東方死霊録   作:SCOPEWOLF

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どうもこんばんわ。
はい、ついに本格的に始まる妖怪の山編。
闘争という酒に呑まれた者たちが立ち回る騒がしい狂劇。
特等席から見る彼女たちの姿は微睡んでみる暇も与えません。
さてはて、この騒動の行く末はどうなることやら?
というわけで、本編をどうぞ


五.秋姉妹

――時刻は13:30、妖怪の山の麓

 

「……そろそろか?」

 

「あぁ、通達通りならそろそろここを通っていくはずだ。

間違っても弾幕の誤射とかやるなよ?」

 

「するわけないだろ……

私だってまだ死にたくはないんだ」

 

妖怪の山の玄関口とも言えるその場所にて、二人の白狼天狗が哨戒しながらそんなやり取りをしていた。

 

天気は清々しいほどの晴れ。

 

どこまでも青く澄んだ空が秋めいた紅葉に包まれている妖怪の山をより一層引き立てている。

 

そんな晴れやかな景色とは裏腹に、彼らの心情は陰鬱としていた。

 

「……ほんと、嫌なもんだよな。

せっかく鬼も立ち去って私たち天狗も自由に生きられるようになったってのに」

 

「嘆いても仕方ないだろう。

鬼だろうが神だろうが、連中は俺たちの都合なんざ知ったことじゃないからな」

 

「幸運なのは俺たち側にあの博麗の巫女がついてることぐらいか……

まぁ、あいつらが勝手に火種を撒いて焚き付けちまったらしいが」

 

「ほんと、馬鹿だよなぁ……

あの博麗の巫女に喧嘩を売るなんざ、命がいくつあっても足りねぇよ」

 

警戒を切らさず、白狼天狗たちの口からこぼれ出てくるのは今の状況への愚痴ばかり。

 

ただの下っ端である彼らにはこうして愚痴をこぼしつつ仕事をすることしか許されておらず、かと言って上の烏天狗や大天狗たちのような厄介な仕事も嫌だなぁとしか思えない。

 

良くも悪くも、上下関係の激しい社会に適応して上手く生きている者たちであった。

 

「……そういや、犬走のやつをしばらく見ないな?

お前、何か知ってるか?」

 

「アイツなら山の外に出向してるぞ。

何でも、山にとって相当重要らしい奴の護衛の任を与えられたらしい」

 

「マジかよ。

いやまぁ……アイツならそんな仕事任されてもおかしくねぇな」

 

「俺たちのなかでも一際優秀だからな。

この前やってた弾幕ごっこの訓練も烏天狗に勝ったらしい」

 

「おっかねぇな。

礼儀はあるがアイツ性格がきついし、もっと愛嬌ありゃあ惚れたんだがなぁ……」

 

「やめとけやめとけ、どうせ惚れたところでバッサリ斬られておしまいだろ」

 

そんな他愛もない……というより、噂になっている本人が聞いたら即座に首を撥ねられそうな会話をする白狼天狗二人。

 

そのまましばらく周辺を見渡していると、その片割れが遠くで何かがとてつもない速さで飛んでいるのを発見した。

 

「………おっと、どうやらきたみたいだぞ」

 

「やっとか………

じゃあ、さっさと俺たちも仕事をして本隊に合流するぞ」

 

「了解。………よし、これで良いな」

 

白狼天狗達はあらかじめ決められていたのだろう手順を正確にこなし、その場で狼煙を焚き上げた。

 

狼煙は天高く上がり、それに呼応するように遠くでも狼煙が何本も上がっていった。

 

「じゃ、行くか」

 

「はぁ………めんどくせぇなぁ……」

 

白狼天狗達は狼煙の火が周りに引火しないように細工をし、その場から急いで立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁッッ!?!?」

 

「な、何でも博麗の巫女がこんなところn……げぶぁッ!?」

 

「い、いやだぁぁッ!?!?

死にたくn………あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ッッッ!?!?」

 

「ったく、どんだけ山から離反してんのよ!

こんな数が多いとキリがないじゃない!」

 

『私に言われても困るんだけど!?あぁ、もう!

なんで私までこんなことしてないといけないのよ!』

 

山の麓…障害物などの少ないひらけた空域にて、無数の妖怪たちが次々に陰陽玉や退魔針、退魔の札等を受けて撃墜されていっていた。

 

ここに集まっているのは山の山頂に現れた神たちに従い、妖怪の山へと反旗を翻した妖怪たち。

 

中には力の弱い土着の神も混じってはいたのだが、それらも含めて成すすべもなく地に伏していった。

 

彼らを撃墜しながら愚痴をこぼす霊夢に対し、そのすぐ後ろを追うように飛んでいた鷹のようなナニカがそう叫んだ。

 

勿論この鷹は本物ではなくゴーレム……魔導人形である。

 

『くそう……!

