さて、今回はあくまで日常編の一ページとして萃夢想を描きます。
え、和人は異変解決に参加しないのかって?
妖夢相手にバッサリ斬られてあっさり負ける程度の実力で、それ以上の相手である鬼にかなうとでも?
勘違いしちゃいけませんが、彼は"異常に死に辛い"だけであって特に突出して強くはないんですよね。
そんなわけで彼では相手にもならないので萃香戦はありません。
そして、そろそろこんなだらだらとした日常に嫌気がさし始めたところでしょうが……
ここで朗報です。
今 日 か ら 次 回 予 告 が 復 活 し ま す
つまりいったい何が起きるのか?
それでは本編からの次回予告もどうぞ
「……あれ?」
ある日、僕は自宅で新聞の整理をしていたのだが……
新聞の内容に妙な違和感があった。
「この日も……それにこの日も……博麗神社で宴会が行われている……?」
新聞では博麗神社で宴会が行われたことを記事にしているのだが……
その頻度が変なのだ。
通常、宴会というものは異変が解決した時や特別な行事があるときなどの「特別な日」に行われている。
だが無数に積まれた新聞の記事達によると、ここ最近博麗神社では三日おきに宴会が行われていることになっている。
まさかとは思うがこれは……
「異変……でしょうか?」
一抹の不安と共に、梅雨の近づく冷たい湿った風が頬を撫でた。
さて、こうして気づいた以上は何かしら動きたいところではあるものの……
僕は半妖という立場である以上、うかつに異変に介入するわけにはいかない。
ともなれば僕たち妖怪や半妖がこうした異変に関わる方法はただ一つ。
――コンコンッ
「魔理沙さーん!いますかー!」
――ドタドタドタッ、ガチャンッ!!ズテンッ!ガラガラガラガラッ……!!!!
魔法の森の奥、霧雨魔法店の戸を叩いて魔理沙さんを呼んだ。
途端に店の中が騒がしくなり、物音が落ち着くとガチャリと音をたてて戸が開いた。
「よお、カズ!待たせたな!」
物音が酷かったために何かあったのかと思ったが、そこにはいつも通りすこしお洒落目の服装に身を包んだ魔理沙さんが立っていた。
……まあ物音についてはあとで問うことにしよう。
いまは……
「実は魔理沙さんに調査してほしいことがありまして……」
〈少年説明中……〉
「……なるほど、確かにそいつは妙だな?」
持ち込んだ大量の新聞の記事を見せつつ説明したところ、魔理沙さんもその違和感に気が付いたらしい。
「私はまだしも霊夢がそれに気が付かないはずがない……。
つまるところ、この異変を起こしてる奴は相当な強者か、かなり面倒な能力持ちの可能性もあるな」
さすがは霊夢さんに次ぐベテランの異変解決者。
状況の分析も手が早く、一瞬店に入ったかと思うとすぐに箒やマジックアイテムを抱えて飛び出してきた。
「私はこのまま博麗神社に直接乗り込んで調べる!
カズは紅魔館とか白玉楼にも聞き取りとかをしててくれ!」
「わかりました!お気をつけて!」
箒にまたがり、勢いよく空へと魔理沙さんは飛び上がった。
飛び去る彼女を見届け、僕もまた自分のすべき仕事に取り掛かった……
――それから数日が経った。
結果的に言うのであれば、異変は無事に解決した。
今回の異変だが、引き起こしていたのはなんとあの「鬼」であった。
妖怪が現存する以上はいるとは思ってはいたが、まさかこんな異変を引き起こした犯人がそうであるとは思わなかった。
魔理沙さんをはじめ、僕が接触した陣営の強者たちと弾幕ごっこを繰り広げて満足したのだろう。
最後は霊夢さんと互角以上の接戦を繰り広げたのちに無事退治されたらしい。
なお、異変の動機についてなのだが……
『春が遅れて宴会をする機会が減ったから』
とのことだった。
たしかに春雪異変で春の到来が遅れ、その期間が短かったことで花見などの宴会が減っていた。
僕は普通に仕事で忙しかったのであまり気にしていなかったのだが……
異変の首謀者である鬼「伊吹萃香」はそれが許せなかったらしい。
それで自身の能力と妖気を使い、幻想郷中の認識をいじって終わらない大宴会を開いたらしかった。
現在は浴びるように呑んだ酒と弾幕によって大変満足しているらしく、博麗神社で居候しながらおとなしくしているらしい。
これですべては一件落着大円団……
そう思われていた。
「和人!これでどうかしら!」
「……おお、きれいに作れてますね。
これなら商品として出せますよ」
「カズ!?炉の温度がやばい!!」
「今行きます!」
普段僕が使っている自宅の工房。
霖之助さんに軽く仕立ててもらった作業服を着た霊夢さんと魔理沙さんが汗水垂らしながら働いていた。
なぜ二人がここで働いているのか?
理由は単純な話で、二人揃って重度の金欠に加えて借金を抱えているのである。
異変は確かに解決した。
……だが、その爪痕はあまりにも大きすぎたのだ。
宴会を開くにあたって霊夢さんは相当な量の料理やお酒を用意していた。
では、それらを調達した分の請求はだれにわたるのか?
答えは単純、霊夢さんに降りかかった。
その影響で博麗神社の財政は紅魔館が真っ青になる程に真っ赤に染まった。
紫さんの緊急での援助や魔理沙さんへの借り入れがあってもなお払いきれず、その結果霊夢さんは僕に泣きついてきたのだ。
というわけで何とか僕の貯蓄で残り分の支払いをしたわけなのだが、もちろん魔理沙さんや僕から借りた分の借金を霊夢さんは返す必要がある。
加えて魔理沙さんも貸したはいいものの、お財布事情がかなり悲惨なことになってしまった。
とまあそういうわけで、二人は僕の仕事を手伝ってその返済や稼ぎとしている。
主に機械の修理や金属材の加工に使う炉の取り扱いを魔理沙さんが。
部品や装飾品類などの成型加工を霊夢さんが担当して行っている。
例の大型依頼の方での予算からもお金を出しているため、一部の部品類はそちらの方に流れていたりもする。
おかげで僕は人件費を特にかけずに二倍の効率で部品類の調達をすることに成功しており、なんなら副次的に良いこともいくつか起きた。
まあそれについてはいつの日か語るとしてだ。
「……これはまずいですね。
魔理沙さん、緊急停止のレバーを引いてください!
霊夢さんも換気口の開放を手伝ってください!」
「もう!何やってんのよ魔理沙!」
「し、仕方ねぇだろ!?それより早く手を動かせ!」
今は目の前のアクシデントを収めること。
僕は慌ただしくも充実した日常を送っていた
月とは、妖怪たちの太陽
夜に蠢く魑魅魍魎たちの光である
では、これは何だ!
妖たちは口々に叫ぶ
隠された月を取り戻せ!
愚かな盗人に制裁を!
今、人の為ならぬ異変が幕を開ける
次回「終わらぬ夜」
永夜の中で、死霊は月を抄く者を見るか?