは自分のデュエルディスクのモニターを確認。相手のライフポイントは0になっていたが、念の為に《ライジング・リベリオン・ファルコン》にベアトリーチェの身体をつつかせた。反応がない。

 

「はあっ、はあっ、はあっ……私の勝ちだ、マダム」

 

 

 ◆◆◆

 

 

「そうだ……! 姫……アツコは……!」

 

 ベアトリーチェとの決闘に夢中でアツコのことが頭から抜けていたサオリは、慌てて束縛から解放されたアツコへと駆け寄った。アツコはルルワリリス……いや、グランギニョルの鎧から解放されたフルルドリスに膝枕されて横たわっている。

 

 そのそばではZ-ONEがアツコにデュエルディスクから伸ばしたセンサーでバイタルチェックを行っている。ミカはZ-ONEに身を寄せてデュエルディスクのモニターを眺めながら説明を受けている。

 

「Z-ONE先生、ミカ様。アツコの容態は……」

「古聖堂での戦いの傷が癒えてませんね。それとベアトリーチェにライフを奪われています。放っておけば命に関わるでしょう。一刻も早い救護が必要です」

「トリニティに帰るだけだったら《ライズ・ファルコン》に乗ってひとっ飛びだと思うから、すぐに連れて行ってあげて」

「はい、そうしま……」

「サオリ、ちゃん……?」

「!? アツコ……!」

 

 アツコの身体を持ち上げようとしたその時だった。サオリの耳にアツコの声が入ってくる。すぐにアツコの顔を見つめると、彼女は虚ろながらも目を開いていた。アツコの瞳に映るサオリは今にも泣き出しそうだった。

 

「サオリ……おはよう」

「アツコ!」

 

 サオリは思わずアツコを抱きしめた。もう決して離すものかと言わんばかりに強く、強く。

 

「あ、サオリ……?」

「良かった……本当に、よかった……。ごめん……苦しんでる時にそばにいてやれなくて……」

「う、うん……?」

「アツコ……生きていてくれて、ありがとう……本当に、ありがとう……」

「……うん」

 

 アツコの肩に水が滴り落ちる。冷たいが、決して不快ではない。

 

「くっ……うぅ……」

「サオリ……泣かないで。私は大丈夫だから」

「先生たちが、ミカ様が、ミサキもヒヨリも、アズサやスズミだって、トリニティのみんなが一生懸命手伝ってくれたんだ……」

「……うん。うん。後で色々と聞かせてよ」

「もうこれで、大丈夫なんだな……」

「……うん、大丈夫だよ。サオリ。きっと全部、終わったよ」

 

 アツコはサオリをあやすように背中を優しく撫でた。

 サオリは更に涙腺を決壊させてしまう。

 それを温かく見守っていたフルルドリスの姿が透け始めた。

 

 最後に、フルルドリスがアツコの頭を撫でた。

 その微笑みは慈愛に満ちていた。

 アツコが手を伸ばすとフルルドリスはいなくなり、《赫聖の妖騎士》のカードだけが手元に残った。

 

「……ありがとう、お母さん。これからもよろしくね」

 

 アリウス生徒会長一族とその当主、つまりアツコの母親の魂(バー)と一体化した精霊(カー)が宿ったカードを、アツコは愛おしくデッキに入れ直した。

 

 ここに、アリウスの長きに渡る歴史が幕を下ろした。




本概念のエデン条約編はサオリが《ライジング・リベリオン・ファルコン》でベアトリーチェと決着をつける。この展開から逆算してシナリオを組み立てました。

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