東方死霊録   作:SCOPEWOLF

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どうもこんばんわ。
さて、ちょいとタイトルに変更が入りました。
まぁあれです。
次の話のタイトルが思いつかなかったんです……。
というわけで、本編をどうぞ


九.呪い〈上〉

「おーい、カズー!」

 

辺り一面が白く凍った冬の昼下がり。

 

護身用の武器の手入れをしていた僕の耳へと、魔理沙さんが呼ぶ声が響いてきた。

 

視線を上げて窓の外を見ると、えらく大量の荷物を背負った様子の魔理沙さんがこちらの方へと飛んでくるのが見える。

 

僕は先ほどまで持っていた工具を道具入れの箱へとしまい、防寒着を着込んで外へと出た。

 

寒さに震えつつ外へと足を踏み出したタイミングで、魔理沙さんも庭へと軽い足取りで着地していた。

 

「……またそんなに盗んできたんですか?」

 

「盗んだんじゃない。ちょっとのあいだ借りてるだけだぜ。」

 

「それを盗みというんですよ……。」

 

全く……相変わらずの手癖の悪さである。

 

「そんなことより聞いてくれ!森の中に、なんか呪いっぽいのが封じられてるっぽい箱が落ちてたんだ!」

 

「呪いの箱……ですか。触ってませんよね?」

 

「そこは安心してくれ。目印だけ付けて、ブツにはなんも触れちゃいないな!」

 

「それはよかったです。」

 

呪いに箱と聞けば、有名どころだとコトリバコだろうか?

 

あれは確かどこかの掲示板で語られた実在しないはずの怪異の類だ。

 

だが、そんな架空の存在であろうとも存在しているのが幻想郷だ。

 

数日前に魔理沙さんが持ってきたビデオテープもその手の存在であった。

 

呪いがかかってるのは分かっていたので試しに視聴してみる前に霖之助さんに鑑定してもらったところ、僕も知っているかの有名なホラー映画に登場するあのビデオテープだった。

 

もちろん、見たらまずいやつなのでさっさとその呪いは能力で無力化した。

 

そんなことがあったように、比較的最近生まれた概念の存在であろうとも幻想郷には存在しているので油断はできない。

 

僕も有名どころしか知らないため、少なくとも呪いのような「負の力で成り立つ存在」ぐらいは見分けられるようにしたいところだ。

 

話は逸れたが、魔理沙さんが見つけたそれがコトリバコなのかは分からないが……そういった危険物である可能性だってある。

 

なので、僕はそういった物をよく拾う魔理沙さんや霖之助さんに僕が独自に編み出した「封呪の鬼火」という術を込めた呪符を渡してある。

 

これは僕の能力「呪いを操る程度の能力」の特性を帯びた鬼火を作り出す術である。

 

僕のこの能力は「既存の呪いや負の力によって発生している事象を操作したり無力化したりすることができる」という特性がある。

 

それを利用して、設置すると込めた力……霊力や魔力、妖力といったものが尽きるまでその呪いの周辺への干渉を抑える効力のある鬼火を発生させる術として編み出した物だ。

 

技術的にはスペルカードに使用されている「能力を反映する」術式を解析して応用したものだが、スペルカードとは違って弾幕の展開能力はない上に燃費も悪い。

 

だがその効力と実用性だけは高いために、よく魔理沙さんが呪いの強弱関わらずに多用している。

 

そして彼女が言う目印というのは、十中八九この鬼火のことだろう。

 

「準備が終わり次第ですが、案内を頼めますか?」

 

「おうよ!……なんなら、後ろに乗せてやろうか?」

 

「いえ……そのお気持ちだけで充分です。」

 

「……そうか。」

 

少しムッとした表情をしつつも、魔理沙さんは荷物を担いで彼女の自宅の方へと箒を向けて飛び上がる。

 

一旦あの大量の荷物を置いてくるつもりなんだろう。

 

「カズの唐変木……」ボソリ

 

去り際、彼女が小さく吐き捨てたその言葉が僕に突き刺さった。

 

……今のは聞かなかったことにしよう。

 

白い空の彼方へと飛んでいく彼女に背を向け、僕は心のなかでそう呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――数分後――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これが例の箱ですか。」

 

「おう。後は近くに見慣れない格好の死体があるが……カズ、何か分かったか?」

 

