Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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シュロ、ワカモとデュエルする②

 ワカモとシュロのデュエル。

 後攻1ターン目、シュロのターンのドローフェイズ。

 

 ワカモのフィールドには謎のフィールド魔法と伏せカード、そして儀式モンスター《魔妖仙獣 猫鬼黒影》が1体。手札は0枚。

 ライフは互いに満タン。

 

 ワカモがもたらす恐怖に屈しまいとシュロは彼女を睨みつけました。

 

「その面を叩き割って泣きっ面を拝んでやりますよぉ! 手前の手番、ドロー! 魔法カード《魔妖廻天》を発動して《翼の魔妖-波旬》をサーチしますよぉ」

「【魔妖】……それコク……シュロの師匠から借りてきたデッキですよね?」

「!? どうしてそれを……!?」

「動揺していますね。動揺している、それは恐怖しているのではないですか?」

「……っ! 減らず口をぉ!」

 

 シュロはサーチした《翼の魔妖-波旬》を召喚し、その効果でデッキから《麗の魔妖-妲姫》をサーチし、特殊召喚します。そして《翼の魔妖-波旬》に《麗の魔妖-妲姫》をチューニングし、《轍の魔妖-朧車》をシンクロ召喚します。

 

 【魔妖】、初めて見ますが、どうやら妖怪をモチーフとしたモンスター群のデッキのようですね。召喚される度に一度人の姿で現れてから妖怪変化するのが「魔妖」モンスターの特徴のようです。

 

「まだまだいきますよぉ。《麗の魔妖-妲姫》を効果で蘇生して《轍の魔妖-朧車》にチューニング! シンクロ召喚! さあさあおいでませ、レベル5《毒の魔妖-土蜘蛛》!」

「何もありません。続きをどうぞ」

「ぐっ……! 《麗の魔妖-妲姫》を効果で蘇生して《毒の魔妖-土蜘蛛》にチューニング! シンクロ召喚! さあさあおいでませ、レベル7《翼の魔妖-天狗》!」

 

 《麗の魔妖-妲姫》はその後の展開に厳しい制限がかかるもののエクストラデッキからモンスターが特殊召喚されるたびに墓地から蘇るチューナーモンスター。これでレベルが2つ上のシンクロモンスターをシンクロ召喚していくデッキですか。

 

「再び《麗の魔妖-妲姫》を効果で蘇生して《翼の魔妖-天狗》にチューニング! シンクロ召喚! さあさあおいでませ、レベル9《麗の魔妖-妖狐》!」

「で、《餓者髑髏》を呼び出す、と」

「《麗の魔妖-妲姫》を効果で蘇生して《麗の魔妖-妖狐》にチューニング! シンクロ召喚! さあさあおいでませ、レベル11《骸の魔妖-餓者髑髏》!」

「次は《雪女》でしたよねぇ。【魔妖】は動きが単調で単調で」

「減らず口を……! 更に《麗の魔妖-妲姫》を効果で蘇生して《骸の魔妖-餓者髑髏》とリンクマーカーにセット! リンク召喚! さあさあおいでませ、リンク2《氷の魔妖-雪女》!」

 

 レベル11で終いかと思ったら今度は更にリンクモンスターまで呼び出し始めました。もしかしたらやり方次第で悪さが出来るのでは、と考え始めるのはデュエリストとしての悪い癖かもしれません。

 

「更に更にぃ、《麗の魔妖-妲姫》を効果で蘇生して《氷の魔妖-雪女》とリンクマーカーにセット! リンク召喚! さあさあおいでませ、リンク3《垂氷の魔妖-雪女》!」

「特殊召喚に成功したので《クロカゲ》の効果を無効にするのでしたね」

「ええいっ! 《麗の魔妖-妲姫》を効果で蘇生して《垂氷の魔妖-雪女》とリンクマーカーにセット! リンク召喚! さあさあおいでませ、リンク4《零氷の魔妖-雪女》!」

「で、《麗の魔妖-妲姫》を蘇生させて《零氷の魔妖-雪女》の効果を発動。その後《魔妖壊劫》を発動、と。それとも《垂氷の魔妖-雪女》を除外して《餓者髑髏》を蘇生させますか? 【魔妖】のお手本通りの展開、よく出来ましたと褒めてあげましょう」

 

 ワカモは一生懸命頑張った子どもに送るような生暖かい拍手を送りました。完璧なほどの挑発にシュロは頭に血が上ったのか、色白だった顔が真っ赤になっていきました。ですがワカモの発言通りシュロは墓地からチューナーモンスターを蘇生させ、《雪女》が効果で発した猛吹雪が《猫鬼黒影》を襲います。

 

「その余裕、どこまで保ちますかねぇ!? 永続魔法《魔妖壊劫》を発動して、手前さんの《クロカゲ》の攻撃力をダウンさせますよぉ。ま、《垂氷の魔妖-雪女》の効果で効果は無効ですけどねぇ」

