東方死霊録   作:SCOPEWOLF

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どうもこんばんは。
だいぶ手こずりましたが、なんとか書き上げました。
さて、今回のお話で妖々夢本編は完結。
果たして、幽々子は救われるのか?
そして、和人はどうなってしまったのか?
それでは、本編をどうぞ



十一.西行妖〈下〉

「お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ッッッ!!!!」

 

―――メキメキメキッ……バギィャッッ!!!!

 

雄叫びとともに圧力をかけ、和人に襲いかかった太枝は見るも無惨にへし折られた。

 

―――………ッッ!?!?!?!?

 

へし折れた瞬間、声というものがないはずの西行妖が悲鳴を上げるかのように妖気を放った。

 

「ま、魔理沙…?あれは一体……?」

 

「……間違いない、あれはカズだ!よかった……生きてたんだな……!」

 

「お゙お゙お゙お゙ががあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッッ!!!!」

 

魔理沙が和人がまだ死んでいなかったことに安堵している中、その和人自身は両手を広げて瘴気のようなものを両腕に纏わせていた。

 

―――…………ッ!!!!!

 

瞬間、西行妖は再び自身の太枝を操作して攻撃を再開する。

 

大きく鞭で薙ぎ払うかのように振られたその太枝。

 

だがその行動はすでに彼には見切られていた。

 

 

 

「ごがあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッッッ!!!!!!」

 

 

 

――ガシッ

 

 

 

和人へと襲いかかった太枝は彼の手により掴まれてしまい……そして、彼の手に纏われていた瘴気のようなナニカがまるで侵食していくかのように西行妖の太枝を伝い始めた。

 

 

 

―――………ッ!?!?……ッ!!!

 

 

 

西行妖からまるで動揺しているかのような妖気の漏れが発生し、同時に侵食されていた太枝が他の枝によってへし折られた。

 

へし折られたと分かるやいなやそのナニカは侵食を止めて和人の下へと引き返したが、そこに残された西行妖の太枝だったものはなんの妖気もないただの桜の枝へと成れ果てていた。

 

「あれは……まさか、妖気を食べたの……?」

 

「多分だが……あのモヤみたいなの、和人の能力だ。」

 

魔理沙は西行妖がこちらへの意識を完全に失うと同時に大きく後退し、咲夜とともに息を整えつつ戦況を見る。

 

現在、和人がたった一人で西行妖のすべての攻撃を引き受けてくれている。

 

魔理沙の見解だと、今の和人の姿はおそらくはゾンビ……

 

彼の種族上の特性、「死霊変化」によって高い耐久力と馬鹿力、何よりも人がダメージを受けると怯む原因となる痛覚などを遮断している存在へと変化していると思われる。

 

ただ、いくらゾンビであろうとも完全に死なないわけではない。

 

彼の死霊変化という特性は程度の能力とはまた異なるものであり、現状使える複数の形態それぞれで強みもあるのだが一方で大きな弱点を抱えている。

 

ゾンビは今のところ確定していないが……和人の推測だと、おそらくは頭を吹き飛ばされることによってしばらく行動すらまともにできなくなってしまう可能性が高いらしい。

 

だからなのか、西行妖の攻撃を受けるにしても頭だけは死守するような動きをしている。

 

そして、西行妖の攻撃に含まれていると思われる死へと誘う能力の力……。

 

これに関しては和人の能力「呪いを喰らい、取り込む程度の能力」が作用していると思われる。

 

呪いを喰らうとはいうものの、実のところその能力が作用して喰らうことができる効果の対応範囲は広い。

 

厳密に表現するとするならば、「負の属性エネルギーを取り込んで自身の力へと変換する能力」といったものだろうか?

