さて、今回は予告通りに外の世界での和人についての掘り下げ回となります。
とは言っても目新しい情報はそこまでなく、ほとんど補足みたいな物なんですが。
そういえばなんですが、一話の方で和人を熊に襲わせてましたよね?
実はあれ、初期のプロットを作った当時(大体高校生ぐらいの頃)から練っていた物だったんですよね。
まさかのリアルでも似たような事が起きるとは、当時まだSCOPEWOLFではなかった少年は知る由もありませんでした。
北海道とかならそういう話もよくあったでしょうけども、私自身は九州もんですし……
推定和人の地元があるだろう本州には一応熊も生息してますし、恐らく陸上でもっとも脅威になるのは熊じゃないかなというなんとなくの妄想を取り入れた結果がこれです。
現実味薄いかなと思いましたが、ちょっとこれは笑えませんわ……
何なら絶賛非公開の前作でも主人公が熊(妖怪)に襲われてますし、なんだかんだ熊ネタをよく使ってました。
……これ不謹慎とか言われないかなぁ……?
それはともかく、本編をどうぞ
日常:再会は突然に
「っと、着いたぜ」
「……ここが」
ある日の魔法の森は和人の自宅前。
魔理沙と共に一人の少女が地面に降り立ち、感慨深そうにポツリと一つ呟いた。
「しっかし、外の人間っては聞いてたが……
まさかカズの知り合いだったなんてな?」
「私もまさかあの人がここに居るとは思いませんでしたよ!
……外の世界の方では行方不明になったあと亡くなったって事になってましたから」
「おぉう、まじか……
いやまぁこっちで二年ぐらい暮らしてたし、そりゃそんな扱いになっててもおかしくはないか」
そんな会話をしつつ、魔理沙はアレからずっとここで門番……というよりは守衛をやってる椛に一つ挨拶しながら敷地内に入っていく。
あとを続くように駆けていくもう一人の少女に椛は少し顔を顰めるも、一応は山の方からも問題はないと達しが出ているためにそのまま通した。
「ま、カズもそのほうが気楽なのかもな?
どうにも外の世界には戻りたがってはなかったし、何かしらしがらみでもあるんだろ」
「そう……かもですね」
何かを思い浮かべたかのように直球で投げられた魔理沙の言葉に対し、少女は苦笑いで返すしか無かった。
どうやら彼女には何か心当たりがあるらしい。
「カズが外でどうだったかは知らんが、今は今だ。
どっかの賢者も言ってたが、幻想郷は全てを受け入れるらしいからな!」
「……そうですね!
では、受け入れてくださるお返しにこちらを……」
「すまんが私の信仰は博麗神社なんでな。
丁重に断る!」
「そんな殺生な!?」
先程の暗い雰囲気はどこへやら。
玄関前での軽口の応酬で陰気を吹き飛ばし、改まったように少女は玄関の戸につけられたボタンを押した。
どこからかカランカランと音が鳴り響き、それから程なくして戸が開かれた。
「はい、どちらさまで……」
そう言いかけながら顔を覗かせた和人。
彼の視界に映った人物を認識した途端、硬直したように動きが止まった。
そして一拍あいて開いた口から出てきたのは……
「…………東風谷さん?」
「はい!お久しぶりです、霊宋寺先輩!」
困惑交じりの和人の声に応え、少女……東風谷早苗は再会を喜んだ。
「……まさかそちらの方から接触して来るとは思いませんでしたよ。
まだ来たばかりで色々と忙しいらしいと聞いてましたが……」
「確かに忙しかったですけど、こちらにいる魔理沙さんに色々と手伝ってもらったおかげでなんとか落ち着けるようになったんです!」
「外の世界について色々興味もあったしな。
手伝いついでに色々聞けて有意義だったぜ」
場所は変わって和人の家の居間。
淹れたてで湯気の立つ緑茶の入った湯呑みを片手に、三人は談笑に耽っていた。
「先輩が幻想郷にいるって聞いたときはびっくりしましたよ!
