ワカモとシュロのデュエル。現在ワカモのターン、メインフェイズ1中。
ワカモのフィールドにはフィールド魔法《宵闇の聖域》、永続罠《狐狗狸さん》、永続魔法《猫鬼の猟奇な領域》。「い」「ど」「ゆ」の永続魔法カード。ペンデュラムゾーンにセットされた《妖仙獣 左鎌神柱》と《妖仙獣 右鎌神柱》。《猫鬼の片鱗トークン》が1つ。そして超大型モンスターの《魔妖仙獣 独眼群主》。手札は0枚。ライフは4,700。
シュロのフィールドには《翼の魔妖-天狗》、そして伏せカードが3枚。手札は1枚、ライフは3,950。ボードアドバンテージは両者甲乙つけがたいですね。
「《魔妖仙獣 独眼群主》が召喚に成功した場合、相手フィールドのカード1枚を手札に戻します」
「な、なんでそんな都合よく通常召喚可能な最上級モンスターをドロー出来てるんですか……!? おかしいでしょう!?」
「さあ? 運命力が足りていたんじゃないですか?」
「戯言を……!」
「バトル! 私は《魔妖仙獣 独眼群主》で《翼の魔妖-天狗》に攻撃!」
「ひっ……!?」
《魔妖仙獣 独眼群主》が口から発した炎なのか高熱ガスなのか分からないブレス攻撃で《翼の魔妖-天狗》は身体を溶かされました。投影はデフォルメされていたのでそこまでグロくはありませんでしたが、生徒の何名かの悲鳴が聞こえました。
《魔妖仙獣 独眼群主》はデュエルディスクから情報を読み取れますが、効果を計算に入れても本来《翼の魔妖-天狗》より攻撃力は下。やはり永続魔法《猫鬼の猟奇な領域》の効果で相手モンスターの攻撃力を上回っているようです。
「どうします? 《土蜘蛛》の効果を発動して蘇生させますか?」
「い、言われなくてもそうしますよぉ! 《翼の魔妖-天狗》が破壊されたので墓地で蠢く《毒の魔妖-土蜘蛛》の効果発動! 墓地の《毒の魔妖-束脛》を除外して蘇らせます!」
「で、互いにデッキの上から3枚墓地に送る、と。終わりましたよ。それから墓地の《麗の魔妖-妲姫》を特殊召喚するんですよね」
「いちいちうざったいですねぇ。手前さんは人を苛立たせる達人なんですか?」
シュロはワカモの言葉通りに展開しました。ワカモはシュロがカード効果の発動を宣言する前にデッキから3枚カードを墓地に送ります。普通ならデュエルディスクが勝手な処理に対する警告メッセージを大音量で流すのですが、されませんね。
「手前のターン、ドロー!」
「相手のスタンバイフェイズ中、《魔妖仙獣 猫鬼黒影》がフィールドに存在しないので永続魔法《猫鬼の猟奇な領域》は自壊します」
「……!」
「そして、三度おいでなさい、《魔妖仙獣 猫鬼黒影》!」
周囲を覆っていた不気味な眼が光る暗黒の領域が砕け散り、《魔妖仙獣 猫鬼黒影》が再び姿を見せました。しかし《クロカゲ》は先程と打って変わって悲鳴を上げてよろめいています。弱っているのは明らかでした。
「この効果で召喚条件を無視して特殊召喚された《魔妖仙獣 猫鬼黒影》は攻撃力が1,000ダウンし、(4)の効果は発動できず、破壊されればエクストラデッキに行かずに墓地に送られます」
「ふ、ふんっ。驚かせておきながらもう虫の息、くたばり損ないじゃないですか」
シュロは余裕綽々といった様子で伏せていた罠カード《魔妖遊行》を発動、続けて速攻魔法《逢華妖麗譚-魔妖語》で《零氷の魔妖-雪女》を蘇生。効果で《魔妖仙獣 独眼群主》の攻撃力を0にして効果を封じます。続いて伏せていた罠カード《魔妖変生》で《翼の魔妖-天狗》を蘇生させますが、効果はワカモが最後のトークンを破壊して防ぎました。《魔妖遊行》の効果は800ポイントのダメージに使います。
「さらにぃ手前は魔法カード《生者の書-禁断の呪術-》を発動します。手前さんの墓地に眠る《魔妖仙獣 大刃禍是》を除外して、墓地よりおいでませ《麗の魔妖-妖狐》! その効果で《魔妖仙獣 猫鬼黒影》を破壊してしまえ!」
「くっ……!」
《麗の魔妖-妖狐》が発した霊力による波動を受けて《クロカゲ》は絶叫を上げ、足元に広がる黒い水たまりへとその身体を沈めていきます。やがてその水たまりも収束していき、《クロカゲ》を拘束していた黒い灯籠も崩れ落ちました。
クロカゲ、討伐完了。
周囲からも化け物退治を成し遂げたシュロへ歓声が上がります。
思わぬ反応にシュロは驚いた様子でした。
「お見事です。まさか《クロカゲ》を撃破してみせるなんて」
「これで手前さんのフィールドは今度こそがら空きも同然です! 総攻撃をかけて地べたに這いつくばらせてやりますよぉ!」
「前のターンを忘れましたか? フィールド魔法《宵闇の聖域》は効果で攻撃を無効にして攻撃力の半分のダメージを相手に与えます」
