転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は?   作:スウェーデンクラス

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第58話 濃霧

重く響く警報音と共に、艦内の灯が緑から赤へと変わる。作戦開始を告げるその色は、やがて始まる戦いの血の色をも連想させる。

 

艦橋からゲルハルト大佐の通信が、全機のコックピット内に響き渡る。

「諸君、まもなく作戦区域に入る。すでに地上では友軍部隊が展開を開始している。降下後は速やかに展開し、地上部隊との合流を図れ。……生きて帰ってこい。」

低く落ち着いた声。だがその裏に、確かな覚悟と責任が滲んでいた。

 

無言でそれを聞いていたクラウス少佐は、前方の視界に立ち上がる大気の揺らぎを見つめながら、深く息を吐いた。

そしてすぐさま、彼も部隊全体へと通信を入れる。

 

『いいか、お前ら。今回の作戦は“サーチ・アンド・デストロイ”だ。降下後、友軍部隊と合流し、最後に消息を絶った部隊の交戦ポイントに向かう。もし敵が確認できなければ、そのまま撤収して最寄りの前線基地へ向かう。』

 

彼の声は厳しく、それでいて冷静だった。

 

『油断するな。この森林地帯は視界が悪く、地域によっては霧も発生している。レーダーは利かん。目と感覚を頼りに進め。……ビーム兵器ってのはな、撃たれてからじゃ避けられねえ。撃たれる前に見つけて、叩く。』

 

「了解!」、「了解しました!」

隊員たちの返答が次々に無線を通じて返ってくる。緊張の中にも、確かな信頼が息づいている。

 

クラウスはそれを聞きながら、小さく頷いた。

『万が一、敵発見後に通信不能になった場合は信号弾を使用しろ。配置はいつも通りだ。第1小隊を中心に、第2と第3が右翼・左翼。第4と第5が第1小隊の両脇を固める。他の友軍とは合流後に陣形を調整する。いいな?』

 

再び返される了解の声。まさに歴戦の狼たちの群れだ。

 

その直後、不意にイオリのコックピットに個別通信が割り込んできた。

「……イオリ、ちょっといいかい?」

 

思わず眉をひそめ、モニターに目をやる。

「シーマ中尉? どうしたんですか?」

 

彼女の声は、いつになく柔らかかった。

『あんたにね、この作戦が終わったあと、話したいことがあってさ。時間を空けときなよ?』

 

まるで悪戯を仕掛ける前の少女のような口調。

イオリは返答に迷いながらも、「……了解です」と素直に答えるしかなかった。

 

その瞬間、赤色の出撃灯が点灯する。警報が鳴り響き、出撃ゲートが開く。

クラウスの声が、全艦に響いた。

 

『全機、出撃!!』

 

轟音と共に、ザクたちが重力に身を委ね、大気の中へ飛び出していく。

爆風、空気摩擦、警告音がコックピットを埋める中、クラウスの指示が飛ぶ。

『各機、高度1000メートルでパラシュート展開だ!』

 

一斉に展開される大型パラシュート。白い布が大気を裂き、濃緑の森林地帯へと彼らを運んでいく。

 

着地と同時に、イオリは素早く部下たちへ命令を下す。

「エリック、カール。配置はいつも通りだ。カールが先頭、俺が続く。エリックは最後尾を頼む」

「了解!」、「了解しました!」

 

3人の機体は音もなく、密林の中へと滑るように進んでいった。

 

ーーーーーー

 

数十分後、味方との合流ポイント

 

濃密な針葉樹林を抜けた先に、鋼鉄の影が現れる。深い青の塗装を纏ったそれらは、まるで獣のように静かに佇んでいた。

4機。どれもザクとは似て非なる新鋭機――グフだった。

 

『待たせてしまったようで申し訳ない。こちら、シーウルフ隊だ』

クラウスの挨拶に、すぐさま返答が返ってきた。

 

『大丈夫です。我々も今到着したところです』

『こちらはミッドナイターズ。私は指揮官のロフト中尉であります』

 

ロフト機の姿が、一際堂々としていた。鋭利な形状、整備の行き届いた装甲。明らかに精鋭だ。

 

『ほぉ……新型のグフを支給されるとは。さすがはエース部隊だな』

クラウスが笑みを漏らすと、ロフトも少し照れたように返した。

『有名なシーウルフ隊にそう言われると……少し恐縮しますな』

 

短い冗談の応酬のあと、空気が引き締まる。

 

『地上部隊は他にもいるのか?』

『は。我々の他にザク2個小隊が展開中。上空はドップ部隊が警戒にあたっています』

『了解した。シーウルフ隊は西から、ミッドナイターズと他部隊は東から。現地で合流してポイントを挟撃する。』

 

ロフト中尉が僚機へ通信する。

『了解しました。アネッサ、聞いたな。行動開始だ』

 

グフたちは静かに旋回し、密林の影に溶けていった。

 

その光景を見ながら、カールが感嘆の声を漏らす。

『俺、初めてグフ見たっすよ!かっけえ……!俺もグフに乗りたいっす!』

 

