転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は?   作:スウェーデンクラス

56 / 94
第52話 基地攻略 下

司令タワーが崩れ落ちる寸前、クラウスのザクが一歩前に踏み出した。爆炎の中から立ち現れるその巨体は、まさに“狼の頭”として戦場に号令をかける存在だった。

 

「――第1小隊はこのまま敵火砲の殲滅をおこなう! 第2は滑走路の戦闘機隊を排除! 第3は基地内の、殲滅だ! 行け!!」

 

その声は、戦場を支配する風のように鋭く響き渡る。シーマのザクが即座に反応した。

 

クラウス・シュレンケの咆哮が、まるで雷鳴のように戦場を駆け抜けた。その一声は、狼たちの号令であり、咬みつきの合図だった。

 

それは一瞬の静寂のあとに訪れる、暴風の始まりだった。

 

ザクたちの駆動音が大地を震わせ、三方向に散開するその動きは、まさに獲物を追い詰める群狼の狩猟。鋼鉄の巨体が土煙を巻き上げ、爪と牙となって敵地へと迫る。

 

『――あいよ! 第2小隊、続きな! 遅れるんじゃないよ!』

 

シーマ・ガラハウ中尉の声が、冷たい刃のように電波を裂いた。鼓膜を揺らすその声音は、部下たちに火を灯す焔となる。

 

『了解! 姉さん!』

 

『任せてください!』

 

小隊員たちの返答が重なる。躊躇はない。彼らはシーマの背を信じ、炎の只中へと飛び込んでいく。数機のザクが宙を跳ね、格納庫の奥へと突進した。爆風と硝煙の中、第2小隊は滑走路制圧の任務へと走り出す。

 

「了解! カール、エリック、いけるか?!」

 

第3小隊、イオリ少尉の声がヘルメット越しに響いた。その声は強く、だがどこか熱を帯びていた。

 

『問題ないっすよ!』

 

『少尉に続きます!』

 

まだ若い二人の兵士――カールとエリックが、それぞれのザクを操り応える。その声には、不安よりも昂揚が勝っていた。

 

イオリは拳を握りしめ、戦火の中を駆ける。彼にとっても、これは初めての地球での実戦。だが、今この瞬間は、ただ目の前の戦いに集中するだけだった。

 

ーーーーーー

 

第1小隊、クラウス率いる第1小隊は、敵の火砲陣地へと突進していた。爆音が響き、敵の榴弾砲が唸りを上げる。しかし、その弾道は鈍重で、もはやクラウスのザクの進撃を止めるには遅すぎた。

 

「近づいてしまえば、貴様らは脅威にすらならん」

 

鋼鉄の巨人がマシンガンを構える。閃光のように走る火線が、火砲陣地を蹂躙した。砲身がもげ、土砂と共に兵士が吹き飛ぶ。

 

その隣では、グスタフ・ヴァールのザクが、監視塔を狙ってバズーカを放っていた。轟音。鉄骨が悲鳴をあげて崩れ落ちる。

 

「若いもんが気合い見せたんだ……俺も頑張るしか、ねぇな!」

 

短く吐き捨てたその言葉と共に、彼は軽戦車を蹴り飛ばす。巨体の一撃に戦車は転がされ、火花と爆煙を上げながら地面に沈んだ。

 

「このままここを殲滅するぞ!」

 

クラウスの再号令が響く。重厚な声に従い、老練の小隊は地を這うように敵陣を喰らい破っていく。装甲に被弾しても止まらないその進軍は、まるで意志を持った鋼鉄の塊だった。

 

一方その頃、滑走路では第2小隊が修羅場を繰り広げていた。整備兵たちが悲鳴を上げて逃げ惑い、戦闘機が次々と離陸を試みる。

 

「できるだけ離陸前に潰しな!! 飛ばれたら面倒だからね!」

 

シーマの命令と共に、ザクマシンガンの火線が空を切る。滑走を始めていた戦闘機が爆炎を上げ、滑走路に横転した。

 

格納庫では、小隊員のクラッカーが放たれ、機体が赤く燃え上がる。火の粉が舞い、鋼の叫びが空気を震わせた。

 