「あははっ! そんな強力な効果だったら1ターンに1度の制約があるに決まってるじゃないですか! バトル! 《麗の魔妖-妲姫》で《魔妖仙獣 独眼群主》に攻撃!」
ワカモは右手でコイントスをしました。硬貨が手の甲に乗った途端、遠距離から攻撃を仕掛けてきた《麗の魔妖-妲姫》の動きが止まり、背中から霊魂が飛び出てシュロへと襲いかかります。流石に何度も受けていると慣れたようで、シュロは怯んだだけでした。
「続けて《麗の魔妖-妖狐》で攻撃!」
「あいにく、この効果はターン1制限などございません。霊魂呪縛撃!」
ワカモ、今度は右腕を前に突き出して分かりやすいようにコイントスをしてみせました。シュロはぎょっとしましたが既に攻撃宣言を終えた後。《麗の魔妖-妖狐》の背中からも霊魂が出現してシュロを襲います。
なお、デュエル中のコイントスは本当にコイントスするか、ソリッドビジョンで自動的に処理させるか、公式アプリを使うかの3種類方法があります。ワカモの使っている硬貨は裏表が明確なもの。イカサマはしていません。一応。
「こ……コイントス……じゃ、じゃあなんで百発百中で表出してるんですか!?」
「運命力、と嘘付いてもいいのですが、コイントスなんて練習すれば誰だって思い通りの面に出来るでしょう? 私の場合は成功率七、八割ほどですね」
「あまりにも卑怯すぎるでしょうよぉ! デュエルディスクで自動的に処理されるじゃあないですか!」
「では次からはそうしましょう。残り2体で攻撃は仕掛けますか?」
ワカモに問われ、シュロは自分のモンスターを見やりました。既に2回のバーンダメージでシュロのライフポイントは危険水域。あと一回攻撃に失敗したらシュロはライフが尽きてしまいます。一方、あと2回攻撃しなければワカモのライフを削りきれません。
「ターンエンドしますよぉ。命拾いしましたねぇ。次のターンで《宵闇の聖域》を破壊して総攻撃かけて手前さんはお陀仏ですからね!」
「ふふふっ、次のターンがあると思っているシュロは本当、お可愛いこと」
「……は?」
シュロがターンエンド宣言をしたことでこっくりさんが動き出します。硬貨は今度はひらがなの「き」を指し示しました。達筆で「き」と書かれた霊魂が浮遊します。合計5つになった霊魂を改めて眺めたシュロは……途端に青ざめます。
「め」「い」「ど」「ゆ」「き」。
ここまで揃ってようやく何を言い表そうとしているのか分かりました。
「冥土逝き」、すなわち「DEATH」=死を示しています。
「知っていますか? こっくりさんはそこまで歴史が古くありません。ミレニアムかトリニティのどちらから百鬼夜行に伝わったかは覚えていませんが、向こうではこの降霊術をこう呼ぶのだそうです」
「あ、あああ……」
「《ウィジャ盤》、と」
5つの霊魂が高度を上げ、ひらがなが記された和紙がちぎれていき、やがてそれらは黒く塗りつぶされた巨大な鳥居になりました。鳥居の向こうに広がっているのは神域ではなく、一切の光なき闇の世界。すなわちあの世と繋がっているようです。
鳥居の向こうから血の気が無い手が無数に伸び、シュロの四肢を掴み、身体を抱き、頭を押さえました。口は解放しているので絶叫が響き渡りますし、目も隠さないので涙がこぼれ落ちます。
「《狐狗狸さん》と「死のメッセージ」カード4種類が自分フィールドに揃った時、自分はデュエルに勝利します。ですが、闇の決闘においてはもっと別の意味を持ちます。ダメージが実体化する闇の決闘で特殊勝利した場合はどうなるでしょうか?」
「いっ……嫌だ嫌だぁ死にたくない、死にたくないぃ! 助けてくださいコクリコ様ぁぁっ!!」
「箭吹シュロ。黄昏のように沈み、お亡くなりになりなさい!」
「あ"あ"あ"あ"あ"っ!? コクリコ様ぁ、コクリコ様ぁぁっ!!」
シュロがいくら泣き叫ぼうが白い手が情け無用でシュロをあの世へと引きずり込もうとします。シュロは必死になって地面に指を立てて踏ん張ろうとしますがそんな些細な抵抗すら白い手が指を組んで阻んでしまいます。
デュエルの勝負はつきました。デュエル中は言葉を交わすのも駆け引きのうちなので黙っていましたが、さすがに罰ゲームまでは眺めていられません。私が《スターダスト・ドラゴン》を出そうとします。
「ユキノさん、それまでです! もう勝負はつきましたわ!」
ユカリも同じくこれ以上は見ていられなかったようで《ブラックフェザー・ドラゴン》を出そうとしていました。召喚は私の《スターダスト・ドラゴン》が現れたのとほぼ同時。シュロを掴む白い手に攻撃を仕掛けたのもほぼ同時でした。