 

とにかく、西行妖の「死」という負の側面をより多く含んだ概念ゆえに和人の能力が適用されている。

 

その影響か死の属性を含んでいたらしい妖気を丸ごと喰らってしまい、先程の太枝のように喰らい尽くした場合にはただの桜の枝へと変わり果ててしまうらしい。

 

それを脳のない身でありながら理解したらしい西行妖。

 

無闇矢鱈に太枝を振り回さず鋭く突いては素早く引き抜く五月雨突きのような戦術に加えて、牽制目的で和人ではなく足元を狙って弾幕を展開。

 

蝶型弾幕も視界を遮るような目眩まし目的の挙動を取らせている。

 

その影響もあってか和人はその場で防御や回避をしながら足止めを喰らっており、西行妖本体へと組み付こうにも攻めあぐねているかのような状態であった。

 

見たところゾンビ状態であってもあのブーツは使えるらしく、地上を上下左右自在に駆け回って回避し続けている。

 

武器は……一応持っているみたいだが、全く使っていない。

 

いや、あの状態ではあまりうまく扱えないのかもしれない。

 

ホルスターに入ったままの武器を引き抜く様子がないことから、おそらくはその推測はあながち間違いでもなさそうだ。

 

「……どうする?お前のナイフもそろそろ打ち止めだろ?」

 

「あと一回……なんとかスペルカードを使えるぐらいかしらね。それ以上は使い物にならないわ」

 

そう聞いた魔理沙についても同じことが言える。

 

残りの触媒……通常マスタースパークを数発撃てる程度には残っているものの、西行妖に効果的な威力のものはこれ全てを使った一撃くらいだろう。

 

「クソ、霊夢も動けそうにないし、ここからどうすりゃ……」

 

「……いえ、まだよ」

 

突然後ろから聞こえてきた声に、二人は揃って驚いた。

 

二人が同時に振り向くと、そこには……

 

「れ、霊夢!?」

 

「貴女……その傷で大丈夫なの?」

 

「問題……ないわ、咲夜。アイツのおかげで……なんとか……立て直せたもの」

 

見た目は完全にボロボロだが、まだ目が死なずに戦わんとする霊夢の姿があった。

 

「……アンタたち、まだ大技の一発ぐらい……ぶっ放せるんでしょうね?」

 

「で、できはするけどよ……」

 

「なら……あと一発、最後にぶっ放して……やりなさい!」

 

そういいつつ、霊夢は大幣を構えて何かを唱え始めた。

 

「お、おい!?そんな身体で無茶を……」

 

「今無茶しなくて……いつするつもりよ……!泣きを入れたらもう一発……あの化け物に喰らわせるわよ!」

 

その姿を見て、咲夜は何かを感じ取った。

 

恐らくだが……ここが決めどきなのだろうと。

 

「……魔理沙、つべこべ言わずにやるわよ!」

 

「はぁっ!?でも霊夢が…………ッだぁ、もう!!やるしかねえのかよ!」

 

魔理沙は少し躊躇っていたが、最終的に割り切ってか霊夢から少し離れたところへと飛んで行った。

 

「……私も、可能な限りやって見せないとね」

 

そう呟きつつ、咲夜もまた能力で何処かに姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西行妖から見て北側。

 

迫りくる自身にとって天敵とも言える存在……和人の対処に追われてソレに気づかない。

 

「いい加減……大人しく、してなさい……ッ!!」

 

膨大な霊力が練り上げられ、一つのスペルが発動した。

 

「夢想……天生ッ!!」

 

その時、彼女の存在はこの世界から"浮いた"。

 

その存在に西行妖が気づいた時にはもう遅かった。

 

八つの陰陽玉が展開され、彼女を囲うように展開。

 

衛星のごとく霊夢を囲むその陰陽玉たちからは大量の弾幕が展開された。

 

そして……この時の夢想天生はスペルカードの枠を超えた存在であった。

 

もはや回避する隙間など見つからない程の弾幕が陰陽玉達から展開されており、西行妖が放つ弾幕を全て押し返すかのように襲いかかっていた。

 

たまらずに西行妖も蝶型弾幕のリソースを全てそちらの迎撃に当て、和人に襲いかかっていた太枝の内の一本を先程のようにしならせて襲いかからせた。

 

だが……存在がこの世から浮いている彼女にそれは通じない。

 

襲いかかった太枝は彼女をすり抜け、むしろ彼女の展開する弾幕の攻撃に巻き込まれて粉々に砕け散った。

 

しかも、一時的に和人の方の対処を遅らせてしまったが故に彼の手によってまた二本の太枝が無力化されてしまった。

 

 

 

一方、西行妖から見て南側……

 

 

 

「霊夢があそこまでやったんだ…!私だって負けてられないぜ!」

 

ミニ八卦炉を構え、魔理沙がスペルを発動しようとしていた。

 

「今ある全部……持っていきやがれ、この化け物が!」

 

彼女の手の中のミニ八卦炉は既に臨界状態。

 

「恋よりも強く輝く私の魔法……いや、私の魔砲!」

 

 

 

 

 

「ファイナルゥ……マスタァァ……スパァァァクッ!!!!!」

 

 

 

 

 

―――ズゴォォォッ!!!!

