Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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チヒロ、LINK VRAINSをサービス開始する

 LINK VRAINSサービス開始初日。

 

 ミレニアムのホワイトハッカー集団ヴェリタスのチヒロ謹製の製品は前評判を見る限りキヴォトス中から期待が寄せられていました。事前のアカウント登録では半分以上ミレニアム生だったようですが、安くないフルダイブ式VR装置が無くてもデュエルディスクだけでもログイン出来る簡易モードもあるので、敷居は高くありません。評判次第でログイン数も上がってくることでしょう。

 

 私も"先生"もチヒロから招待されたので今日一日はLINK VRAINSの中で過ごす予定でいます。チヒロ渾身の作品、楽しませてもらいましょう。ああ、そうそう。チヒロからログインする時はこう言えと注文があったのでした。

 

「In to the VRAINS!」

 

 生徒とのコミュニケーションの一環、つまりシャーレの業務ということもあって私と"先生"はシャーレの執務室でログイン。そうしてログインした先に広がっていたLINK VRAINSの世界は……何も変わっていないシャーレの執務室でした。

 

"あれ? ログインに失敗した?"

「いえ、よく見てください。物の配置が違います」

"本当だ……目を背けたくなる書類の束も全部白紙だね"

「パソコンは起動しますがLINK VRAINSのコマーシャルが表示されるだけです」

"じゃあこれ、もしかしてLINK VRAINSで再現された私たちの執務室?"

「そうなりますね……。そう考えるとチヒロが最後に当番でやってきた日の配置な気がしてきました。その時スキャンしたのでしょう」

 

 LINK VRAINS内のアバターは好きなように設定出来ますので、ネカマになるなりモンスターになりすましたり、LINK VRAINSのメインコンテンツになるデュエルの妨げにならなければ自由に決められます。私と"先生"は生徒とのコミュニケーションに支障が出ないよう現実世界の姿そのままにしました。……もっとも、私の今の姿は不動遊星なのですがね。

 

 身の回り以外の持ち物をLINK VRAINSに持ち込むには現実世界でスキャンをかけた後にゲーム内通貨を支払って取り込む必要があるようです。目に見える範囲でもパソコン、冷蔵庫、エアコンは今のところハリボテでした。スマホやタブレットもLINK VRAINSのコマーシャルが表示されるだけで、ただの重い板ですね。

 

 デュエルディスクはタダで持ち込めました。LINK VRINS標準のタイプも支給されるようですが、やはり使い慣れた自分のものがいいですね。Dホイールもデュエルディスク扱いなのかタダで持ち込めました。

 

 デュエルモンスターズのカードはデッキ1つ分のみ持ち込み可能で、他のデッキを構築したければLINK VRAINS内でパックを買うか、一旦ログアウトして現実世界でデッキを変える必要があるようです。サービスを維持するために課金要素があるのは仕方がありませんか。

 

 なお、キヴォトスでは欠かせない重火器は持ち込み不可扱いでした。あくまでLINK VRAINSのメインコンテンツはデュエルモンスターズ。それ以外の争いの要素になる凶器は不要という位置づけなのでしょう。

 

「そう言えば"先生"が連邦生徒会から支給されたシッテムの箱はどうなのですか? あれも大きな文鎮に変わってましたか?」

"……みたいだね。画面を開いてもコマーシャルしか流れないや。アロナに呼びかけても反応が無いし"

「アロナ……シッテムの箱に搭載されているAIの名称でしたか。ショートメッセージやメールでは私も意思疎通出来ますが、声や姿は"先生"にしか認識出来ないんでしたね。そのアロナはLINK VRAINSに連れ込めなかった、と」

"どうやらそうみたいだね……"

「"先生"! 私ならここにいますよ!」

 

 突然幼い女の子の声がシャーレのオフィス内で聞こえてきました。辺りを見渡すと幼い女の子が可愛らしく手を振ってこちら……というより"先生"の方へと駆け寄っていきます。

 

 初めて対面するシッテムの箱のAIは小川を連想させるさらりとした質感の髪、空のように青い目、海のように深く青い制服のモデルをしていました。あどけなく見えるその外見ですが、私はどことなくある人物を連想してしまいます。

 

"あれ、アロナ? こっちの世界に来られたの?"