それに応じたのはエリックだった。

『やめとけ。あれは運用が難しそうだ』

イオリは密かに感心する。

 

(確かにな。マニピュレーターを武装に置き換える構造――あれは白兵戦に特化してる。だが遠距離戦では不利だ。あれは人を選ぶ機体だ。……それを感じ取るとは、さすがエリックだな)

 

一方のカールは、ぽかんとした様子で「なんでっすか?」と首を傾げていた。

 

「無駄話はそこまでだ。もうすぐポイントに入る。気を引き締めろ」

イオリの声に、2人の空気が変わった。

兵士としての顔が、そこに戻ってくる。

 

ーーーーーー

 

そして、ポイントへ――

 

クラウスの声が全体に響く。

 

『まもなくポイントに到達する。友軍の報告によれば、いまだ敵との接触はなし。合流後は一帯を索敵し、敵の痕跡を探る』

 

だが、その指示にハンスが疑問を口にした。

 

『隊長、本当にその敵ってまだここにいるんですか?普通ならポイントを変えるはずですよ』

 

それに対し、クラウスは低く応える。

『確かにそうだ。だが――この敵は動かない。あるいは、動くにしても数キロ単位の範囲にとどまる。やられた部隊の全てが、このカレリアに集中しているのが何よりの証拠だ』

 

イオリが疑問を口にする。

「クラウス少佐。敵がモビルスーツを使っている可能性は――?」

 

その瞬間、エーリッヒの声が割り込んだ。

 

『何言ってんだ、イオリ。連邦がモビルスーツを量産してるなんて話、聞いたことねぇよ。それに、こんな辺境にそんなものを配備するか?しかもビーム兵器搭載なんて……無理だろ』

 

ハンスも続ける。

『ビーム砲ってのは、たぶん地上の砲台だよ。動けない砲台を潰すだけの仕事さ』

 

だが、イオリの胸の奥には、確かな違和感があった。

 

(連邦が初めてつくるモビルスーツがガンダムだったよな?ーーそれっていつなんだ?まさかもう作られたりするのか……?)

 

思考の渦に呑まれかけたそのとき、鋭い声が響いた。

 

『……オリ!イオリ!!聞いてんのかい?!』

シーマの声に、はっと我に返る。

 

「す、すみません!」

 

『今は作戦に集中しな。考えるのは――終わってからでいい』

 

クラウスもまた、部下の会話を聞きながら目を細めていた。

 

(……確かに、妙だ。何かがおかしい。なんだこの違和感は)

 

そのときだった。

 

霧が、辺りを包み込んだ。

 

視界は白く曇り、森の陰すら見えない。グスタフが舌打ちする。

『ちっ、なんだこの霧は……うざってぇな』

 

『全体停止。ゆっくり進め。ここが交戦ポイントだ』

クラウスが指示を出す。

 

両軍が、霧の中を慎重に進軍する。そして――

 

視界が一瞬、開けた。

 

そこは、ぽっかりと開けた空き地。静けさが、不気味なほどに支配していた。

 

反対側の茂みから、グフ部隊――ミッドナイターズがザクの小隊と共に姿を現す。

 

『こちら、シーウルフ隊。接敵なし。そちらもか?』

 

『はい、我々もです。空からも何も――。この森林じゃ、空からも見つけるのは難しいでしょう』

 

クラウスは頷き、ハンスへ指示を出す。

『周囲を確認しろ。第5小隊、頼む』

 

『了解、第5小隊、いくぞ』

 

クラウスは、ハンス達が捜索に向かうのを見届けると、ロフト中尉へと問う

 

『ここまでなにも違和感はなかったか?』 

 

『違和感ですか?いえ、特には』

 

『そうか……』

 

とクラウスは思案する。

ロフト中尉は

 

『少佐、どうしました?』と困惑を口にする。

 

クラウスは

『いや、はっきりとは言えんが、なにか引っかかる……』

と言っていると、ハンスから通信が入る

 

『隊長……こっちに来てくれ。未発見だった部隊の……ザクがいる』

 

空気が凍った。

 

ーーーーーー

 

濃密な霧が森林の中を覆っていた。湿った空気がモノアイのレンズを曇らせ、木々の間から漏れるわずかな光も、その輪郭をぼやけさせる。視界は悪く、足元には倒木や湿った落葉が散乱し、ザクの足音が葉を踏みしめるたびに小さな水音を立てた。

 

クラウス・シュレンケ少佐のザクが、緩やかな斜面を降りていく。その後ろにロフト中尉と各小隊の機影が続いた。森の奥、濃霧の中に黒く焼け焦げた残骸が見えた。ハンス・グリューネル軍曹の小隊が一足早く到着しており、すでに調査に入っている。

 

クラウスが通信を開く。

 

『ハンス、どうだ?』

 

間をおかず、ハンスの声が霧のようにじっとりと返ってきた。

 

『あぁ、見てくれ、隊長。こいつら、やっぱりビーム兵器にやられてる』

 

ハンスのザクが残骸を示すように手を向ける。クラウスがその先を見た瞬間、彼のモノアイが静かに明滅した。

 

