東方死霊録   作:SCOPEWOLF

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どうもこんばんわ。
酒飲みながら仕上げをして投稿しております。
やはりアルコール!
東方は酒でできてますからね。
えっ、ボトムズはどうなんだって…?
多分、血と硝煙とコーヒーでできてるんじゃないんですかね?(知らんけど)
そんなことはさておき、本編をどうぞ


十二.春の訪れ

暖かい風が吹き、それに乗るように桜の花びらが舞っている。

 

春風が巡る幻想郷の空の下、博麗神社は活気の良い騒がしさに包まれている。

 

花見がてら春雪異変の解決祝いの宴会が開かれている中、霊夢は桜の木陰で一人盃を傾けていた。

 

そんな中、彼女に歩み寄る一つの人影。

 

同じく片手に盃をもち、もう片手につまみらしい団子等を乗せた盆を持った魔理沙が彼女のすぐ隣へと座りこんだ。

 

「霊夢、調子はどうだ?あん時の怪我はもう治ったって聞いたが……」

 

「えぇ、紫が色々と手配してくれたおかげでそんなにかからずに全快よ。おかげでゆっくりと休めもしないわ」

 

「ははっ、博麗の巫女様に休みなしってか?まぁひとまずは無事なようでよかったぜ」

 

軽口と酒を交わしつつ、彼女たちは先の異変……その後を思い返していた。

 

 

 

 

まず、西行妖についてだが……

 

現在はほとんどの力を吸い取られ、かろうじて妖怪桜と言えている程度の妖力しか残されていない状態で強力な封印が施された。

 

封印は霊夢と和人、そして八雲紫の手によって厳重に何重にも呪いや封印術に結界と重ねがけをしているため、自力どころか外部干渉での封印の解除も不可能。

 

事実上永久的な無力化を施された。

 

西行寺幽々子も無事に救出されており、今は霊夢や魔理沙のいる場所から少し離れたところで暴食の限りを尽くしている。

 

次に、霊夢と和人の二人。

 

西行妖によって相当なダメージを受けていた霊夢もそうだが、和人も和人で被害が大きかった。

 

死霊変化の解除後に無理矢理くっつけていたらしい妖夢に斬られた傷が思いっきり開いてしまい、魔理沙や咲夜の前で盛大に血を撒き散らしながら再び倒れてしまったのだ。

 

あまりの光景に魔理沙が一時機能不全に陥ったが、咲夜がすぐに指示を出したことですぐに復帰。

 

いざという時の備えで用意されていた魔法の担架に真っ二つ寸前な状態の和人を乗せ、ひとまず紅魔館へと緊急搬送することになった。

 

和人はその後パチュリーの魔法でなんとか命は取り留めることができ、現在は縫い合わせた傷口が塞がるまで自宅で療養している。

 

半妖としての力でギリギリ生きてはいたものの、あと数刻遅れていれば間違いなく死んでいたらしい。

 

それを聞いた当時の魔理沙は顔を青褪めさせていたが、ひとまず助かったことでその場にへたり込んだそうだった。

 

一方霊夢の方については八雲紫によって回収された。

 

西行妖の封印後にスキマを通じてマヨイガへと搬送。

 

紫だけではなく、その式である「八雲藍」や幻想郷の賢者の一人でもある仙人「茨木華扇」を含めた三人がかりの治療術によって一日と経たずに回復。

 

内蔵や骨も完全に修復されたため、翌日には博麗神社へと返されて異変の後始末のために飛び回っていたのだそうだ。

 

霊夢としてはそれだけなら別に良かったのだ。

 

だが、問題は……

 

「……ほとんど私の手柄ということになってるのがホントに気に食わないわ」

 

異変解決の翌日、号外として幻想郷中にばらまかれた新聞の内容だった。

 

内容を要約するとこうなる。

 

 

 

――博麗の巫女の活躍により終わらない冬の異変が解決!?

 

 

 

 

――幻想郷の危機、博麗の巫女によって防がれる!

