「私は手札から《ワン・フォー・ワン》を発動。手札の《レベル・スティーラー》を墓地に送り、デッキから《チューニング・サポーター》を特殊召喚」
「《調律》を発動して《ジャンク・シンクロン》をサーチ。墓地に送られたのは……《ジェット・シンクロン》ですか」
「《ジャンク・シンクロン》を召喚し、墓地から《ジェット・シンクロン》を蘇生させます。手札の《ドッペル・ウォリアー》と《サテライト・シンクロン》の効果を発動して特殊召喚」
「レベル2《ドッペル・ウォリアー》にレベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング。シンクロ召喚、《TGハイパー・ライブラリアン》。《ドッペル・ウォリアー》の効果でトークン2体を特殊召喚」
「《チューニング・サポーター》にレベル1《ジェット・シンクロン》をチューニング。シンクロ召喚、《フォーミュラ・シンクロン》。《フォーミュラ・シンクロン》、《TGハイパー・ライブラリアン》、《チューニング・サポーター》の効果で3枚ドロー。《ジェット・シンクロン》の効果で《ジャンク・サーバント》をサーチ」
「2体のレベル1「ドッペル・トークン」にレベル4扱いの《サテライト・シンクロン》をチューニング。シンクロ召喚、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》。《スターダスト・チャージ・ウォリアー》と《ハイパー・ライブラリアン》効果で2枚ドロー」
「《ボルト・ヘッジホッグ》を墓地に送って《クイック・シンクロン》を特殊召喚。自身効果で特殊召喚した《レベル・スティーラー》にチューニング。シンクロ召喚、いでよ、《ジャンク・ウォリアー》。1枚ドロー」
……《TGハイパー・ライブラリアン》、《ジャンク・ウォリアー》、《フォーミュラ・シンクロン》がフィールドにいるので、ライディングデュエルだったらあのドラゴンを召喚出来てしまいますね。
「手札の《ジャンク・サーバント》を特殊召喚。自己蘇生した《ボルト・ヘッジホッグ》を場外して《異次元の精霊》を特殊召喚。レベル4《ジャンク・サーバント》にレベル1《異次元の精霊》をチューニング。シンクロ召喚、《カタパルト・ウォリアー》。1枚ドロー」
「手札を1枚捨てて《ジャンク・アンカー》の効果発動。レベル4《ジャンク・サーバント》にレベル2《ジャンク・アンカー》をチューニング。シンクロ召喚、《スターダスト・アサルト・ウォリアー》。1枚ドロー」
これで私のフィールドは6体のシンクロモンスターで埋め尽くされました。やろうと思えばここから更に盤面を強固に出来るのですが、手札誘発カードは握ってなさそうですし、一気に決めさせてもらいましょう。
「《カタパルト・ウォリアー》の効果発動。自分のモンスターをリリースしてその攻撃力分のダメージを与えます。ダイブ・カタパルト!」
シンクロモンスターを次々と射出して合計8,000以上のダメージを与え、一気に相手のライフを0にしました。相手のデッキが何だか分からないのなら先攻1キルしてしまえばいいのです。
ちなみにキヴォトスにおける《カタパルト・ウォリアー》のテキストはこんなとんでもないものではありませんし、何なら私の時代にはとっくの昔にエラッタされて大幅弱体化されてます。《ダーク・ダイブ・ボンバー》といい、不動遊星の時代のシンクロが加速し始めた元凶たる証拠ですね。
「うっわ……ユウセイ先生、えげつなさすぎ」
「あの……ユウセイ先生? 身共もさすがにあんまりだと思いますわ」
ユカリとテフヌトがドン引きしています。この程度で驚いていては彼女たちはクラッシュタウンには馴染めそうにありません。
「生徒相手にこんなデュエルはしませんのでご安心を」
「そんな問題じゃあないと思うんだけど」
「非難は覚悟の上です。先を急ぐならこれぐらい手早く相手を倒した方が後々楽になるでしょう」
対戦相手はバーンダメージを受けてふっ飛ばされ、壁に激突ました。立てかけていた賞状を入れた額縁が外れ、陽炎の住人の頭に直撃します。痛そうに頭を抱えているのは何となく分かりました。
「えっと……あった。このカードですわね」
その間にユカリが机をあさり、目的のカードを手に入れます。それをテフヌトがチェック。少し感慨深く眺めてから私に渡しました。予想した通りここで手に入れたカードもまた"先生"やアロナに関係しそうなモンスターエクシーズでした。
「《FNo.0 未来皇ホープ-フューチャー・スラッシュ》……」
カードを入手した途端、山海経の時と同様に蜃気楼の町、そしてそこに住まう陽炎の住人たちが消えていきます。対戦相手を窺うに、自分たちがこの世界からいなくなってしまうことには気づいていない様子でした。
