転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は? 作:スウェーデンクラス
U.C.0079年1月3日 午前0500時
ザンジバル級機動巡洋艦《ヘルヴォル》 ブリーフィングルーム
警告灯の明かりが消え、部屋は一瞬だけ闇に沈んだ。
次の瞬間、天井の白色灯が一斉に灯り、静かなざわめきが広がる。
ブリーフィングルームにはすでに全員が揃っていた。
ヘルヴォルに所属する特殊海兵部隊――“シーウルフ隊”の全隊員たちだ。
その面々は、一様に整列しながらも、それぞれが違う“顔”をしていた。
前夜、わずかな眠りに身を預けた者もいれば、まったく眠れぬまま朝を迎えた者もいた。
緊張で背筋を伸ばしている者、あえて笑って仲間に軽口を叩く者、無言でただ前を見据えている者。
それぞれの兵士が、それぞれのやり方で、今この瞬間と向き合っていた。
その中心には、クラウス・シュレンケ大尉。
整った軍服の上からもわかる、使い込まれた装備と、その視線に宿る冷徹な光。
彼の隣には、シーマ・ガラハウ中尉。無表情に見えるその瞳の奥には、誰にも言えぬ葛藤が揺れていた。
そして列の中には、イオリ少尉の姿もある。
若き士官としての緊張を隠しながらも、その表情は確かに強さを増していた。
やがて、ブリーフィングルーム前方の演台に、一人の男が現れる。
“ヘルヴォル”艦長、ゲルハルト・アイゼンベルク少佐。
年齢を感じさせぬ鋭い眼差しと、背筋の伸びた立ち姿。
彼が前に出るだけで、空気が張り詰めるような重圧が部屋に満ちた。
しばしの沈黙の後、彼は静かに口を開いた。
「……本日、ジオン公国政府は、地球連邦政府に対し、正式に宣戦布告を行った」
その言葉が落ちると、ブリーフィングルーム内の空気が確かに変わった。
ざわめきはない。誰も声を漏らさない。
ただ、心の奥底で何かが「始まった」と確信するような、張り詰めた緊張だけがあった。
艦長はそのまま、厳かに言葉を続ける。
「これより、ジオン公国と連邦政府は全面戦争へと突入する」
その言葉が、重く、部隊全体の胸にのしかかる。
口にするだけで戦慄が走る、“全面戦争”という言葉。
だがそれは、いまや現実だった。
「諸君には、事前に通達された通り、サイド2・アイランド・イフィッシュを防衛している連邦艦隊に対し、友軍と共に攻撃を仕掛ける」
演台の後方に浮かび上がるホログラムが、戦場となる宙域とコロニーの構造図を映し出した。
「ミノフスキー粒子を散布後、モビルスーツ隊が一斉に突撃し、敵艦隊を撃滅する。撃滅後、諸君――特殊海兵部隊は、アサクラ司令の命令に従い、コロニー内へと侵入する」
ここで、アイゼンベルクの声音がわずかに変わる。
淡々としていた語調に、ほんの僅かな躊躇が混ざった。
「他部隊が、コロニーに核パルスエンジンを設置する間、諸君には民間人の避難誘導を任務として担ってもらう」
再び、ざわめきそうになる空気。
だが誰も言葉にせず、ただ耳を傾ける。
「避難に際し抵抗があった場合は、やむを得ない措置として催涙ガスの使用が許可されている。その催涙ガスは、後ほど補給部隊より搬入される予定だ」
言葉を選んでいるようでありながら、それでも艦長の声音は揺らがない。
「侵入時、ガスの持ち込みも同時進行で行ってもらう。必要に応じて指示を仰げ」
一呼吸の間。
「……以上だ。何か、質問はあるかね?」
沈黙。
誰も手を挙げない。誰も声を上げない。
しかし、全員の表情は、確かに“戦う者”のそれだった。
覚悟を決めた者だけが持つ、鋭く沈んだ目。
アイゼンベルクは一度、全員を見渡したのち、隣に立つクラウス・シュレンケに視線を移す。
「――では、あとはクラウス大尉に任せる」
その言葉と共に、一歩下がる艦長。
代わって演台に立ったのは、シーウルフ隊を率いる男、クラウス・シュレンケだった。
彼は一瞬、演台に肘をつけるようにして身を預けたが、すぐに真っ直ぐ背を伸ばす。
そして、短く一言。
「よし――聞いたか、テメェら」
その声音は、演説でも激励でもない。
“仲間への確認”のように、飾らぬ語気だった。
「この作戦は、ジオンの今後を決める大事な作戦だ。抜かるんじゃねぇぞ」
沈んだように重い空気の中で、クラウスの声が冴え渡る。
その眼光はまるで戦場に立っているかのような鋭さを帯びていた。
「連邦政府に煮湯を飲まされ続けた我らジオンが、独立を勝ち取るための戦争だ。連邦は全力で否と答えてくるだろう。……だからこそ、やるしかねぇ」
沈黙の中、クラウスが問うように、いや――叱咤するように叫んだ。
「――覚悟はいいな!」
その声に、全員が拳を握りしめ、顔を上げた。
「了解!」「もちろんだ!」「やってやるぜ!」
声が重なり、ブリーフィングルーム全体が一瞬で“戦闘前の空間”に変わる。
そして、クラウスは、ほんのわずかに笑った。
「……この作戦が終われば、"全員"で飲みに行こうぜ」
その言葉に、部屋の空気がふっと和らいだ。
いくつかの笑い声、微笑み、目を細める者。
それぞれの胸に、まだ見ぬ“その時”の光景が、ぼんやりと浮かんだ。
だがその未来は、まだ遠い。
まずは、戦いを越えねばならない。
それでも――
その言葉は、全員の心をわずかに温め、背中を押した。
そう、彼らは“シーウルフ隊”。
戦場を駆け回る狼たち。
この日、歴史の狭間で彼らは、その一歩を踏み出す。
戦いへ、覚悟を胸に――。
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