転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は?   作:スウェーデンクラス

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第80話 尋問、戦況把握

夕焼けに染まる空の下、前哨基地はまだ戦火の匂いを纏っていた。

焦げ付いた金属の匂い、焼け崩れたコンクリートの粉塵、そして、誰かの血の香りが入り混じって風に乗る。

瓦礫と黒煙が沈みゆく陽光を受けて赤く染まり、影は長く伸びて地面に溶けていた。

つい数時間前まで、連邦の支配下にあった、前哨基地。

そこは今、ジオンが奪い返した。

だが、それは「勝利」と呼ぶにはあまりにも痛ましく、あまりにも静かだった。

 

格納庫の内部では、戦いを終えたシーウルフ隊の機体が整然と並んでいた。

灰色のイフリート、黄土色のザクマリーン、そして煤をまとった黒いグフカスタム――どれもが、これまでの戦闘の激しさを物語っているように、薄汚れ、被弾痕が目立つようになっていた。

焦げた油の匂いが立ちこめ、鉄板を打つ工具の音がどこか遠く響く。

解放されたばかりの整備班が黙々と作業を続け、脚部にこびりついた泥と冷却液を拭い落としていた。

その顔に浮かぶのは、安堵でも誇りでもない。

――これから何が待つのか、という不安の影だけだった。

 

そんな重苦しい空気の中、格納庫の中央にシーウルフ隊の面々が集まっていた。

沈黙の輪。

誰もが言葉を探し、誰もが口を開けずにいる。

その静寂を、破壊音のような怒声が切り裂いた。

 

「なにぃーーーーっ?! 弾薬庫と武器庫が破壊されてるだぁ?! バカなこと言ってんじゃねえ!!」

 

グスタフの怒鳴り声が、鉄骨を震わせ、格納庫全体に反響する。

その声量に、整備員たちは思わず作業の手を止め、耳を押さえる。

それでもシーウルフ隊の隊員たちは慣れたものだ。

耳に手をやりながら、無言で苦笑いすら浮かべていた。

 

怒声を真正面で浴びた報告係――解放されたばかりのジオン兵の下士官は、耳鳴りをこらえながら声を絞り出す。

 

「そ、それが……基地を占領したあと、連邦軍は設備を再利用されぬように、徹底的に破壊して回った様です。モビルスーツ用の武器弾薬は……ほとんど残っておりません」

 

その言葉を聞いた瞬間、グスタフの表情から血の気が引いた。

あんぐりと口を開け、焦げた天井を見上げる。

 

「……おいおい、マジかよ。どうすんだ、これ……」

 

手のひらで顔を覆い、嘆息を漏らす。

周囲も沈黙した。誰も、軽々しく言葉を発することはできなかった。

 

その沈黙を破ったのは、クラウスの静かな声だった。

 

「状況は理解した。報告、ご苦労だった」

 

クラウスは一歩前に出て、下士官に視線を向ける。

その瞳は、戦場を幾度も見てきた者の、冷静でありながらどこか優しい光を湛えていた。

 

「君たちは基地内の資材と、使えそうな車両をすべて集めておいてくれ。――使えるものは、何でもだ」

 

「はっ! 了解いたしました、少佐殿!」

 

下士官は敬礼し、踵を返して走り去っていく。

その背中を見送ったクラウスは、一瞬だけ目を細め、誰にも聞こえぬほど小さく息を吐いた。

 

静まり返った格納庫の中で、重油の匂いと機械の唸りだけが響く。

やがて、グスタフが低い声で言った。

 

「おい、クラウス。どうする? 補給がなきゃ、もう戦闘なんざできんぞ」

 

クラウスは腕を組み、顎に手を当てて沈思する。

 

「……連邦のモビルスーツから武器を鹵獲する。――どうだ?」

 

即座に、エーリッヒが首を横に振る。

 

「ダメです。連邦製の装備は規格がまるで違います。電力出力も照準システムも合いません。仮に撃てても、的にはあたりません」

 

クラウスは目を閉じ、短く息を吐いた。

その横で、イオリが一歩前に出る。

 

「現地改修するのは……どうでしょう? 前線整備班なら、即席でも対応できるかもしれません」

 

その意見に、シーマが口を開く。

彼女は片手を腰に当て、疲れたように微笑する。

 

「悪いけど、それは無理だね。時間がありゃできるけど、あたしたちにそんな時間はない。のんびり工具を握ってるうちに、連邦の追撃が来るよ」

 

言葉の端々に漂う緊迫感。

夕陽が差し込み、シーマの頬を橙に染める。

その光景は美しくも、どこか儚い。

まるで、戦場に咲いた一輪の花のように。

 

再び沈黙。

ハンスが腕を組み、唸るように言った。

 

「……どうします? 隊長」

 