にとりがアレにつきっきりで手が足りないからって、なんで私が………』

 

「ごちゃごちゃ言ってる暇があったらさっさと案内しなさい、え〜っと………たかはし?」

 

『「たかね」よ!た•か•ね!タカハシって誰よ!』

 

何やら重そうなトランクケースを足にぶら下げつつ、鷹型のゴーレムから鋭いツッコミが入った。

 

このゴーレムを操縦しているのは、一応今回の妖怪の山の異変において山よりの中立という立場をとっている筈の山童達の一人「山城たかね」。

 

事態が落ち着くまで大人しくアジトに籠ろうとした所をにとりに捕まってしまい、あれやこれやで霊夢の案内役を強制されることとなった哀れな少女である。

 

「ま、そんなことはどうでもいいわ。

さっさと奴らの根城をぶっ飛ばしてやるわよ!」

 

『ちくしょうッ、もうどうにでもなっちゃえぇぇぇッッ!!』

 

意気揚々と道を塞ぐ妖怪たちをしばきつつ、霊夢達は山頂を目指して空を駆けていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あややややぁぁぁぁぁあぁッッッ!?!?!?!?」

 

「ほぉら、まてまて〜!その荷物置いてけ〜!」

 

「誰が渡すもので………ひぃぇッ!?ひゃぁぁぁッ!?!?」

 

妖怪の山の中腹、天狗の里直通の空路上。

 

腕に大きなトランクを抱えつつ、風を置き去りにする速さで空を逃げ惑う文を一人の少女が追跡していた。

 

カエルを模したかのような特徴的な帽子を被った少女は無数の弾幕を展開しつつ、文ほどではないにしろかなりの速度で空を駆けていた。

 

「ホントにッ!とんだぁッ!?貧乏くじぃッ!?

ですよぉぉッ!?!?!?」

 

「じゃあさっさとそれ置いてってよ〜!

そしたらもう追わないからさ〜!」

 

「だからこれは渡せないって………ひぃぃぃぃッ!?!?!?」

 

絶叫する文に余裕はなく、とにかく必死に目標の場所まで逃げに徹していた。

 

『………うわぁ、あれは酷いわね』

 

そんな彼女の様子を遥か上空から一匹の鷲……いや、一体のゴーレムが監視していた。

 

操作を担当している鈴仙は必死に逃げる文をなんとか追跡しているが、そのあんまりな扱われ方に自身の事を重ねて見てしまっていた。

 

普段から八意永琳の実験につき合わされ、彼女が調合した薬品の臨床試験を強制的に受けさせられる毎日。

 

仕事で忙しいというのに、構えとばかりにいつも無茶な要求をする蓬莱山輝夜の相手。

 

そして、いたずらばかり自分に仕掛けてくる悪童(なお遥か年上)因幡てゐへの対処。

 

あまりにも自分と重ねすぎて思わず助けたくなるが、このゴーレムには戦闘能力が皆無。

 

それに自身の仕事もあくまで彼女の様子を確認して味方に共有するということだけだ。

 

歯がゆいが、ここは彼女を見守るだけにとどめるしかないのである。

 

「恨みますよぉぉ!大天狗様ぁぁぁぁぁッ!!!」

 

……意外と彼女の肝は据わっているらしい。

 

多分、問題なく作戦をこなしてくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「きゅ〜〜………」」バタン

 

「ふぃ〜、軽い運動ぐらいにはなったぜ」

 

『魔理沙さん、一応建前的にはこの辺でキノコ狩りしてることになってますからね?

あんまり派手にやらかすと疑われる危険もありますし、慎重にいきましょう』

 

「わぁってるって、ちゃんとこっちも色々準備してっから」

 

妖怪の山の麓から少し離れた川沿いのエリア。

 

背中にキノコ狩り用の籠に偽装した荷物を背負い、魔理沙は和人の操作するカラス型ゴーレムに導かれて低空でゆっくりと怪しまれないように飛んでいた。

 

道中、山頂の神々に与していたらしい秋を司る姉妹神「秋静葉」と「秋穣子」に絡まれたが………

 

「……まさか、ただの迷い込んだ人間扱いされるとはな?」

 

『そのほうが都合は良かったんですが……無理やり帰そうとされては仕方ありませんでしたからね』

 

「ま、あいつらが目を覚ます頃にゃあこっちの仕事も片付いてるだろ」

 

魔理沙の弾幕を受けて気絶した姉妹に拘束用の「金縛りののろい」が封じられた呪符を貼り付け、二人はそのまま目標地点へとまっすぐ向かっていた。

 

既に、賽は投げられた。

 

誰も彼もが後には引けない。

 

争いに飲まれる秋の長い午後が今、始まった




人は少なからず、負を溜め込むものである
しかしそんな負を川へと流し、福を招かんとする行事があった
そんな風習もいつかは忘却され、時代という川に流された
だが、流れ着けばこちらのもの
忘れられたならばここから始めよう
全ては人の幸福のためである
次回「厄神様の通り道」
回る雛人形が見る景色は何か
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