「シューティング・ソニック!」
「のーぶるすとりーむ!」
ドラゴンブレスを受けて白い手は千切れ、シュロは地面へと落ちました。すかさず私とユカリがシュロへと駆け寄りますが、黒い鳥居から伸びる白い手が途切れる様子はありません。敗者を供物に捧げなければ収まらないようです。
デュエルの勝敗は絶対。それが闇の決闘であればなおさら。私とてシグナーとダークシグナーの戦いでそれはよく存じています。それでも私の前で犠牲者は出させません。ましてや助けを求める者の手を手放すなんて。
「きりがありませんわ。もっと強いしんくろもんすたーを出して強引に押し切りましょうか?」
「いえ、シグナー竜だからこそこの世ならざる存在に対抗出来るのであって、私の《ジャンク・デストロイヤー》やユカリの《フルアーマード・ウィング》などでは攻撃してもびくともしないでしょう」
「むむむ。でしたらあの黒い鳥居を破壊すればあの世との境界も消えるのでは?」
「問題はどうやって亡者の手をいなしつつ破壊するか、ですか……」
《セイヴァー・スター》や《シューティング・スター》を召喚するにも《スターダスト・ドラゴン》を一時的に場から離さなければいけません。《時械神サンダイオン》はマルに渡してしまいましたし……。
と、少しの間悩んでいたら、突如黒い鳥居に衝撃と共にひびが入り、瓦礫となって崩れ落ちていきました。見上げると黒い鳥居の裏に《骸の魔妖-餓者髑髏》が拳を振り下ろしていて、その右肩の上に《麗の魔妖-妖狐》が乗っています。
「派手にやったものやなぁ。黄昏への扉まで開いてまうなんて」
そして、《餓者髑髏》の左肩に乗る黒い和服を着た色白の女性がはんなりとした口調で言葉を紡ぎ、キセルから灰を落としました。
その女性を目にしたシュロは顔を輝かせて喜びました。
「こ、コクリコ様ぁ!」
どうやら彼女がシュロをこのデュエル講義に参加させた保護者のようです。
《狐狗狸さん》=《ウィジャ盤》
《宵闇の聖域》=《ダーク・サンクチュアリ》
カード名が化けてしまうネタは一度やってみたかったのです。
◇狐坂ワカモ(※情報が更新されました)
使用デッキは【妖仙獣】
エースモンスターは《魔妖仙獣 大刃禍是》と《魔妖仙獣 独眼群主》
切り札は《魔妖仙獣 猫鬼黒影》を初めとする超大型儀式・ペンデュラムモンスター。
ウィジャ盤等の特殊勝利狙いギミックは普段別のデッキにしている。
《魔妖仙獣 怨霊化鯨》(ワカモ/ホバークラフトのようにワカモが妖怪鯨の上に乗る)
星10/水属性/魚族/攻3,250/守 0
【Pスケール:青11/赤11】
(1):もう片方の自分のPゾーンに「妖仙獣」カードが存在しない場合、
このカードのPスケールは3になる。
【モンスター効果】
「幻魎百物語・黄昏紅海岸」により降臨。
このカードは儀式召喚及びEXデッキからのP召喚でのみ特殊召喚できる。
(1):自分フィールドにフィールド魔法カードが表側表示で存在する場合、
このカードは攻撃対象及び、効果の対象にならない。
(「怪談」の特性、シーステレス、ミサイル暴走モードの再現)
(2):自分または相手のターンに1度、相手モンスター1体を対象に発動できる。
そのモンスターに桜花カウンターを1つ置く(最大1つまで)。
(3):自分または相手のターン終了時、フィールドの桜花カウンターを全て取り除いて発動できる。
桜花カウンターが置かれていた全てのモンスターを破壊する。
(邪魔者は排除しますの再現)
(4):このカードのP召喚に成功した時発動できる。
デッキから「潜海奇襲・呪怨」1枚をセットし、発動する。(後半戦移行の再現)
《潜海奇襲・呪怨》
永続罠
(1):このカードの発動時の効果処理として、自分の手札・墓地から「海」1枚を選んで発動できる。
(2):フィールドに「魔妖仙獣 怨霊化鯨」が存在する場合、表側表示の「魔妖仙獣 怨霊化鯨」は以下の効果を得る。
●1ターンに1度、自分フィールドの表側表示の水属性モンスター1体をエンドフェイズまで除外して発動できる。
このターン、自分フィールドの表側表示の魔法・罠カードは相手の効果では破壊されない。
●1ターンに1度、使用していないメインモンスターゾーンを1ヵ所指定して発動できる。
このカードが自分フィールドに存在する限り、指定したゾーンは使用できない。
(3):相手のスタンバイフェイズ時、自分フィールドに表側表示の「魔妖仙獣 怨霊化鯨」が存在しない場合、このカードを破壊する。
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