転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は? 作:スウェーデンクラス
遠くで誰かが叫んでいる。
声が重なる。怒鳴っている。焦っている。…泣いている。
それは夢の中のようにぼやけ、遠く、けれど確かに耳に届いていた。
『イオリ、死ぬんじゃないぞ!!』
『こんなとこでくたばるんじゃねーぞ!!イオリ!』
『もう基地に帰ってきたんだ!もう少しだ!!』
『どけぇ!!道を開けろ!!』
どれも聞き慣れた声だ。クラウス少佐、グスタフ、エーリッヒ、ハンス…みんなだ。
でも、どうしてそんなに取り乱している?
俺は……今、どうなってる?
どうしてこんなことになっている?
断片的に記憶を手繰る。
そうだ、敵の伏兵に遭遇した。森の中、静寂に潜む狙撃。部隊は撤退行動に入っていた。
その撤退は、成功したのか?
俺は――どうした?
意識が霞む。何か大事なことを思い出しかけては、霧に呑まれていく。
その時だった。ひときわ切実な、泣き声まじりの叫びが、心を貫いた。
『イオリ!!死ぬんじゃないよ!……まだ、アンタになんも言えてないんだよ!!』
――シーマ中尉。
一瞬、身体が震えた気がした。
そうだ、あの時俺は…シーマ中尉をかばって…
森の影に潜んでいた狙撃機が放ったビーム…
咄嗟に機体を操り、シーマ中尉の機体を突き飛ばした。
そうして俺は――
撃たれたんだ。
全身に痛みが戻る。焼けるような、裂けるような感覚が脳を襲う。
だが、その痛みすらも、俺がまだ生きていることを証明していた。
力を振り絞る。目を――開ける。
そこには、涙を浮かべたままこちらを見つめるシーマ中尉の顔があった。
強くて、鋭くて、誰にも弱みを見せたことのない人が、いま俺のために泣いていた。
「…中尉は…無事…ですか……?」
絞り出すような声で問いかける。喉が焼け付き、声にならない。
だが、その問いに、シーマ中尉は目を見開き、すぐに答えた。
「ばか!あたしは大丈夫さ!アンタが助けてくれたからね!私の心配より自分の心配しなよ!」
その言葉を聞いて、イオリは微かに笑った。
「…よかった……」
それが最後の力だったかのように、再び目を閉じる。
「イオリ!?しっかりしなよ!イオリ!!」
シーマの叫びが響く。タンカーが揺れ、基地の通路を疾走する車輪の音と重なって、時間が急速に過ぎていく。
その中で、イオリは担架に乗せられたまま、身動き一つしない。
その場にいた全員の胸を、重苦しい不安が支配していた。
ーーーーーー
ザクは見るも無惨だった。左半身は高出力のビームによって融解し、装甲が溶け、剥がれ落ちていた。
爆発しなかったのは奇跡に等しい。被弾の直前、イオリが反射的に体勢を変え、融合炉への直撃を避けたからだ。
機体から降ろされたイオリの姿は、悲惨の一言だった。
左半身の火傷、モニターの破片が突き刺さった身体、そしてかすかな呼吸――。
命が、消えかけている。
基地に到着してすぐ、タンカーは医務室へと突き進む。
周囲の兵士たちが通路から慌てて避ける中、クラウスたちの怒声が響く。
「イオリ、死ぬな!!」
「もう基地だぞ、あと少しなんだ!!」
「どけぇ!!通せ!!仲間が死にかけてるんだ!!」
医務室の前に着いたタンカーが止まると、軍医と看護師が駆け寄る。
「ここから先は入らないでください!」
その言葉に、シーマは即座に食ってかかる。
「何故さ!!あたし達の仲間なんだよ!?アンタらに任せて、本当に助けられるのかい!?」
その肩を、クラウスが掴んだ。
「ここから先は、俺たちの仕事じゃない」
「だからって……!」
シーマの声が震える。彼女は、イオリの命を、自らの手で確かめたかった。
