Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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イブキ、邪神イレイザーを撃破する

「いっけー《ラビエル》! 天界蹂躙拳だー!」

 

 イブキの命令を受けて《幻魔皇ラビエル》の目が輝き、光って唸った手がビナーへと振り下ろされます。ビナーは傷こそ付かなかったもののその巨大なボディが吹き飛ばされ、砂漠の大地へと叩きつけられました。

 

 《ラビエル》が追撃のために疾走し始めたものの、ビナーが口から放った破壊光線、後で知りましたがアツィルトの光と言うらしいですね、が放たれて《ラビエル》に直撃。復帰を許してしまいます。

 

 怪獣大決戦のようなビナーと《ラビエル》の戦いにイブキはカード効果を発動しようとしませんでした。代わりにイロハとともに戦車の砲撃で援護。ビナーの攻撃や回避の初動を的確に妨害します。

 

 そんな勝手に始まった戦いを静観することも出来た"先生"方でしたが、イブキ達に加勢するようです。《ラビエル》の邪魔にならないよう"先生"指揮下で上手く立ち回っています。

 

「この調子なら問題なくビナーのデータを取れそうだね」

「果たしてそう上手くいくでしょうか……?」

「? なにか心配事でも?」

「いえ……ビナーが劣勢なら現れないかもしれませんが……」

 

 マキが投げたペイントボールがビナーに着弾。その箇所を集中してハレやコタマたちが攻撃を仕掛けました。どうやら防御力低下の効果があるようです。ビナーへの効き具合が明らかに違います。

 

 そんな追い込まれたビナーに向けて《ラビエル》の爪が容赦なくふりかかり、甲高い音が響き渡りました。ビナーの装甲が裂かれて大きな爪痕が残ります。ビナーは己の不利を悟ったのか退却する素振りを見せましたが……、

 

「え……!? 空が急に暗転した……?」

「……来ましたか。邪神」

 

 突如、漆黒の暗雲が天空を覆ったと思うと、そんな闇の中にぽっかりと空いた孔から邪悪なドラゴンが姿を現しました。ビナーがアビドスに出現する度に出現する三邪神の一体、《邪神イレイザー》が。

 

 総力戦に乱入する形となった《邪神イレイザー》は口を開き、紅蓮の炎を吐き出しました。それは瞬く間にビナーを飲み込みました。周囲にいた《ラビエル》や"先生"たちなどお構いなしです。

 

 機械音の絶叫を上げてビナーの巨体は砂漠の大地に倒れ伏しました。ヘイローが消えたので完全停止したようです。毎度《イレイザー》の最後の効果で闇に飲み込まれて始末されながらも時間を置いて復活していましたが、今度もまた再起動にはしばらくかかるでしょう。

 

「ひぃん……ちょっとまずいかも?」

「イブキ? 何がまずいんですか? 言ってください」

「《邪神イレイザー》の攻撃力は相手フィールドの数×1,000。いつもはビナーだけが相手だったから道連れ効果で倒してたけど……」

「今回は私たちがいる分攻撃力が増している。《イレイザー》がビナーを倒せたのはそのせいですか……。あれ? だとしたらまずくないですか? 私たちは《ラビエル》をあわせて3人、"先生"たちは"先生"含めて5人ですよね。で、《七精の解門》もありますから……」

「《イレイザー》の攻撃力は9,000! 《ラビエル》でも勝てないよぉ……」

 

 なるほど、《イレイザー》は一対一のデュエルでは相手だよりで心もとない効果でしたが、こういった多数を相手にした乱戦の場合は力を増して敵を蹂躙出来るのですか。民を守る名もなき王への対抗策としてはこの上ないですね。

 

 厄介なビナーを倒した《イレイザー》はしかし姿を消さず、周囲を見渡しました。イブキは慌てて《ラビエル》を後退させます。そのため《イレイザー》のターゲットは"先生"たちに向けられました。

 

 《邪神イレイザー》の攻撃、ダイジェスティブ・ブレス。

 

 迫りくる業火を前に"先生"は《希望皇ホープ》を迅速にエクシーズ召喚し、その効果ムーンバリアを発動。オーバーレイユニットを一つ取り除いて《邪神イレイザー》の攻撃を無効にします。

 

「攻撃力9,000の神のカード……まずくない?」

「いえ、"先生"には相手の攻撃力分攻撃力を増す《CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー》がいます。《イレイザー》の効果は神の耐性のせいで無効に出来ませんが、戦闘破壊するには充分です」

 

 私の読み通り"先生"は《RUM-ヌメロン・フォース》を発動して《ホープ》を《ホープレイ・ヴィクトリー》へとランクアップエクシーズチェンジさせ、そのまま《イレイザー》へと攻撃を仕掛けました。オーバーレイユニットを一つ取り除いて攻撃力を増加させつつ。

 

