転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は? 作:スウェーデンクラス
クラウスは机の上に広げられた作戦資料を指先で叩きながら、ゆっくりと口を開いた。
「……まず、催涙ガスの成分だ。分析資料には“非致死性”と書いてあるが、構造式が見当たらねぇ。こんなもん、信じろって方が無理がある」
「ガスの搬入についても、妙だね。事前にヘルヴォルに搬入されずに、作戦実行直前の搬入になってるね。しかも搬送記録が暗号化されてて、通常のアクセスじゃ読めない」
シーマが静かに言いながら、携えた端末を操作して手元のデータをクラウスとイオリに見せた。
「中身を開けるには艦長クラス以上の権限が必要さね。つまり、これは――」
「“部外者に見せる気がない”ってこったな」
クラウスの言葉に、イオリがうなずいた。
「じゃあ、確かめるしかない。俺たちで、艦長に話を通して――真実を見極めるしかない」
その言葉に、クラウスはにやりと笑って、シーマとイオリを順に見渡した。
「やれやれ……お前ら、もう完全に共犯じゃねぇか」
「ま、あたしは最初っからそのつもりだったけどね」
シーマが肩をすくめ、笑みを浮かべた。
クラウスは軍帽を手に取り、軽く頭にかぶると、静かに立ち上がった。
「よし。行くぞ。……艦長に、腹を割って話してくる」
ーーーーーー
ヘルヴォル艦内――艦長執務室。
金属製の重厚な扉の前に立つクラウス、シーマ、イオリの3人。緊張が、その場を包んでいた。
イオリが息を整え、クラウスを見上げる。
「……本当に、いいんですか?」
「もう決めたことだろ。引き返す気はねぇよ」
クラウスは頷き、目を細める。
「艦長は規律に厳しいが、信念のある男だ。……真実を伝えりゃ、無視はしねぇはずだ」
「それでも……ただの直訴じゃ済まない可能性もある。最悪、拘束されるかもしれないよ」
シーマが静かに言う。
「覚悟はできてます」
イオリが即答した。
「……なら、行こう」
クラウスが手を伸ばし、艦長執務室のドアをノックする。
「クラウス・シュレンケ大尉です。緊急に、相談したいことが、任務に関わる重大な報告です」
一拍の静寂。
やがて、返事が返ってくる。
《入れ》
扉を、重々しく開ける
そこには、姿勢を正し、背後の窓から宇宙を見下ろしていた――ヘルヴォル艦長、ゲルハルト・アイゼンベルク少佐の姿があった。
ゆっくりと振り返った男は、3人を鋭い眼差しで見つめ、口を開く。
「……クラウス。お前が“二人を連れて”ここに来たということは、並の相談ではなかろう」
その声は、厳しくもどこか予感を含んでいた。
クラウスは、背筋を伸ばし、毅然とした声で答えた。
「はい。艦長……これは、命令違反の誹りを受けても伝えねばならぬ“異常”です。俺たちは――この作戦に、重大な疑念を抱いています」
その言葉に、アイゼンベルクの眉がわずかに動いた。
「……よかろう。詳しく聞こう」
閉まりゆく扉の向こうで、密談が始まろうとしていた。
この直談判は、シーウルフ隊の運命を大きく変える――その“分水嶺”となる。
ーーーーーー
ヘルヴォル艦長執務室。
分厚い扉がゆっくりと閉まり、部屋の中に、静かな緊張が満ちていく。
ゲルハルト・アイゼンベルク少佐は、腰を下ろすことなく、まっすぐ3人を見据えていた。
その背後には宇宙の闇が広がり、照明に照らされた銀髪が、毅然たる軍人としての威厳を際立たせている。
「……まず、状況を説明しろ」
低く、落ち着いた声音。それでいて、ほんのわずかに警戒を含んでいた。
クラウスが一歩前に出て、軍人としての礼を取った後、簡潔に切り出す。
「艦長。私たちは、次の降下作戦……“避難誘導任務”における任務内容に不審な点があると見ています」
「ふむ」
「搬送経路の不自然さ、物資内容の不透明さ、シャトル発着の規模に対する説明の不十分さ。加えて、作戦概要に含まれていた“催涙ガス”の項目――明らかに情報の開示が不完全です」
イオリが続けて一歩進み、言葉を継ぐ。
「端末で確認できた限りでは、“ガス”の仕様は非公開。構造式も添付されておらず、しかも配備されるのは、作戦実行直前です。……これは“避難誘導”ではなく、何かを隠している動きです」
アイゼンベルクの眉が僅かに動く。
「ガスの正体は……催涙ガスではない、ということか?」
「はい」
イオリは即答した。
「しかも、使用目的は“民間人の制圧”です。つまり……これは、完全な非武装目標に対する攻撃――避難以外の"何か"が行われる可能性があると、我々は見ています」
シーマは、イオリの隣に立って言葉を加える。
「作戦を進めれば、取り返しがつかない事態になりかねない。だから、今こうして直訴しに来たんです、艦長。……私たちの独断では、どうにもならないからです」
