春季例大祭の準備で忙しくしつつも、なんとか書き上げました…。
来週、投稿されることがなかったらまぁ……そのときはダウンしてると思ってください。
それでは本編をどうぞ
追記:ちなみにですが八話行く前に和人の日常の短編をいくつかまとめて出します。今日の次回予告は八話の内容です。
「あははっ、まだまだだなぁカズ!」
「はぁ……はぁ……さ、流石は魔理沙さん。」
訓練という名のお遊びの弾幕ごっこは、僕の負けという結果で決着がついた。
やはりと言うべきか……弾幕ごっこの経験だけではなく、実戦の経験も豊富な魔理沙さんには敵わなかった。
未だ未熟なスペルカード……いや、まだ完成してすらいないこれはスペルカードとも言えないのかもしれない。
今の僕の弾幕では彼女たちの足元にも及ばないだろう。
更にいえば、今回魔理沙さんは「地上で」弾幕ごっこをしていた。
これは未だに自力での飛行が出来ない僕へのハンデなのだ。
通常、弾幕ごっこは空中戦。
幻想郷の住人達の中でも、弾幕ごっこを積極的に行う彼女たちの多くは空を飛ぶ術を扱う。
魔理沙さんであれば魔法をかけた箒、霊夢さんであれば能力、最近ちょっかいをかけられることが増えた妖精の子たちであれば彼女たちの背中に生える羽の力といった感じだ。
一方、僕はそういった能力や技能があるわけでもなく……
なんとか自力で飛べる方法を魔理沙さんに頼んで探してもらってはいるが、あまりかんばしくないようだ。
一応僕自身も色々と試してはみたが……
上げられた成果と言えば、すごく燃費が悪い代わりに地上をそこそこの速さでホバー移動をするように動くことができる術を編み出したぐらいである。
……これのおかげで生存率こそ上がったが、やはり空を飛ぶ彼女たちへの不利な状況は変わらない。
いつまでも彼女たちに迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
「……っと、朝っぱらから派手に動いたせいで腹減ったなぁ?」
わざとらしくそんな事を宣いつつ、魔理沙さんはこちらに期待の籠もった視線を向けてくる。
彼女は僕に稽古をつけてくれる代わりに、こうしてご飯の要求をしてくる。
もう慣れたものだが、この遠慮のなさはいかがなものかと思はなくはない。
「はいはい……いつもので良いですね?」
「おっしゃ、頼んだぜ!」
僕に朝食の準備を任せ、魔理沙さんはさっさと僕の家の奥にある部屋……幻想郷内でもっとも最新の技術で制作された風呂場へと突入していった。
確かにあの風呂場は彼女が主導して設置していたが……
もう少し人の家では遠慮して欲しいものだ。
そう思いつつも、僕は朝食を作るために台所へと向かった。
まずは米を計り、軽く研いでから香霖堂で不良在庫だったところを買い取った中古の釜に適量の水と一緒にぶち込む。
この際、米の研ぎ汁は後で掃除や野菜のアク抜きなどに使う為取っておく。
釜を火にかけつつ、そこらへんで拾ったのを修理した金属鍋に水を入れて沸かして味噌汁を作る準備をする。
好みの具材である豆腐は魔理沙さん達経由で偶に手に入るが……今回は無いので用意はしない。
かわりに[玄武の沢]と呼ばれる場所で取れるらしい食用の藻を乾かしたものを用意し、下処理などが済んでるそれを既にだしを取って味噌を溶いた汁に大量に投入する。
こうして味噌汁も用意して主菜の魚を焼くために串を用意したころ、家の表にある庭の方に誰かが降りてくる音が聞こえた。
どうやらもう一人のタダ飯喰いが来たようだ。
「邪魔するわよ~。…あぁ、いい匂いがするぅ~。」
大きく開かれた玄関から、紅白の巫女服のような物を着た少女が顔を覗かせる。
彼女は幻想郷の管理者である当代の博麗の巫女「博麗霊夢」さんだ。
彼女も魔理沙さんと殆ど同じぐらいの頻度でタダ飯を食いに来ている。
ただ、彼女はそのついでに家に張られている対妖怪用の結界を点検してくれている。
あまりとやかく言える立場ではないのは確かだ。
偶に彼女たちは色々と生活必需品等の物資を持ってきてくれるが……それでも全体的に持ってかれる物が多い故に少し複雑な気持ちになる。
因みにだが……彼女たちが持ってくるものといえば、大体はどっから拾ってきたか分からないような曰く付きの品や、色々と何かを作ったり修理したりする時に使う金属系のジャンク品である。
そういった物は家の母屋の横にある蔵の中の一角を占領して保管している。
他に蔵の中には最近になって作り始めた自家製味噌や、霊夢さんと魔理沙さんにせがまれて作り始めたお酒ぐらいしか入ってない為、別に問題ないだろう。
外の方では日本の法律で二十歳以下は酒を飲んではいけないことになっているが、幻想郷にはそんな法律は存在していない。
人里とかの一部ではいい顔はされないこともあるらしいが、結局その辺りは自己責任となっている。
ちなみに僕も酒は飲んでいる。
少し抵抗感はあったものの、郷に入れば郷に従えと飲み始めて以来かなり好んで飲んでいる。
ついでに言うと、僕は特に酒癖などは悪くない。
寧ろ酔いが回るのがかなり遅く、大体酒樽二つぐらいでやっと酔いが回るぐらい酒に強い。
一緒に飲んでいた霖之助さん曰く、「まるで鬼のような飲みっぷりだった」とのことだそう。
それが誉め言葉なのかはさて置いて、僕もさすがにそこまでは普段から飲む訳では無い。
だが……収入源が薄い僕としてはある程度の節約も必要なために、できるものは自力で調達していく。
現在は酒や味噌、おまけで本で調べて試作している醤油までもをいくつかの蔵の区画ごとに作り分けている。
魔理沙さん経由で「紅魔館」……以前紅霧異変を起こしたお屋敷に住む魔法使いさんから、実験協力という事で渡されたらしい気候調整を自動でしてくれる魔道具。
その試作品のおかげで管理もしやすい。
こういった事もあって近頃隣の森を少し切り開き、発酵食品用の蔵を増設しようと計画しているが……
空気が冷える今の時期に、寒さに弱いらしい建築業者さんに依頼するわけにもいかないだろう。
…取り敢えず先の事は置いておき、魚を焼くための用意をする。
海がない幻想郷において、食用魚は大抵淡水魚が使われている。
今回は数日前に何匹か釣って干して置いた鮎を焼くことにした。
「う〜ん……いい匂いねぇ~。」
「お~い、カズ〜!後どのぐらいだ?もう匂いだけでめっちゃ腹が減ったぜ…。」
外に出て七輪で焼いていると、そんな声が母屋の方から聞こえてくる。
人の家の飯を食べに来てるのに、この態度である。
しかし、そんな毎日でも悪くないと思っている僕がいる。
「もうちょっと待っててください!後四分ぐらいで焼き上がますよ!」
今日も、上手く焼けてきている鮎を見ながら、僕はこの束の間の幸せを噛みしめていた。
切ろうにも切れぬ縁。
それは運命のみならず、選択によっても起こり得る。
例えそれが咄嗟の判断であろうとも……
選びとり、道を進んだのであればその呪いを受け入れねばならない。
次回「序章」
遂に、物語という名の運命の歯車は回りだす。