東方死霊録   作:SCOPEWOLF

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どうもこんにちわ。
もう一方の連載作品の方で前回話してた息抜きの二次小説についてアンケートを取った結果、なんか流れ的に不定期に投稿する流れになっていた今日この頃です。
もちろん、本作と拙作の「アパラチア帰りの外道の先生生活日記」が優先なのでそちらは本当に不定期ですけど……
さて、前置きは長くなりましたが本編をどうぞ。


日常:咲き乱れるは花か魂

ある日の出来事だった

 

「これは………」

 

徹夜明けで固まっている筋肉を解そうと外に出た時、その異変は起きていた。

 

外を埋め尽くしたのはこの季節には咲かない大量の花……

 

そして、そんな花に取り憑くかのように大量の魂たちが溢れていた。

 

「……死霊変化「ゴースト」」

 

黒い瘴気のような靄が和人の体を覆うように展開され、その靄が晴れると彼の肉体は透けていた。

 

普段から多用している姿、ゴースト。

 

この姿は物理的干渉を防いだり浮遊することができたりする以外にもいくつかの能力がある。

 

そのうちの一つに、ほかの霊的存在と直接コミュニケーションをとることができるというものがある。

 

霊体化しつつ、そこら中に溢れている魂たちの一部をかき集めて話を聞いてみることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、君たちは外の世界から……。」

 

『うん!なんかね、きゅうにここにみんなとながされちゃったんだ!』

 

『おかあさんたちもみんなここにきてるんだ!』

 

『……でも、わたしたちなにもおぼえてないの。なんでわたしたちはおそらにういてるんだろ?』

 

いくつかの魂を呼び寄せてみると、ここには外の世界の子供やその親の霊が多く集まっていることが分かった。

 

子供たちは詳しくは分かっていなかったが、親たちからの話を聞いたところ何らかの災害に巻き込まれて亡くなってしまったらしいことが分かった。

 

ただその災害についても皆あやふやかつ、聞いたところでは複数の災害が混じっているかのような状態であった。

 

そこから和人が推察したところ、外の世界で起きた発生時期の違う複数の災害の被害者たちの魂が幻想郷へと紛れ込んでしまったという可能性が浮上した。

 

彼が前に香霖堂へと来店してサボっていた死神の客から聞いた話なのだが、たまに大規模な災害が派生するとこのように幻想郷へと外の世界で処理しきれなかった魂が流れ着いてしまうことがあるのだそうだ。

 

今回のこれがそうなのかはわからないが、ひとまずはここに来た魂たちを一時的に迎えることにした。

 

迎える、とは言うが……実際は魂たちを纏めて死神へと引き渡せるように一か所に集めることであった。

 

大急ぎでクッキーを大量に作りつつ、あるだけの蒸し器で饅頭を蒸かす。

 

親御さんの霊たちにも式神の形代を利用して手伝ってもらい、それらを子供達へと振舞うように供えた。

 

その一方で僕は呪術を用いていろいろな結界を用意をする。

 

例えばそれは香……いくつかの線香やお香を適切に配置しつつ、魂たちだけを呼び寄せることができるように死神から譲り受けていた専用の蠟燭へと火を灯した。

 

灯した蝋燭は家の周辺とここへの入り口となる道へと配置され、次第に子供達だけではなく老若男女様々な霊たちがここに集まってきていた。

 

材料や呪具はなんとかかろうじて足りていたが、今回の急な支出の影響で在庫切れを起こしていた。

 

「……参りましたね」

 

『『『『『『いっけぇぇぇぇッ!』』』』』』

 

『うおおおお!一位だぁぁぁぁ!』

 

『く、くそぉぉぉぉ!』

 

現在、子供たちの退屈しのぎにいくつかの拾って修理した外の世界のおもちゃ……

 

ミニ四駆や人形を用いたレース大会やバトリング*1で遊ばせていた。

 

これがまた盛況であり、お菓子や蠟燭に引き寄せられた霊たちをこの場に引き留めておくには充分な効果があった。

 

……しかし、こんなことをしていても彼には特に何か利があるわけでもなく、むしろただただ急激な消費だけが積み重なるだけであった。

 

しかし、だからといってやめるわけにもいかない。

 

もしあのまま放置したままだと、今頃幻想郷中を駆け回っているだろう死神が回収しに来る前に悪霊やら怨霊……場合によっては呪物などで魂たちが変質してしまう可能性がある。