『姉さん! 既に何機か離陸して、こっちに向かってくるぞ!』

 

「ちっ! 任せな!」

 

その瞬間、シーマのザクがブーストを吹かし宙を舞った。跳躍と同時にマシンガンを乱射。宙に浮く戦闘機が火球となり、空中で弾け飛ぶ。

 

『さすがは姉さんだ……!』

 

「油断するんじゃないよ!」

 

小隊員の称賛に、すかさず鋭い一喝が返される。だが、その声に込められた微かな誇りと信頼を、第2小隊の誰もが感じ取っていた。

 

ーーーーーー

 

基地中心部ーー

 

第3小隊は建物群の奥深くへと突入していた。壁をなぎ倒し、戦車を撃破し、銃座を一つずつ潰していく。戦場はまさにカオス。だが、その中心でイオリは冷静だった。判断を下し、指示を飛ばし、仲間と共に前進する。

 

だがその時――カール機の動きが突如として鈍くなる。

 

『くそっ! 少尉、すみません、さっきの戦闘で腰部がイカれたみたいっす。後方に下がります!』

 

「わかった! 無理するな! エリックと共に行動し、カバーし合うんだ!」

 

その瞬間、イオリのレーダーに異常なシグナルが浮かんだ。

すぐさま、その方向を注視すると、カールの後方で敵歩兵の小隊が重砲をカール機に向けているのが見えた。

 

「カール! 後ろだ!!」  

 

『え?』

 

警告と同時に思わず機体を動かすが、カールが振り向くと同時に、重砲の閃光。爆発。爆煙。カール機の側面が炸裂し、前のめりに倒れ込んだ。

 

「カール?!」

 

イオリの叫びが、爆音の中で響く。視界に入ったのは、重砲を構える敵兵たち。怒りに満ちた瞳で、即座に照準を敵へと向ける。

 

初めて、生身の敵を殺すと言うことを忘れ、無我夢中に引き金を引く。銃弾の雨。鉄と血が混じり合い、敵兵は瞬く間に肉片と赤い霧となって吹き飛んだ。

 

「カール!!無事か?!応答しろ!!」

 

答えがなければ、きっと取り返しがつかない――そんな焦りがイオリを突き動かす。

 

『……うぐ、だ、大丈夫っすよ少尉、自分は無事です』

 

か細くも確かに届いたその声に、イオリは息を吐いた。

 

「けがはないのか?機体はどうだ?」

 

『体に怪我はありません、少し脳震盪を、起こした程度っす。機体は……すみません、反応しないっす』

 

イオリは戦闘中にもかかわらず咄嗟に叫んだ。

 

「わかった、エリック!ここを守るぞ!」

 

イオリの視線の先には、砂煙の奥から現れた連邦軍の車列――装甲車と戦車隊がこちらへと進んでいた。中でも中心に陣取る61式戦車の主砲が、倒れたザクを睨みつけているのがはっきりと見えた。

 

『しょ、少尉!自分のことはいいっすよ!ここは大丈夫っす!先に行って制圧してきてください!』

カールの声は焦りと悔しさが滲んでいた。

 

「馬鹿言うな!ザクは動かんのだろう?!じゃあ、どうやって生き残るつもりだ!」

イオリはザクの上半身をねじり、敵部隊に向けてマシンガンの銃口を向け、トリガーを引く。

 

「お前は俺の小隊員だ!俺が最後まで面倒を見てやる!」

怒声とも呼べるその声に、カールは息を呑んだ。

 

「エリック!左に展開しろ!十字砲火で迎え撃つぞ!」

『了解です、少尉!』

エリックのザクが爆煙をかき分けて側面へと機敏に移動する。乾いた足音とともに、土煙を巻き上げ、主砲の火線が交差する構えを取った。

 

『すみません、少尉……』

カールの声は悔しさで震えていた。

 

「謝罪はいらない。お前が生きてれば、それでいい」

イオリは短く言い放ち、銃弾の雨を浴びせた。

 

連邦軍の戦車隊が前進しながら射撃を開始。巨大な砲身から吐き出された砲弾が地面をえぐり、周囲に爆風と衝撃を巻き起こした。

 

