さて、やっとタイトルの方に……
そして、ボトムズを入れる前から作っていた主人公の設定に触れることができます!
多分、気が向いたら彼の設定資料的なのを書いて出すかもですね。
……多分、私の作品を継続ないし並行して見ている方であれば分かるとは思いますが……
ネタバレになる部分のぼかしが大量に付くことになるでしょうね……
今回はどうぼかそうかしら…?
そんなことはさておき、本編をどうぞ
……意識がだんだんと浮き上がる感覚。
どこかふわふわとした現実感のない意識の中、僕の目蓋が開かれた。
目を開いて見えたその天井には見覚えが……あった。
つい最近、酔っ払った勢いで魔理沙さんが穴を開けてしまったが故に、僕が端材や香霖堂のジャンクを使って張り替えた部分を除いた古い木の天井。
それを見て、ここが僕の自宅ではないということにすぐに気づいた。
ここは……
「……あら?やっと起きたのね。」
ふと、横から声が聞こえた。
聞き馴染みのあるその声の主の方へと首を動かすと……
「長い時間寝てたけど、体調の方はどうかしら?」
「……どこか身体も脳も透明な感じがして気味が悪いですね。」
「なら大丈夫ね。」
いつものだらけた様子とは打って変わり、真剣な顔の霊夢さんが僕のすぐ隣でこちらを覗き込んでいた。
「和人。アンタ、自分に何があったか分かる?」
「自分に……あっ……」
霊夢さんからのその言葉に、僕は意識を失う直前の記憶を思い出していた。
言葉にするのも悍ましい箱から漏れ出したナニカ……
咄嗟に突き飛ばして庇った時の呆気にとられた魔理沙さんの顔……
そして……
「魔理沙さんは……魔理沙さんは無事なんですか!?」
思わずというべきか、僕は身体の違和感を無視して身体を起こし、霊夢さんの肩を掴んでいた。
「……安心なさい。アンタが庇ったおかげであいつは無事よ。」
「そう……でしたか……」
霊夢さんのその言葉で、僕は落ち着きを取り戻した。
……あの後どうなったのかは分からないが、少なくとも奴が魔理沙さんに危害を加えることは防ぐことができたらしい。
「……人の心配をするよりも、アンタは自分の事に頓着しなさい。」
「今回の件……一番被害を受けたのはアンタなんだから。」
霊夢さんのその言葉に、僕は今更ながらも自身の身体の違和感に対して意識が向く。
「これは……」
「……やっぱり防ぎきれなかったわね。」
僕が何かが変わったように感じる自分の身体の確認をしていると、霊夢さんが苦々しい顔でそんな事を呟いていた。
「取り敢えず、アンタの身体の状態について説明するわ。」
霊夢さんはそこまで言うと、一つ息を吸って何かの覚悟を決めたような顔で僕へとそれを告げた。
「和人。今のアンタは人間じゃないの。」
日が沈みだし、空が焼けているかのように色付いている。
見下ろす雪に覆われた地上もオレンジ色に染まっているかのようであり、まさに幻想的であると表現できるほどに美しい。
いつも聞かされていたその景色は……
空から見る幻想郷の風景は、いつにもまして美しく感じられた。
僕は霊夢さんや魔理沙さんのように空を飛ぶことが出来なかった。
霊夢さんの場合は能力で空を飛んでいるが、魔理沙さんの場合は魔法で空を飛んでいる。
なら、僕も魔法を使えば自力で飛べるのではないか?
