転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は?   作:スウェーデンクラス

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第69話 戦う理由

空には月もなく、星々が遥か遠くに瞬いていた。

中東の乾いた夜風が、砂と火薬の匂いを運んでくる。

中東戦線に築かれた、ジオン軍の前線基地内で、赤く燃える焚き火の周囲には、戦いの疲れを癒すように、シーウルフ隊の面々が輪になって腰を下ろしていた。

 

「……みんな、ご苦労だった」

 

クラウスの低く落ち着いた声が焚き火の音に混じって響いた。

炎がその顔を赤く照らし出す。

 

「今回の作戦で連邦の攻勢を挫き、撃退したことは――我々にとって、そしてこの前線基地にとっても大きな戦果となる。感謝の意として、基地司令から酒の提供を受けた。だが――飲みすぎるなよ。適度に飲んだら、今夜はしっかり休め」

 

静かに頷いた後、隊員たちから一斉に歓声が上がった。

歓喜と安堵、そして緊張からの解放。

瓶の栓が抜かれ、金属製のカップが酒を受け止める音があちこちで響いた。

 

グスタフがごつい腕を組みながら、焚き火越しにイオリを見やった。

 

「それにしてもよ、イオリ。おめぇ……新機体、使いこなしてたじゃねーか」

 

「確かにな」

エーリッヒが短く頷く。

 

「ありゃ、バケモンみたいな加速性能だな」

とハンスも苦笑混じりに言った。

 

カールが笑いながら言う。

 

「ホント、ついて行くのに必死っすよ」

 

イオリは謙遜しながらも、どこか嬉しそうに肩をすくめた。

 

「いえ……アイツの速さは、まだこんなもんじゃない。もっと使いこなしてみせますよ」

 

クラウスが手元の酒をひと口飲んだ後、ふと問いかけるように声を上げた。

 

「それにしても……あの煙幕はなんだ? まるで、この前の作戦みたいだったな。お前、煙の中で戦ってただろ」

 

イオリは少し考えるように目を伏せ、それから答えた。

 

「えぇ。シルバーバレット隊と戦闘した時の経験を参考にしました。煙幕を焚けば、接近戦に持ち込める。それに――敵を煙の中に閉じ込めれば、灰色の機体であるこちらを視認しづらくなる。イフリートの機動性があれば、煙の中でも素早く動けるので……敵の背後も取りやすい。だから、煙幕射出器を増設したんです」

 

それを聞いたシーマは、腕を組みながら苦笑いを浮かべる。

 

「見てるこっちはハラハラもんだよ。煙が晴れるまで、アンタのこと援護できないんだからね」

 

「それは……すみません」

 

イオリは頭を掻きながら苦笑した。

「でも、この戦い方が――今の自分には合ってる気がするんです」

 

シーマはそんな彼を見て、どこか困ったように、それでいて嬉しそうに笑った。

 

「なるほどな」

とクラウスが再び口を開く。

 

「いきなり煙の中に閉じ込められて、灰色の機体と近接戦闘……俺でも、そんな状況はごめんだな。それで……“マーナガルム”ってのは、なんだ?」

 

「……ああ、あれはですね。北欧神話に登場する、狼の一族の中で最強の狼の名前です」

 

イオリの説明を聞いたグスタフが、わざとらしく大げさに声を上げる。

 

「おぉい!! お前ぇ、隊長が目の前にいるのに、この部隊最強を名乗るってのか?」

 

「いい度胸じゃねーか?」とハンスが笑う。

 

「お前にはちょっと早いんじゃねーか?」とエーリッヒも続く。

 

イオリは真っ赤になって両手を振る。

 

「ち、ちがいますよ! それくらいの意気で戦うってことです! そしたら、みんなを守れるくらいの強さになれる気がして……!」

 

クラウスは笑みを浮かべ、頷いた。

 

「ふっ……あぁ。実際、今のお前がこの部隊で一番つえーかもしれねぇな。シーウルフ隊最強の狼ね、いいんじゃねぇか?その名前」

 

イオリはしばし黙り、焚き火の炎を見つめながら、静かに、確かな声で答える。

 

「はい」

 

ーーーーーー

 

