転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は? 作:スウェーデンクラス
U.C.0079年1月3日 午前0545時
ザンジバル級機動巡洋艦《ヘルヴォル》 カタパルトデッキ
サイレンが響く。
赤い警告灯が回転し、ブリーフィングルームで下された命令が、現実の音として艦内に満ちていく。
各区画で整備兵たちが走り、モビルスーツの最終チェックが進められていた。
「おい!!噴射材はもっと、多めに持ってこい!万が一を考えろ!!」
クルト整備長の怒声が響く。
カタパルトデッキには、すでに出撃準備を終えたシーウルフ隊の機体が並んでいる。
ジオンの象徴たる、深い緑の装甲を纏ったザクたち――。
その巨躯は、まるで静かに息を潜める獣のように、今か今かと出撃の号令を待っていた。
モニターには、サイド2宙域に展開した連邦艦隊の配置が投影されている。
すでに友軍部隊はミノフスキー粒子の散布を開始し、通信は一部帯域に制限された。
敵味方の識別が困難になるこの状況下、モビルスーツ部隊の戦闘が中心となることは明白だった。
アイゼンベルク艦長が通信を通じて全艦へ通達を出す。
「全艦、戦闘配備完了。友軍機、散開を開始。――各モビルスーツ隊、順次発進せよ!」
その瞬間、艦内に鋭い電子音が響き渡る。
《シーウルフ隊、出撃開始!》
最初に歩み出たのは――
第1小隊長、クラウス・シュレンケ大尉のザクII。
「こちら第1小隊、クラウス。全機、出るぞ。……ついて来いよ、野郎ども」
重厚な装甲が軋みをあげながらカタパルトの先端に進む。
カメラアイが鋭く光を放ち、彼の視線と完全にシンクロする。
手慣れた動きで操縦桿を握り、通信回線を開く。
「クラウス・シュレンケ、ザク出るぞ!」
ブースター点火。爆発的な噴射が艦内を震わせ、クラウス機は閃光の尾を引いて宇宙へと飛び立つ。
続いて――
第2小隊、シーマ・ガラハウ中尉がザクを駆って前進。
「第2小隊、行くよ。遅れたら置いてくからね」
その声には、戦いの緊張をすでに飲み込んだ者の余裕があった。
操縦桿に添えた指先は迷いがなく、射出前の最後の動作も無駄がない。
艦内モニターにその名が刻まれ、彼女の機体もまた宇宙へ解き放たれた。
「シーマ・ガラハウ、出るよ!」
『姉さん、大漁を!』
突如、コックピットに冗談交じりの言葉が響く。
シーマはふっと笑いながら、答える
「あいよ!」
機体がカタパルトから放たれ、クラウス機と合流する。
続いて――
第3小隊、イオリの番が来る。
コックピットの中、イオリは無言で深く息を吸い込んだ。
傍らには、部下であるエリック・ホフマン伍長とカール・シュナイダー二等兵。
若き士官の背に、部下たちの命と希望が乗っている。
(空気に呑まれるな、俺は今部下の命を背負ってるんだ)
「第3小隊、イオリ。これより出る。エリック、カール、しっかりついて来い」
「任せてください」
「了解っス、少尉!」
その返答に、イオリは短く頷いた。
「イオリ・クローネ出る!」
力強い噴射音。慣れたはずの出撃が、今日だけは特別に重く感じられた。
視界の端にシーマ中尉の機影が映る。彼女の背中を追いかけるように、機体を加速させた。
次いで――
第4小隊、エーリッヒ・ヴォルツ軍曹。
「第4小隊、出るぞ」
落ち着いた声で通信を返しながら、無駄のない動作で出撃準備を整える。
冷静沈着なその性格は、戦場でも一切の迷いを見せない。
「第5小隊、ハンス出るぞ!暴れてやろうぜ!」
第5小隊、ハンス・グリューネル軍曹が続く、
エネルギー供給を最適化し、やや強めのブースター出力で一気に宇宙へ突入。
彼の後を追って、部下たちの機体が飛び出していく。
全機、出撃。
漆黒の宇宙に、シーウルフ隊のザクたちが散開し、まるで群狼のように展開していく。
