東方死霊録   作:SCOPEWOLF

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どうもこんばんわ。
さて、今回の話ですが……少しシリアスめのお話です。
そもそも、元のこの作品のシナリオや設定はボトムズとは関係なしに作られてたんですが……
丁度そのシナリオにボトムズを混ぜることによって良い感じに調和できたので、急遽微量づつですが混ぜ込んだというのが経緯になります。
なので元々のシナリオのシリアスを語りつつ、ボトムズ要素がどのように絡むのかをこの話で軽くですが触れます。
というわけで本編をどうぞ


日常:守りたいもの

ある日の和人の工房。

 

その主である彼は、目の前に置かれたスクラップを前に悩んでいた。

 

「なんとか東風谷さんに頼んで回収はできましたが……

これ、どうやっても直せませんよねぇ……?」

 

そう、そのスクラップというのは先の異変で破壊されたエナジーシューター。

 

色々とあって直接見に行けなかったため、早苗に頼んで残骸が残って無いかを確認した上で持ってきてもらったのだ。

 

現在そのスクラップから得られたデータを下に改良したエナジーシューター改もなんとか完成にこぎつけ、データ取りをしつつ実績を得るために魔理沙へと預けている。

 

一方、彼の手元にあるのはこのスクラップと化した初代のみ。

 

作り直したほうが早いだろうが、参ったことにこの兵器に使われている材料にはそれなりに貴重な品が含まれている。

 

一応彼は霖之助作のライフル「魔導銃壱式」や切り札でもある相棒「八卦銃」を所持しているが……

 

これだけの近代兵器ベースの魔導具を用意していようとも、それでもまだ足りない。

 

少なくとも、彼に対して妖怪の賢者はそう語っていた。

 

この兵器類は和人の命綱であるのと同時に、紫から命じられた幻想郷の防衛プログラムの一環としての側面も持つ。

 

なぜそんな物が必要なのかは和人も知らない。

 

あくまで彼は幻想郷に危機が迫っているらしいということしか聞かされていないのだ。

 

いつ来るかも不透明なそれに対抗するため、とにかく幻想郷を……

 

特に力の弱い妖怪たちや人間たちを守る為にという大義名分の下、彼はあの手この手で非科学的技術製の兵器を製作していた。

 

なお、外の世界の武器をそのままではだめなのかと言う疑問については……

 

 

『幻想郷のバランスを乱しかねないから100%科学製の兵器は駄目よ』

 

 

とのことだった。

 

何とも線引の境界が曖昧なものである。

 

とまぁそんなわけで、現状魔理沙が無事にエナジーシューター改を返してくれることを祈るしかできない現状。

 

一応他の兵器……マシンガンやらミサイルランチャーやらも作ろうと思えば作れるが、正直それらは上位互換とも言える弾幕やスペルカードがある為に個人の携行用としてはあまり必要性がない。

 

試作中の"例の兵器"も、現在はバランサーの製作を河童の方に受注してそれを待っている状況。

 

香霖堂の仕事といえば、現在店舗地下工房と地上とのシャフトを改装の為に休業中である。

 

さらにはここのところ廃材アクセサリーの需要も落ち着き、作ったところで倉庫の在庫をさらに肥やすだけとなっていた。

 

これらの都合により、和人は何かしようにもやれることがなかった。

 

「……どうしたものでしょうか?」

 

「あら、そんなに暇なら霊夢のところにでも様子を見に行ったらどうかしら?

あの子もいろいろ頑張ってるし、少しは励ましてあげたらどう?」

 

「うーん……それだと霊夢さんにご迷惑じゃないでしょうか?

あの人もなんだかんだ言いつつ最近は忙しいみたいですし」

 

「ふふ、いつも押しかけてるも同然なのにそんな事をあの子が気にするかしら?

いつも押されてばかりなのだし、貴方から押しに行ってみるのも良いじゃない」

 

「いや、それとこれとは話が別で……

ん、あれ?今僕は誰と話を……」

 

ふと自然と誰かと会話していることに気が付き、和人は先程まで誰もいなかったはずの後ろを振り返る。

 

するとそこには……

 

「あらあら、後ろががら空きよ?」

 

「のわぁッ……!?ゆ、紫さん!?」

 

音一つ立てることなくスキマを開き、上半身だけで和人を見下ろす紫の姿があった。

 

突然のことに和人は動揺し、バッと横に跳び退った。

 

「い、いつの間に……

というより、なぜまた急に……?」

 

「例の件の進捗確認も兼ねて様子を見に来たのだけど、そのガラクタを前に何か悩んでいるみたいだったから。

ちょっとからかうついでに焚き付けてあげようと思っただけよ」

 

「進捗についてはこの前藍さんにレポートを提出したばかりのはずですが……」

 

「ふふ、偶には現場確認っていうのも大切でしょ?

この件の責任者は一応私なのだから」

 

得体のしれない妖しげな笑みを浮かべつつ、紫はスルリとスキマの中から抜け出してきた。

 

「確か数日前の工事の時、こっちに一旦例の機体達を移したんでしょ?

