転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は?   作:スウェーデンクラス

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幕間 全ては闇の中

夜の帳がコロニーの居住区を包み込むように降りたころ、元将校アサクラ大佐の私邸は、ひときわ沈鬱な沈黙に包まれていた。かつてはジオンの上層部に名を連ねた彼の屋敷も、いまや政府からの監視の目に晒され、外部との連絡は厳重に制限されている。軟禁という名の幽閉。その重苦しい静けさは、夜風すらも中に入り込めないほどだった。

 

その屋敷の一角。かつて威厳に満ちた執務室。今はただ、崩れ落ちる威光の残り香だけが漂っていた。

 

オフィスの片隅にあるソファで、アサクラはうつろな目をしながらグラスを揺らしていた。濃い琥珀色の酒は、彼の震える手に合わせてわずかに波打ち、その音がまるで心臓の鼓動のように耳に残った。

 

「おのれぇ……海兵隊の犬どもめ……この恨み……必ず、必ず晴らしてくれる……」

 

唸るような呪詛の声。だがその言葉に宿る怒りは、既に本物ではなかった。もはや彼に残っていたのは、権威を失った者の焦燥と、己の失態を受け入れられぬ哀れさだけだった。

 

家族はすでに出ていった。

軟禁が決まった夜、妻は顔を背け、息子は一言も口をきかずに家を出ていった。アサクラにはもう何も残っていなかった。

 

部屋の明かりは落とされていたが、オフィスの一角に設置されたパネルの光が、わずかに室内を照らしていた。その青白い光の中、机の上に乱雑に積まれた書類と、酒瓶が影を落としていた。

 

ーーーーーー

 

部屋の片隅の暗がりの中、誰にも気づかれることなく一人の男が座っていた。

どこにでもいるような中背の男。

黒いコートを着て、手には黒い手袋。

顔にこれといった特徴はない。

まるで「印象に残らないこと」そのものが、彼の正体のように。

 

彼の名は、ない。ただの“手”だ。雇われ、使われ、捨てられるための存在。

 

『感情は捨てろ、同情はするな、言われたことをやれ』

 

それが彼にとっての全てだった。命令の先にどんな思惑があろうと関係ない。報酬と仕事だけが、彼を生かす。

 

「誰だっ……!」

 

気配に気づいたアサクラが、荒んだ目を見開いた。手元の引き出しに手を伸ばし、古びた拳銃を引き出す。

 

「どこから入った?!貴様は誰だ!」

 

だが男は微動だにせず、淡々とした口調で言った。

 

「やめておけ。ややこしくするだけだ」

 

引き金を引くアサクラ。しかし、何の反応もない。

 

「なっ……なんだ……?!」

 

何度も引き金を引くが、銃は沈黙したままだ。

 

「部屋にある武器類は、すでにすべてチェックしてある」

 

アサクラの背筋が凍った。思考の回路が混線する。

 

「ま、待て……誰に言われた?海兵隊の犬共か?その倍を払うぞ……!」

 

男は何も答えなかった。彼にとってその言葉は、ただの雑音にすぎなかった。

 

アサクラの目が細まり、微かに震える声が洩れた。

 

「……まさか……“あの方”か?」

 

だが男は動かない。無表情のまま、一歩だけ近づいた。まるで死神が地に足をつけたように、空気が重くなる。

 

「……証拠は、証拠はなにも残していない!本当だ、何も……!」

 

それは懇願ではなく、断末魔だった。だが男の目には哀れみすらなかった。

 

悲鳴のような叫びが部屋に響く。だが、男はまるで聖職者のような静けさで一枚のパネルを差し出す。

 

「どうでもいい。俺は仕事をこなすだけだ。……落ち着いたらどうだ?」

 

そこには、アサクラの妻と子供が、別の街のアパートへ入っていく姿、リビングで団欒している様子、窓際で笑う子供の顔……

見慣れたはずの光景が、今は凶器のように突き刺さる。

 

「拒否すれば、代償を払うのは家族だ」

 

その一言が、アサクラの膝から力を奪った。床にへたり込み、うめくように叫ぶ。

 

「やめろ!家族には手を出すな……!!」

 

「出さないさ。お前が言うことを聞けばな」

「お前は自らの過ちを認め、その罪悪感から遺書を書き、深酒をした後、自ら命を断つ。そういう筋書きだ」

 

冷たい声。まるで冷気そのものが言葉を発しているようだった。

アサクラが黙り込んでいてると、男は静かに続ける

 

「遺書はお前のデータ端末で作ってある。あとは何杯か酒を飲め。……覚悟ができたら、自分で撃て」

 

そう言うと、男は小さな拳銃を机に置いた。装填されたのは一発だけ。その銀色の弾頭が、仄かな光を反射し、アサクラの顔を照らした。

 

「その一発を無駄にするなよ。意味は、わかるな?」

 

アサクラは拳銃を手に取った。手が震えていた。涙、汗、そして鼻水が混ざり合い、顔を濡らしていた。何度も、何度も「クソが……」と呟く。

 

「クソが……クソがぁ……!!」

 

男は動かない。ただ、静かに見ていた。

 

「ふぅ……ふぅぅ……くそっ……!」

 

アサクラは最後の一杯を飲み干し、拳銃の銃口をこめかみに当てた。目を閉じる。頬が震える。

 

「早くしろ」

 

男の声は、まるで命令ではなかった。ただ、時間の進行を告げるだけの機械のようだった。

 

「う……うぅぅ……!!」

 

そして、部屋に一発の銃声が響いた。

 

沈黙。煙がゆっくりと天井に昇り、空気が硝煙の匂いに染まった。

 

男は一歩、また一歩と近づき、床に崩れた“かつてアサクラだった物"を見下ろす。

その表情に、やはり何の感情もない。

カメラを取り出し、証拠として写真を数枚撮ると、それを即座に依頼主へ送信した。

 

報酬は送金されるだろう。だが、彼にとってそれはただの確認事項だ。

 

オフィスの外から、憲兵の怒号と足音が近づいてくる。男は手早く道具を回収し、壁際へと身を滑り込ませ、人知れず部屋から退室する。

彼の痕跡は、何も残されない。

 

ただ、アサクラ大佐の死だけが、部屋の中に、静かに、重く残されていた。

 

"全てを闇の中へ、誰にも知られぬように"




この話は、結構前から思いついて、こうしようと決めていました。
最初はイオリたち海兵隊が黒幕を暴き糾弾する展開も考えましたが、フツーに考えて、そんなこと無理だろうという考えに至りました。
だって、みなさん、一般の会社員が、社長の悪事を暴くことなんて無理ですよね?笑
この暗殺者ですが、今後出てくる予定はありません笑
名も無き男です。
こいつの物語でなんか作品作れそう笑
ちなみにとある暗殺者をモデルにしています

主人公とシーマ様の甘々な雰囲気はどうですか?

  • ほしい!もっと!!シーマ様をデレさせろ!
  • こんな感じでいい
  • 減らしてくれてもいいかなー
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