イオリは自機を中高度へ持ち上げ、各小隊との距離と編成を確認。
「こちら第3小隊、位置につきました。中尉、各小隊の編成、予定通りで行きますか?」
通信の向こうから、シーマの声が返る。
「予定通りでいい。イオリ、あんたたちは中央突破班。火力で押して、連邦の艦隊を引き付けな。こっちとクラウスは挟み込むから」
「了解。任せてください、中尉」
全小隊、編隊完了。
15機のジオン製モビルスーツが、宙域に一糸乱れぬ陣形を描く。
ブースターの残光が尾を引き、連邦艦隊のシルエットがゆっくりと浮かび上がる。
戦闘は、すでに始まっていた。
だが――この時から、シーウルフ隊の本当の戦いが幕を開けたのだった。
戦場は混沌へと向かい、彼らの運命もまた、戦火に焼かれてゆく。
それでも、誰ひとり怯むことなく、彼らは進む。
名もなき狼たちの咆哮が、宇宙に響き始める。
ーーーーーー
U.C.0079年1月3日 午前0610時
サイド2宙域 アイランド・イフィッシュ前哨宙域
ミノフスキー粒子が濃密に散布された宙域で、センサーは不安定に揺れていた。
レーダーは頼りにならず、肉眼や近距離索敵装置による戦闘が主となる。
味方・敵の位置を正確に把握するには、高い空間認識と連携能力が求められる――
その中、1機のザクが孤立していた。
「くそっ、数が多い……! 誘導も効かない、こんな時に限って……!」
パイロットの焦燥が無線に滲む。
彼のザクを取り囲むのは、連邦の宇宙戦闘機《セイバーフィッシュ》が十数機。
高機動かつ小型の戦闘機は群れを成し、文字通り獲物を翻弄するようにザクの周囲を回り続ける。
その動きはまさに“獲物に群がるコヨーテ”の如し。
機関砲とミサイルが何度もザクの装甲をかすめ、煙を上げさせていく。
孤立した味方機は回避に専念するしかなく、反撃の暇もなかった。
だが――そのとき。
「……!? な、なんだ……!」
宙域の闇に、閃光が走った。
一瞬で現れた緑の影――
その巨体は、まるで獣のごとく滑るように宇宙を駆ける。
「敵機接近――!? いや、違う……味方、か……!?」
現れたのは、シーウルフ隊。
先頭を切って飛び込んできたのは、第1小隊長クラウス・シュレンケのザクII。
5つの小隊、総勢15機のモビルスーツが猛然と進撃する。
「敵機多数確認――さあ、狩りの時間だ!」
クラウスのザクがザンと薙ぐように突っ込むと、連邦の宇宙戦闘機の一機が爆散。
続けざまにシーマのザクが機敏に身を翻しながら、マシンガンを指向させ至近距離から撃ち抜いた。
「1……2……3。数だけ多くても、的が増えるだけさね」
シーマの冷笑と共に、さらに二機が炎上。
その間にも、ヴォルツやグリューネル、イオリの部隊が次々と斜めに突撃線を描きながら敵機を削り取っていく。
「カール、上方三時方向に1機!」
『了解っス!』
イオリの指示に即応してカールのザクが一撃を叩き込み、さらにエリックが援護射撃を重ねて戦闘機の機動を奪う。
十数機いた敵戦闘機は、わずか数十秒のうちに殲滅されていた。
爆煙が尾を引きながら散り、宇宙に静寂が戻った瞬間――
孤立していた味方機が、茫然とその光景を見つめていた。
「……狼に、二本のモリ……」
「……あれが、特殊海兵隊か……」
その声は、無線越しに広がっていく。
誰もがその存在を知っていても、実際に見た者は多くはなかった。
噂では聞いていた、突撃機動軍の精兵――だが、その動きはまさに“神速”だった。
「よし! このまま敵戦艦に取り付く!!」
クラウスの怒号が無線に響いた。
「動きまくって、狙いを絞らせるなよ!! 艦に張り付け! ブリッジを狙え!」
一斉に反応する各小隊。
「了解! 第2小隊、散開して突入するよ!」
「こっちは第4、進路確認、敵主砲の死角へ回る!」
