転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は?   作:スウェーデンクラス

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第34話 避難、犠牲

コロニー「アイランド・イフィッシュ」の内縁に、非常ベルがけたたましく鳴り響く中、クラウス・シュレンケ大尉は「ヘルヴォル」の格納庫に集まった全隊員に向かって、重々しい口調で告げた。

 

「……聞け、シーウルフ隊。さっき確認されたガスコンテナの中身は、俺たちが聞かされていた催涙ガスじゃなかった。あれは――猛毒だった。致死性の高いガスだ。吸い込めば数分で意識を失い、あとは……死に至る。アサクラ大佐の仕組んだ作戦は、市民の虐殺だった」

 

場に緊張が走る。若い隊員たちは、顔をこわばらせ、ベテランの面々も険しい表情で沈黙した。クラウスは一拍置き、声を強めた。

 

「……これより、俺たちシーウルフ隊はコロニー内部に侵入し、市民の避難誘導を実施する」

 

その目に迷いはなかった。

 

「各小隊、指定したポイントに展開しろ。だが、既存の避難経路はあてにならん。整備も不十分、混乱も予想される。状況を見て、各自の判断でルートを確保し、避難シャトルまで誘導しろ。速やかにな」

 

静かな命令が、次第に空気を変えていく。

 

「言っておく。全員は救えない。シャトルの定員には限りがある。……それでも、最大限の努力をする。救助の優先順位は、子供、病人、未成年、そして女性だ。この順だ」

 

「言いたいことはわかる。全てを救えない現実に、納得なんかできないだろう。だが今は、感情より、行動だ。一人でも多く――そうだ、一人でも多く助けろ!」

 

クラウスは拳を握りしめ、最後に叫ぶ。

 

「核パルスエンジンが点火されれば、このコロニーには甚大な負荷がかかる。耐圧構造が損なわれれば、崩壊は避けられん! 1秒を争う状況だ! 気合を入れろ!」

 

そして、最後の命令。

 

「撤退の指示が出たら、必ず従え。いいな? 死ぬな、全員。以上だ、持ち場につけ!」

 

一同が敬礼し、散開する。出撃の警報が再び鳴り響く中、各小隊はそれぞれのルートへと走り出した。

 

ーーーーーー

 

B区画 避難シャトルターミナル前

 

「こっちだ! シャトルはまだ動いてる! 走れ!!」

 

ハンス軍曹が叫ぶ。彼の低く通る声に、市民たちははっとして顔を上げる。

 

「俺が保証する、絶対に安全だ! あそこまで行けば……助かる!」

 

自ら先頭に立ち、肩を貸しながら人々を誘導していくその姿に、最初は怯えていた市民たちも次第に彼に従い始めた。

 

だが、母親に抱かれた赤ん坊が泣き出した瞬間、ハンスの表情が曇る。

 

「その子、怪我してるのか……!」

 

近くにいた医療隊員が「シャトルの医療機器は簡易的なものしか……」と呟くが、ハンスは迷わず無線で呼びかけた。

 

「こちらハンス、緊急対応。最優先でD-02へ輸送を要請! ……俺の権限で、列を優先する!」

 

「了解、ハンス軍曹。回します!」

 

「急げ!」

 

走る兵士たち。その後ろを、母親が涙を流しながら頭を下げていた。

 

 

Cブロック 通路封鎖区域

 

「駄目です! この先は瓦礫で塞がれていて通れません!」

 

そう叫んだのはエーリッヒ軍曹の部下だった。部下たちとともにバリケードを取り除こうと奔走するが、構造体がひどく歪んでいた。

 

「時間がない……!」

 

そこへ、年老いた男性が言う。

 

「私はいい、他の者を先に……こんな歳だからな」

 

「ふざけるな……!」

 

エーリッヒはその老人の腕を掴み、怒鳴る。

 

「今、生きてる奴に歳も立場も関係ない……!。生きる権利は全員にある!」

 

その目に浮かぶのは、軍人としてではなく、一人の人間としての誇りだった。

 

「今から俺が爆薬でこじ開ける。いいか、音がしたら全員、走れ! 怖くても、走れ!!」

 

爆薬をセットし、部下とともに緊急開通路をこじ開けるエーリッヒ。その爆音に驚いた子供が泣き出すが、彼は笑って言った。

 

「ほらな、あっちは開いたぞ。ヒーローの登場だ」

 

 

D区画 狭隘通路

 

「こっちっす!、ついてきてください!」

 