部隊員たちはそれぞれに酒を酌み交わし、戦場では見せることのない笑顔を浮かべていた。

クラウスとグスタフは昔話に花を咲かせ、ハンスとエーリッヒは他の小隊員と賑やかに語らい、カールとエリックは整備長クルトと共に、メカの話で盛り上がっていた。

 

その一角で、焚き火の少し奥――人の目が届きにくい場所で、イオリとシーマはふたり、静かに並んで座っていた。

 

「シーマ中尉……今日の敵、初めて見るタイプでしたね」

 

イオリの言葉に、シーマは笑って肩をすくめた。

 

「そうだね。タンクもどきとは、よく言ったもんだよ」

 

イオリの瞳が夜の炎に揺れる。

 

「……連邦はこれから、もっとモビルスーツを出してくる。そうなると、戦況は今後どうなるか分からない」

 

シーマは軽く息を吐き、肩を落とした。

 

「イオリ。アンタはいつも、考えすぎなんだよ。今、アタシらにできるのは――与えられた任務を遂行して、生き残ること。それだけだよ」

 

それでもイオリの視線は、遠くを見据えるように焚き火の奥を見ていた。考え込むようなその横顔を、シーマはじっと見つめた。

そして、そっとその頬に手を添え、無理やり彼の顔を自分の方へ向かせる。

 

「……ほら。せっかく、二人きりで話してるんだ。そんな辛気臭い顔してんじゃないよ。こっちまで、気が滅入る」

 

イオリは少し驚いたように目を見開き、それから、照れたように目を伏せた。

 

「……えぇ、すみません」

 

するとシーマはイオリの手を取り、ぐいと立たせた。

 

「ほら、こっちに来なよ」

 

焚き火から少し離れたコンテナへと、シーマはイオリの手を引いていく。中に入ると、冷たい金属の空間に木箱等が雑多に積まれていた。

コンテナの中は明かりはなかったが、隙間から漏れる月明かりのおかけで、困ることはなかった。

 

「シーマさん? どうして、こんな場所に……」

 

イオリの問いに、シーマは妖艶な笑みを浮かべた。

そっとイオリを押していき、木の板の上に押し倒す。

自らはイオリを跨ぐように膝立ちになると、制服のボタンをゆっくり外し、やがて、全てを外し終えると、服の間からシーマの肌と下着が見える。

そして、イオリの胸板に自らの胸を押し当てるよう横になると

 

「約束したろ? ご褒美を、あげるって……」

 

その囁きは、イオリの耳奥に甘く響いた。

イオリは思わずシーマの身体を抱きしめる。

戦闘後の昂りを発散するように。

 

「……優しくできなかったらすみません」

 

イオリはシーマの胸元に顔を埋めると、余裕のない声で呟く。

シーマは、そんな声の主の頭を撫でながら

 

「…今まで優しくしてくれたこと、あったかい?」

 

この言葉を合図に2人は互いを激しく求め始める。

そして静かに、ふたりの影が、コンテナの中に沈んでいくのだった。

 

ーーーーーー

 

次の日の朝、戦闘の喧騒が遠く感じられるほどに、基地には珍しく穏やかな静けさが広がっていた。

空は高く澄み、日差しは柔らかく地表を照らしている。

イオリたちは屋外に設置された食堂のテーブルに座り、スチール製の食器に並ぶ粗末ながらも温かな朝食を口にしていた。

日常の隙間に差し込まれる、つかの間の平和。それを壊すものがこの先に待っているとも知らずに。

 

屋外に設置された食堂スペースでは、イオリたちシーウルフ隊の面々が、各々に朝食をとっていた。

長机が並べられ、金属製のトレイの上に並ぶのは、パン、スープ、そして味気のないソーセージ。

味に期待できるものではないが、それでも温かい食事を口にできるのは、まだ「日常」の証であるかのようだった。

 

イオリはカールとエリックと共に席に着き、少し気の抜けた調子で談笑していた。

数メートル離れた席ではシーマが、自身の小隊の兵士たちと落ち着いた声で会話していた。

彼女がふとこちらを見て、小さく笑った気がして、イオリもそれに応じて口元を緩める。

目を閉じれば、昨夜の情事を思い出しそうになり、イオリは慌てて、頭を振る。

その姿を不思議そうに見るカールとエリックの2人。

さらに向こうでは、グスタフ、エーリッヒ、そしてハンスらベテランたちが集まり、苦味ばしった顔でコーヒーを啜っていた。

 

