Z-ONE先生のブルーアーカイブ5D's   作:福留しゅん

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ユカリ、陽炎の住人に勝利する

 テフヌトの言った通り街の片隅には巨大な学生寮のような建物がありましたが、中に入ると単なる学生が住まう場所ではありませんでした。建物の中はまるで古本屋街のように壁という壁に本棚が並べられています。陽炎の住人が思い思いに本を手にとって読み耽ります。

 

 ところで気づいたのですが、陽炎の住人の中にはヘイロー持ちが何割かいます。彼女たちをキヴォトスと同じ生徒だと仮定すると、例外なく所持している武器が重火器ではないのが気になります。かろうじて形状だけ何となく分かりましたが、もしかしたら日本刀ではないでしょうか。

 

「気を付けて。コイツ等、最低でもスケバン並みには強いから」

 

 テフヌトがモモトークで注意を送ってきます。県外ですのでデュエルディスクを介したワイヤレス通信で端末間のやり取りをしています。声を出すと陽炎の住人に気づかれるかもしれませんからね。

 

 そんな寮の決して広くない廊下を段ボールで身を隠しながら進むことしばらく、かなりの時間を費やしてようやく生徒会室までたどり着けました。さすがの不動遊星の肉体でも腰が痛くなってしまいました。

 

「ところでテフヌトはこの蜃気楼の街について詳しいようですが、事前調査を?」

「……。アビドスもこんな感じに別の街に上書きされてて、強引に突破しようとして上手くいかなかったから」

「なるほど。では目的のカードはこの部屋の中に安置されているだけですか?」

「十中八九違うわ。どんな時間帯でも誰か一人は絶対に番人がいるみたい」

 

 ふむ。陽炎の住人たちが1枚のカードに固執する理由もさっぱりですし、テフヌトがそれを是が非でも取り返したい理由もまだ分かりません。どのみちそのカードを見てみないことには分かりませんか。

 

 そしてカードの守護者が必ずいるのならもう隠れている意味はありません。我々は段ボールから抜け出ると、部屋のノブを回して室内へと入りました。

 

 部屋の中にはこれまた壁一面に本棚があります。中央には事務机が並べられていて、一番奥の席に陽炎の住人が静かに本を読んでいました。彼女はこちらに気づくと本を閉じて机の上に置き、デュエルディスクを構えます。

 

「では一番槍は身共にお任せ下さいませ。百花繚乱のえりーとの実力、存分に見せて差し上げますわ!」

 

 私とテフヌトがデュエルディスクを展開しようとすると、いち早くユカリが一歩前に出てデュエルディスクを構えます。相対する2人の状況を把握すべく自分のデュエルディスクをジャッジモードにしました。

 

 勘解由小路ユカリ

 邉ク豁、荳翫°縺翫k

 (※実際は一切解読不能な文字かも分からない模様で表示されている)

 

 ……相手の名前が全く読めません。アロナの「ヌメロン」カードのアストラル文字、ラーの翼神竜のヒエラティックテキストのようなとっかかりすらありません。オリジナルの三幻魔のカードテキストを彷彿とさせます。

 

「決闘!」

 

 陽炎の番人とのデュエルはとても難解でした。何しろ向こう側が召喚するモンスター、発動する効果、全てが私たちには認識出来なかったもので、結果から推察するしかありませんでした。

 

 しかしデッキの回し方から《王立魔法図書館》を軸にした【魔力カウンター】デッキだと分かったので、あちら側のカードの正体も何となく察しが付けました。そうと分かればもう展開力と爆発力に優れた【鴉天狗】の敵ではありません。

 

「ばとる! 《A BF-驟雨のらいきり》でだいれくとあたっく!」

「……!」

「ふっふーん! これは完璧なびくとりーです。ぶい、ですの!」

 

 《A BF-驟雨のライキリ》の効果でフィールドを一掃された相手はダイレクトアタックを受けてライフを全て失い、ユカリが勝利しました。ユカリがはしゃいでいる間に相手は膝をつき、その姿が徐々に薄くなっていき、やがて儚く消えてました。

 

 ユカリはぎょっとしてから慌てますが、おそらく陽炎の住人はこの世界で存在が希薄なため、ちょっとした衝撃で姿形を保てなくなってしまうのでしょう。決してユカリがやりすぎたわけではありませんので、安心なさい。

 