カールが若々しい声で叫びながら、子供たちを先導していた。背負っているのは、足を怪我した少女。額に汗を滲ませながらも、カールは笑顔を絶やさなかった。

 

「大丈夫。こっちから抜ければ、すぐシャトル乗り場っすよ」

 

「ほんとに……?」と不安そうな少女に、カールは軽くウインクをして見せた。

 

「俺、シーウルフ隊の一番若い兵士だから。道、間違えたら先輩に怒られるんっすよ」

 

少女がくすりと笑った。隊員たちは、一人一人の命を背負いながら、できる限りの“戦い”を続けていた。

 

 

Eブロック 廃工場区画

 

「このシャトル……起動しねぇのか!」

 

グスタフ曹長が端末を叩くが、コロニー備え付けの古い避難シャトルは完全に沈黙していた。整備記録も消えており、長年メンテナンスされていなかったのだ。

 

「ちくしょう……クズの連邦め」

 

グスタフ曹長はため息を吐きつつも、すぐさま通信に切り替える。

 

「グスタフだ。シャトルE-07は使用不能。周辺民間人の移送ルートを変更する。B-04へ移送可能か?」

 

『B-04は定員ギリギリだ。すぐに振り分けないと……』

 

「わかった。こっちで調整する」

 

彼は隣の通信係に手を振り、目の前の市民たちへ向き直った。

 

「みんな! シャトルの調整に不備があった。すぐ近くの別の避難ルートへ誘導する。申し訳ないが、もう少しだけ頑張れるか?!」

 

怒声はなかった。混乱の中でも、彼の言葉に誠実さがあったからだ。

 

 

Fブロック 旧居住棟

 

イオリもまた、最後のシャトルを目指して奔走していた。彼の前には、荷物を手放そうとしない家族や、ペットを抱えて動けない少女、老いた夫婦に肩を貸す青年——あらゆる人々がいた。

 

「荷物は! 不要なものは捨ててください! 命より重い荷物はありません!」

 

イオリが叫ぶ。

 

「……君もだ! そのペットは連れていけない!」

 

少女が泣きじゃくる。

 

「ダメなの……この子がいないと……!」

 

イオリは少女の目を見て、一瞬、言葉を失う。だが次の瞬間、声が口を突いて出た。

 

「わかった。じゃあ、こうしよう」

 

隊員たちが驚く中、イオリは自身が着ていたジオン軍の上着を少女に覆い被せた。

 

「これで、その子を隠すんだよ、シャトルの中でもできるだけ隠すんだよ」

 

エリックが口を開く。

 

「イオリ少尉……」

 

イオリは振り返らずに告げる

 

「子供を1人でも避難させるためだ」

 

沈黙の中、やがてエリックも頷いた。

 

「了解です」

 

ーーーーーー

 

それぞれの小隊が、命令に従いつつ、心で動いていた。市民には、コロニー質量弾頭にすることなど一切知らされていない。ただの避難だと、誰もが信じていた。

だが、コロニー市民は必死に駆け回るシーウルフ隊の様子を見てただ事ではないと理解していた。

 

だからこそ、シーウルフ隊は全力で人々を守ると誓った。

 

武器を手にしながらも、撃たず、傷つけず、ただ——

「生かすため」に動く彼らの姿は、軍人である前に、人間だった。

 

ーーーーーーー

 

コロニー内部の混乱は、すでに極限に達していた。人々は各避難ポイントへ殺到し、シーウルフ隊の隊員たちは汗と埃に塗れながら、怒号と悲鳴の渦中で懸命に誘導を続けていた。

 

クラウスの指示は明快だったが、その実行は決して容易ではなかった。シャトルの数は限られ、あまりにも多くの命が、救いの船を求めて押し寄せていたのだ。

 

その中で、ある一家が最後の別れを告げていた。

 

「行け……行くんだ、お前たちは……」

 

男は、幼い娘を抱く妻の肩を震える手で押した。中年の父親は、苦悶の表情を浮かべながらも笑みを作ろうとした。しかし、その目元は涙で濡れていた。

 

「あなたも一緒に来て……お願い……」

妻が泣きながら縋るが、男は首を振った。

 

「俺はもう、いいんだ。シャトルには空きがない。だが、この子には……お前には……生きてほしい。頼む、行ってくれ……!」

 

男は列を離れ、妻と娘の叫ぶ声が、シャトルの扉が閉まる中に吸い込まれていくまで、ずっとその笑顔を妻と子に見せていたのだった。

 

別の場所では、老夫婦が手を取り合っていた。

 

「さあ、お爺さん。もう歩けるかい?」

 