 

幸いにもこの家に保管されている呪物の類は厳重な封印と結界によってそのような心配はないのだが……

 

変質してしまえば、最悪罪のないはずの魂を地獄へと連れて行かざるを得なくなる可能性がある。

 

はっきりとしたことは言えないが、件の死神からは見つけ次第保護するように言われていたこともあって、彼はしっかりと頼まれていた通りにこなしていた。

 

そうしてしばらく台所と遊び場と化した庭先を行き来していると……

 

「お、集まってる集まってる。お~い、店員さ~ん!」

 

「あ、小野塚さん。お待ちしていました」

 

肩に大鎌を担ぎ、その手に家の周りに灯しているのと同じろうそくの火が揺らめくカンテラを持つ女性……

 

幻想郷の死神の一人、「小野塚小町」がどこからともなく現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー助かったよ。

アンタのおかげでこの辺り一帯の回収が楽だったからね」

 

小町が組分けして分割した魂たちの大部分を彼岸に連れて行った後、彼女と和人は最後の組を引き渡しつつ和やかに会話をしていた。

 

「お役にたてたようで何よりです。

………この子たちは、やっぱり………」

 

「外の世界から来た魂だね。

それも、外の世界の死神が取りこぼしちまった連中だ」

 

そう淡々と返す辺り、外から流れてくる魂を扱うのには慣れているらしい。

 

「普通ならこういったのは私らの担当じゃないんだけどなぁ……。

今回は一気にしわ寄せのように流れてきたもんだから、ほんとたまったもんじゃないよまったく……」

 

普段からサボりまくっている彼女がそれを言うのかと思う者もいるだろうが、サボってることはあっても仕事自体は完璧にこなしているのが小町という死神だ。

 

後に和人は愚痴を聞かされて知ることになるが、外の世界の死神はそれなりに人手が不足しているらしい。

 

幻想郷はそこまで運ぶ数がない故に暇も多いのだが、外の世界は毎日何百何千と、とにかく大量の魂を回収して彼岸へと渡す必要がある。

 

土地ごとに支部のような形で配置されているとはいえ、病死&老衰はまだしも大規模災害や事故などによる突発的な大量の死が起きると時折パンクする程度には足りないそうだった。

 

そして、そのパンクによって生まれた取りこぼしがそのまま亡霊になったり、ふとしたきっかけで幻想郷のような別空間や別世界と呼ばれる場所へと流されてしまったりするそうだ。

 

彼女が知る限りの珍しい実例だと、ある時起きた人間同士の抗争の結果生まれた大量の魂を回収した際、回収しきれなかった魂の一つが別世界へと渡ってしまったらしい。

 

それを回収しようとしてその世界に外の死神が派遣されたそうなのだが、どうにも流れ着いた先の世界からまたどこかへと流れていってしまった為に回収ができなかったらしかった。

 

この時外の世界の地獄はかなり荒れていたらしく、始末書やらなんやらでてんてこ舞いだったらしい。

 

しかもこれと似た事案をその二年後辺りに起きたパンデミックの時にもやらかしてしまった為、あちら側の閻魔様がいつも以上に顔を真っ赤にしてブチギレていたという噂まで流れていたそうだ。

 

まぁこの話が珍しいと言われているのは、本来神々の承認や特別な理由もなく他世界に魂が渡ってしまうのは御法度……

 

詰まるところ、なんの準備どころか手続きもなく他世界に自分たちが管理する魂が流れるということは、あってはならない失態なのである。

 

これが外の世界→幻想郷の場合は管轄地域の違い程度で軽く手続きさえしておけば丸く収まるのだが………

 

外の世界に誤って流し、あまつさえその魂を見失うというのはとんでもないスキャダルレベルの大惨事なのである。

 

今も捜索を行っているらしいが証拠を掴むことができず、最悪転生している可能性も含めて調べられているらしいが……

 

それはまた、別の話。

 

「っと、じゃぁ私はこの辺で………」

 

「あっ、小野塚さん!少々お待ちを………」

 

魂たちを連れて行こうとする小町に和人は引き留め、テーブルに置かれた饅頭とクッキーのいくつかを包みだした。

 

「ん?それは………」

 

「この子たちに供えてたものですが………

僕だけで消費しきれそうにないですし、地獄の皆さんにもお裾分けしたいです」

 