だがクラウスは、静かに、しかし力強く言った。
「今はイオリを信じろ。アイツはな……こんなことで死ぬタマじゃねぇ」
その言葉に、誰も反論できなかった。
通路にただ、機器のアラーム音と、遠ざかるタンカーの車輪の音だけが残された。
…そして、重い扉が閉まる音がした。
命の行方は、まだ、その向こうにある。
ーーーーーー
医務室の前は、痛々しいほどの沈黙に包まれていた。
銃声も、怒号も、爆発音もない。
ただ静寂と、焦りと、祈るような気配だけがそこに漂っている。
クラウスは、まるで時間そのものに睨みを利かせるように、医務室の扉を見据えていた。
強く結ばれた口元が震えているのは、怒りでも悲しみでもない。
“無力”という言葉が、彼の全身から滲み出ていた。
彼のすぐ隣で、グスタフが無言のまま壁にもたれかかっている。
腕を組み、額を伏せていたが、時折小さく息を吐くその呼吸が、緊張の深さを物語っていた。
あの男でさえ、祈るしかないという現実に、全身が軋んでいた。
エーリッヒとハンスの姿は、そこにはなかった。
二人は部隊の指揮を維持するために、戦闘後の処理と部隊員たちへの状況説明に奔走していた。
誰かが冷静でなければ、組織は崩れる。それが軍人という生き物だ。
カールは、拳を強く握り締めながら、涙を流していた。
若い彼にとって、凶弾に倒れた隊長の姿は、受け入れがたい現実だった。
「少尉は……大丈夫っすよね?!」
涙声で、誰にともなく訴えるように叫ぶ。
その隣でエリックは、カールの肩に手を置き、言葉を探しながら静かに励ましていた。
それがどんなに無力な行為であっても、今はそれしかできなかった。
シーマは医務室の前にあるベンチに腰を下ろしていた。
俯いたまま、両手で顔を抱えるようにして、時折小刻みに震えている。
その肩は何度も小さく上下し、沈黙の中にかすかな嗚咽の音が混じった。
戦場では見せたことのない、崩れかけたその姿に、誰も言葉をかけられなかった。
そんな沈黙を破ったのは、医務室の扉の向こうから漏れ聞こえる怒号だった。
「バイタル低下! 輸血を増やせ!!」
「くそっ…、こんな所まで刺さってたのか……」
「内出血が……止まらない、早く縫合を!」
それは戦場の砲火とは違う、命を繋ぎとめるための戦いの声だった。
時間がどれほど経ったのか。
誰もが時間の感覚を失い、ただその扉だけを見つめていた。
そして──ついに、扉が開いた。
軍医と看護師たちが出てくると、その場の空気が一変する。
皆が、弾かれたように駆け寄った。
「先生! イオリは?!」
クラウスが、声を震わせて問いかける。
その瞬間、シーマは全身を固くし、心臓を強く握られるような感覚に囚われた。
軍医は疲れきったような顔で、静かに言葉を返した。
「幸い一命は取り留めている。しかし、あれだけの火傷と破片による刺し傷だ。予断は許さない。万が一のことを考えたほうがいい……」
その一言で、世界がぐらりと揺れた気がした。
シーマの視界が暗転する。
冷たい汗が背を伝い、頭の奥で何かが壊れた。
『イオリが、死ぬかもしれない』
そんな言葉が、頭の中でぐるぐると渦を巻く。
軍医が続ける。
「あとは本人次第だ。……我々は見守ることしか出来ないよ」
その言葉に、シーマの中で何かが爆ぜた。
「見守るだけって……他になんかやることはないのかい?!」
立ち上がって、軍医に詰め寄る。
声は怒りに震え、目には涙がにじんでいる。
今にも掴みかかりそうなその勢いに、周囲が息を呑んだ。
クラウスが慌てて止める。
「シーマ! 落ち着け!」
続けて、グスタフが鋭く声を上げる。
「やめとけ!!」
だが、シーマは止まらなかった。