シーウルフ隊はまるで訓練された狼の群れのように動いた。
各小隊が敵戦艦の周囲に取りつき、艦の構造を理解したうえで死角へ潜り込む。
砲火が交錯する宙域――
連邦艦からの弾幕は、確かに激しかった。だが、彼らはそれを抜け、ブリッジや主エンジン部へと集中攻撃を加える。
ヴォルツの機体がミサイルポッドを叩きつける。
続いて、グリューネルの機体が主砲基部に格闘で切り込む。
シーマは戦艦の背後に潜り込み、隠れていた護衛機を瞬時に始末する。
そしてイオリもまた、推進器にダメージを受け、疲弊している一隻の巡洋艦"マゼラン"のエンジン部に接近し――
「これで……終わりだ!」
バズーカの直撃を、推進ノズルに叩き込んだ。
爆風が機体を吹き飛ばすが、イオリはそれをいなして旋回し、無事に味方陣形へと戻っていく。
連邦艦隊は、次々と沈んでいった。
そのすべての艦が、モビルスーツに撃破されたわけではない。
仲間の撃沈を見た他の艦が浮足立ち、砲撃の精度が落ち、結果として味方同士の衝突や混乱が生まれた。
それを見逃すほど、シーウルフ隊は甘くなかった。
戦闘開始からおよそ2時間40分後。
午前0845時――
連邦艦隊、壊滅。
戦場には、艦の破片、機体の残骸、漂う黒煙と火花。
無数の死が、無言のまま宇宙を漂っていた。
その中心で、なお警戒態勢を維持するシーウルフ隊。
疲労の中にも、鋭さを失わぬ彼らの機体は、まさに“戦場を制した狼たち”だった。
『……クラウス大尉、付近宙域の敵影、消失を確認。生存艦はゼロです』
「……そうか、損害は?」
『は、各小隊無しです』
「分かった」
クラウスは深く息をつき、虚空を見やった。
「これが……戦争の始まりってわけだ」
その声に、誰も応じなかった。
応じられなかった。
この勝利の果てに、自分たちが踏み込んでいくものの重さを、全員が感じていたからだ。
戦場には、静寂だけが残っていた。
ーーーーーー
U.C.0079年1月3日 0900時
ザンジバル級機動巡洋艦《ヘルヴォル》 第二格納庫前通路
戦闘を終えた《ヘルヴォル》には、ただ静寂が満ちていた。
補給作業の喧騒すらどこか抑制され、艦内に張り詰めた空気が漂っている。
格納庫への通路を歩く七人――クラウス、シーマ、イオリ、カール、エリック、ヴォルツ、グリューネル。
彼らの足取りには、任務とは別の緊張が滲んでいた。
今回の帰還は「補給」の名目だが、真の目的はガスの確認。
搬入されたコンテナの中身が、事前に通達された“催涙ガス”であるかどうかを、この目で確かめなければならない。
そのためには“事故”を装い、宇宙への搬出時にコンテナを故意に落下させ、破損を誘導する。
それが今日、彼らが仕掛けるコンテナ内部を確認する唯一の手段だった。
「……緊張してきたな」
カールが、誰にも聞こえないほどの声で呟く。
イオリは返事をしなかった。だがその視線は、真っ直ぐ前を見据えている。
だが――
格納庫前に差しかかると、そこに“異物”が立っていた。
シワ一つない軍服。
黒手袋をはめ、両手を背に回した小太りな男が、まるで何かを見透かすように一同を待ち構えていた。
アサクラ大佐――
ジオン軍上層部の一角であり、シーウルフ隊の直属の司令官にして、シーウルフ隊を「特殊任務要員」として取り立てた張本人。
彼の両脇には、無言の兵士が四名。いずれも目の色ひとつ変えず、ただ命令を待つ機械のような存在だ。
「ほう……戻ったか。遅かったな」
アサクラは鼻を鳴らすように言った。
その口調には、どこか見下すような、威圧的な響きがある。
クラウスが前に進み出る。
「戦闘後の処理に手間取っただけです。補給要請に従って、必要装備を確認しに来たまでです」
「そんなことは分かっている」
アサクラは無造作に言い放つ。
「だがな……貴様らの任務は“繊細”だ。取り扱い一つ間違えば、作戦そのものが水泡に帰す」