「シーウルフ隊!現在、カールが被弾し、行動不能!援護が可能な小隊はいますか?!」

 

無線が雑音混じりに返ってきた。クラウス少佐だ、

 

『こちら第1小隊!カールは無事か?!』

「無事です!ですがザクは完全に沈黙!現在俺とエリックの二人で守っていますが、連邦軍が殺到中!支援を願います!」

『くっ……こちらも複数の戦車隊と交戦中だ、すぐには行けん!持ちこたえられるか?!』

 

「了解、シーマ中尉は?!」

 

『第2小隊も多数の戦車と戦闘機と戦闘中だよ!なるべく早く終わらせるから、それまで耐えな!』

 

「了解、援護が来るまでカールを死守します!」

 

通信を切ると同時に、前方から戦車砲の音が響いた。

 

「エリック!聞いた通りだ、援護が来るまで耐えるぞ!!」

『了解!』

 

敵戦車隊の前衛が距離を詰め、エリックの左側に展開した。イオリは即座にマシンガンを回し、連射する。

連邦の戦車の主砲が火を吹き、ザクの装甲の表面を削られる。だが止まらない。

 

「左に戦車隊だ!気をつけろ!」

『少尉!前方に戦闘ヘリと重砲隊です!注意を!』

 

二人のザクは無数の火線の中、寸分の狂いもなく反応を続けていた。だが、機体には明らかに疲労が見えていた。装甲には大小の凹み、肩部の装甲には大きな焦げ跡、マシンガンの冷却システムも限界に近い。

 

「くそっ、数が多すぎる……エリック!こちらにもどれ!火力を集中するぞ!」

 

『了解!戻ります!』

 

エリックのザクが懐からクラッカーを取り出し、敵の一団に向けて投擲。閃光と爆発音が重なり、敵歩兵の一部が吹き飛ぶ。

 

イオリとエリックはカールのザクを中心に再び合流し、背中合わせの布陣を敷いた。

 

「エリック、残弾は」

『ザクマシンガンだけで、予備マガジンはなしです』

「そうか、俺もだ」

 

その時、カールの震えた声が無線に入る。

 

『俺のを使ってください!あと、2マガジンあります!』

 

「助かる」

イオリはカールのザクからマガジンを引き抜き、一つをエリックに投げ渡す。

 

「大切に使え、これで最後だ」

『了解です、しかし、少尉。これは作戦終了後はカールにきつい仕置きがいりますね』

「そうだな、酒場で奢ってもらうか」

二人は短く笑い合った。

 

『すみません、2人とも、俺のせいで……』

「泣くのはあとだぞ、二等兵」

 

その瞬間――エリックが叫んだ。

 

『少尉、来ました!新手です!!』

 

煙の奥から現れたのは、再編成された連邦軍の新たな戦車部隊。今度は戦闘ヘリを護衛に付け、挟撃の構えで迫ってくる。

 

「まだあんなにいるのか……やるぞ!」

 

二機のザクがマシンガンを構え、再び射撃体勢に入ろうとした――その時。

 

轟音。

 

戦車隊の中央が、突如火柱をあげて吹き飛ぶ。

 

「?!」

 

爆煙の中から、黒い肩を持つザクが二機、バーニアを吹かして飛び出してきた。

 

『なーにやってんだ?!そんなとこで!』

『早く敵を蹴散らすぞ!』

 

無線越しに聞き慣れた声が響く。

 

『こちらエーリッヒ、第4小隊。敵基地に攻撃を仕掛ける』

『こちらハンス!第5小隊到着!カールは無事か?』

 

彼らに続き、更に、小隊員のザクが合流し、敵を蹂躙していく。

 

『おい、2番機と3番機は、第3小隊の前に立ち盾になってやれ』

 

『了解、軍曹』

 

エーリッヒの指示に即座に反応する小隊員。

 

『俺たちは付近の敵を蹴散らしにいくぞ!続け!』

 

『了解!!』

 

ハンスの号令で付近一帯に苛烈な攻撃を仕掛ける第5小隊。

精錬されたチームワークにより、瞬く間に付近の敵が一掃されていく。

 