「ふざけんじゃないよ!! まだまだ、やれることはあるはずだろ?! 医者なんだろ?! 命を助けるのが仕事じゃないのかい?!」
通路にその叫びが木霊する。
怒り、悔しさ、悲しみ、すべてが混じったその声に、皆が胸を締め付けられた。
それでもなお言おうとするシーマを、クラウスが強く壁に押し付ける。
「落ち着け!! シーマ!! これ以上やれることはないんだ!! アイツを、イオリを、信じろ!!」
その言葉に、シーマはついに力を失った。
壁にもたれながら、膝を抱えて座り込む。
「……ふざけんじゃ……ふざけんじゃないよ……こんなことって……あんまりだよ……私を助けて…アイツが死ぬかもしれないなんて……」
肩を震わせながら、声にならぬ嗚咽を漏らす彼女に、誰も何も言えなかった。
クラウスは静かに言う。
「あとは見守るしか出来ないんだ。お前が見守ってやれ、シーマ」
そう言ってから、軍医の方へ向き直り、深く頭を下げる。
「先生、すまなかったな。尽力、感謝する」
軍医は静かに微笑みながら頷く。
「あぁ、大丈夫だよ。よくあることだからね。……あの少尉さん、ずっと呻きながら言っていたよ。『シーマ中尉』ってね。そこの女性士官のことかい? だったら、そばに付いてやんな」
その一言に、シーマの目が見開かれた。
その直後──
医務室から、タンカーがゆっくりと運び出される。
全身に包帯を巻かれ、人工呼吸器を装着したイオリが、その上で静かに眠っていた。
シーマは、誰よりも早く駆け寄った。
「イオリ……!!」
その声は、震え、擦れながらも、確かに彼の名を呼んでいた。
軍医は続ける。
「とりあえず、今日からは設備の整っている医務室にいれるよ。少しは落ち着いて治療ができる」
クラウスは皆を見渡し、静かに言う。
「よし、俺はこれから艦長に報告に行く。ほかのメンバーは待機だ。……シーマは付いててやれ」
誰も異論はなかった。
それが今、自分たちにできる最善の「戦い方」だったからだ。
ーーーーーー
静まり返った基地の執務室には、重苦しい空気が漂っていた。
部屋の中心には無骨な鉄製の机が置かれ、分厚い報告書と作戦資料が幾重にも積まれている。その向こうに座る一人の男――銀髪交じりの短髪に鋭い眼光、背筋を伸ばし、軍服の皺すら微塵も許さぬ佇まい。ヘルヴォルの艦長であり、シーウルフ隊を統括する司令官、ゲルハルト大佐である。
その対面に座るのは、戦場から帰還したばかりのクラウス少佐。疲弊したその顔には、いつもの余裕や皮肉は影を潜め、瞳の奥に深い怒りと無念の色が浮かんでいた。
「……任務ご苦労だったな、クラウス少佐」
ゲルハルトの声は低く、しかし、言葉のひとつひとつに重みがある。静かながら、その奥には激しい憤りが感じられた。
クラウスは、表情を変えぬまま静かに頷いた。
「まさか、連邦軍がモビルスーツを実戦配備し、我々を待ち伏せしていたとは……。しかも、それがあれほどの性能を持っているとは、予想だにしませんでした」
言葉を絞り出すように語るクラウスの声は、かすかに震えていた。無理もない。あの戦場は、まさに地獄だった。敵の奇襲、モビルスーツの驚異的な運動性能、機動力、火力――それら全てに、シーウルフ隊は翻弄され、崩壊寸前まで追い込まれた。
「部隊全体が壊滅する寸前でした。しかし……」
と、そこで言葉を止め、深く息を吐いてから続ける。
「……イオリの機転に助けられました。彼の判断がなければ、誰一人として帰還できなかったでしょう」
その名が出た瞬間、ゲルハルトの眉がわずかに動く。
「イオリ少尉の機転か……。で、彼の容体はどうなのだ?」
その声は、一転して穏やかなものになっていた。鋼のような規律を誇る大佐が見せる、数少ない人間味。それは、若き兵士の安否を気遣う、指揮官としての当然の感情だった。