「そ、そうでしたの……。では、ずかずかと土足で踏み込んだ身共たちは悪いことをしてしまったのでは……」

「みんなが眠る墓場の上に街なんか作らなかったらね。自業自得よ」

 

 テフヌトは吐き捨てるように言い放ち、事務机の上に乗せられたカードを手にします。それを大事そうに抱えること数十秒、こちらへと差し出してきました。一体どんなカードかと思って確認すると……、

 

「《FNo.0 未来皇ホープ》?」

 

 "先生"の使う《希望皇ホープ》ともアロナの使った《ホープ・ゼアル》とも違いました。しかし感じられる力は明らかにただのカードではありません。おそらくは"先生"かアロナに関係するカードと思われますが……。

 

 そんな《未来皇ホープ》を手にしてすぐでした。数多の図書に溢れたこの寮が……いえ、先程までデュエルしていた対戦相手や陽炎の住人、そして蜃気楼の街全体が消えていくではありませんか。

 

 やがて、辺り一面は山海経だった瓦礫の山が広がるばかりに戻りました。

 まるで初めからそんな光景だったとばかりに。

 

「ユウセイ先生、これは一体どういうことなんですの……?」

「蜃気楼の街や陽炎の住人たちはこの《未来皇ホープ》のカードを依り代にこの世界で存在を保っていたのかもしれません」

「……では、身共が彼女たちの平穏を壊して、跡形もなく消してしまったのですね」

「あちらが立てばこちらが立たず。私たちは蜃気楼の街に持ち去られたカードを取り返さなければいけないのですから、割り切るしかありません」

 

 蜃気楼の街については色々と考察のし甲斐がありますが、正体が判明したところで共存可能かは分かりません。むしろ虚ろなあちらが存在を確かなものとするためにこちらの消去を企てる敵、テフヌトの言う侵略者かもしれません。

 

 相互理解は陽炎の住人たちが私たちのキヴォトスに来訪してきたら検討するとして、今はこちらのキヴォトスの住人であるテフヌトの意志通り、カードの奪還を最優先にすべきでしょう。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 2日間の旅を経てミレニアムに到着。ここはD.U.地区や山海経と異なった具合に崩壊していました。具体的には至るところに機械兵器の残骸が転がっています。機能停止したミレニアム製のオートマターや機械族モンスター、そして機皇兵、機皇帝も見受けられました。

 

 テフヌトの口ぶりからこのキヴォトスでは私は赴任していませんでしたが、"先生"が名もなき神々の王女の問題を解決したのでしょう。なのに機皇兵器が動き出しているのは、それから何かあったのでしょうか?

 

 そんなミレニアムのスタディーエリアですが、上書きされた蜃気楼の街は一見さほど変わってはいませんですが、サッカースタジアムやテニスコート、飛び込みプールと50mプールが両方備わった屋内プール、そして柔道や剣道の道場など、様々な体育会系の施設が完備されていました。

 

「心技体の調和を理想とするのは身共たち百鬼夜行にも通じておりますわ」

「ミレニアムではスポーツ科学をメインとしていましたが、この蜃気楼の街は精神面の修行を主目的にしているようですね」

「何でも良いから、早くここからもカードを取り返すわよ」

 

 例によって私たちは段ボールに身を潜ませながら敷地内に侵入して探索、寮と思われし巨大な建物の中に入ります。山海経のと異なり廊下には洗ったユニフォームや道具が所狭しと干されていたり、トレーニング器具が散らばっています。

 

 やがて私たちは生徒会室に到着。段ボールから抜け出て部屋の中に侵入します。トロフィーや賞状が所狭しと立てかけられていることからも、この学校はスポーツの分野での名門なのでしょう。

 

 そこで待ち構えていた小柄の少女を連想させる陽炎の住人と対峙します。

 今度は私が対処することにしましょう。

 デュエルモードにしたのでデュエルディスクから相手の情報を読み取れました。

 

 ■■ユウセイ

 闡ヲ蜴滓エ・螳亥ー冗ウク

 

 ……相変わらずどう書いているのか分かりません。おそらくカードテキストも察するしかなく、普通にデュエルしていたのでは対処に苦しみそうです。謎解きに興じてもいいのですが、陽炎の住人とのデュエルに負けてどうなるか分かったものでもありませんね。

 

「デュエル」

 

 手札は……いけてしまいますね。では相手に妨害されなかったら一気に決めてしまいましょう。




ユカリやZ-ONEのデュエル相手についても語れる情報はありません。扱いはネームドモブに近いです。

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