「ところで、朝から隊長はどこに行ったんだ?」

 

ふいにハンスが口を開き、パンをちぎりながら言う。

 

「……ああ、そういや朝から見てないな」

 

エーリッヒも眉をひそめて応じた。

 

そのやり取りにグスタフが重い声で答える。

 

「隊長は朝から大佐の所へ行ったよ。呼び出しがあったんだとさ」

 

言葉に沈黙が落ちた。ハンスは唸るように言う。

 

「朝からの呼び出しなんて、不吉だな……」

 

その瞬間、誰かがこちらに近づく足音が響いた。

空気がわずかに張りつめる。

振り返った先に現れたのはクラウス。

だが、その表情はこれまで見たことのないほど険しく、張り詰めた鋼のような気配を纏っていた。

 

全員の視線が彼に集まり、食堂にいた兵士たちの会話がピタリと止まった。

 

「聞け!」

 

その声は、晴天の空に落雷が落ちるかのように鋭かった。

 

「シーウルフ隊はすぐにブリーフィングルームに集合だ!!」

 

いつになく厳粛なその口調に、兵士たちは顔を見合わせながらも即座に動き出した。

トレイを片付け、立ち上がり、それぞれが隊列をなしてブリーフィングルームへと向かう。

 

イオリもトレイを手早く戻し、足早にその場を後にした。

歩いていると、自然にシーマと並んだ。

朝の微かな光の中、二人の影が並んで伸びていく。

 

「何かあったみたいですね」

イオリが、声を潜めるように言う。

 

「そうみたいだね……クラウスのあんな顔、初めて見たよ。……ただ事じゃないね」

 

シーマの声には、不安を押し殺したような響きがあった。

 

ほどなくして、ブリーフィングルームへと到着した。

部屋の前方、演壇には既にゲルハルト大佐が立っていた。

背筋を伸ばし、無言で部隊の集合を待つその姿には、常よりもさらに重厚な威圧感があった。

 

全員が席につき、室内の空気は氷のように張り詰めていく。

やがてゲルハルトが口を開いた。

 

「諸君、朝から集まってもらったのは――重要な報告があるからだ」

 

部屋の温度が、言葉と共にさらに一段低くなるようだった。

皆が息を詰めて次の言葉を待つ。

大佐は一呼吸の間を置き、そして、静かに、だが明確に告げた。

 

「……先日、我らがガルマ・ザビ殿下が戦死された」

 

その瞬間、ブリーフィングルームに響くはずのない「音なき衝撃」が全員の胸を貫いた。

誰もがその意味をすぐには理解できず、数秒の沈黙が続いた。

 

「詳細はまだ分かっていない。そして、このことはまだ公には公開されていないものだ。とはいえ――いずれは知れ渡ることになる。その時、諸君らは慌てることなく行動するように。以上だ。解散」

 

静かに、しかし確実に、空気が崩れる。

重く沈黙したまま、隊員たちは部屋を立ち去っていく。

 

廊下へ出ると、イオリは自然とシーマと並んで歩く。

通路には足音だけが響いていた。

 

(……シャア、お前がいながら、何がどうなってるんだ?……これも史実通りなのか?)

 

イオリの思考が混濁する。

心の中で問いかけても、答えは返ってこない。

 

「イオリ、怖い顔してるよ」

 

ふいにシーマが優しく声をかけてくる。

 

「大丈夫さ、負けやしないよ」

 

その言葉に、イオリは少しだけ顔を上げ、ぎこちなく笑って見せる。

 

「え、えぇ……そうですね」

 

だが心の内では、まだ整理がつかない思いが渦巻いていた。

 

(俺たちがいくら勝ったって、結果は覆らないのか?……だったら、この戦争に何の意味があるんだよ…!)