「ひーふーみー……8体ですか。800も攻撃力がダウンするのは痛いですね」

「お望み通り、《垂氷の魔妖-雪女》を墓地から除外して効果発動! あの世からおいでませ、《骸の魔妖-餓者髑髏》!」

「《骸の魔妖-餓者髑髏》は墓地から蘇生したターンは完全耐性。対処に骨が折れますこと」

 

 シュロのフィールドに大妖怪が2体並び、《クロカゲ》と対峙します。その絵面はさながら妖怪大戦争と言ったところでしょうか。百鬼夜行の住人や生徒たちにとっては恐怖の対象なのか、青ざめたり震える子も出始めています。

 

「バトル! 《骸の魔妖-餓者髑髏》で《魔妖仙獣 猫鬼黒影》を攻撃!」

「……ふふふっ。あっははは! 湧き上がる威圧感!」

 

 《骸の魔妖-餓者髑髏》が《魔妖仙獣 猫鬼黒影》に攻撃を仕掛けようとしたその時でした。突如として《餓者髑髏》の後ろから《零氷の魔妖-雪女》が襲いかかったのです。《骸の魔妖-餓者髑髏》に攻撃が直撃して怯んだものの、振り返った《骸の魔妖-餓者髑髏》が《零氷の魔妖-雪女》を薙ぎ払い、《雪女》が破壊されます。

 

 周囲の受講者たちは一体何が起こっているのか分からないでいます。何ならソリッドビジョンの《骸の魔妖-餓者髑髏》すら狼狽えた様子でマスターのシュロを見やっています。皆して得体のしれない恐怖に襲われているようでした。

 

「どうして、どうして《零氷の魔妖-雪女》が手前の《骸の魔妖-餓者髑髏》に攻撃を……? それに《骸の魔妖-餓者髑髏》の攻撃はどうしたんですかぁぁ!?」

「さあ? 妖たちが恐怖で気が触れたのでは?」

「……っ! 一体、何が起こって……」

「シュロ! デュエルディスクで公開情報を確認しなさい!」

 

 気が動転してこのままターンエンドしそうになったので、私はシュロへと声をかけます。デュエルで味方に声をかけたりアドバイスを送るのはある程度は認められていますし、これはデュエル教室の講義でもありますからなおさらです。

 

 シュロもハッと驚きながらも自分のデュエルディスクを操作してフィールドの状況、つまりワカモが出しているカードの効果を確認しますが……シュロは目を見開いて愕然とするばかりでした。

 

「な、無い……カードテキストがありませんよぉぉ!」

 

 シュロの絶叫が彼女を襲う絶望を物語っています。

 未知の言語で記されているわけでもなく、テキスト自体が無いだなんて。

 

 狼狽えるシュロを見つめながらワカモはくすくすと笑います。

 

「妖怪や怪談は人の見えない恐怖から誕生した存在。正体を解き明かさないと全容は見えてきません」

「んなっ!? そんなのずるじゃないですか!」

「シュロが希望したのですよ。恐怖と絶望を味わいたいと。存分にご堪能くださいな。それで、《麗の魔妖-妲姫》はどうしますか?」

「……攻撃しないまま、カードを2枚伏せてターンエンドです」

 

 震える手を押さえながらもシュロはカードをセットします。

 どうやらまだデュエルを諦めるつもりは無いようです。

 

「では、シュロがターンを終了する前に、私は永続罠《狐狗狸さん》を発動致します」

 

 ワカモがリバースカードをオープンすると、フィールドに出現したのは巨大な丸められた和紙でした。和紙は独りでに広がっていきます。そこにはひらがなが「いろは」順に綴られ、中央上には朱い鳥居も描かれていました。

 

 続いてひらがな一文字を覆うほどの硬貨が出現し、どこからともなく血の気が失せた真っ白な手が複数伸び、指で硬貨を押さえます。すると硬貨が独りでに動き出し、ひらがなの「め」の位置で止まりました。

 

「シュロはこっくりさんは知っていますか?」

「手前を馬鹿にしているんですか? 降霊術、占いの一種でしょう」

「ではこっくりさんが何を語りたいのか、じっくり見届けようではありませんか」

 

 続いて硬貨は「い」の位置で止まります。すると青白い霊魂が2つどこからともなく姿を見せました。炎の筈なのに全く熱気を感じさせない、それどころか触れれば熱を奪われてしまいそうな冷たさを、見ているだけでも感じます。

 

 霊魂は達筆な黒文字で「め」と「い」を表します。

 

「では私のターン。ドロー。ターンエンド」

「はあぁ? 手前さん、手前を舐めてるんですかぁ?」

「先程凍えているのではと思うほど身体を震わせていたとは思えないほど強気な言葉ですこと」

「っ! 手前のターン! ドロー!」

 

