転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は? 作:スウェーデンクラス
ヘルヴォル・ハンガーデッキ
ザクⅡC型のコクピットで、俺は計器の確認を進めていた。まだ実機に慣れていないこともあり、慎重に操作系の感触を確かめていく。
「スロットルの感触は悪くない……視界も良好。問題は……こっちか」
モニターの一部を指でなぞりながら、小さく息をついた。
(訓練用のシミュレーターとは、やっぱり少し勝手が違うな。特に操縦桿の感度が微妙にズレてる……調整が必要だ)
そんなことを考えていると、下から声が飛んできた。
「おい、新入り!いつまでコクピットに籠もってんだ!」
低く響く、しかしどこか温かみのある声。
(クラウス隊長か)
イオリはコクピットハッチを開け、整備用のタラップに足をかけながら降りていった。そこには、軍服の襟を少し崩したクラウス・シュレンケ大尉が腕を組んで立っていた。
そのそばにはエリック伍長とカール二等兵が並んで立っているが、カールが怯える子犬よろしくエリックの陰に隠れているのようにも見えるのは気のせいか。
「ザクの調子はどうだ?」
「操縦系統に若干のズレを感じます。調整が必要かと」
「ほう、なかなかよく見てるじゃねえか。だが、調整は後回しだ。艦長が会議から戻った。挨拶に行け」
クラウスは顎をしゃくって、艦長室の方角を指した。
「……今すぐですか?」
「当たり前だ。貴様、軍人が最初にやるべきことも分からんのか?」
「いえ、了解しました」
俺は敬礼をし、すぐにハンガーを後にしようとする。しかし、その前にクラウスが軽く笑いながら言った。
「艦長は堅物だがな、変な奴でもある。規律に厳しいくせに、部下を見捨てるのは嫌う。お前のことも値踏みするだろうが……下手に媚びるなよ」
「……ありがとうございます、参考にします」
クラウスの忠告を胸に、艦長室へと向かった。
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俺はクラウスに言われた通り、艦長室へ向かうことになった。しかし、艦内はまだ慣れておらず、どこをどう行けばいいのか分からない。
「イオリ少尉、俺たちが案内するっすよ!」
人懐っこい笑顔で駆け寄ってきたのはカール・シュナイダー二等兵だった。エリック・ホフマン伍長も、その後ろから落ち着いた表情で歩いてくる。
「勝手についてきたら迷惑だろう、カール」
「いいじゃないっすか、伍長!少尉だって初めての艦内なんですし!」
カールは楽しげに笑いながら、イオリの隣に並んだ。
「……まあ助かるよ。案内を頼む」
そう言うと、カールは嬉しそうに胸を張る。
「任せてください!こっちですよ、少尉!」
カールが先導し、エリックがそれに続く形で歩き出す。
その道中、ふと気になったことを尋ねた。
「そういえば、艦長はどんな人なんだ?」
「アイゼンの親父ですか?」
カールが軽く笑いながら言うと、エリックが即座に眉をひそめる。
「おい、勝手にあだ名で呼ぶな。少尉の前だぞ」
「いやいや、皆そう呼んでるじゃないっすか!」
カールは肩をすくめながら、話を続ける。
「ゲルハルト・アイゼンベルク少佐。規律には厳しいけど、部下を見捨てない義理堅い人っす。戦場でも撤退命令が出た時、取り残されそうになった部下を救うために、命令無視してまで戻ったことがあるって話ですよ」
「……それで処罰されたりは?」
尋ねると、エリックが少し苦笑しながら答えた。
「軍規違反ではありましたが、結局、彼の判断のおかげで部隊の損害は最小限に抑えられました。上層部も処罰しづらかったんでしょうね。まあ、そういう性格の人です。その性格のせいもあって今も少佐止まりって噂もあります」
「なるほどな……」
「でもまあ、めちゃくちゃ怖いっすよ?」
カールが少しだけ声を潜めて言う。
「怖い?」
「ええ、部下のことは大事にするけど、その分、軍人としての矜持を持ってない奴には厳しいっすね。舐めた態度を取ったら、マジで睨まれるっす……」