 

 

 

基本的に霊夢の活躍のみが取り上げられ、魔理沙や咲夜……そして、あの時にもっとも異変の解決に貢献していただろう和人についてはかなり控えめの内容であった。

 

特に和人についてはかなり情報が引き抜かれており、彼女たちの荷物持ちや支援等で貢献したとだけしか記載されていなかった。

 

恐らくこのような内容となっているのは賢者たちの仕業なのだろうが、霊夢としてはこの点に強く出れないために歯がゆく思う。

 

 

 

……幻想郷において、異変を解決するのは博麗の巫女か力を持つ人間達の手でなければならない。

 

 

 

これは、幻想郷のパワーバランスに関わる重要な取り決め。

 

妖怪たちに余計な力を持たせないため、人と妖怪の間で決められた決まりごと。

 

もちろんある程度力を貸したり、多少なりとも干渉することで状況を好転させたりすることは大きな問題ではない。

 

ただ、それが人々の間に広まることでその妖怪への畏れが深まってしまうとまずいのである。

 

故にある程度の活躍は揉み消され、基本的に人間の手柄となるように情報が統制される。

 

もちろん、霊夢や魔理沙にこの件についての口止めはなされている。

 

特に魔理沙についてはかなり不服そうにしていたが、他でもない和人自身が彼女を宥めて説得した為にこの情報はごく一部の者にしか知られていない。

 

しかし……そんな現状を良しとできる心は霊夢には無かった。

 

全てが納得ずくであるとは言え、自分のみのものではないその手柄をほとんど己のものとして認識されるのは一種の苦痛にも近しいものがあった。

 

幻想郷の為、ひいては皆のためであるとは分かるが……

 

それでもなお、完全に割り切る事ができるほどの精神を霊夢は持てずにいた。

 

 

 

 

 

「……そういえば、和人は今日来てないのね。まだ傷が塞がってないのかしら?」

 

「明日抜糸するぐらいには治ってるぞ。ただ、今日は用事があるとかで来れないらしいな。」

 

「あら、それはもったいないわね。こんな上等なお酒を飲める機会なんてそうそうないのに……」

 

そう言って、霊夢は手に持った盃を少しだけ傾ける。

 

この宴会で振る舞われているのは全て八雲紫が調達してきた外の世界の銘酒。

 

今回の異変解決において、下手すれば命を失いかねなかった霊夢たちへの詫びも兼ねて何本かの一升瓶と酒樽数個を宴会用にと渡されたのだ。

 

そんな幻想郷では滅多に手に入れるどころか、見ることすら機会が少ない酒を飲めない和人に霊夢が哀れんでいると、魔理沙が悪戯っぽく笑いながら自身の帽子の中からあるものを取り出した。

 

「安心しろ、霊夢。カズの分は私が確保してるぜ」

 

「……アンタ、相変わらず手癖が悪いわねぇ」

 

魔理沙が手に持っているのは一本の瓶。

 

「純米吟醸酒」と銘柄の横に書かれている日本酒の一升瓶だった。

 

「せっかくだ、アイツの抜糸が終わったら三人でコイツを飲もうぜ!」

 

「アンタねぇ……まぁ、悪くはないかもね」

 

屈託ない笑顔で飲みの提案をする魔理沙に対し、霊夢は少し呆れながらもその提案に了承していた。

 

桜の花がまた一つ散り、彼女たちの盃に一つずつ浮かぶ桜の花見。

 

芽吹きの季節は歓喜しているが如く、数日前まで雪で白く染まっていた幻想郷中を彩っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――コツ、コツ、コツ……

 

 

「急に呼び出してごめんなさいね。その傷、まだ治りきってないのでしょう?」

 

「いえ、もう傷口もくっついているので問題ありませんよ」

 

ここはとある幻想郷の秘境。

 

そこには開け放たれた蔵が一つ、ポツンと隠れるように建っていた。

 

その中に入っていくは二つの影……

 

八雲紫と和人は暗い蔵の中をロウソクの光を頼りにして進んでいた。

 

「……貴方には感謝しているわ。西行妖の件はあまり公にはできないけど、それでも貴方の働きのおかげで霊夢も無事に務めを果たしてくれたもの」

 

「そんな……僕はできうることを必死にやらせていただいただけですよ。アレを封印できたのは間違いなく皆さんの力です」

 

「そう謙遜しなくてもいいわ。ここなら誰にも聞かれることはないもの」

 

そう言葉を交わしながらも奥へ、奥へと進んでいく二人。

 

「それに、貴方はそれなりの実力も……幻想郷の為になる功績も見せた。だからこそ、今こうしてここに連れても来れてるのよ」

 

