ユカリとのマッチ2デュエル目。ユカリの先攻。私は《D.D.クロウ》でユカリの《BF-大旆のヴァーユ》を除外して先攻展開を妨害。続けざまに2枚目の《D.D.クロウ》でシンクロ召喚に用いた《BF-煌星のグラム》も除外しました。さすがのユカリも2妨害を受けて慌ててしまい、おざなりにターンエンドしてしまいます。なお、ユカリは《煌星のグラム》もテキスト外効果を発動させてました。
返しのターンで【BF】にも負けない【ドラグニティ】の爆発力を発揮して一気に攻め込み、何とか勝てました。手札を全て使い切った上に妨害札も無かったので、しのがれていたら間違いなく負けていましたね。
3デュエル目。私の先攻。返しの後攻で再びシンクロモンスターを大量展開しようとしたので、カウンター罠《重力崩壊》を発動。ユカリはモンスターを一切召喚・特殊召喚出来なくなってしまい、次のターンであっけなく私が勝利したのでした。
「く、悔しいですわ! どうしてそんな都合よく妨害札を引けるんですの!?」
「運命力、と一言で片付けてしまってもいいですが、その確率を少しでも上げるようデッキを調整しました。マッチ戦では各デュエルの間にサイドデッキとカードを交換出来るのは一昨日説明したとおり。1戦目を終えて《D.D.クロウ》を3積みし、2戦目を終えて《重力崩壊》を3積みしたのです。無論、先攻と後攻での【BF】対策のために、ね」
「な……なるほど……。身共は3戦全て同じ山札のまま戦っておりました……。控え札と入れ替えて対処していたのですね。勉強になります」
「大会ならまだしもキヴォトスでの日常ではシングル戦が主流ですからね。普段マッチ戦を意識していないのは仕方がありません」
さて、1マッチ終わったところで感想戦に移りました。互いにデッキとサイドデッキを公開し、どのカードを使ってどう展開していれば良かったか、サイドデッキにどんなカードを入れるべきだったかを語り合います。
それで気づいたのですが、ユカリのデッキは完成度こそ高かったものの、些か構築が古いですね。キヴォトスの現在のカードプールならもはや【旋風BF】すら時代遅れになり、《ブラックフェザー・ドラゴン》の進化形態である《ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン》を積極的に使うべきでしょう。
と、言うか、キヴォトスではあのシグナー竜の進化形態が一般流通しているのが驚きでしたよ。シグナーたちが知ったらどう思うでしょうね。もっとも、ダークシグナーとの戦いを終えた彼らの元から赤き竜がいつ離れていくかは私も存じていませんが。
「ええ~? 身共は《ぶらっくふぇざー・どらごん》を「BF」だとみなしたくはございません。身共の山札は【鴉天狗】。アレは全然違いますもの」
「そうは言いましても、展開次第では先攻1ターン目から《ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン》3体に《BF-星影のノートゥング》を並べられ、相手が効果を発動する度に決して低くないバーンダメージを毎回発動できます」
「むむむ。確かに好き嫌いしていてはこれ以上の飛躍は望めないのも事実。ええい、ままよ、と入れてしまうのも一つの手ですか……。しかし【BF】は「えくすとらでっき」の枠が厳しく、厳選しなければいけませんね」
「私のデッキもエクストラデッキを圧迫していますから、毎回悩んでいますよ」
ユカリは《ブラックフェザー・ドラゴン》や《ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン》のカードとにらめっこしながら自分のエクストラデッキのカードと何度も見比べ、散々悩んだ末に何枚か入れてみることにしたようでした。
「あれこれ考えていたって仕方がありませんし、まずは実際に決闘してみて感覚を確かめてみることにしますわ! 先生、ご指導どうもありがとうございました!」
「礼には及びません。引き続き自分が納得するまでデッキを調整してください」
「はいっ!」
ユカリは元気よく一礼してから別の相手を見つけてデュエルし始めました。ああいった素直な子がいずれ技術を吸収していって一流のデュエリストへと成長していくのでしょうね。将来が楽しみなものです。
◇◇◇
5日目。この日は少し応用編に踏み込むことにしました。
「さて、一般的なデュエルについてはもはや教えることはありませんので、今日は特殊ルールのデュエルについて教えましょう。このキヴォトスでも行われているものとして有名なのはライディングデュエルとラッシュデュエルでしょうか」
「ライディングデュエルとはその名の通りDホイールに乗ってデュエルします。キヴォトスでは新マスタールールと変わりませんが、追加ルールとして走行不能になれば敗北、周回遅れになったら敗北。先にゴールインしたら勝利する、といった具合にレースの要素も兼ね備えています。リアルソリッドビジョンによる衝撃で相手をクラッシュさせるのも有効的な戦法ですね」
「ラッシュデュエルは召喚法が増えてカード効果が複雑化した弊害で敷居が高くなった新マスタールールへの導入として考案されたものです。モンスターゾーンや魔法・罠ゾーンが3つに制限されている他、ドロ―枚数が違うなどと、単なる簡略版とは違った戦術が求められます」
「他にもタッグデュエルなどの変則ルールもあります。全てを説明していてはきりがないので、私が知る限りの変則ルールはシャーレの公式ホームページにアクセスして確認してください」