裂けた樹木。焦げ付いた土。断面が溶けるように崩れているザクの胸部。まるで灼熱の刃が一閃したかのように。

 

イオリの機体もその光景を捉えていた。沈黙の中、彼の思考が鋭く動き出す。

 

(……何かがおかしい)

 

彼は霧の奥をゆっくりとスキャンしながら、残骸の周囲に散乱した薬莢、そして地形に対するザクたちの配置に目を向けた。

 

(この布陣……普通じゃない。まるで四方を警戒するように陣を敷いてる。なのに敵の攻撃痕は、一機ごとにバラバラだ)

 

彼の視線は地面へと向かう。薬莢が、無数の方向に向けて吐き出されたかのように広がっている。敵を中心にして狙った形ではない――むしろ、敵の姿が見えずに、パニックの中で四方へ向けて応戦した形だった。

 

(待ち伏せなら、一方向からの攻撃のはずだ。でもこれは……まるで敵が視えなかったみたいに)

 

『やはり遅かったか……生存者は?』

クラウスが重く問う。

 

グスタフ・ヴァールのザクが、木々の間から姿を現して応答した。

『付近に生存者なしだぜ、隊長。霧で散ってたかもしれねぇが、熱源も感知できねぇ』

 

クラウスは一瞬だけ口を閉ざし、次の指示を出す。

 

『……よし。付近一帯を調べる。ミッドナイターズと他の小隊にも伝えてくれ』

 

ロフト中尉が素早く動いた。

『了解。アネッサ、ザク部隊を率いて東側を警戒。残りは俺と南へ展開する』

 

だが、その刹那。イオリの声が、霧を切り裂くように走った。

 

「少佐、待ってください……何か妙です」

 

一瞬の沈黙。クラウスのザクが振り向くように動く。

 

『……どうした、イオリ』

 

他の機体たちも、通信に耳を傾けた。イオリの声は震えてはいなかった。ただ、明確な警告の音色が込められていた。

 

「敵が待ち伏せ型のビーム兵器だったとしても、普通は一方向から狙撃して終わりのはずです。けど、この残骸の配置、弾痕、布陣、そして……薬莢の散らばり方。これは明らかに四方を警戒しながら戦っていた痕です」

 

霧が、まるでその言葉に反応するように、木々の間を流れた。

 

「つまり、敵の姿が見えなかったんです。……もしくは、見えないようにされていた。もし、連邦がモビルスーツを開発していたとしたら、しかもビーム兵器を搭載し、さらにジャミング機能を持っていたとしたら……」

 

イオリは息を詰め、言葉を吐き出した。

 

「この状況はすべて辻褄が合います。俺たちは……罠にハマったのかもしれません」

 

クラウスの思考が、一瞬で臨戦へと切り替わる。

 

『全機、散開ッ!! 森林の影に隠れろ! 配置を乱せッ!!』

 

だが、遅かった。

 

次の瞬間――

 

『……!? ぐああッ!!』

 

爆発が霧の奥で咲いた。木々の影に紛れて進軍していた友軍のザクが、一条のビームによって胴体を貫かれたのだ。胴と背中のジェネレーターが一瞬にして過熱し、機体は内部から火を噴き、爆散。鉄と熱風と、そして赤く灼けた装甲片が、周囲の枝葉を吹き飛ばす。

 

『3番機、撃破ッ!! 敵影は……、くそ!視えない! どこから撃ってきた!?』

 

友軍の無線が一斉にざわめいた。イオリのモノアイが霧の中を探る。だが、敵の姿はどこにもない。代わりに聞こえるのは、次なる爆発の轟音だった。

 

別の方角――斜め後方から再び閃光。2機目の友軍ザクの頭部が撃ち抜かれ、反応炉が暴発。機体は膝を折る間もなく、崩れ落ちた。

 

『ちくしょう、次は右後方から来たぞ! 索敵が効かねぇ!奴らどこにいやがる!?』

 

グスタフの怒声が響く。

その声に、クラウスの怒号が重なる。

 

『全機、遮蔽物を使え! 距離を取って分散! 敵は……モビルスーツだ! 未知の敵機が霧の中に潜んでいるぞッ!!』

 

ザクたちが木々の影に飛び込み、姿勢を低くし身を隠す。だが、どこに敵がいるのか、依然わからない。レーダーには何も映らず、光学も役に立たない――完全な“見えざる敵”だった。

 

『ジャミングか……! こんな密林の中で……!』

 

イオリはクラウスの警告を背に、息を飲む。先ほどの予感が、今まさに現実のものとなって目の前に展開されている。

 

『くそっ……! こいつら……!』

 

霧が揺れ、またしてもどこかで光が閃く。死が、音もなく忍び寄る。それはまるで――狩人のように。

 

戦場は完全に変貌していた。今や彼らが踏み入れているのは、未知の敵が支配する“狩り場”だった。

 




まさかの復讐のレクイエムに登場するミッドナイターズとまさかの共演!!笑
たぶん最初の頃はグフだったと思う、たぶん!!笑
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