 ワカモは《クロカゲ》で攻撃せず、カードもセットせずにターンを明け渡しました。シュロはカードを1枚ドローしてからフィールドに存在する自分のモンスターと手札を確認し、熟考します。

 

「罠カード《魔妖変生》を発動! 《毒の魔妖-束脛》を墓地に葬って、あの世からおいでませ、《麗の魔妖-妖狐》!」

「……成程。少しは分析したようですね」

「ええ、ええ、ちょこざい真似をしてくれましたが、すぐに化けの皮は暴いてやりますよぉ! 《麗の魔妖-妖狐》の効果を発動して、《魔妖仙獣 猫鬼黒影》を破壊してやります!」

「くっ……!」

 

 《麗の魔妖-妖狐》が手に集中させた霊魂を発すると、それはたちまちに《魔妖仙獣 猫鬼黒影》へとまとわりつき、《クロカゲ》を破壊しました。墨汁のように黒い液体が飛び散り、やがて漆黒の水たまりも地面へと吸収されて無くなります。

 

「やはりデュエルモンスターズでも《クロカゲ》は「怪談」のような特性を持っていたようですねぇ。《垂氷の魔妖-雪女》の効果を受けたのに《零氷の魔妖-雪女》を操ったところをから察するに、さしずめ「戦闘・効果の対象にならない」辺りですかぁ?」

「ええ、よく見破りました。《クロカゲ》の耐性は推測のとおりです」

「なので対象を取らない破壊には無力でしょうよ! あっははは!」

 

 補足するなら、《零氷の魔妖-雪女》と《骸の魔妖-餓者髑髏》が同士討ちしたのはおそらく《マジックアーム・シールド》と似た効果を持っているためでしょう。完全耐性の《餓者髑髏》には効かないので《零氷の魔妖-雪女》を洗脳したかと。

 

「これで手前さんのフィールドはがら空き! 悔しいですねぇ」

「……」

 

 ケタケタと笑うシュロ。形勢逆転できて大喜びする辺り、まだ精神的に幼いと言わざるを得ません。見た目相応なのでしょう。得体の知れなかった《クロカゲ》を処理したのでその気持ちは理解しますが……。

 

「バトル! 《麗の魔妖-妖狐》でダイレクトアタック! さあ、そのふざけたお面をたたき割ってやりますよぉ!」

「さて、それはどうでしょうか? 霊魂呪縛撃!」

 

 ワカモに直接攻撃しようとした《麗の魔妖-妖狐》でしたが、突如その背中から霊魂のようなものが飛び出してきました。それはシュロへと襲い掛かり、シュロは悲鳴を上げながら尻もちをつきまして。そして両腕で霊魂を振り払います。

 

 一体何が起こったのか、周囲の生徒たちは理解出来ないようでした。攻撃が中断されたソリッドビジョンの《麗の魔妖-妖狐》もわけがわからないようで、シュロを恐怖の混ざった眼差しで見つめます。当のシュロは顔を強張らせて中々立ち上がれないようです。

 

 この場の空気は完全にワカモが支配していました。




◇箭吹シュロ
使用デッキは【魔妖】
エースモンスターは《麗の魔妖-妖狐》と3体の「雪女」リンクモンスター。
切り札は《骸の魔妖-餓者髑髏》

《狐狗狸さん》
何かしらのOCGカードが化けている。推理してみてください。

《魔妖仙獣 猫鬼黒影》
儀式・ペンデュラム・効果モンスター
星10/風属性/獣族/攻3,500/守 1,000
【Pスケール:青7/赤7】
このカードがフィールド上に存在する限り、
相手ライフを回復する効果は無効となる。(効果名:猫鬼の威圧)
【モンスター効果】
「幻魎百物語・黄昏夕顔花」により降臨。
このカードは儀式召喚及びEXデッキからのP召喚でのみ特殊召喚できる。
(1):自分フィールドにフィールド魔法カードが表側表示で存在する場合、
このカードは攻撃対象及び、効果の対象にならない。(「怪談」の特性の再現)
(2):このカードのP召喚に成功した時発動できる。デッキから「猫鬼の猟奇な領域」1枚を手札に加え、発動する。(フェイズ2移行の再現)
(3):相手フィールドに表側表示モンスターが2体以上存在する場合、
相手モンスターの攻撃宣言時に攻撃モンスター以外の
相手フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。
その表側攻撃表示モンスターのコントロールをバトルフェイズ終了時まで得て、
攻撃対象をそのモンスターに移し替えてダメージ計算を行う。(効果名:湧き上がる威圧感)
(4):1ターンに1度、相手のメインフェイズに発動できる。
このカードを破壊し、
自分フィールドに「猫鬼の片鱗トークン」(風属性・獣族・星1・攻800/守0)を4体まで攻撃表示で特殊召喚する。(効果名:猫鬼の片鱗)

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