『おい、イオリ!ここは第4と第5で受け持つ!お前らはカールを連れて下がれ!!』

『友軍も無事到着した、挟撃成功だ。この作戦、勝ったぞ』

 

イオリの視界に、次々と爆発に飲まれる連邦の戦車群が映る。

 

「助かりました!エリック!カールを連れて下がるぞ!!」

 

イオリとエリックは、半ば機体を引きずるようにしてカール機を後方へと運ぶ。背後で爆風が次々に巻き起こり、連邦基地の中央部が火の海に包まれていく。

 

こうして、シーウルフ隊は無事、連邦基地への挟撃を成功させた。

 

第3小隊の死闘は――この勝利の鍵となったのであった。

 

ーーーーーー

 

夕暮れ時、焼け焦げた空の色が基地のコンクリートに鈍く映り込んでいた。ジオンの旗が揚がった制圧済みの基地では、敗残兵を誘導する兵士たちの叫びと命令が飛び交い、騒然とした空気の中にかすかな安堵と重苦しさが混在していた。

 

シーウルフ隊のモビルスーツは既に基地内の格納庫内へと機体を収容していた。薄暗い格納庫の中で、緊張の糸が解けた空気に、突然、若い声が鋭く響く。

 

「すみませんでした!!」

 

格納庫内にカール・シュナイダーの声がこだました。彼はヘルメットを脇に抱えたまま、震える声で叫んでいた。

 

「俺の不注意で、少尉と伍長を危険に晒しました……俺のせいで、2人の命まで……!」

 

その言葉に応えるように、第3小隊の前に並んだ他の小隊の面々は、静かにその様子を見守っていた。誰もが若き兵士の告白を止めようとせず、言葉の続きを待った。

 

沈黙を破ったのは、エリック・ホフマンだった。寡黙で落ち着いた伍長は、ゆっくりとカールの前に進み出ると、無言で右手を上げた。カールは思わず身体をこわばらせ、叱責の平手を覚悟する。

 

しかし、エリックの手が触れたのは、カールの頭だった。

 

ごしごしと、少し乱暴に、それでもどこか温かく。頭を撫でるその手には、責めも怒りもなかった。

 

エリックは、ふっと口元だけで笑うと、何も言わずにくるりと背を向けた。

 

「少尉、機体の点検に行ってきます」

 

それだけを残して、その場を立ち去っていく。カールは呆然とその背中を見送るが、すぐに顔をイオリに向けた。

 

格納庫の隅に置かれた工具用の椅子に、イオリは座っていた。無言のまま、ただカールを見つめる。

 

「カール、まずは座れよ」

 

イオリの声は、静かだったが、命令でも叱責でもない。不思議と抗えない力があり、カールはしおしおとした様子で隣の椅子に腰を下ろした。

 

「カール、お前は悪くない。責任を問うとすれば、それは俺だ。お前を指揮する立場にある俺が、周囲の確認を怠った。……俺が悪い」

 

「ち、違います!少尉は何も悪くないっす!おれは…!」

 

必死に否定しようとするカールの言葉を、イオリは手を上げて静かに遮った。

 

「カール、まずは、生き残れたことに感謝しよう」

 

イオリの言葉には、どこか自分にも言い聞かせているような響きがあった。

 

「俺たちは第3小隊だ。互いの命を預け合う仲間だ。今回は、お前が俺とエリックに助けられた。……だが、次は助けられるのが俺かエリックかもしれない。その時は、頼むぞ?だから、この件はここまでだ。自分を責めるな」

 

イオリは、わずかに笑みを浮かべてそう告げた。

 

カールは目を潤ませながらも、泣くまいと必死にこらえた。

 

「了解っす……!」

 

彼の声は震えていたが、その目には確かな決意が宿っていた。

 

ーーーーーー

 

夜になり、格納庫の一角では、誰が持ち出してきたのか、手に入れた酒が回されていた。笑い声と怒鳴り声が交錯し、戦いの疲労と緊張がようやく解けたように、隊員たちはそれぞれの形で今を生きていた。

 