クラウスは目を伏せ、小さく唇を噛み締めた。
「……余談を許さないと、軍医が言っていました。今は、シーマが付き添っています」
その口調は苦く、敗北感に満ちていた。ゲルハルトは、しばし沈黙する。やがて、椅子に深く身を沈め、天井を見上げるようにして言った。
「……我々より若い者が、命の危険に晒される。何度経験しても、こればかりは慣れんものだな」
クラウスの目が、微かに揺れた。共鳴するように、重く深く頷く。
「はい……本当に、慣れません。イオリは、命を賭して我々を救った。そんな彼が、今はベッドの上で死にかけている。……救われた俺たちは、何もできない。歯痒いですよ」
その拳は自然と握られ、白くなるほどに力が込められていた。
「部隊の様子はどうだ?」
と、ゲルハルトが静かに尋ねる。クラウスは一瞬、答えに迷ったようだった。だが、ゆっくりと口を開く。
「……皆、気丈に振る舞っていますが……内心は、動揺を隠しきれていません。特に第3小隊……カールやエリック、それにシーマ中尉も……」
そこで言葉を詰まらせる。
脳裏に浮かぶのは――イオリの搬送中、必死に声をかけ続けていたエーリッヒとハンスの姿。
医務室の前で悔しそうに壁を殴るグスタフ。
そして、イオリの名を叫びながら泣き崩れ、必死に彼を呼び続けるカールと、それを抱きしめ慰めようとするエリック。
極めつけは、混乱と絶望の中、震える体を抱くように床に座り込み、声にならぬ叫びを繰り返していたシーマ――彼女の姿だった。
戦場であれほど冷静だった者たちが、皆、壊れそうなほどに痛んでいた。
「……地獄だったな」
ゲルハルトのその一言が、すべてを物語っていた。
「クラウス少佐、部隊にはしばらく休息を与える。ケラーネ少将の許可は取ってある。彼もお前たちに、よく休めと言っていた。お前たちが敵モビルスーツの情報を持ち帰ったこと――それは、本国にとって計り知れぬ価値がある。褒賞と思えばいい」
そう言ってゲルハルトは机上の書類に手を伸ばしながらも、その瞳はクラウスを見ていた。だが、クラウスは俯き、かすかに唇を震わせながら答える。
「は……。ですが……我々は……イオリの仇を討ちたい。今すぐにでも新たな出撃命令を。情報が入り次第、再び敵モビルスーツ部隊を追撃したいのです。今度こそ、不覚は取りません」
その言葉には、揺るぎなき決意があった。だが、ゲルハルトは静かに、しかし厳然とした口調で答える。
「……少佐、今は“休め”。これは命令だ。本国も、敵のモビルスーツに関する情報を解析中だ。既に宇宙攻撃軍の特殊部隊が、敵の新造艦およびモビルスーツの情報を掴み、それを追っている。……戦う時は、必ず来る。だが今は、傷を癒せ。部隊を、守れ」
クラウスはその言葉に、しばし沈黙した。
やがて立ち上がり、敬礼をひとつ。
「……了解しました。では、失礼します」
短く告げて、彼は重い足取りで執務室を後にする。
静かに閉まる扉の音だけが、部屋に残った。
ゲルハルトはその背を見送り、呟くように言った。
「……帰ってこいよ、イオリ。お前の帰りを待っている奴らが、ここにはいる」
そして、自らの拳を強く握るのだった――。
ーーーーーー
静寂が支配する医務室。その空間に響くのは、バイタルモニターの機械音のみだった。無機質なリズムが、まるで生きている証を刻む鼓動のように、規則正しくもどこか不安げに鳴り響いていた。
イオリは、白いシーツに包まれた簡素なベッドの上に横たわっている。顔には包帯が巻かれ、左肩から胸元には分厚いガーゼが貼られていた。彼の身体は、まるで戦場の記憶そのものを体現しているようだった。