「はい! "先生"がシッテムの箱とD・パッドを接続していたおかげで私もログインできました。LINK VRAINSでも私が"先生"の仕事を隣で手伝います!」

"ああ。よろしく頼むよ、アロナ"

「はい!」

 

 そう言えば"先生"はアロナのいる電脳空間にお邪魔できるんでしたね。特に違和感無くアロナと接しています。アロナはこちらに気づくと会釈してきました。私も会釈で返します。

 

「おはようございます、ユウセイ先生。直に会うのは初めてでしたね」

「ええ。今日はよろしくお願いいたします」

「先生方、LINK VRAINSのサービス開始セレモニーはミレニアムのスタディーエリアで開かれると告知されてました。移動しますか?」

"そうしよう。え、と。確かLINK VRAINSの機能にワールド移動があったんだっけ"

 

 "先生"がルー◯のようだと例えたワールド移動機能は各学校の自治区に瞬間移動出来る優れもので、LINK VRAINS内ならどの場所からも使えます。ただし各自治区の転送先エリアは決められているので、例えばアビドスの校舎内からいきなりシャーレの執務室に戻ってはこれません。

 

 その機能を使って我々はミレニアムのスタディーエリアに一瞬で飛び、セレモニーが開かれるミレニアムタワー前の大広場にやってきました。LINK VRAINSには期待が寄せられているのか、大勢の生徒の姿が見られました。服装こそ私服やコスプレだったりしますが、容姿まで変えている生徒はごく僅かなようです。

 

「凄い賑わいですね、先生方!」

"これだけ大勢が詰めかけても全く処理落ちしないね。さすがチヒロだよ"

「こうなってくるとLINK VRAINSの管理AIがどれほどのスペックなのか興味が湧いてきます」

 

 途中でエンジニア部だったりゲーム開発部だったりと、多くの生徒から声をかけられました。どうやらミレニアム以外の生徒も少なからずログインしているらしく、トリニティの正義実現委員会やゲヘナの風紀委員の姿も見られました。

 

 そんな中でステージに上がったチヒロは一礼してからLINK VRAINS開発にあたっての苦労話やここまで来れたことへの感謝、そしてLINK VRAINSのさらなる発展に向けての抱負を短くまとめて語りました。

 

「それでは只今よりLINK VRAINSのサービスを開始します! 皆さん、楽しんでいってください!」

 

 そんなチヒロの開催の宣言を受けて皆一斉にデュエルを始める……わけではありません。それでしたら別に会場まで足を運ばなくたってログインだけしてライブ映像だけ見たって構わないでしょう。人混みが苦手ならなおさらです。

 

「ではサービス開始にあたって初日限定でのデュエル大会を開催します! では概要を説明しますね」

 

 ここにいるデュエリストたちはミレニアム自治区のスタディーエリアを舞台とする大会に参加するために、または大会の雰囲気を楽しむために集ったのです。この熱気、アンチノミーがプロデュエリストだった頃に観戦した大会を思い出します。

 

 ルールは基本的に新マスタールールに準じますが、両者の合意がライディングデュエル、スピードデュエル、ラッシュデュエルなどでも構いません。

 

 そして単にデュエルに勝つだけでいいわけではなく、例えば1ターンキルした、デッキデス勝利した、エクゾディアを揃えて勝った、など様々な条件を満たせばポイントが加算され、そのポイントの多さで順位をつけるとのことです。

 

 負けても0ポイントではなく相手のライフをどれだけ削ったか、特殊召喚を何回したか、等ポイントが入るとのこと。何なら先攻1ターンキルされると逆にボーナスポイントが入るみたいです。

 

「観客の評価もポイントに加算されるとなると、エンターテインメイト性も一つのポイントになりそうですね」

"へえ。露店で何か食べるだけでもポイントが貯まるんだね。ゲーム内通貨を使うことが条件なのかな?"

「先生方、後でいちごミルクを飲みましょう!」

 

 ただ、こうなると大会独自の殺伐とした空気が流れる可能性が想定され、サービス初日から荒れてしまうかもしれません。チヒロはその対策もきちんと講じているようで、続けて説明がありました。

 

「大会エリア内には運営インストラクターが徘徊してますので、分からないことがあれば声をかけてください。アドバイスを貰うためでもいいです。なお、公式インストラクターにデュエルで勝利したらボーナスポイントが入りますので、是非チャレンジしてみてください」

 

 チヒロはみなが倒すべき共通の相手も用意していたのです。ポイントだけが目当てなら運営インストラクターとデュエルし続ければいいですからね。デュエルを通じて交流したい参加者との棲み分けが出来るでしょう。

 

「そしてなんと、この大会エリア内にはボスが潜んでいます! 3人の最強デュエリストに勝利すれば大量のポイントをゲットできますので、見つけ出して挑んでみてください! あ、ちなみに私は違いますので」

 

 そして優勝への大きな一歩となるボスも用意する周到ぶり。この初回の大会にかけるチヒロの意気込みが感じられます。最強デュエリストと称するのは随分大きく出ましたね。デュエリストの誇りを刺激すると思いますが、まあいいでしょう。

 

 チヒロの説明が終わると運営インストラクターを探しに出発する者、とりあえず親しい者とデュエルを始める者、ステージ上の大型スクリーンで観戦する者と、様々に分かれました。

 

 さて、私はというと……、

 

「ユウセイ先生! 私とデュエルしてよ!」

「いいでしょう。受けて立ちます」

 

 まずは挑まれたデュエルに勝つとしますか。




デカグラマトン編1章はいっそ飛ばすかなぁ、とか思ってたのですが、この展開を思いついたのでスルーせずに書くことに決めた次第です。

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