「うーん……」

 

僕達は今、例の呪いのかかった箱が落ちていたという場所で調査を行っている。

 

魔理沙さんが魔法で掘り起こした雪の中からは見慣れない格好の白骨死体と……例の呪物らしき箱が姿をのぞかせている。

 

「……まず、箱の呪いの方は相当危険な感じですね。この感じだと……中にあるナニカを封じてるのでしょうか?」

 

「にしてはえらい呪いの気配が漏れてるな?」

 

「恐らく封印が解けかけてるのかもしれませんね。表面に描かれている封印術式っぽいのも、出どころは分かりませんがかなり古い様式で書かれているようですし。」

 

僕は箱に刻まれている封印術式の刻印を見てそう推測する。

 

刻印自体はかなり丁寧に彫られているようだが、どうにもその刻み方やその外観は古い呪具に使われるものに近しい。

 

未知の言語の羅列で構成されたそれを読み解くことは出来ないが、彫られた刻印に染み込んでいるらしい塗料のようなもの……

 

恐らくは何かしらの触媒なのだろうそれは、作られてかなりの年月が経っているのか所々剥げかかっている。

 

これ以上は直接触ってから確認するしか無いが……その前にこれの無力化だ。

 

「魔理沙さんは一旦下がってください。結界を張ります。」

 

「あいよ、頼んだぜ。」

 

魔理沙さんに声をかけ、彼女が数歩後ろに下がったのを確認して結界を張る。

 

ドーム状の結界が箱を囲むように形成され、それが三枚…四枚…五枚と重なって展開していく。

 

霊夢さんのような実力者であれば強力な結界一つで充分に封じ込められるだろうが、生憎と僕は熟練の具合等が低い故にそこまで出力の高くない結界しか張れない。

 

ただ、元々霊力を人よりも多く持った体質だったのを利用して複数枚重ねてかけることでその弱点は補えている。

 

それに、この方が瘴気等の人に害のあるエネルギー等が漏れにくい。

 

出力は弱くても、重ねた空間が大きいほど漏れ出るリスクが減るのだ。

 

出力が高い結界一枚のほうがコストはかからないだろうが、安全性を考えるならこちらのほうがより優れている。

 

「さて……まずはこの瘴気っぽいのを……」

 

張り終えた結界越しに己の能力を使用。

 

ひとまずは、この負のエネルギーで構成された瘴気らしき物を無力化する……

 

 

 

 

そのはずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――カタリッ

 

 

 

突然、結界の中の箱が独りでに開いた。

 

「「っ!?」」

 

その瞬間身の危険を感じ、僕と魔理沙さんは後ろに跳んで下がった。

 

開かれた箱の中からは目に見えて分かるおぞましいナニカが溢れ出していた。

 

ナニカは少しづつ結界を侵食しており、追加で重ねたものの効果があるかは分からない。

 

「……なぁ、カズ。これってヤバいんじゃ……」

 

「……マズイですね。結界が破られかけてます。」

 

「ウッソだろ……あれ確か霊夢も壊すのに全力出すぐらいの数張ってるんだろ…?」

 

「結界の式ごと侵食されてますね……。さすがにこれは……!」

 

もはや、これは僕の手にも負えない。

 

能力で動きを封じることはできるかもしれないが、これほどの物は霊夢さんに頼んで祓う必要がある。

 

あくまで僕は呪いを操ることができるだけであり、こういった呪いを祓って消し去るのは巫女である霊夢さんの領分なのだ。

 

「魔理沙さん!コレは僕が抑えるので霊夢さんを……!」

 

魔理沙さんに指示を飛ばそうとしたが、一足遅かった。

 

――ジュブリッ

 

完全に侵食された結界の中からソレが漏れ出す。

 

ドロリとした液体のような挙動をするソレは単なる物質ではない。

 

悍ましい気配を放ち続けるソレはまるで生きている生物であるかのように蠢いている。

 

突然、ソレは強く蠢いたかと思えばこちらの方へと飛びかかってきた。

 

いや、正確に言うのなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――とんっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙さんを突き飛ばした直後、僕の身体へとソレが突き刺さった。




かくして、不幸は起きた。
しかし、それは始まりを意味するものでもある。
彼に死などという安息は許されない。
次回、「呪い〈下〉」
それは一体、誰が決めた因果か?
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