 

 

 

 

 

一筋の照射予測線がミニ八卦炉から放たれ、西行妖へとその照準が定まったその時……

 

暗い冥界の空が、膨大な光によって強く照らされた。

 

まさか、対処している反対側からそれほどの攻撃が飛んでくるとは予想していなかったらしい西行妖。

 

巨大な光の柱が守りの手薄だった場所を大きく穿つ。

 

 

―――………ッ!?!?!?

 

 

妖力の悲鳴が大きく放たれ、全ての攻撃の手が大きく緩まされた。

 

 

 

「……ッ!お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ッ!!」

 

 

 

その隙を逃さず、和人は雄叫びを上げて西行妖へと突撃し始めた。

 

和人の突撃に対し、西行妖は必死に残った太枝を全て和人の方へと襲いかからせ、なんとしてでも彼の接近を許さないとせんばかりに迎撃しようとしていた。

 

 

 

 

……ただ一つ、その太枝を全て無力化されるという誤算さえなければの話だったが。

 

 

 

 

「デフレーションワールド」

 

 

 

 

 

たったその一言。

 

そのスペルが宣誓た途端、西行妖の残る太枝は全てズタズタに引き裂かれ、同時に何本ものナイフの残骸がそこら中に転がった。

 

―――ッ!?!?

 

西行妖は姿なき敵の攻撃に驚くが、それが完全な命取りとなる。

 

 

 

 

「お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ッ」ガシッ!

 

 

 

 

気づけば和人が西行妖本体へと取り付いており、彼が触れたその場所から大量の瘴気のようなナニカが吹き出して西行妖を侵食し始めた。

 

―――ッッッッ!?!?!?ッッッッッ!?!?!?

 

流石にそもそものサイズが大きいこともありなかなか侵食は大きく広がっていかないものの、それでも通常の妖怪等であれば相当な苦痛と表現できるだろう感覚に見舞われた西行妖はとにかくレーザーと蝶型弾幕を無作為にばら撒いていた。

 

しかし、すべて打ち尽くしてしまった魔理沙と咲夜は既に射程外へと退避。

 

いつの間にか霊夢も何処かに消えており、残る和人も蝶型弾幕を喰らいつつ、レーザーの直撃で空いた身体の穴をナニカで塞ぎながら西行妖から力を奪っていた。

 

そして西行妖が見るからに弱まった時、その頂点の部分に一つの空間の裂け目……スキマが開いた。

 

そこから飛び出したのは一つの影……

 

上段の構えで楼観剣を構えた妖夢が西行妖へと急襲をかけた。

 

「幽々子様……!今、お助けいたします!」

 

彼女が見ているのは西行妖の一部分……

 

西行妖と、これを封印していた西行寺幽々子の遺体とを繋ぐ一つの線だった。

 

「斬るのは魂の繋がり…ただ一つッ!いざ、覚悟!」

 

スペルカードでも、それどころか一つの技として名があるわけでもないその一太刀。

 

寸分違わず振るわれたその斬撃は、間違いなく西行妖と幽々子を繋いで同化せんとしていたその場所を捉えていた。

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!」

 

 

 

―――ザシュッ!

 

 

 

たった一つの斬撃が振るわれたその時、一瞬だけ冥界の空気が震えた。

 

 

――ヒラリ

 

 

一枚の花びらが西行妖から落ちる。

 

それを皮切りに西行妖から花が散り始めた。

 

この時、西行妖の開花状態はギリギリ八分咲。

 

妖怪桜「西行妖」は満開になることなく、その花を散らしてゆくのであった。




雪解けの時が訪れた。
大地に命が芽吹き、木々は葉や花をその身に飾る。
照らされる生命の息吹が幻想郷を巡る中、ソイツもまた命を吹き返さんとする。
嗚呼、やっと目覚める。
そうして地獄への片道切符が初めてその身を晒すのだ。
次回「春の訪れ」
暗く閉ざされた闇の中、三つの目玉に光が映る。
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