クラウスはしばし無言のまま、格納庫の奥に目をやる。

そこには、煤に覆われた傷だらけの黒いグフカスタムが立っていた。

幾度の戦場を越えてきたその機体は、まるで古傷を抱えた戦士のように沈黙している。

やがてクラウスは、息を吸い、決意を込めて言った。

 

「……よし。全員、聞け」

 

その瞬間、空気が変わった。

隊員たちが一斉に姿勢を正し、クラウスを見つめる。

夕陽が格納庫の隙間から差し込み、クラウスの横顔を紅に染めた。

 

「これより我々は、全力で湾岸都市まで退却する。休憩はなしだ。夜通しで走る。――明日の朝には到着する距離だ」

 

その言葉は重く、しかしどこか静謐だった。

戦場の修羅を生き抜いてきた者たちにしか持ち得ぬ、確信の声。

 

「ここの生き残りは、どうするつもりだ?」

 

グスタフが低く問う。

クラウスはすぐに答えた。

 

「もちろん連れていく。だが、退却はスピードが命だ。彼らにも全力でついてきてもらうしかない」

 

シーマが腕を組み、目を細める。

 

「地上部隊と一緒に動くんだ、嫌でもスピードは落ちる。連邦の追撃は間違いなく追いつくよ。その時はどうする?」

 

クラウスは迷わず答えた。

 

「その時は小隊ごとで迎撃する。1回目は第1小隊、2回目は第2小隊――順にだ」

 

その言葉に、シーマがすぐさま口を開く。

 

「わかった。けど、クラウス達第1小隊は迎撃しちゃダメだよ。隊長が先頭を走らないと、隊列がメチャクチャになる」

 

「何を言っている、お前たちだけにしんどい思いはさせないぞ。俺の小隊もやる」

 

クラウスの声には頑固さと優しさが同居していた。

 

だがイオリが一歩進み、静かに言う。

 

「俺は中尉に賛成です。隊長は出来るだけ戦闘をせずに先導すべきです。それが地上部隊の拠り所になる。迎撃は俺たちに任せてください」

 

「俺もアネさんに賛成だ」

 

ハンスが口を挟み、エーリッヒも頷いた。

 

「同じく、だ」

 

クラウスは少しの間、部下たちを見渡し、やがて苦笑を浮かべた。

 

「お前ら……わかった。俺が先頭を走る。だが、なにかあれば俺も殿をする。いいな?」

 

「大丈夫だよ、アタシらを信用しな。それともあれかい? 自分の部下を信用できないのかい?」

 

シーマが挑発めいた笑みを浮かべ、腰に手を当てる。

 

クラウスは小さく笑い、深く息を吐いた。

 

「馬鹿野郎。この軍の誰よりも、お前らを“信頼”してる……誰も死ぬなよ。全員で帰還するんだ」

 

短く、しかし力強いその言葉に、全員が静かに頷いた。

 

「了解」

 

格納庫に、短くも重い声が響く。

それは、死線を共に越えてきた者たちだけが共有できる「約束」の響き。

 

「……よし。準備を急げ。準備でき次第、出発する」

 

クラウスの号令と同時に、隊員たちは一斉に散っていく。

誰もが疲れ切っていた。

だが、その背中には再び“戦士の気迫”が宿っていた。

無線機の調整、燃料の補給、応急修理。

夕陽に染まる格納庫の中を、影が静かに駆け抜ける。

 

――沈みゆく太陽は、まるで血のように赤かった。

 

ーーーーーー

 

空は赤と紫が入り交じった鈍い光に包まれていた。

破壊された前哨基地のあちこちでは、依然として黒煙が細く立ち上り、風に流れていく。

瓦礫の隙間から漏れる炎の赤が、焦げた鋼の破片を鈍く照らし、

そこに立つ人影たちの影を長く伸ばしていた。

 

シーウルフ隊の面々は、それぞれが無言で準備を進めていた。

弾薬を確認する者、通信機を再調整する者、機体の表面に焼け焦げた装甲の損傷度合を確認していく者。

誰もが動きに無駄がなく、疲労の影を顔に刻ませながらも、

ただ淡々と「次の戦い」に備えていた。

 

その中で――

 

「小隊長!!」

 

鋭い声が、鉄と油の臭いが満ちる格納庫に響いた。

 

振り返ったイオリの視線の先には、エリックとカールの姿があった。

二人とも息を切らし、何かを急いで伝えに来た様子だった。

 

「どうした?」

 

イオリが短く問う。

 

エリックが一歩前に出て、真剣な面持ちで報告する。

 

「お急ぎのところすみません。実は先ほど、生き残りの兵から報告がありました――」

 

一拍、息を整え。

 

「基地の者たちが、連邦軍の指揮官級を捕虜にしているそうです。尋問なさいますか?」

 

イオリは眉をひそめ、わずかに顎に指を添える。

思考の間は、ほんの数秒。

 

「……今の戦況が分かるかもしれないな。そいつはどこにいる?」

 