そしてその傍らには、シーマが椅子に腰かけていた。彼女の手は、イオリの右手をしっかりと握って離さない。その指には、いつもの鋭さも、冷たさもなかった。ただ、今は——震えるように、温もりを求めていた。
「しっかりしなよ、イオリ……」
その声はかすかに震え、今にも消え入りそうだった。
地獄のような二日間だった。いや、あの時間は“日”ではなく“永遠”にも感じられた。何度も何度もバイタルが急落し、そのたびに医務室は地響きのような騒然さに包まれた。軍医の怒声。看護師たちの慌ただしい動き。まるで、死神と命の取り引きをしているかのようだった。
シーマは何度、あの手を握りしめ、そして震わせたか分からなかった。落ち着いたと思えば、再び急変。希望と絶望を交互に味わい、そのたびに彼女の心は壊れかけた。
それでも——
一度も、席を立たなかった。
一睡もせず、ただ、彼のそばに居続けた。
それしか、できなかった。
山場と呼ばれた二日間は過ぎた。けれど、イオリは未だに目を覚まさない。静かな寝息。浅い呼吸。それでも——生きている。そのことだけが、シーマの心をかろうじて支えていた。
そんな時だった。医務室の扉が静かに開き、クラウスが現れた。彼の顔にも、かつての快活さはない。ひどく疲弊し、苦渋を隠しきれない男の表情をしていた。
「……おう、どうだ。イオリは」
その声もまた、抑えたものであった。威圧も冗談もない。ただ、部下の命を案じる男の、正直な声。
シーマは顔を上げた。目の下には濃い隈ができ、瞳には疲労と不安が滲んでいる。
「……まだ目を覚まさないよ。軍医が言うには……今こうして息をしてるのも奇跡らしいよ」
それは、まるで諦めに近い声だった。いつもの切れ味のある言葉遣いは、今はどこにもない。そこにいるのは、一人の疲れ切った女性だった。
クラウスはそっとベッド脇に近づき、二人を見下ろすと、わずかに微笑んだ。
「そうか……待っていてやれよ。目を覚まして、最初に見る顔がお前だったら、イオリも喜ぶさ」
シーマはうつむきながら、かすかに笑った。だがその笑みは自嘲にも似ていた。
「どうだろうねぇ……あたしを助けて、左半身に大火傷。それに身体中の刺し傷……あたし、恨まれてるかもしれないね」
彼女は、そっとイオリの額に浮かんだ汗をハンカチで拭いながら、そう呟いた。自責の念が、その声の奥底から染み出していた。
クラウスは大きくため息をつくと、声を低くして言った。
「イオリが、お前を恨むわけがねえよ。あいつは、お前が大事だから、自分を投げ出してでも助けたんだ。……シーマ、お前はそんな薄っぺらいヤツに惚れたのか?」
その問いかけに、シーマは目を閉じて静かに首を振る。そして、細く、けれどしっかりとした声で答えた。
「違うよ……あたしが惚れたのはね、どんなことがあっても折れない……芯の強い男さ。命懸けでも、信じたものを守ろうとする奴。——イオリみたいな男さ」
その言葉に、クラウスは微笑んだ。ようやく、少しだけ、シーマが戻ってきた気がした。
「だったら、信じてやれ。……きっと、帰ってくる」
その一言だけを残し、クラウスは医務室をあとにした。
その後も、シーウルフ隊の面々が代わる代わる見舞いに訪れた。気丈に振る舞ってはいても、誰の心も平静ではなかった。慰め、声をかけ、少しだけでも希望を分け合い、そしてまた去っていく。
その中で、シーマだけは、ずっと傍にいた。
イオリの顔を見つめ、時折、汗を拭いながら、そっと囁く。
「……イオリ……早く帰ってきてよ……みんなが待ってるんだよ……」
その声が届いているかは分からない。けれど、届いてほしかった。想いが、言葉が、彼の深い意識の奥底にまで届いて——再び、その瞼が開く日を信じて。
やべー終わらねぇ。
一年戦争やっと中盤あたり?
一年終わる前にこっちが終わりそう笑