転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は?   作:スウェーデンクラス

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第43話 ルウム戦役 前編

翌朝──ア・バオア・クー 食堂

 

朝の食堂。いつもと変わらぬざわめきの中で、イオリはひとり、トレイに乗せた簡素な朝食を片手に席に着いた。無言でパンをちぎりながら、視線は何度もちらりと一方向を向く。

 

そこには、ヘルヴォルの女性クルーたちと共に朝食をとるシーマの姿があった。彼女は昨日の出来事を引きずっている様子は見せず、涼しげな表情で談笑していた──が、イオリの視線に気づいて一瞬だけ手が止まり、軽くこちらに目をやった。目が合うや否や、シーマはすっと目を逸らす。

 

気まずい沈黙──まるで昨日の夜の、あの微妙な空気がそのまま食堂に流れ込んでいるようだった。

 

「……」

 

イオリが何か言葉を飲み込もうとした、そのときだった。

 

「おーい、イオリィ〜!」

 

にやけた顔でグスタフが現れる。その後ろにはハンスとエーリッヒの姿もあった。

 

「お前よぉ、昨夜はえらく熱心だったじゃねぇかぁ?部屋の鍵をかけ忘れるくらいに?」

 

「……は?」

 

イオリがむっとした表情で振り向くと、ハンスがすかさず乗ってきた。

 

「『そのタイミングで入ってきた』とか言ってたけどさあ、その”タイミング”って、なんのタイミングだったのかねぇ〜?」

 

「やめてくださいよ!ほんとにたまたま、たまたまなんですよ!」

 

イオリは耳まで赤くなりながら必死に弁解するが、それがまた火に油を注ぐ形になる。

 

「中尉〜、昨日はさぞ激しかったようで〜。イオリの部屋で、ねぇ?」

 

エーリッヒが悪ノリの極みとも言える笑みでからかい始める。その瞬間だった。

 

シーマが手元のマグを置き、こちらに鋭い視線を飛ばす。目は笑っていなかった。

 

「……うるさい。撃つよ?」

 

「す、すんませんでした!」

 

即座に背筋を正し、姿勢まで正すエーリッヒ。冷や汗をぬぐいながら、まるで命の危機から逃れたような顔をしていた。

 

グスタフは苦笑しつつ、肩をすくめると、「なにか進展があったらおしえてくれや」と言いながら、食事をとりに行くのだった。

 

ーーーーーー

 

そのときだった。ア・バオア・クー全域に、厳かな放送が鳴り響いた。

 

『これより、ドズル・ザビ中将率いる主力艦隊が、サイド5方面へ出撃する!全員、見送りの用意を!』

 

一斉に立ち上がる兵士たち。喧騒が止み、次第に静けさが広がる中、誰もがそれぞれの想いを胸に、司令ブリッジが見渡せる展望デッキへと向かっていった。

 

やがて、巨大なスクリーンにドズル中将の姿が映し出される。威厳と凄味を纏った表情で、ゆっくりと語り始めた。

 

「諸君らに告ぐ。ジオンの正義を、再び宇宙に示す時が来た!これより我が艦隊は、サイド5の11バンチ・ワトホートへ向かう!連邦政府に、鉄槌を下すのだ!!」

 

力強く語られるドズルの演説。そのため、要塞内の前ジオン兵がこの演説を聞き、皆決意を固める、ドズルの声は全ての兵士たちの士気を鼓舞し、その背を強く押すには十分だった。

 

ーーーーーー

 

見送りを終えた後、クラウスの声がヘルヴォルのMSデッキに響いた。

 

「とうとう始まったぞ。俺たちはこれより戦闘配備につく!モビルスーツに搭乗し、出撃命令があるまで待機だ!この一線が、戦局を変える……その覚悟で挑め!」

 

「了解!!」

 

響き渡る声。緊迫と鼓動が一つになる。

 

イオリはパイロットスーツに身を包み、ブリーフィングルームから格納庫へと歩を進める。その道中、整備員たちが手早く最終チェックを進め、各隊員たちがそれぞれのコックピットに乗り込む準備をしていた。

 

その中、ちょうど整備ラインの角を曲がったところで──

 

「あ……」

 

向こうから歩いてきたシーマとばったり目が合う。二人は一瞬立ち止まり、言葉を探すように沈黙が流れた。

 