「無理を言うな。わしは、ここまでだよ。これから先は若い者の時代だよ」

 

「そんなこと……」

 

「よい。わしの席は若い命に譲ってくれ。戦争ばかりの世で、あやつらには光が必要なんだよ」

 

老婆はしばらく黙っていたが、やがて優しく微笑んで言った。

 

「ならば、私も残ります。最後まで一緒におりますよ。ねえ、おじいさん家に帰りましょうか」

 

彼らは兵士の制止を静かに振り切り、背を向けて歩き出した。兵士は拳を握りしめながら、声をかけることもできなかった。

 

シーウルフ隊の面々も、極限状態の中でそれぞれが限界まで働いていた。エーリッヒは、シャトルに乗りたがらない青年を必死に説得していた。

 

「オレは乗らない!年寄りや女を先にしろよ!」

 

「バカ野郎!」エーリッヒが怒鳴る。 

「お前みたいな若い奴が生き残らなきゃ、明日は来ないんだよ!その命、ちゃんと生かせ!」

 

青年は黙り込み、歯を食いしばってシャトルへと走った。

 

その時だった。クラウスの無線に、艦長からの通信が入った。

 

『シュレンケ大尉、核パルスエンジンが点火準備に入った。時間がない、全隊撤退を命じる』

 

クラウスはしばらく黙し、その場の喧騒の中で、静かに目を閉じた。

 

「……ここまでか」

 

次の瞬間、無線に声を乗せる。

 

「全隊、撤退を開始せよ。……繰り返す、全隊、撤退を開始せよ。以後、各自の判断で脱出しろ」

 

混乱の中、無線を聞き、無力感で固まっていた隊員達。

その無線を聞いた住民たちの一部が、隊員に頭を下げる。

 

「ここまでで……十分です。あなたたちは、本当によくしてくれました」

 

「ありがとう……あとは私たちで、なんとかします。どうか、無事で……」

 

涙ぐみながらそう言う夫婦の手を、ハンスがそっと握る。

「生きてください。必ずです、シャトルはまだ先にあります。諦めないで」

とだけ言い残し、走り出す。

 

イオリは最後まで誘導していた避難者たちを、どうにか全員シャトルに乗せ、扉が閉まるのを見届けると、深く息を吐いて脱出を開始した。

 

――しかし。

 

その途中、彼のザクのセンサーが一機のモビルスーツを捉えた。

 

「シーマ中尉……?」

 

その機体からシーマは降りて、まだコロニー内で人々を誘導していた。

 

『さあ、早く!あっちに行けば、シャトルがあるんだよ!』

 

集団は老人や病人ばかり。歩みは遅く、このままでは間に合わないことが目に見えていた。

 

イオリはすぐにザクを降り、駆け寄る。

 

「中尉!もう間に合いません!撤退命令が出ています、早く!」

 

「うるさいよ!」

シーマが叫ぶ。

「まだこんなに人がいるんだ!あたしは……見捨てられないんだよ!」

 

イオリは拳を震わせながら、

「中尉、中尉……シーマ!!」

と怒声をあげた。

 

シーマはハッとしたように動きを止める。

 

「全員は助けられないんです!……」

イオリの目には、涙が溢れていた。

「現実を見てください……お願いです、戻ってください……!」

 

シーマはうつむきかけたが、その時、支えられて歩いていた病人の男が声を上げた。

 

「行ってください、軍人さん。……ここまで来れただけで、もう十分です」

 

その言葉に、シーマの肩が震える。涙をこらえながら、彼女は言った。

 

「……絶対に逃げ延びるんだよ。いいね?まっすぐ行けば、シャトルだ……走れる子がいたら、みんなを引っ張ってあげるんだよ」

 

そして、イオリと共にザクへと乗り込む。二機のモビルスーツが、振り返ることなく、最後の脱出経路を飛び去っていく――

 

その背後には、希望を託された命たちと、戦火に揺れる静かなコロニーが残されていた。

 

 




あかん、鬱になる
戦争はダメ絶対、もーむりや
シーマ様は絶対最後まで諦めない人だと思う
自分も同じ状況になったらと考えると、文章で書くみたいに格好よく振る舞えるだろうか、足が震えて、我先に逃げてしまわないだろうか
考えさせられますね

好きなキャラ

  • 主人公
  • シーマ様
  • クラウス大尉
  • カール二等兵
  • エリック伍長
  • ハンス軍曹
  • エーリッヒ軍曹
  • グスタフ曹長
  • クルト整備長
  • ゲルハルト艦長
  • アサクラ笑
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