「一風変わった遊び方としては詰めデュエルやボスデュエルがあります。詰めデュエルは詰み将棋と同じく自分と相手のフィールド、手札があらかじめ決められていて、いかにして条件を達成して勝利するかを解き明かすもの。ボスデュエルはボス側のデッキは専用のもののみ、かつカードの順番も決められたものです。複数名のデュエリストでボスに挑む形になります」
「では、実際に四人一組になってボスデュエルをやってみましょう。ボス役をやる方にはボス専用のカードをお渡しします。四種類あるのでどれでも好きなものを選んでください」
このボスデュエルはキヴォトスに来て初めて知った変則デュエルです。お手軽に神を使役する強大なデュエリストを相手出来るとキヴォトスで制定されたらしいです。
ちなみに種類としては以下の4つだそうです。
・デュエルモンスターの創造主ペガサスを再現した【幻想】デッキ
・遊城十代時代の諸悪の根源ダークネスを再現した【ダークネス】デッキ
・連邦生徒会長を再現した【ヌメロン】デッキ
・私を再現した【時械神】デッキ
……色々言いたいことはありますが、このボス専用カードの「時械神」は中々面白い再現のされ方をしています。せっかくなので私も【遊星】デッキで【時械神】デッキに挑んでみるとしましょう。
「ユウセイ先生! ボスデュエルをするのでしたらこの身共をぱーとなーに!」
「でしたら折角の機会ですし、この私も加えていただきたく」
「分かりました。共にボスを倒しましょう」
「なら私がボス役をやるねー」
一対一で戦う気満々でしたが、ワカモとユカリと共にチセの【時械神】デッキと戦うことになりました。さすがに時械神が相手では「ウォリアー」シンクロモンスターや《シューティング・スター・ドラゴン》では分が悪く、シグナー竜で私に立ち向かってきた不動遊星に改めて関心しました。
◇◇◇
5日目の講義が終わって、ユカリはやや恥ずかし気に私の方へとやってきて、深く頭を下げてきました。何でも実際に《ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン》を使ってみたら思っていた以上に【BF】と相性が良かったようです。
「身共は未熟者でありながらえり好みをして視野を狭めてしまって……穴があったら入りたいです!」
「ここに丁度《奈落の落とし穴》が……は冗談として、まさか「BF」に《ブラックフェザー・ドラゴン》とシナジーのあるカードがリリースされているとは思ってもいませんでした。これも《ブラックフェザー・ドラゴン》が使えるようになった理由でしょう」
「とはいえあくまで《ぶらっくふぇざー・どらごん》は竜であって鴉天狗ではありません! ここぞという時に出すようにしますわ!」
「それがいいでしょう。勝つために自分を曲げる必要などありませんから」
教室から去っていく子供たちにワカモが手を振っています。ここまでワカモは親切に丁寧に教えていて、"先生"へ示す暴走にも近い愛情や世間で噂されるような災厄の権化っぷりは鳴りを潜めています。
ユカリは少しの間教室に残ってデッキを調整。カード1枚を入れるか否かで唸りながら悩むようになりました。けれど長考はせずに実際にデッキを回して確認することにしたようで、とりあえずデッキに加えました。
「ところで、ユカリは百花繚乱という調停を司る組織に属しているのだとか」
「はいっ! 身共は誇り高き百花繚乱の一員でして、この百鬼夜行の平和を守るために誠心誠意努めてまいりましたわ!」
「ゲヘナの風紀委員会やトリニティの正義実現委員会の生徒は私も存じています。百鬼夜行の百花繚乱もその評判に違わぬ歴戦のデュエリストぞろいなのでしょう」
「もちろんですわ! アヤメ委員長やナグサ先輩を始め、いずれも身共では足元にも及ばぬ強者ばかり! ですがいずれはえりーとの身共が最強伝説を打ち立ててみせるのです! 今はその修業期間というやつですの!」
「この講義はデュエルモンスターズの基本を学ぶために開催したものです。ユカリほどのデュエリストなら百花繚乱の先輩たちと切磋琢磨した方がいいのでは?」
私は初日に抱いた疑問をユカリにぶつけました。するとユカリは少し思いつめた、しかし並々ならぬ覚悟を秘めた面持ちで私を見つめ返しました。それはまごうこと無きカードを剣に、デュエルディスクを盾に決闘するデュエリストのものです。
「実はアヤメ委員長とナグサ先輩……百花繚乱の委員長と副委員長は少し前に百鬼夜行を離れて不在なのです」
「ほう」
「百花繚乱を背負っていたお二方がいない日々を送るうち、先輩方の存在が山よりも大きかったことに気付いてしまったのですよ! これは由々しき事態です! このままではアヤメ委員長たちが帰って来た時に自分たちがいないとしょうがないなどと思われてしまいますわ!」
チームのエースやリーダーが抜けたことで己の力不足を思い知る。なのでもっと強くなりたい。シンプルな動機ですが、だからこそひたすらまっすぐに走り抜けられるのです。目指す目標の背を追うばかりでなく、今度は並走出来るようになるために。
「いい心がけです。きっとアヤメたちが戻ってユカリを見た時、成長したと感想をくれることでしょう」
「ふふーん、先生の授業でれべるあっぷして、百花繚乱のえーすに身共はなるのです! なってみせます!」
そう決意を述べたユカリの目は未来に輝いていました。
私はそうして希望を抱く若者を応援したくなるのです。
絶望に染まったかつての私が最後に不動遊星に未来を託したように。
ボスデュエルのシーンも書いてみたかったのですが自分の頭がパンクするので止めました。架空デュエルを面白く書ける作者を本当に尊敬します。
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