そう思い立って魔理沙さんにその方法を聞いた。
そしてそれを実践しようとしたが……結果は失敗。
魔理沙さんがいつも使っている箒にかけていた飛行能力の付与魔術は上手くかけることが出来ず、更には魔理沙さんが偶にやってるらしい直接魔力を操作して身体を浮かせる方法も、僕のカスみたいな魔力量では上手く安定させて飛ぶことが出来ない。
霊夢さんからはどっかの漫画で出てきそうな飛行法を伝授されたが、多少霊力が操れるだけのただの人間である僕では到底それを再現することが出来なかった。
……だが、今は違う。
僕は今、自身の力だけで空を飛んでいる。
地に足を付けるしかなかった僕は今、空を駆けているのだ。
幻想郷には多数の種族が存在しているが、大まかに分けると基本的には「人間」「妖怪」「妖精」「神」の四つとなる。
だが、例外的にこれらのどちらとも言えない存在が生まれる事がある。
半妖、半神……そして、半人。
いわゆる種族間での「ハーフ」。
人でありながら、妖怪でありながら、神でありながら……
明確にどちらとも言えないのが、彼等という存在なのである。
身近なところでは霖之助さん。
彼は半分妖怪であるものの、その内面や在り方は人に近い故にどちらとも言い難い立ち位置にいる。
そんなハーフの生まれ方は色々なパターンがある。
一つ目に、異なる種族同士での交配によって生まれるケース。
これは最も多い事例であり、伝承や噂などが昔から多く残るケースだ。
異種族同士でそういったことが可能なのかどうかといえば……
可能ではあるものの、その状況次第では悲惨な様相であろうことは想像に難くない。
二つ目に、そのハーフからの遺伝や先祖返りで生まれるケース。
これは極稀に起きるケースらしい。
そういった経緯で生まれると忌み子として扱われてしまい、最悪赤子のうちから殺されたりすることも少なくない不幸な事例である。
そして、三つ目………
後天的に力を流し込まれ、二つの種族の力や血などが中途半端に混ざり合ってしまったケース。
そう、今の僕はこれにあたる。
幻想郷でもいくつか事例が確認されているケースであり、実際にこれで半妖となった人物が人里に住んでいるらしい。
その人の場合は「白沢」という妖怪……というよりは、瑞獣という精霊の一種の血を肉体に取り込んでしまったのが原因で半妖となったらしい。
話を戻すが、彼女は人外の血を肉体に取り込んでしまったのが原因で半妖となった。
では、僕の場合はどういう経緯でこうなったのか?
一番の原因は奴……あの箱の中に封じられていた強力な呪いで生まれた怨霊なのだが……。
実のところ、これは霊夢さんの迅速な対応の影響が大きい。
まず、あの怨霊はどういう訳か消滅した。
霊夢さん曰く、僕の能力が暴走して変異を起こした。
その変異した能力に喰われて消滅したらしいのだが、悪足掻きと言わんばかりに厄介な置き土産を残していったらしい。
その置土産……かけた相手を怨霊に変えてしまうとてつもなく強力な呪いが、僕を蝕んでいたらしい。
霊夢さんがあの場所にたどり着いた時には、既に呪いの侵食が始まっていたのだそうだ。
パニックに陥った魔理沙さんを抑えつつ、霊夢さんは僕に掛けられたその呪いを解呪ないし、最悪完全に怨霊……つまり妖怪にならないようにあらゆる手を尽くしたとのことだった。
ただ、あまりにも呪いが強力だった故に解呪は失敗してしまった。
持ってきていた最高品質の札を使い、博麗の巫女である彼女の全力の解呪を以てしてその結果。
奴は相当に厄介かつ強力な呪いを残したらしい。
だが、彼女の懸命な行動は決して無駄にはならなかった。
呪いは打ち消せなかったが、辛うじて人としての状態を半分残した状態で、残り半分を怨霊……では無く死霊という存在の物へと変わった段階で状態を安定化させることに成功。
人から外れてはしまったものの、この幻想郷において最も禁忌ともいえる「人妖」となってしまうことを防ぐことができた。
この人妖は霊夢さん曰く「人から完全に妖怪へと変わり果てた者」を指す存在であり、下手をすれば幻想郷のバランスを崩しかねない危険な存在らしい。
故に……僕が人妖となった場合、幻想郷の調停者である彼女……霊夢さんが僕を殺さないといけない状態となっていた。
ゾッとする話だ。
僕としては自身の命が散らされる恐れがあったこともそうだが……
それなりに親しい間柄であった彼女に、自分を殺させていたのかもしれないのだ。
確かに、彼女は博麗の巫女という幻想郷において特別な力を持つ存在であるのだが……
それ以前に、彼女は僕より歳下の……年頃の幼い少女なのだ。
僕の命が助かったことより、彼女が元とはいえ人を……それも、関わりがそれなりに深い人間を殺すことにならなかったことに安堵している。
あの状況では仕方なかったとはいえ、下手をすれば最悪な未来となっていた可能性がある。
僕はその贖罪の為、自身に新たに付けられた力……死霊の力をもって空を駆ける。
目指すは、あの日からずっと家に籠もり続けているらしい魔理沙さんの元へ。
風も、空気も、たまに飛んでくる妖精たちの流れ弾の弾幕をもすり抜け……
ただひたすらに、僕は空を駆けた。
失ったものは返らない。
少女はその現実に嘆いた。
赦しは誰がもたらす?
救いは誰が叶える?
そんなものは、例え神であろうとも答えることは出来ない難問である。
次回、「救い」
人がくだすそれは、神の奇跡をも亡き物とする。