イオリはゆっくりと歩み寄り、意を決したように口を開く。

 

「……シーマ中尉」

 

彼女は少しだけ驚いた顔をして立ち止まる。

 

「必ず、生き残りましょう。そして……また、二人で飲みに行きましょう。今度は……基地まで、一緒に帰りますよ」

 

少しぎこちない笑み。しかし、そこに込められた真剣な気持ちは明確だった。

 

シーマはほんの一瞬、驚いたようにイオリを見つめると、ふっと表情を緩めてーー

 

「そうだね。……次は、最後まで付き合ってもらおうか」

 

互いに微笑み合う。そこには、昨夜のぎこちなさも、気まずさもなくなっていた。

 

そして──二人は、それぞれのモビルスーツへと乗り込んでいく。

 

鋼鉄の獣たちが、唸りを上げる。地獄の戦場へ飛び立つ時が、近づいていた。

 

今、宇宙を駆ける狼たちが、その牙を研ぎ澄まし、静かにその出番を待っているのだった。

 

ーーーーーーー

 

暗黒の宇宙にて、二つの艦隊が相対していた。

静寂に包まれた広大な虚無のなか、無数の艦影が鋭く対峙している。

 

ジオン公国軍――その中心に位置するのは、他のムサイ級とは違う艦橋を持つムサイ級巡洋艦〈ファルメル〉。その艦橋に立つのは、ジオン公国軍宇宙攻撃軍司令官、ドズル・ザビ中将。その広い額に光る汗と、燃えるような双眸が戦場を睨みつけていた。

 

「敵の将は……レビルか。相手にとって不足無し!!」

ドズルは豪快に叫び、右拳を艦長席の肘掛けに叩きつける。

 

「全艦、砲撃開始ッッ!!」

 

次の瞬間、ジオン艦隊に属する多数のムサイ級巡洋艦が一斉に主砲を咆哮させた。粒子砲の閃光が宙域を裂き、光と熱を帯びながら連邦艦隊の砲列へと降り注ぐ。それは、あたかも宙の海に雷雨が降り注ぐかのような地獄絵図だった。

 

連邦軍もすぐさま応戦する。サラミス、マゼランといった旧式の艦艇が火を噴き、無数のビームと実体弾が交錯する。やがて一発の直撃が一隻のムサイを捕らえ、爆発音とともにその艦が光の中に消える。

 

『ダメージコントロール急げっ!!』

 

『敵艦撃沈ッ!よし、次だッ!!』

 

『駄目だ、船体がもたん!総員退艦ーーっ!!』

 

『ジーク・ジオン!!……』

 

『ミサイル、全門一斉斉射!!』

 

叫び声と怒号、そして断末魔の叫びが無線に次々と流れ込んでくる。それを聞いたドズルの目に、悔しさと誇りの混ざった涙が浮かんでいた。

 

「……貴様らの、死を無駄にはせん。必ず……勝つ!」

 

――その数刻前。

 

ア・バオア・クー宙域、ジオン公国軍モビルスーツ部隊発進デッキ

 

警報が鳴り響き、出撃命令が下される。

 

『全モビルスーツ隊に告げる!現在、ドズル中将率いる艦隊が連邦艦隊を補足!作戦コード『バビロンの門』を発令する!全機、出撃せよ!待機中の全艦も、順次戦線へ向かえ!!』

 

赤く点滅する警告灯の中で、モビルスーツの起動音が響き渡る。ザクが次々に発進準備を整え、誘導員が手信号で機体をカタパルトへ誘導していく。

 

その中でも一際目立つのが、漆黒と灰色に塗装された機体群――シーウルフ隊だった。

 

「よし、聞いたなァ、テメェら!」

ヘルメットを被ったまま、クラウス・シュレンケ少佐が豪快に叫ぶ。

 

「出撃命令だ!よく大人しく待ってられたもんだ、偉ぇぞお前らァ!!さぁて……奴らの喉笛を、噛み千切ってやろうぜ!!」

 

「待ってましたァ!!」「いよっしゃぁ!!」「シーウルフの力、見せてやるぜ!!」

 

仲間たちの怒涛のような声が格納庫に響き渡る。

 

イオリはヘルメットの内側から声をかける。

「準備はいいか、カール、エリック!」

 