 しかし、《ホープレイ・ヴィクトリー》の攻撃が《イレイザー》へ届くことはありませんでした。なんと《ホープレイ・ヴィクトリー》と《イレイザー》との間に何者かが割り込み、攻撃を身代わりしたのです。

 

 攻撃によって隙が出来た《ホープレイ・ヴィクトリー》に向けて《イレイザー》の灼熱炎が容赦なく降り注ぎます。《ホープレイ・ヴィクトリー》が低い悲鳴を上げて爆散、戦闘破壊されました。その影響は闇のデュエル同様に"先生"へとフィードバックし、"先生"がうめき声を上げつつ心臓を押さえて膝を付きました。

 

「"先生"!?」

「《ホープレイ・ヴィクトリー》の前に立ちはだかったのは一体……?」

「……映像を解析したら、何か《ガーディアン・デスサイス》みたいにアンデッドっぽくなってたけど、《アマゾネスペット虎獅王》みたい」

「攻撃対象を自身のみにさせる効果持ち融合モンスターですか。単に邪神を暴れさせるだけではなくデュエルタクティクスまで駆使してくるとは……」

「じゃあユウセイ先生はあの《イレイザー》が降って湧いたんじゃなくて誰かが召喚したと思ってる? ちょっと付近にデュエリストがいないか探してみる」

「頼みます」

「ん……と、見つけた。映像拡大する」

 

 "先生"たちやイブキたちとも違った方角、少し砂が盛り上がった場所に幽霊のように長い髪が垂れ下がった者が佇んでいました。俯いているせいで顔を上げているかも分かりませんし、ヘイローが無いので意識があるかも判別付きません。

 

 間違いありません。以前ヒナとともにゲヘナに帰る際に遭遇した邪神使いの女子生徒です。彼女は《イレイザー》をけしかけている間に鈍い動きでリバースカードをオープン、永続罠《アマゾネスの意地》を発動して《アマゾネスの戦士長》を蘇らせました。再び《アマゾネスペット虎獅王》を融合召喚する狙いなのでしょう。

 

「チヒロ。あの謎のデュエリストが何者か特定出来ますか?」

「シャーレの権限で連邦生徒会のデータベースにアクセスさせてもらえるなら」

「許可します」

「顔識別が出来なくても映像から身長、砂の沈み具合から体重が分かる。体格は過去の映像データから解析かけて、服はボロボロだけど制服みたいだからそれも有力な判断材料になる。あとは生徒名簿と照らし合わせて照合させれば……」

 

 《イレイザー》が"先生"たちへと口を向けた時でした。横から《ラビエル》が殴りかかりました。しかしいくら《ラビエル》の攻撃力が破格の4,000と言えども今の《イレイザー》相手ではひとたまりもありません。

 

 それを分かっているはずのイブキはあどけなく笑いました。けれどその目は明らかにデュエリスト特有の闘志に満ちた鋭いものでした。"先生"や他のゲヘナの生徒に見せていた幼さは鳴りを潜めています。

 

「《幻銃士》を召喚して効果を発動しないまま《幻魔皇ラビエル》の効果を発動! 《幻銃士》を生贄に捧げてその攻撃力分《幻魔皇ラビエル》の攻撃力をアップするよ! さらにさらにこのカードを発動~!」

 

 イブキが手札からカードを1枚墓地に捨てると、なんと《幻魔皇ラビエル》がもう一体現れました。しかしその幻影の《ラビエル》は次第に元々の《ラビエル》と姿が重なっていき、一体化。《ラビエル》の存在感、威圧感が跳ね上がりました。

 

「《幻魔皇ラビエル-天界蹂躙拳》を手札から捨てて、《幻魔皇ラビエル》の攻撃力を倍にするね! これでイブキの《ラビエル》の攻撃力は10,200だよ!」

 

 これで《ラビエル》の攻撃力が《イレイザー》を上回りました。しかし攻撃力上昇は1ターンきり。《アマゾネスペット虎獅王》が再び融合召喚されて身代わりになれば、次の《イレイザー》の攻撃で撃破されてしまうでしょう。

 

 融合素材を揃えた謎の女子生徒が再び融合を試み……手札の《融合》カードはフィールドの《アマゾネスの戦士長》共々消えてしまいました。手元とフィールドを確認して謎の少女が狼狽えるのが映像越しにも分かります。

 

「《塊斬機ラプラシアン》の効果を発動するね! オーバーレイユニットを全部取り除いて手札、フィールド上のモンスター1体、魔法・罠カード1枚を墓地に送っちゃうよ!」

 

 犯人はマキ。モンスターエクシーズの効果を発動して《イレイザー》の守りを取り除きました。これによって《イレイザー》は《ラビエル》の爪をまともに喰らい、喉元を引き裂かれ、頭部が砂の大地へと落下していきます。

 

「《ラビエル》! そのまま《イレイザー》を抱えてあっち行って!」

 

 邪神にとどめを刺した《ラビエル》が仕留めた《イレイザー》の死体を担ぎ、明後日の方向へと駆け出しました。大地を踏む度に轟音が鳴り響くので、相当全力で走っているのでしょう。