再び沈黙。
アイゼンベルクの鋭い眼差しが、クラウスからイオリ、そしてシーマへと順番に向けられる。
その眼は、疑念ではなく――観察していた。
3人の言葉に、信念があるか。怯えや利己心ではなく、真正面から真実を問いに来ているのか。
それを見極めるように。
やがて、アイゼンベルクは静かに息を吐いた。
「……お前たちの疑念には、筋が通っている。感情論ではない、情報に基づいた論拠がある。……だが」
その口調が、わずかに重たくなる。
「それが“妄言”である可能性も、否定できん」
イオリが、息を飲む音を立てた。
「“命令”というものはな、若造――」
アイゼンベルクの視線が、まっすぐイオリを貫いた。
「上に立つ者が、戦況全体を見て決定する。全貌が見えぬ下の者に、その意図は測れん。
“不可解”に見える命令も、時には必要な決断であることもある。……だからこそ、軍隊は命令系統を守らねばならん」
だが――と、彼は言葉を続けた。
「それでも。……俺は、部下の声を“無視”する上官ではない。
現場の兵士が、命を賭けて訴える言葉は、軽んじるべきではない。だからこそ、俺は判断するための“確証”が欲しい」
その声に、クラウスが静かに問う。
「……確認の許可を、いただけますか?」
「不可能だ」
アイゼンベルクは即答した。
「先程、少尉が説明した通り。件の“ガス”は、作戦当日に直接、現地宙域に搬送される。しかも、最高機密指定の貨物。情報アクセスには大佐級以上の認証が必要だ。俺ですら、今は詳細を知ることができん」
シーマが目を細める。
「つまり……ガスの中身を確認するには、“作戦当日”まで待たねばならない、とおっしゃるので?」
「ああ。しかも、お前たちがそれに触れることは、原則として作戦実行中のみだ、それ以外では禁じられている」
部屋の空気が、再び張り詰めた。
しかし、アイゼンベルクはそのまま言葉を続けた。
「だが――」
その声には、わずかな熱がこもっていた。
「事故なら……話は別だ」
イオリが顔を上げる。
「……事故?」
「作戦当日、ガスが積み込まれるタイミングで“事故”を起こせ。積荷の固定不備、格納庫内でのシステムエラー、あるいは搬送ルート上の機械トラブル。形式は問わん。
とにかく、“予期せぬ形で”一部の積荷を開ける状況を作れ」
クラウスが、じっと艦長を見つめる。
「それは……艦長の命令、ということで?」
「……違う。あくまで、俺は“アドバイス”をしたに過ぎん。理解したか、クラウス?」
その目は鋭いが、確かに味方だった。
「……はい、艦長」
クラウスは敬礼した。
「その“アドバイス”、しかと胸に刻みました」
アイゼンベルクはゆっくりと頷き、最後に静かに言葉を締めくくった。
「……軍人としての責務と、人としての正義。それは時に相反する。だが、どちらかを選べと迫られた時、自分に恥じぬ方を選べ。
それが、俺の信条だ。……それを選べる男たちが、俺の部下であることを誇りに思う」
その言葉に、3人は無言で頷いた。
ヘルヴォル艦内。
その一室で交わされた密談は、まだ誰にも知られていない。
だが――その時、確かに、歴史の歯車が一つ、音を立てて動いたのだった。
あれ?まだ一年戦争はじまってないやん。と、きづいた今日この頃
好きなキャラ
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主人公
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シーマ様
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クラウス大尉
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カール二等兵
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ハンス軍曹
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エーリッヒ軍曹
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グスタフ曹長
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クルト整備長
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ゲルハルト艦長
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アサクラ笑