カールが眉を歪めて拗ねるように言うと、エリックが溜息をつく。
「お前がよく睨まれるからだろう」
「うっ……まあ、確かに」
カールが気まずそうに笑うのを横目に、イオリは考え込む。
(軍規に厳しいが、部下を見捨てない……クラウス隊長の言っていた『変な奴』ってのは、そういうことか)
話をしているうちに、いつの間にか艦長室の前へとたどり着いていた。
「ここです、少尉」
エリックが静かに言い、扉の横に立つ。
「さて……行ってらっしゃいっす!少尉!」
カールが軽く背中を押す。
「……ああ、行ってくる」
深呼吸を一つして、扉をノックした。
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「入れ」
低く、響く声が扉の向こうから聞こえた。
俺は一度深く息を吸い込み、背筋を伸ばすと、意を決して扉を開ける。
艦長室は広すぎず、かといって狭くもない実用的な空間だった。壁際には書類や端末が整理された棚があり、中央にはしっかりとした造りの机が据えられている。その机の向こう側に、鋭い視線を向けている男がいた。
銀髪交じりの短髪、厳格な顔つき、そして軍服を正しく着こなし、まるで椅子の背もたれと一体化しているかのように背筋を伸ばした姿勢。
ゲルハルト・アイゼンベルク少佐。
彼の眼光は鋭く、まるで目の前の者の全てを見透かそうとしているかのようだった。
すぐさま直立不動の姿勢を取り、敬礼する。
「イオリ・クローネ少尉、着任の挨拶に参りました!」
アイゼンベルク少佐は一瞬、じっとイオリを見つめた後、ゆっくりと頷いた。
「ようこそ、ヘルヴォルへ。……着任早々、機体の調整に時間をかけていたようだな」
静かだが、確かな威圧感を伴う声。
「はい。自分の機体ですので、できる限り自分で調整を確認しておきたかったので」
俺がそう答えると、アイゼンベルク少佐は軽く目を細め、端末に視線を落とす。
「……士官学校では優秀な成績を収めたと報告を受けている。シーウルフ隊の一員として、それに相応しい働きを期待している」
「ありがとうございます」
イオリは短く答えた。
「だが、勘違いするな」
アイゼンベルク少佐の声が少し低くなる。
「お前の命も、お前の仲間の命も、戦場ではただの数字になる。私はこの艦を指揮する者として、可能な限り多くの部下を生還させるつもりだが、戦場では非情な決断を下さねばならないこともある。それを忘れるな」
冷静で淡々とした言葉だった。しかし、その奥には確かな覚悟が宿っていた。
イオリは緊張したまま、その言葉を受け止める。
「……承知しました」
アイゼンベルク少佐は少しだけ表情を緩めたように見えたが、それも一瞬のことだった。
「シーウルフ隊は、他の部隊とは違う。お前も既に分かっているだろうが、上層部からの扱いは決して良いものではない。我々がどれだけ働こうと、奴らは気にもしない。だが、それでお前たちが生き延びられる保証はない」
「……」
「だからこそ、私はお前たちを見捨てるつもりはない。命令に従うだけの駒で終わるな。己の判断で、生き残る道を選べ」
その言葉には、軍人としての信念が込められていた。
俺は再び敬礼をし、しっかりと答えた。
「了解しました、艦長」
アイゼンベルク少佐は静かに頷き、端末を閉じる。
「下がっていい。シーウルフ隊の一員として、務めを果たせ」
「はい、失礼します」
俺は敬礼を解き、艦長室を後にした。
廊下に出ると、カールとエリックが待っていた。
「どうでした?」
カールが興味津々に尋ねる。
イオリは少しだけ息を吐き、短く答えた。
「……怖い人だった」
エリックは苦笑し、カールは「やっぱり!」と笑った。
その言葉を胸に、改めてこの艦での戦いが始まることを実感するのだった。
あぁーこの後の展開考えてたら憂鬱になってきた笑
アンケート結果ですが。案外競りましたねー
この結果を踏まえて、ちょいと続きについて整理します。