後書きよりも先にサブタイトルのほうがネタ尽きるの早いかもしれないと危機感を覚えております。
シナリオや設定はあらかじめ作り込んでますが、上二つは無計画でやったので詰みやすいのがおそろしいところ。
まぁそこはなんとかするとして、本編をどうぞ
今日も特に異変も無く平和な幻想郷。
しかし、平和なこの日も魔法の森の近くにあるこの店は少しだけ騒がしかった。
「うおあぁぁぁっ!離せぇぇッ!!」
「だめですよ。支払いはきちんとしてください。」
雲一つない青空に響き渡りそうなほどの声を出し、白黒のエプロンドレスを着た少女が少年に首根っこを掴まれ、引きずられながら逃げ出そうと藻掻いていた。
しかし、細身ながらもそこら辺の男児よりも鍛えられているのだろう少年の手から逃げる事が出来ないのか……抵抗もむなしく店の中へと連行されていた。
絵面が絵面の為に少し補足すると……少年は店の店員であり、逃げ出そうとしている少女は万引き犯……のようなもの。
商品をいただいていこうとしたところを店番をしていた少年に回り込まれ、反撃する間もなく捕まってしまったのだ。
なお、この事に関しては店主である霖之助は何も口を出していない。
彼としては、少女が改心して商品に対して金を払おうが、結局直さずに盗み癖が付いたままになろうがそこまで気にすることでは無いと考えているからなのだそうだ。
「な、なぁカズ?私らの仲だろ?これぐらい別に見逃してくれたっていいんじゃないか?」
「魔理沙さん……僕は貴女とは盗みを許容できる間柄とは思っていませんよ?むしろ、友人として貴女のその盗み癖を治すべきだと思って接していますから。」
少し辛辣に見えるかもしれないが、こうでもしないと彼女は止まる事をしないのだ。
「な、なら立て替えてくれよ。今、私は金を持ってないんだ!」
この発言に対し、カズと呼ばれた少年……和人は呆れたかのように溜息を吐く。
「魔理沙さん……貴女、そう言って僕から借りた一円*1をまだ返していないですよね?」
「……。」
魔理沙と呼ばれた少女は、和人からの指摘を受けて急に暴れるのピタリとを止めた。
「魔理沙さん。僕は基本的に女性に乱暴な事はしたくないです。ですが…」
そう言うやいなや和人は魔理沙の顔を自分の方向に向け、彼女の目を覗き込んだ。
「あまりやりすぎるようなら……その時は容赦なく、貴女にそのツケを払ってもらう事になりますよ?」
「……ッ⁉」
彼の少し威圧感を含んだ目を見た魔理沙は、竦み上がるように全身が固まった。
まるで、蛇に睨まれた蛙の様に…。
「…まぁ、今回は持っていこうとしてたその妖魔本を返却してもらう事で手を打ちましょう。」
と、そこで彼は普段の温和な雰囲気の表情に戻った。
魔理沙は急に緊張感が切れたのか、思わずその場にへたり込んだ。
「…っと、大丈夫ですか?」
和人はへたり込んだ魔理沙に手を差し出す。
「あ、あぁ、大丈夫だぜ。すまないな。」
そう返しながら魔理沙はいつものへらっとした表情を戻し、和人の手を取って立ち上がった。
(こ、怖えぇ…。)
表面上はなんとか笑顔で取り繕っているが、内心先程の和人の威圧で震えあがっていた。
実の所、彼女がこうして和人に怒られるのは実に三度目になるのだが……和人が怒っても多少の威圧はするものの、そこまでトラウマになるほどの事……
例えば暴力や拷問等はやらない為懲りていないのだ。
和人は和人で、こうやって魔理沙に対して釘を刺すことはあってもついつい甘やかしてしまい、それ以上は特に何もしないのだ。
とは言え……魔理沙も流石に釘を刺されたところは直そうとしてはおり、少なからず改善はされてきている。
例えば、以前は「死ぬまで借りてく」と言いながら持っていくところを「1週間後には返す」と言いながら持っていくところなどだ。
因みに二人は今はこんな感じではあるが、特に盗みに来たわけでもなく訪れた時には普通に談笑できるぐらいに仲がいい。
三か月前、和人が幻想入りして香霖堂で住み込みで働き始めた頃に魔理沙が話しかけて以来、二人は不思議と話が合って意気投合していた。
最も……その時に商品を盗まれてしまっていたので、この頃からこうして和人は魔理沙に釘を刺すようになったのだが。
「…で、カズ。少しぐらいこの妖魔本を読ませてもらっても…」
「駄目です。」
魔理沙は和人に媚びるような視線を向けるが……焼け石に水。
上目遣いでお願いされても動じず、キッパリと彼女の要求を切り捨てた。
「ぐぅ、す、少しぐらいいじゃないか…。」
「金も払ってないのにそんな事させるわけが無いですよ、魔理沙さん。」
「それに…」と言いながら和人は魔理沙の帽子から奪い返した本をチラリと見る。
「…これはあまりに危険すぎるので、「霊夢」さんに頼んで破壊してもらうつもりです。いくら魔理沙さんでも、これは渡すことは出来ません。」
そう言いながら、和人は表紙に「Death note」と書かれたその妖魔本を爆発物を扱うかのごとく重要な物をしまっておく専用の金庫に入れる。
因みに、この妖魔本。
霖之助が「無縁塚」と言う場所から拾ってきたのだが……霖之助の能力「道具の名前と用途が判る程度の能力」で鑑定した結果、超が付くほどの危険な物品であった。
二人での協議の結果、次に博麗神社の巫女である「博麗霊夢」という少女が来た際にどういう物なのかを説明して適切に破壊してもらう予定の物だった。
尚、調べていた時に謎の妖怪らしき存在が出現したが……和人が幻想郷に来てすぐの頃に身に着けた霊夢直伝退魔術(物理)と、霖之助が所持していた退魔の札(博麗の巫女製)のダブルアタックで消し飛ばされていた。
そんなことはつゆも知らずか……魔理沙は和人が口にした名前にムッとした様子を見せた。
「…また、霊夢なのか。(ボソッ)」
「……?何か言いました?」
和人は思わず出たのだろう魔理沙の呟きを聞き取れず、手を付けたばかりの商品の手入れ作業を一旦止めて聞き返した。
「……何でもない!邪魔したな!!」
そう言って魔理沙は何かに怒ったように外に飛び出すと箒に飛び乗り、どこかへと物凄いスピードで飛び立っていった。
「…?一体、どうしたのでしょうか?」
和人はそう言いながら首をかしげつつも、はたきで商品の埃を落とし始めるのであった。
人は脆弱なり。
それは楽園に定められた運命。
しかし、人はそれに抗う。
彼らは、追い詰められたその時に向く牙を備えねばならないのである。
次回「修練」
give and take
それはこの世の定めなり。