視線が、格納庫内に積まれた大型コンテナ群へと向けられる。
「この中には、極めて機密性の高い兵装がある。もちろん、内部の詳細は私の指揮系統以外には知らされていない。……当然だな?」
誰も答えなかった。
それが何を意味しているか、誰よりもシーウルフ隊は知っている。
これは、“知らされていない”ということが“知る必要もない”という命令であり、同時に“口を出すな”という壁でもある。
「念のため、私が直接監督に来た。……私の部下も運搬に同行させる。
貴様らのような最前線の兵が、余計な事故でも起こされては困るのでな」
アサクラは、笑った。だがそれは人間的な笑みではなく、
ただ命令を上から叩きつける支配者のそれだった。
「……ふん。俺たちがヘマする前提ですか、大佐殿?」
クラウスがわざとらしく肩を竦めて言う。
アサクラは鼻で笑う。
「兵は命令に従っていればいい。そう教育されているはずだがな。
もし私の方針に異を唱えたいというなら……階級を外して話してやってもいいぞ?」
その場の空気が、鋭く凍った。
シーマの手が思わず腰のホルスターに触れたのを、イオリは見逃さなかった。
エリックも眉を寄せ、グリューネルとヴォルツは無言で隊長の一挙手を見守る。
クラウスは、ふっと笑う。
「……いや、大佐殿の言うとおりです。補給ぐらい、慎重にやりますよ。あんたがいようといまいと関係ねぇ」
アサクラはわずかに目を細め、黙ったまま一歩引き、
「あー、あとなにやら独自に部隊名を名乗っているそうだな、"シーウルフ隊"だったか?ふん、狼とは大きく出たな。貴様らは私の"犬"だと言うことを忘れるなよ」
そのまま兵を引き連れ、通路の奥の監視区画へと消えていく。
残されたのは、ようやく息をついたシーウルフ隊の面々。
「……ケッ、なにが犬だ!」
カールがぼそりと漏らす。
「まだ勘づいてはいないようだね。でも、動き一つ見誤れば……詰むよ」
シーマが静かに言った。
「だからこそ、やるしかない。次がチャンスだ。事故を装って、蓋を開ける」
イオリの目に、決意の光が宿っていた。
クラウスが頷いた。
「――行くぞ。狼の嗅覚を信じろ。奴らが何を隠しているのか……この目で暴いてやる」
そして、彼らは格納庫の奥、運命のコンテナへと歩き出した。
その中に眠るのは“催涙ガス”か、それとも――地獄そのものか。
モビルスークの戦闘描写ってむずいっすね
もっとこう、銃撃してる感じを出したらいいのか悩んでます、
あ、出撃するシーンのBGMはスターダストメモリーの「RISING OP. STARDUST」を想像しています、実際描いてる時にこの歌を聴ききながら描いたので、カッコ良すぎて鳥肌立ちながら描いてました笑
あ!!お気に入り400件ありがとうございます!!
めちゃくちゃ励みになります!初めての二次小説でこんなにも、たくさんの人が見てくださってることに感謝です!
評価とメッセージお待ちしています!
シーマ様万歳!!
好きなキャラ
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主人公
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シーマ様
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クラウス大尉
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カール二等兵
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エリック伍長
-
ハンス軍曹
-
エーリッヒ軍曹
-
グスタフ曹長
-
クルト整備長
-
ゲルハルト艦長
-
アサクラ笑