エリックはカールの隣に座り、軽く肘で小突いては冗談を飛ばし、少しでも彼の心を軽くしてやろうとしていた。カールもようやく笑みを返し、杯を交わす。

 

一方、イオリは格納庫の外、ドラム缶の焚き火のそばに一人座っていた。煙草をくわえ、その先に揺れる赤い火を見つめる。

 

今回の戦闘が、頭から離れなかった。

 

あわや失いかけた部下の命、生身の敵兵士をこの手で撃った瞬間の感触と、その目。

 

どんな言葉を使っても誤魔化せない、確かな罪の重みが胸を締め付けていた。煙草を持つ指は震え、イオリは目を閉じて項垂れた。

 

そのときだった。

 

「俺も付き合っていいか?」

 

低く、静かで、それでも確かな威厳を含んだ声が響く。

 

顔を上げたイオリの視線の先にいたのは、クラウス・シュレンケ少佐だった。

 

「クラウス少佐……どうぞ」

 

イオリが言うと、クラウスは無言でイオリの隣に腰を下ろした。タバコを一本咥え、「火、もらえるか?」と口元で呟く。

 

イオリは慌ててライターを取り出し、火をつけた。クラウスは一服して、煙を吐き出すと、短く「悪いな」とだけ言った。

 

しばし、焚き火の音と煙草の煙が、沈黙を包み込んだ。

 

「どうした、いつもの覇気がないぞ」

 

クラウスが言ったその一言に、イオリは一瞬言葉を詰まらせたが、無理に笑みを作って「い、いえ。なんでもありません」と答えた。

 

だが、その答えに込められた無理な気丈さを、クラウスが見逃すはずがなかった。

 

「イオリ、俺はな、初めての実戦のとき、怖くて怖くて、敵に銃を向けることすらできなかった」

 

クラウスの口から、ぽつりぽつりと語られる昔話は、イオリの胸を打った。

 

「初めて撃った相手のポケットに、家族の写真が入っててな……吐き気がして、何を食っても味がしねぇ日が続いたよ」

 

「仲間を見捨てたこともある。今でもその数は忘れられねぇ」

 

「でもな、エゲツない隊長にしこたま殴られて、教わったんだ。『部隊は家族だ』『見捨てるな』ってな」

 

「今の俺があるのは、その言葉のおかげだ。イオリ、お前も俺の家族の一人だ。絶対に見捨てねぇよ。だから、お前も、俺たちを頼れ」

 

イオリは、それまで俯いていた顔を上げることができなかった。肩が小刻みに震えていた。何も言わず、ただ涙がこぼれ落ちる。

 

「少佐……忘れられないんです。……生身の人間の、あの顔が。部下を失いかけたあの瞬間が」

 

「怖くて、勝手に手が震えるんです。小隊長として、情けなくて……俺は、このままやっていけるのか、不安で仕方ない」

 

絞り出すようなイオリの声に、クラウスはそっとタバコを灰に落としながら答えた。

 

「忘れるな。その感情があるうちは、お前は生きていける」

 

「忘れなくていい。ただ、抱え込みすぎるな。……まずは酒を飲め。騒げ。仲間の、家族の中にいろ。向き合う方法なんて、そのうち分かる」

 

「ほら、泣いてねぇで戻るぞ。司令室から上等な酒が見つかったんだ。付き合え、イオリ」

 

立ち上がるクラウスに、イオリは顔を拭い、深く一つ息を吸うと、少しだけ笑みを浮かべて「はい」と立ち上がった。

 

その背中はまだ揺れていたが、確かに前を向き始めていた。

 

そして――。

 

その会話を聞いていた一人の影が、壁の裏にひっそりと立っていた。

 

シーマ・ガラハウは、ふっと鼻を鳴らし、くすりと笑う。

 

「心配して損したね……まったく、あんたってやつは」

 

そう呟くと、彼女もまた、仲間たちが笑い合う場所へと歩き出した。

 

そこには、戦場でしか築けない絆が、確かに存在していた。




たぶん、リアルな話、モビルスーツでもこの時代の重砲や、戦車って脅威だと思うんですよね。
だから、戦車相手でも常に全力でやってもらいます笑
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。