 

その時、背後からクラウスの声が響いた。

 

「イオリ、シーマ」

 

振り返ると、クラウスがさっきとは打って変わったように笑って近づいてくる。

 

「どうだ?これから一本付き合えよ」

 

イオリは少し驚きつつも笑って頷く。

 

「えぇ、いいですよ」

 

だがシーマは小さく笑って首を振る。

 

「アタシはやめとくよ。たまには男二人で吸ってきな」

 

そう言って、イオリの肩をポンと叩き、

 

「また、後でね」

 

と呟くと、軽やかな足取りでその場を後にした。

 

クラウスは立ち去るシーマの背中を眺め、口元に皮肉気な笑みを浮かべ

る。

 

「おーおー、お熱いねぇ」

 

イオリは照れたように頭をかく。

 

「やめてくださいよ……」

 

その後、基地内部の喫煙所。

薄暗い空間に、タバコの煙がゆっくりと漂っていた。

クラウスとイオリは壁にもたれて煙を吐き出しながら、言葉少なに時を過ごす。

 

やがてクラウスが口を開く。

 

「シーマとは、うまくいってるようで良かったよ」

 

イオリは苦笑しながら答える。

 

「隊長のアドバイス通りに動いて正解でしたよ」

 

それからしばし、沈黙が続く。タバコの火がじりじりと燃え尽きる音だけが聞こえていた。

クラウスが、イオリの固い表情を見て口を開く

 

「どうした?なんか言いたそうな、そんな顔をしているぞ」

 

と問うと、イオリは重い口を開く

 

「これからどうなります?」

 

クラウスは遠くを見るような目で、ゆっくりと言った。

 

「今まで優勢だった戦況が、ガルマ殿下の戦死で一気に崩れるだろうな。連邦のやつらは勢いづくはずだ」

 

イオリはその言葉をかみしめるように、一歩前へ出て、クラウスの横顔を見つめる。

そして、声を震わせて言った。

 

「……隊長、俺たちがいくら頑張ったって、犠牲を出したって、この戦争に勝てるかなんて分からない。それに勝てたからって、自治権が得られるだけ。そんな戦争に、これだけの犠牲を払う意味があるんですか……?」

 

クラウスはゆっくりと顔を向けた。目は静かで、だが深く沈んでいた。

 

「意味か……そんなものはこの戦争にはない。命を奪い、命を失う。それが続くだけの場所に、“意味”なんて言葉を持ち込むな。戦場は答えをくれない。戦争に勝ったとしても、幾許かの仮初の平和が続くだけだ」

 

イオリは、絞り出すように言葉を続ける。

 

「だったら!一体なんのために俺たちは……!」

 

その時、クラウスが静かに、だが力強く言った。

 

「だがな、イオリ。俺たちは軍人だ。命令には従わなければならん。戦争の意味なんて大層なもんは、お偉い奴らが勝手に考える。俺たちの役目じゃない」

 

クラウスは一歩寄ると、イオリの胸元を軽く拳で叩く。

 

「戦う理由なら、お前は既に持ってるはずだ。違うか?」

 

イオリは、目を伏せながら答える。

 

「……俺は、部隊のみんなに死んでほしくないだけです……」

 

その言葉に、クラウスは満足そうに笑った。

 

「ふ、立派な目的を持ってるじゃねーか。その気持ちが、お前の一番の武器かもしれんな」

 

タバコを灰皿に押し付けると、クラウスは立ち上がる。

帰り際、イオリの肩を軽く叩いて言った。

 

「俺の戦う理由も、部下達を守るためだ。それだけだよ。単純な理由だろ?」

 

その言葉に、イオリもまた、静かに笑った。

「……はい」

 

その笑みには、さっきまでの迷いはなかった。

答えを見つけたという確かな光が、イオリの目に宿っていた。

 

(ジオンの勝利なんてもんは、関係ない。俺は大切な人を大事な人達を守る為に戦うだけだ)

 

 




遅くなりすみません。
当方まさかのコロナに感染して死んでおりました(T . T)

てことで、今回は戦う理由を考えみました。実際、国のためだとかは、最初だけ意識するんじゃないのかなと、実際は仲間が戦ってるから俺も戦う、っていうのが大半の兵士たちの心情な気がします。
中にはガチモンがいますけどね、ジオン至上主義のハゲとかね。
イオリとシーマの関係いいですねー、大人の色気と余裕ってやつ?
R18は書けそうにないけど笑
どしどし、感想待ってます!作者の栄養になります笑

主人公とシーマのイチャラブの度合い

  • もっといれろ!
  • 大人な描写がもっと欲しい
  • こんなもん
  • いらん!
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