「もちろんっすよ、少尉!」

「いつでもいけます!」

 

ザクが発進カタパルトへと移動していく。今、狼の群れが狩りの時間へと突入するのだ。

 

ーーーーーー

 

星の瞬きが視界を覆うなか、シーウルフ隊のザクたちが一糸乱れぬ隊形を保って展開する。

 

イオリがふと横の編隊に目をやると、一際目立つ真紅のザクが、二機の僚機を従えて並走していた。

「シャア……だな。ったく、派手すぎだろ」

 

その赤いモノアイが点滅を始める。簡易なモールス信号だった。

 

『助けが必要なら呼べ』――

 

イオリは苦笑しながら、モノアイを点滅させて返信する。

「何言ってやがる。こっちのセリフだ!」

 

ーーーーーー

 

『よし、全機、作戦エリアへ移行する。月を回り込んで敵艦隊の背後へ回るルートだ。』

クラウスの声は、静かで力強い。

 

『第2・第3小隊は遊撃行動を許可、自由に敵艦を狩れ。第4・第5は俺の隊に随行、指定エリアに防衛線を敷きつつ前進、そこを起点に殲滅だ。シーウルフらしく、獲物は丁寧に狩るぞ』

 

『了解!』

 

イオリが通信回線を開く。

 

「俺たちは、個別行動ですか?」

 

『ああ、いい動きしてるからな。お前らには自由に暴れてもらう。目立ってこい』

 

その時、別の声が入る。

 

『イオリ』

シーマの声だった。

 

『無茶したらダメだよ。なにかあったら言いな。カバーしてあげるから』

 

「シーマ中尉、大丈夫ですよ。中尉こそ気をつけてくださいね」

 

『誰に言ってるんだい?』

くすっと笑う声が通信の向こうから聞こえた。

 

クラウスの声が、再び静かに、しかし厳かに響く。

 

『……いいか。集中しろ。視野を広く保て。互いをカバーし合え。作戦が終わったら――全員で、飲むぞ』

最後のその言葉は、もはや恒例となりつつある、シーウルフ隊の儀式であった。

 

『了解ッ!!』

 

サイド5宙域

 

ファルメルの艦橋では、ドズルが血走った目で戦況を睨んでいた。連邦艦隊の数は圧倒的で、次々にジオン艦が沈んでいく。

 

『ドズル閣下、本艦が殿を務めます!』

 

『こちらも続きます!』

 

『我らジオンに、栄光を!!』

 

多くのムサイがドズルを逃すための殿に志願し、そして、散っていく。

 

ドズルの目の前でムサイ艦の一隻が、火を噴きながらマゼラン艦に突っ込んでいく。

 

「突貫だぁああああああああ!!!」

その叫びと共に爆散した。

 

ドズルは拳を握り締め、涙を流しながら吠えた。

 

「ぐぬぅぅぅうううう!!貴様らの勇姿、決して忘れんッッ!!その死、無駄にはせんぞおおおおお!!」

 

「本艦は転進する!!全艦、後退!!」

 

一方、後方の宙域――

 

後退するジオン艦隊の背を追うように、連邦艦隊のマゼラン級が追撃を開始していた。その艦橋に立つ一人の艦長が呟く。

 

「ジオンなど、口ほどにもない……やはり我らに敵うわけが……なっ!?――」

 

視界に映ったのは、黒き巨人だった。

一つ目のモノアイが冷たく輝き、瞬時に艦橋にヒートホークが叩き込まれる。

 

「ぎゃああああああああ!!」

 

次の瞬間、マゼランが火柱をあげて四散する。

 

その姿を背に、クラウスが吠えた。

 

「よし!次だッ!!味方が命懸けで開けた突破口だ、無駄にすんなッ!!行け、狼ども!!狩りの時間だッ!!」

 

星の海に、黒き狼たちが舞い踊る。

それは、まさに地獄の晩餐の始まりであった――

 

 




ごめんなさい、ルウム戦役色々と細かく書いたらクソ長くなることに気づきまして、あえて、簡易的に改変して書きます
お許しを!!

主人公とシーマ様の甘々な雰囲気はどうですか?

  • ほしい!もっと!!シーマ様をデレさせろ!
  • こんな感じでいい
  • 減らしてくれてもいいかなー
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