そして周囲に広がるのは滅び去って瓦礫の山と化したミレニアム。不幸中の幸いは誰一人として遺体が視界に映らないことでしょうか。これで犠牲者を目の当たりにしてしまったらどれほど感情が揺さぶられるか分かったものではありません。
「これで残りは2つですか」
「ううっ、次は百鬼夜行ですのね……。行きたくないような、行かなきゃいけないような、複雑な気分ですわ」
「行きたくなければ無理をせずともいいですよ。私たちだけで対処しましょう」
ある日突然日常が終わりを告げ、地獄と化した自分たちの街など本当なら誰だって見たくもないでしょう。
しかしユカリは気丈にも顔を横に振りました。並々ならぬ決意と共に。
「いえ、百花繚乱を代表して身共は起こり得る悲劇はこの目に焼き付けておかねばいけませんわ」
「そうですか。気分が悪くなればいつでも言ってください」
「ええ。勿論ですとも! 菠薐草は大事だと先輩方はいつも仰ってましたの!」
「……おそらくニュアンスが違います。報告・連絡・相談で報連相です」
「ああ! その略語でしたのね! 勉強になりましたわ!」
そうしてミレニアム跡を出発して百鬼夜行跡へと向かった私たちですが、道中思いもかけない相手と遭遇しました。丁度自治区同士の間あたりはハイウェイの被害も少ないので軽快にDホイールを飛ばしていたのですが……、
「ユウセイ先生、もしかしてあちらにどなたか倒れていませんか?」
「……本当ですね」
ここでアーカイブに残されていた昔のバラエティ番組になぞらえるなら今になってようやく「第一村人発見」なのでしょう。それがキヴォトスの住人なのか、そして生徒なのか、と思考を巡らせ……その人物を確認して息を呑みました。
「大変! 酷い怪我を負ってるじゃないの……!」
「え、と。確かユウセイ先生のDホイールの中に救急箱が……」
その人物はずたずたにされていました。嵐の中にいたわけではなく、彼女のいた空間が歪曲したことで引き裂かれてしまったような。多量の血が、肉が、骨が、内臓が失われ、もはや生きているのが不思議なほどです。
……普通に考えれば彼女はこの世界の住人なのでしょう。しかしこういう時に働く勘はだいたい合っているものです。デュエリストの宿命と言いますか、一度結ばれた絆は良し悪し関係なく中々切れないものですので。
「治ったら事情を説明してもらいますからね」
私はしまっていた【時械神】デッキから《時械神サディオン》を取り出し、彼女に当てました。ライフポイントを4,000で維持させるサディオンの効果は消えゆく生命を現世に保ち続けます。良かった、時械神も彼女を助けることを拒絶していません。
とりあえず彼女の意識が回復するまで下手に動くわけにもいかず、今日はハイウェイの道路上で一夜明かすことにしました。ユカリとテフヌトも難色は示したものの反対はしませんでした。
ユカリは少し贅沢した気分だと目を輝かせながら言いましたが、滅亡した世界で何十年も過ごした私からしたらありふれた経験なので何の感慨も湧きません。テフヌトもすぐに飽きてうんざりしてくると断言しました。
「それでユウセイ先生。この人は一体誰なの?」
「あらかじめ言っておきますが、正体を知っても彼女に危害を加えないこと。彼女からは事情を聞き出さなくてはいけませんので。いいですね?」
「……ふーん。分かった。我慢する」
「身共も問題ありません」
「では彼女は……」
彼女について口に出そうとした時、「ううん……」と声を出して彼女は目を覚ましました。寝たままゆっくりと瞳だけ動かして、まどろんだ意識を覚醒させ、上半身を起こします。
今の彼女は最後に分かれた時とは容姿と異なっています。「崇高」とやらに至った際にのみ現出していた巨大な円状の赤く細いヘイローが背負うように後ろにありますし、枯れ木のようだった翼はトリニティのツルギやハスミのような黒い羽になっています。
この変化は《時械神サディオン》によるもの……ではなさそうですね。ゲマトリア風に表現するなら、死の淵に追いやられた攻撃で彼女のゲマトリアとしてのテクスチャが剥がれた、といったところですか。
「ここは……?」
「気が付きましたか」
状況を確認する彼女は声をかけられて初めて私に気づいたようです。
ぎょっとしながら距離を置こうとしますが、まだ身体が上手く動かないようです。
「ユウセイ先生……私は一体……?」
彼女は何か語ろうとして乾いてひび割れた声が口から出てきます。
咳き込む彼女に私は水を差し出しました。
彼女、ゲマトリアのベアトリーチェが何故ここにいるのでしょうか。
ベアおばは原作通り処刑されて以降出番なしのままにするつもりでしたが、とある概念が浮かんだので再登場。吉と出るか凶と出るか。
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