「……そういえば、ここに何があるのでしょうか?何か渡したいものがあるとは聞いていますが……」

 

「見たら分かるわ」

 

そう言いながらどんどん奥へと進んでいく。

 

既に空間的に外から見た蔵の大きさを逸脱した距離を歩いており、何らかの空間の歪みがある空間だと和人は認識していた。

 

「……この先にあるものは、本来ここ幻想郷にあるはずが無いものなの。貴方は覚えがあるでしょう?」

 

「……もしかして、銃みたいな兵器ですか?」

 

「そうね、当たらずも遠からず……かしら?」

 

先の見えない暗闇の中、彼女は言葉を続ける。

 

「本来、幻想郷は外の世界で忘れられたもの……特に概念的に大衆から存在を忘れられたものが集うはずだったの」

 

「でも……ちょっとしたミスでほころびが生まれてしまったの」

 

ロウソクの火ががかすかに揺れ、彼女の顔に陰が差した。

 

「外の世界からここを隔離するために博麗大結界を展開した時、元々幻想郷に張っていた「幻と実体の境界」に干渉し合ってしまった……それは本来、起こり得るはずがない事象だったのよ」

 

「その影響で、幻想郷にはその頃から流れてくるはずのない物が流れてくるようになったわ」

 

「貴方に襲いかかったその呪いの元凶……それもまた、本来ならここに流れ着くはずのないものなの」

 

その言葉に、和人はあの時……この身体へと変わってしまったあの日に自身の中へと干渉しようとしていた悪霊らしき物を思い浮かべた。

 

「今の幻想郷は概念的な忘却がなされたもの以外の物……ただ単にそこに存在していたという事実が忘れられてしまっただけで幻想入りするようになってしまったわ」 

 

「これが外の世界だけで済むのなら目をつぶることはできたけど……」

 

その言い様から、和人はなんとなくだが彼女が言いたいことが分かった。

 

「……もしかしてですが、いわゆる平行世界のようなものから流れてきたりするのですか?」

 

「そのとおりよ」

 

紫のその答えに、和人は思わず顔をしかめた。

 

平行世界……もしやとは思っていたが、自身に掛けられたこの呪いの元凶も平行世界の産物なのだとするのなら……

 

「……かなり危険ですね。外の世界のものならいざ知らず、未知の世界から流れ込んだ物がどういった影響を及ぼすのか、予測のつけようが無いです」

 

「今はまだ物だけで済んでる。それだけは救いだけれど、今後それがどうなるかなんて私たちでも断定することはできない」

 

だから、と彼女がそう口にしたときだった。

 

先ほどまで永遠のように続いていた暗闇の中から一つの扉が現れたのは。

 

八雲紫はどこからともなく一本の鍵を取り出し、扉の錠へと突き刺して一つ捻った。

 

カチャリ、と音が響いたかと思えばその扉が開かれ、中に仕舞われていたそれを和人の前へと晒した。

 

「……っ!?紫さん、これは……」

 

「これもまた、幻想郷へと流れ着いた他世界の物よ」

 

そこに鎮座するものを例えるとするならば、緑色の鉄巨人。

 

しかし、全身が朽ち果てている上に力なく座り込む姿は、まるで敗北に打ちのめされた戦士のようにも見える。

 

和人は詳しくはないものの、これと同じ物を外の世界で見たことがある

 

「本来であれば、これはこの幻想郷から拒絶しなければいけないわ。……でも、そうも言ってられないのよ」

 

調べてみろ、と目線で和人へと紫は語る。

 

ひとまず和人はその巨人へと近づいて調べだす。

 

「……全身の腐食が激しいですが、中身はある程度生きてるみたいですね。ですが、記憶が正しければこの子は幻想郷でこのまま運用するのは………」

 

「だがらこそ、貴方にそれを任せたいの」

 

和人の目を覗くように目線を合わせ、紫は真剣な面持ちでそれを語る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幻想郷の為……ひいてはこの世界のために、貴方の手でそれを守護者へと作り変えて欲しいの。」




さて、いつもならここで次回予告ですが……
次の話から日常回を何話か挟んだりするため、また和人が異変解決に巻き込まれるときから再開します。
それでは、また次の話でお会いしましょう
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