東方死霊録   作:SCOPEWOLF

23 / 61
どうもこんばんわ。
はい、いろいろと戦闘描写に悩んで難産でした。
なんとか表現を絞り出して書きましたが、不安も中々多いところ……
そんなことはさておき本編をどうぞ


八.穿つは信念

「くっ……」

 

紙面へと衝突しそうになった瞬間に身体を捻り、なんとかしゃがむような体勢で着地することができた。

 

なんとか踊り場からは足を踏み外すことはなかったが、先程のスペルカードは危なかった。

 

残機は減ったが、まだ余裕はある。

 

先程は意表を突かれたが、恐らくは先程のスペルカードは一直線に大きな光線を撃ち出すだけの大技。

 

種さえ分かれば簡単な話……

 

私はあの男の方へとまっすぐ駆け、広く空いたその距離を詰めにかかった。

 

男はすぐに二発目をこちらの方へと向けて放ってきた。

 

……が、その仕組さえ分かってしまえばこちらのもの。

 

「はぁぁぁぁッ!!」

 

走りながら刀を正面へと掲げ、妖力を纏った刀で男の放ってきた光線を引き裂きながら前進し続けた。

 

「……ッ!?そう来ましたか……!!」

 

男は強制的にスペルカードを切り上げ、先ほどまで私の剣戟を捌くのに使っていた槍とは反対の手に持つ、あの光線を放っていた珍妙な道具の先をこちらへと向けてきた。

 

――パシュン、パシュン

 

気の抜けるような音とともにその道具から光弾が飛び出し、私に向かってまっすぐに飛んできた。

 

切り払うでも無いと避けようとした……

 

その瞬間、なにか嫌な予感を感じ取る。

 

私は自然とその場を飛び退くように地を蹴っており、いつの間にか楼観剣だけではなく白楼剣をも鞘から引き抜いていた。

 

私が大きく右に避けたのに合わせ、放たれたその光弾はこちらを追うかのように急に軌道を変えて来る。

 

(追尾弾……!?)

 

その正体に気づいた私はすぐに刀に霊力を纏わせ、飛んできた数発の光弾を切り捨てた。

 

「小賢しい…!」

 

思わず悪態をつきつつ、次のスペルカードを発動する用意をする。

 

まさかここまで粘ってくる相手とは思わなかったが……

 

私には主を……幽々子さまをお守りする使命がある。

 

この程度の相手に手こずる暇など無い。

 

今ならまだ間に合うはずだ。

 

さっさとこいつを片付けて残りの侵入者を始末しなければ

……!

 

そう思い、私がスペルカードを発動しようとしたその時……

 

男もまた、スペルカードを取り出して発動しようとしていた。

 

だが……ここで押し負けるわけにはいかない!

 

「六道剣……」

 

「夢呪……」

 

スペルカードの発動のため、互いの獲物を構える。

 

私は白楼剣を納めて楼観剣だけを手に持ち、腰だめに構える脇構えの姿勢に。

 

男は壊れかけている槍をこちらに向け、より強くその槍へと霊力を纏わせている。

 

一拍の緊張がその場を走り、そして………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「一念無量劫」ッ!!!!」 「「ナイトメア•ストーカー」!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全く同時のタイミングでスペルカードを発動した。

 

私の高速の剣撃の残像によって発生した八芒星。

 

その残像が分裂し、楔型の弾幕となって男の方へと降り注いだ。

 

対する男は短槍をまるで舞の如く振り回し、その軌跡から無数の禍々しい色の弾幕をばら撒いている。

 

どうやらその全てが追尾弾らしく、私を目掛けて比較的遅い弾速で飛んできていた。

 

「はぁぁぁぁッ!!」

 

私はとにかくがむしゃらに刀を振るう。

 

こちらに迫りくる大量の弾幕に対し、弾幕と斬撃でその全てを消し去るように迎撃していく。

 

戦況は互いに拮抗……だが、もう既に私の勝ちだ。

 

――ミシッ、バキンッ!

 

「……ッ、槍が!?」

 

遂に限界を迎えたらしい男の槍がへし折れた。

 

すぐに男は腰に差していたあの光弾を撃ち出す道具を引き抜こうとするが……そうはさせない!

 

「やあぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

 

私は一層声を張り上げ、地を蹴った。

 

 

 

 

男の手が道具へと触れる。

 

私と男の間合いが大きく縮まった。

 

 

 

 

 

男が道具を引き抜く。

 

あと一歩踏み込めば刀が届く距離へと近づいた。

 

 

 

 

 

男が道具をこちらに構え、その道具の先端に光が集まる。

 

楼観剣を上段に構え、一息鋭く空気を吸う。

 

 

 

 

 

 

その一瞬、私は男と目が合った。

 

その目には焦りも動揺も何もなく、ただこちらをまっすぐ見て闘志を宿していた。

 

冷たい……だが、何か覚悟を決めている。

 

そう思える目だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「覚悟ぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!!」

 

「くッ、あああッ!!」

 

 

 

 

 

 

男の光弾が放たれ、私へと飛ぶ。

 

腹と右胸、額に被弾して残機が消えたが……

 

 

 

私の剣はもう止められない。

 

 

 

 

 

 

――ザシュッ!

 

 

 

 

 

 

勢いよく振り下ろされた私の剣は、男の左肩へと斜めに食い込んだ。

 

さしたる抵抗もなく、剣は滑らかに男の身体を通っていく。

 

その手に感じる感触は、久しく感じることのなかった生きる物を斬った時の肉と骨を切り裂いた時の物。

 

重く、それでいて柔らかいその手応えを手に感じた。

 

身体にべチャリと液体が降りかかるが、そんなことは構えない。

 

私は力を込め、一気に刀を振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどまで戦場となっていた階段の踊り場には無数の破壊痕とともに紅い花が開いている。

 

赤黒いその液体によって描かれるその花の中央には、大きく左肩から袈裟斬りにされた少年の身体が転がっていた。

 

そんな少年を前に、自身と手に持つ刀を返り血で真っ赤に染めた少女は黙祷を捧げる。

 

「……敵ながらその覚悟、お見事でした。」

 

「願わくば侵入者としてではなく、好敵手としてお会いしたかったですね。」

 

「……安心してください。貴方のお仲間も、すぐにそちらにお送りします。」

 

「なので……どうか安らかにお眠りなさってください。」

 

少女はそれまでを告げて階段を駆け登るように去っていった。

 

 

 

 

だが、少女は気づいていなかった。

 

少年のその魂が、未だ身体から消え去っていなかったことに。

 

白く青ざめた冷たい手が、ピクリと静かに動き出した。




花が一輪満開になる。
その時、その桜も満開へと至り出す。
そこに舞い散るは反魂の花びらと蝶。
咲き乱れる桜の下で三人の人の子と半人の剣士は再び邂逅する。
次回「西行妖〈上〉」
桜の下に眠る者は優しく残酷なる夢を見る。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。