外の世界の方では熊に襲われたとかで亡くなったとしか聞かされなかったので……」
「あー……確かに熊に追いかけられましたね。
そういえばあの時の熊は……?」
「ニュースで見た情報ですけど……
他の所で暮らしてた個体が迷い込んできたらしいです。
しかも、その熊が食べちゃったらしい人のご遺体も見つかったらしいです」
「それで丁度山に入ってた僕がその被害にあったということになってしまった、と。
成る程……確かにあの時熊は僕を完全に獲物として見てましたし、どことなく血の匂いもしてましたね」
「よくまぁそれで生きてたよな。
今ならまだしも、襲われた時ってただの少し鍛えただけの人間だったしな」
「今なら追い払うぐらいはできるかもしれませんね。
……まぁあんなのを相手するのは二度と御免被りますが」
それもそうかと笑い合う和人と魔理沙。
和やかな二人の様子に安堵の息をつきつつ、早苗は緑茶に口をつけた。
「……そういえばカズ。
あん時お前が操縦してた絡繰って今はカズの家にあるんだろ?
あれって河童たちの物なんじゃ……」
「その河童の方々……特ににとりさんのほうからの希望で送られてきたんです。
一応天狗の方々の方にも許可は取られてるみたいでして、友好の証として寄贈ってことらしいですね」
「ほーん、あいつらがねぇ……?
なんか裏はありそうなんだが……まぁどうせまともに動かせるかもわからん状態だったしな」
「……もしかして、神奈子様に砲撃した戦車って先輩のだったんですか!?」
「え?あ、あぁ……確かに相手の神様に砲撃しましたね。
……もしかして僕、祟られます?」
「い、いえそういうわけではないのですが……
神奈子様が「私に一杯食わせたやつにお礼をしてあげないとねぇ」と、申してまして……」
「……カズ、別に連中のとこに行かなくていいと思うぞ。
絶対面倒事になるし、なんならあっちから来るだろ」
「ははは……菓子折りだけでも準備しておきましょうか?」
いくら戦時だったとはいえ、神に一発食らわせた事実は消えない。
近いうちに訪れるだろう神に対し、どう許しを請おうかと和人は頭を回すのであった。
「……良かった、お元気そうで」
帰り道、早苗はポツリとそんな言葉を零した。
「……あの人は変わらないなぁ。
優しくて、面倒見も良くて、それでいて少し抱え込み気味なところも……」
そうつぶやく早苗の顔に浮かんでいるのは悲しみの表情。
彼女の脳裏に思い出されるのは、外の世界でも薄っすらと見えていた和人の霊力……
それになにか異様なものが混ざっていることに彼女は気づいていた。
「妖怪……でも、半分人間の霊力もあったし……もしかして半妖、なのかな…?」
和人も魔理沙も彼の体のことについては一言も言っていない。
しかし、早苗は自力で和人の体の変化を見抜いていた。
「……でも、半妖だとしても先輩は先輩だった。
ならあの人の心はまだ人間のままだよね……!」
和人の変化に気づきはしたものの、早苗はそれでもなお彼自身の心は変わっていないと認識していた。
「……あの時は結局、頼ってばかりで何も伝えられなかった。
でも……これからは私だって……!」
彼女の脳内に思い浮かぶのは中学の頃の思い出。
自分を含めた後輩の面倒をよく見てくれる頼れる先輩だったが、一方で彼自身は孤独だった。
中学からの後輩である彼女たちにはよく分からないが、小学校の頃に"何か"があったらしい。
前に他の先輩から事情を聞いた後輩達もいたが、聞いてもなお彼が煙たがられる理由が分からなかったらしい。
むしろ聞けば聞くほど彼自身は何も悪くないと感じ、その先輩達と仲がいい者以外の後輩達は男女問わずに彼を慕っていた。
……だが、それを知ってか知らずか彼は面倒を見るだけでそれ以外は心を閉ざしていた。
比較的近しい距離にいた早苗ですらもついぞ心を開くことはなかった。
……しかし、再会した和人には昔のような閉鎖的な雰囲気は無かった。
だからこそ彼女は「今度こそは…!」と拳を握る。
もちろんだが、こちらでもライバルは多いかもしれない。
中学時代、ストレートにぶつかっていってことごとく粉砕されていったライバル達。
彼女達を阻んでいた壁は今や溶けかけ。
それを為したのは恐らく早苗を彼の下へと案内した人物……
彼女の勘ではあるが、他にも何人かいるかもしれない。
それでも早苗はめげないし諦めない。
想い続けた末に奇跡は起きると信じ、彼女は幻想郷での新たな一歩を踏み出した。