 

 程なく、《イレイザー》の引き裂かれた首元や頭から漆黒の闇がこぼれだし、《ラビエル》を飲み込んでいきます。いかに三幻神と同格の耐性を持つという三幻魔と言えども神を抹殺する神である三邪神の効果は効いてしまうようです。

 

 《ラビエル》と《イレイザー》は闇へと沈んでいき、残されたのは活動を停止したビナー、イブキたち、"先生"たち、そして謎の女子生徒だけになりました。戦いは終りを迎えましたが、謎の女子生徒へ向けるイブキの眼差しを見る限り、本番はこれからのようです。

 

 イブキはデッキを回収してポケットから2枚のカードを取り出しました。

 

「速攻魔法《マジックカード「死者蘇生」》を発動するよ!」

 

 イブキはそのうちの1枚を発動、ソリッドビジョンでアンクが謎の少女の上に出現しました。何を対象にして発動されたのかは分かりませんが、アンクから降り注ぐ光を謎の少女が浴び……アンクにヒビが入ったかと思ったら急速に黒ずみ、最後には粉々に砕け散りました。

 

「なら、魔法カード《死者蘇生》を発動するね!」

 

 イブキはもう1枚のカードを発動。再びアンクが謎の少女の上に出現しますが、結果は同じ。アンクが漆黒に染まって爆発四散するだけに終わりました。イブキのフィールドには何も蘇りません。

 

 《死者蘇生》は相手の墓地だろうとモンスター1体を自分フィールドに特殊召喚できるカード。それこそ神のカードすら例外ではありません。特殊召喚出来ないカードを対象には取れない筈なので、あんな闇に染まって破壊する現象は起こりません。《邪神イレイザー》が本来の神秘を解放して特殊召喚出来る状態と踏んで対象に取ったのでしょうか?

 

 その結果を見届けたイブキは、大きく口を開けてあくびをしました。そして目もとを擦ってまぶたがとろんと重たくなったようです。体力のない子どもによく見られる仕草ですが、この場でそうなるのは豪胆なのか気が抜けてるのか演技なのか、判別がつきません。

 

「イブキ疲れちゃった。あと寝たくなっちゃった。イロハ先輩、もう帰ろうよぉ~」

「《死者蘇生》では蘇らず。仮説通りですね。やはりもう少し踏み込んだ策が必要みたいですよ」

「一方はもうちょっとなんだけどもう一方が難しいんだよね~。……やっぱり供物が必要なのかなぁ?」

「止めましょう、マコト先輩が悲しみます。まだ時間はありますからじっくりと検証していきましょう」

「うん……イブキ、頑張るね!」

「では帰りましょう。アビドスの砂はサラサラしているので、持って返って砂時計にしたら綺麗に動きますよ」

 

 イブキは"先生"に向けて元気よく手を振って、イロハは会釈をしました。それからイブキはこちらの偵察ドローンに向けても思いっきり手を振ってきました。やはり監視しているのはバレバレでしたか。

 

 こうしてゲヘナの戦車は退却し、"先生"一同も引き上げ、ビナー調査は幕を下ろしました。ビナーについては充分なデータが取れたでしょうし、こちらも邪神の使い手についてだいぶ分かってきました。

 

「ユウセイ先生。謎の生徒についての検索結果が出たよ」

 

 プロジェクターの映像を切ると、チヒロが重い声で私に語りかけてきました。

 

「在校生では該当者無しでしたか」

「……ご明察。やっぱり当たりを付けてたんだね。現役生徒で検索はヒットせず。退学者や中退者を含めてもヒットせず。卒業生を5年ぐらい遡ってもヒットしなかったんだけど……」

「死亡者リストでヒットした。違いますか?」

「そう。多分この人。私も会ったことあるから……結構衝撃なんだけど」

 

 チヒロはパソコンの画面をこちらへと向けてきました。そこに表示されていたのは先程の邪神の使い手と身体的特徴が一致する、かつてキヴォトスの生徒として青春を過ごしていた者でした。

 

 アビドス高等学校の生徒会長。二年前に亡くなった筈の三年生。

 梔子ユメ。それがあの砂漠を彷徨う者の正体です。




◇小鈎ハレ
使用デッキは【M∀LICE】
エースモンスター兼切り札は《M∀LICE<Q>HEARTS OF CRYPTER》
純構築デッキではまだ戦力不足なため、他のサイバース族モンスターも混ぜている。

◇小塗マキ
使用デッキは【斬機】
エースモンスターは《炎斬機マグマ》、《塊斬機ラプラシアン》、《塊斬機ダランベルシアン》
切り札は《炎斬機ファイナルシグマ》

◇音瀬コタマ
使用デッキは【WW】
エースモンスターは《WW-ウィンター・ベル》
切り札は《WW-ダイヤモンド・ベル》
サイバース族デッキも構築しているが、好んで使うのは【WW】の方。

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