今はどんな状態なのかしら?」

 

「今はシリンダーとかの基礎フレームとかポンプとかの既成品だけを組んでる状態です。

ただ、姿勢制御用のバランサーやOS周りの制御装置……

あとは操縦用人工知能関係の装置や設備が未完成という状態ですね」

 

カチリと工房地下へのスイッチを入れ、地下への梯子を出した。

 

「……ここ、エレベーターとかにできなかったのかしら?」

 

「さすがに予算と隠し部屋の構造の都合で難しいですね。

どうしても絡繰を仕込もうとすると色々と大掛かりに設置しないとですし、それだけのスペースが構造的に無いもので……」

 

「うーん、まぁ悪くはないのだけど……

ちょっとこの梯子だと降りる時に下のほうが気になるのよねぇ」

 

そんな事を宣いつつ、紫はスキマを開けて下へとストンと降りていった。

 

その様子に苦笑しつつ、和人も梯子を滑るように降りて入り口をすぐに閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫の査察に同伴しつつ、和人は施設内の諸々の説明などを交えつつ現状を報告していた

 

「……で、今は小型化と通常の大きさのを同時に作ってる訳ね?」

 

「はい。

幻想郷で運用する場合、元の大きさのだと少し小回りを利かせづらいですからね。

これが開けた場所ならまだしも、人里とかでの運用も考慮するとハーフサイズぐらいが丁度いいかと」

 

「うーん……まぁ性能が大体同じぐらいなら別に問題ないと思うわ。

あくまでこれは数を揃える目的で用意してる訳ですし」

 

「装甲厚も元の物より頑丈かつ軽量な物を使用する予定なので、元の機体よりも撃たれ強くなってますよ。

一応試験用でお借りしたものを使用したのですが、対戦車ミサイルの直撃でも貫通せずに少し凹んで焦げるだけに留まりました」

 

「装甲のコストは?」

 

「少なくとも元のやつよりは遥かに調達しやすいです。

とは言っても、他の装甲だと値段の割に話にならないぐらい脆すぎたというのもあるんですが」

 

「……まぁ、とりあえずそれの方向でいきましょう。

量産体制はある程度確保できてるのよね?」

 

「部品の製造レーンやにとりさん達主導の自動組立機械、半自動のメンテナンスドックは各地下拠点に配備が始まってます。

ここの設備は試験的運用も兼ねて先に配備を完了してますが、メインの拠点はここの運用データを元にして建設予定ということになっていますよ」

 

「うん、今のところ順調に進んでるわね。

……この調子なら余裕を持って間に合わせられ……」

 

ふと、そこで和人の足が止まっていることに紫は気がついた。

 

後ろを振り返ると、複雑そうな顔をして立ち止まる彼の姿があった。

 

「……どうしたのかしら?

何か問題でも……」

 

「……紫さん。僕は……僕は一体何のためにあれを作っているんでしょうか?」

 

和人の言葉に、紫は目を点にしつつもいつも通りの胡散臭い笑みを浮かべて口元を扇子で隠した。

 

「何度も言うけど、あれは幻想郷を守る為に作っているの。

それ以外の理由なんて……」

 

「それは分かっています。

……分かっては、いるんですが……」

 

和人は一呼吸置き、まっすぐに紫の目を見て口を開いた。

 

 

「あれが必要なほどに、幻想郷に迫ってる危機……

恐らく、"外敵"と思われるものは強大なのでしょうか?」

 

 

その言葉に、二人の間に静寂と緊張が走る。

 

重い沈黙が数秒も流れ、先にそれを破ったのは紫であった。

 

「……詳しいことは私のもわからないの。

でも……何が来ても良いように備えなければならない」

 

紫はパチンと口元を覆っていた扇子を閉じ、カツカツと歩みだした。

 

「……もちろん、他にも対抗策がありはするわ。

むしろ、もう一人の賢者はそれを推しているもの」

 

「……では、なぜ?」

 

「そっちの策は成功するか不安がある上、失敗すれば私にとっては取り返しがつかない事態になり得るからよ」

 

きっぱりとした声でそう答え、工房の隅で吊るされている緑の古ぼけた緑鉄巨人の足元へと歩み寄る。

 

「……だからこそ、私は貴方に少し期待しているのよ。

私はこの幻想郷を守りたいけど……もう一つ、守り抜きたいものがあるのだから」

 

「買い被り……というわけにはいかないでしょうかね?」

 

「そうね。

少なくとも、私はその期待を叶えてもらうためにこうして色々と貴方に投資しているもの」

 

紫はあいも変わらず静かに眠る鉄巨人の足に手を這わせ、何かを思い悩むように目を細めた。

 

「……それに、これは貴方にとっても同じ事。

幻想郷の運命も、私の守りたいものも……

どちらも貴方にだって言えることですもの」

 

「僕も……ですか?」

 

「えぇ、そうよ。

詳細なことは賢者内の秘密だから教えられないけどね?」

 

それだけを言い残すと、紫はスキマを開いてその場を去っていった。

 

一人残された和人は紫の言葉を反復しつつ、なんとなしに吊るされた鉄巨人のコックピットの中へと入って静かに呆けていた。

 

(……僕にとって、守るべきもの………)

 

ふと、彼の頭の中に浮かんでくるのは幻想郷で出来た大切な人たち。

 

 

幻想郷に来たばかりの異邦人である自分を香霖堂に受け入れた森近霖之助。

 

 

その香霖堂で知り合い、今では知らず知らずのうちに心を開けるようになるまで親密になっていた霧雨魔理沙。

 

 

……そして色々とありつつ、師としても人間の守護者である博麗の巫女としても色々と世話になった博麗霊夢。

 

 

他にも妖精や一部の妖怪の子達等々………

 

守りたいと思えるものが溢れるように脳に浮かんでくる。

 

「……こんな僕でも、今度こそは守れるのかな?」

 

静かにそう問いかける言葉が漏れ出るが、それに答える者はいない。

 

彼を胸に抱く鉄巨人もまた、答えることなく静かに眠り続けていた。

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