「お、おぅ………んーまぁ……どうせあっちで食べるなら関係はないか」*2

 

小町は一瞬戸惑うも、彼の善意と規則上は問題ないという判断のもとそれを受け取ることにした。

 

「じゃ、今度こぞ失礼するよ。お土産、あんがとさん」

 

軽くカンテラごと手を振り、小町と魂たちはその場から消えていった。

 

彼女の能力「距離を操る程度の能力」で地獄への道をショートカットして向かったのだろう。

 

「……急に静かになっちゃったなぁ」

 

その場に残った和人は独り、そんな言葉を呟く。

 

先ほどまで子どもたちが遊んでいたおもちゃたちは物言わず沈黙しており、談笑しながら至る所でお供え物を楽しんでいた魂たちも今は居ない。

 

「……よし、やりましょうか」

 

和人はたったそれだけを呟き、おもちゃの片付けやお供え物の包装を始める。

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、色々と申し上げたいことはありましたが……

今回は徳を積んでいたことですし、見逃すとしましょう」

 

その頃、そんな彼の様子を遠くから眺めていた人影が一つ……

 

幻想郷の地獄の裁判長、閻魔の「四季映姫・ヤマザナドゥ」その人であった。

 

「まったく……小町が珍しく余裕を持って仕事をしていると思えばこういうことでしたか。

悪くはない手ではありますが、その補填を考えていないのは戴けませんね」

 

「あら、じゃあその分は貴女が補填してくれるのかしら?」

 

そんな彼女の後ろにスキマが開き、いつも通り胡散臭い笑みを浮かべた八雲紫が現れた。

 

映姫は溜息を吐きつつ、背後に現れた紫の方へと向き直った。

 

「……部下の不始末の事後処理は上司の務めですから。

貴女も何か御用でもあるのですか?」

 

「ふふ、まぁそんなに邪険にしなくても良いじゃない。

せっかく彼への補填分の用意をしてあげたんだもの」

 

そう言って紫がスキマを開くと、その中にはぎっしりと呪具や菓子の材料が積まれていた。

 

「……用意周到ですね。この事態を見越していたんですか?」

 

「まぁ、この異変自体は予想していたわ。

……まさか彼の元にあんなに霊が現れて、それをもてなすなんて思ってなかったけど」

 

目を細め、遠くに見える片付け中の和人の様子を見ながら紫はそう答えた。

 

その目に浮かぶ彼女の思考に映姫は気づいていたが、あえて今言うまでもないとしてその点には口を閉ざす。

 

「……そういうことでしたら、支払いなどはそちらにさせていただきましょうか。

あと、こちらの書簡を彼に……」

 

「えぇ、渡しておくわ。さ、貴女には他にも行くところがあるんじゃないかしら?」

 

「露骨にここから去らせようとしていませんか?

……まぁいいでしょう、ここへの用事はもうありませんから」

 

そう返し、映姫はその場から立ち去ろうと浮かび上がった。

 

「……あぁ、そうでした。

八雲紫、貴女には警告しておきたいことがあります」

 

「……何かしら?貴女の説教に付き合う暇はないわよ?」

 

突然立ち止まって口を開いた映姫に対し、紫は少し不機嫌さを見せながら言葉を返した。

 

「……本当に彼女の幸せを願うのなら、あまり無理に押しつけたりはしないように。

徳とは関係なく、そうしなければ彼女に幸せなどあろうはずがないですから」

 

「……そのぐらい、わかっているわよ」

 

目線を下げ、扇子で隠された口元だけではなく目元にも影を落とした彼女のその表情は分からない。

 

だが何かを思い苦悩するかのようなその様子を見るだけに留め、映姫はその場を去っていった。

 

「……わかっては……いるのよ……」

 

映姫が去った後、紫はふらりとした様子で木へと身体をもたれかけさせた。

 

「……じゃあ、私は……私はどうするべきだったというのかしら……?」

 

その問いに答えることができるものがこの場にいるはずもなく、彼女の微かな嗚咽は魔法の森の闇の中へと消えていった

*1
ロボットのおもちゃで遊ばせたところ、参入してきた大人の霊たちがそう命名した遊び。ルールはボトムズ準拠でレギュラーゲーム仕様

*2
お供え物は宗派によって処分したりする場合があります。よく確認してから傷んでしまう前においしく頂きましょう。

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