シナリオの再調整に手こずる今日このごろです。
一応この作品の大雑把なシナリオは完結部分までありますが、それこそそこまで辿り着くのに相当かかるんですよね……。
曲で例えるなら、今はまだ一音しか発していない状態です。
ここから一つの作品を紡いでいきたいところ。
それでは、本編をどうぞ
「はぁっはぁっ………後ろから、追ってきてない?逃げきれ、ましたか…?」
しばらく走り、もう全身の筋肉が悲鳴を大声で上げた頃になって、僕は立ち止まった。
後ろを確認するが……血走った熊の唸り声も、その恐ろしいほどに強靭な脚から放たれる足音ももう聞こえなかった。
「た、助かりました。」
それを認識した途端、緊張の糸が切れたのか僕は情けない声を出しながら木にもたれかかるように崩れ落ちた。
「全身がすごく痛い…。助かりましたが、しばらく動けませんね。」
流石に、あの状況から生きて逃げ切れるとは思っていなかった。
……それも、あの食いしん坊が隙を作ってくれたからこそと思えば悲しいものだ。
何を思い、彼が奴に突撃していったのかは今ではもう分からない。
今は、彼に感謝と弔う気持ちを持ちつつ前に進む用意をすること。
それが、今の僕にできる最大の彼への弔いである。
高い負荷をかけていた心臓の方はもう既にスクランブル状態から落ち着てきており、このまましばらくしたらアイドリングレベルまで落ち着くだろう。
近くには特に何かの気配があるわけでもないようで、一先ずは落ち着いて休憩できる。
……五分後……
腕、脹脛、太腿、各関節を解きほぐして体を労われた頃になってあたりを見渡す。
見慣れない植生の植物たちに交じって、よくあの山の中でも見られた植物たちが生い茂る正に森と表現できる景色。
霧に包まれ、遠くの景色は分からないがどこか神秘的にも感じる光景だった。
この付近でこれほど濃い霧がでているのは珍しい。
少なくとも、そこそこ長く住んではいるがこれほどのは見たことがない。
こうしてこの光景を見ていると、普段の日常がもうどうでもよく感じてくる。
生きる意味も、つまらない無機質な生活も……
もう、何もかもがどうでもよくなる。
…最も、"奴ら"が僕の人生を踏み荒らさなかったら僕もこんな風にはならなかったであろう。
「…今更、僕は何を考えているのでしょうか。」
いやな方向によりそうだった思考を振り払うかのように頭を振り、僕は再び立ち上がって歩き出した。
今になって気づいたが、此処は僕の知っている森ではなさそうだった。
ポーチに入れていた携帯も、さっき走っている間に落としてしまったようで、場所も分からない。
此処からだと遠くに見覚えのない大きな山があるのが見えるくらいで、正直に言って色々詰んでいる。
一先ず、あの山に向かってみて、後の方針はそこで決めようと歩き始める。
……十五分経過……
…やはり、ある程度楽にはなったものの、体が結構つらい。
恐らく、あと一回でも全力で走ったら、明日には全身が金縛りにあったように動けなくなるだろう。
更にはお腹も空いてきた。
後ろのバッグにタッパーに入った手製のクッキーが入っているが、今この状況で取り出してのんびりと食べている暇はない。
見たことないキノコなら足元に沢山あるが、下手に手を出して食中毒になるわけにもいかない。
偶に食べれそうな動物が逃げていくのが見えるが、道具もない今の状況で仕留めても血抜きすらも出来ない為に狩りに行けない。
「………なんでこんなことになったのでしょうか。」
途方に暮れようとも、状況は改善しない。
取り敢えず森からは抜け出した。
いつの間にか霧も晴れており、しばらく歩けば整備はされていないものの道ともいえる場所へとたどり着けた。
ここをたどれば人のいる場所へとたどり着けるかもしれない。
そう思いながら歩き出そうとすると、遠くの方に人影が見えた。
(……!!もしかして人里近くまで来れたのでしょうか?)
そう思い、僕は警戒しながらも少し小走り気味にその人影を追いかけた。
その人影も僕を認識したのかこちらの方に寄ってきた。
木陰ではっきりとは見えなかったが、近づいていくうちにその人影の主が見えてきた。
それは、金髪の小さな女の子であった。
可愛らしい顔立ちの幼い見た目の少女で、彼女は此方を少し訝しがりながら歩み寄ってきた。
「お兄さん、こんなところで何しているのだ~?」
…まぁ、こんな人気のないところに所に男一人……しかも、明らかに未成年と分かるぐらいに若い奴がいるのは怪しく思えるのだろう。
それは彼女にも言えることではあるのだが……
しかしこの子、外国の子かと思ったがその割には日本語に違和感が全くない。
「あぁ、実はこの辺りで迷子になってしまして……。この近くの人の住んでいる所を教えてくれませんか?」
何故か本能的に目の前の少女に対して警鐘がなっているが、一先ず藁にも縋る気持ちで質問してみる。
すると、少女は何かを理解したかのようにニッコリとした表情になった。
「お兄さん、迷子だったのか~!人里ならここからすこし離れた所にあるよ〜。」
そう言って少女は山よりも右の方を指さす。
「ありがとう、助かったよ。」
そう言って、僕は立ち去ろうと思った。
何故かは分からないが、途轍もなく嫌な予感がさっきからしているのだ。
出来れば、さっさと此処から離れたい。
しかし……
「待つのだ~!!」
そう言って少女は僕を通せんぼするかのように腕を広げて立ちふさがった。
「…どうしましたか?」
早く逃げたい気持ちを抑え、僕は少女に問いかける。
「お兄さん、私に聞くだけ聞いてさっさと行こうとしたのだ~!お礼に何かくれなのだ~!」
「あ〜……そうですね。後ろのバッグにクッキーなら入ってますが、それで構いませんか?」
いつでも逃げられるように構えながら、僕は少女に質問した。
「うーん、そうだなぁ〜…。」
そしてしばらく考えるそぶりを見せて、少女は満面の笑みでこう答えた。
「ねぇお兄さん……」
……そして、それは僕への死刑宣告でもあった。
「お兄さんは食べられる人類?」
男は走る。
それは生物としての生存本能か、あるいはその運命か。
迫りくる死、飛び交う理不尽。
それは、楽園からの洗礼である。
次回「再走」
明日の命……そんな先のことは分からない。