その声は低く、しかし冷静だった。

 

ーーーーーー

 

捕虜が収容されているのは、かつて物資庫だったコンクリートの一角だった。

崩れた天井の隙間からは夕陽が差し込み、埃と血の粒子が光の中でゆっくりと舞っていた。

 

その中央で、腕を縛られた男が一人、壁際に座らされていた。

破れた連邦の将校服。

肩章には中佐の階級章。

顔のあちこちには裂傷と焼け跡があり、だがその瞳には、未だに敗北を受け入れぬ傲慢さが宿っている。

 

エリックが前に出て、無感情な声で言った。

 

「おい、貴様。連邦軍の指揮官か?」

 

その言葉に、男はびくりと肩を震わせ、眼鏡越しにエリックを睨み返した。

 

「じ、人道的措置を要求する! わ、私は連邦軍第8地上部隊の指揮官だぞ! わ、私に何かすれば――君たちに責任が及ぶぞ! 戦争犯罪になる!」

 

声は震えていたが、言葉にはなお、自分が“上位者”であるという傲慢な響きがあった。

 

イオリは静かに一歩前に出て、薄く息を吐く。

 

「階級章を見る限り……中佐殿とお見受けする。

我々にあなたを傷つける意図はない。ただ――」

 

淡々とした口調で続ける。

 

「現在の連邦軍の侵攻ルート、および戦況を知りたいだけです」

 

その丁寧すぎる物腰に、捕虜の男は一瞬、怪訝そうに目を細めたが、

次の瞬間には唇の端を歪め、鼻で笑った。

 

「ふ、ふん……軍の情報を私が簡単に喋ると思ったか? 愚か者め。

……まぁ、私を解放し投降するというのなら、考えんでもないがね。

どうせ君たちジオンは負けるのだ。今からでも遅くはないぞ?」

 

その嘲笑には、敗者への侮蔑と、どこか歪んだ快楽すら滲んでいた。

 

カールの眉がぴくりと跳ねた。

次の瞬間、彼は怒りを爆発させるように前に出て、

捕虜の胸ぐらを掴み上げた。

 

「下手に出ればつけ上がりやがって……!お前、ふざけるのもいい加減にするっすよ!!」

 

カールの拳が振り上げられ、空気が張り詰める。

捕虜は悲鳴を上げ、ぎゅっと目を瞑った。

 

だが、殴打の音は響かない。

 

ゆっくりと目を開けた彼の視界に入ったのは――

カールの腕を、力強く掴み止めるイオリの姿だった。

 

「ぐっ、少尉?!何故止めるんすか?!コイツ、一発殴らないと自分の立場がわかってないっすよ!」

 

カールが声を荒げる。

しかしイオリは静かに、首を横に振った。

 

「やめておけ。お前が殴る必要はない」

 

その声は冷静で、けれど明らかに怒気を含んでいた。

イオリがそっとカールの手を離すと、捕虜の男は薄ら笑いを浮かべ、再び言葉を紡ぐ。

 

「…は…ははは! これはこれは、部下の躾がなっていないようだな。

このことはきちんと記録に残しておこう。戦争が終われば、その若造は極刑だな。……あぁ、そうだ。貴様らの部隊に女の小隊長がいたな?」

 

空気が凍る。

 

男は、にやにやと口角を歪めた。

 

「ふん、私の手錠を外した後、その女をここへ連れて来たまえ。私の“相手”をして、私が満足すれば……この件は無かったことにしてやる」

 

エリックとカールが、同時に一歩前に出た。

殺意が露わになる。

 

「テメェ……今、なんて言った?」

「殺す……」

 

だが、イオリがすっと片手を挙げ、二人を制止した。

彼の横顔には、もはや感情の揺れが一切なかった。

 

「……私の部下が失礼した。…“人道的措置”を、とのことでしたな」

 

イオリの声が低く響く。

 

「あぁ!そうだ。早くしたまえ。女を連れて……」

 

次の瞬間、腰のホルスターから拳銃を抜き、その黒い銃口を、連邦軍中佐の額に押し当てた。

 

「なっ……き、貴様!! なにをしているのか分かっているのか?!」

 

中佐は声を裏返らせ、顔を真っ青にした。

イオリの瞳には、氷のような光が宿っている。

 

「私の“人道的措置”とは――知っていることを喋り、生きたままこの場に放置されることです」

 

「な……なにを……それは人道的措置では――」

 

その言葉を遮るように、金属音が響く。

イオリがセーフティを外した音だった。

 

「それに……ご存じかな?」

 

イオリの声は、冷たい刃のように鋭く響く。

 

「今は戦争中だ。そして、基地の外には、我が軍の同志たちと戦った貴様ら連邦軍の兵士の死体が山積みになっている。その中に、頭に穴の空いた死体が一つ増えたところで……誰が気にするでしょうな?」

 

中佐の喉が、ごくりと鳴る。

汗が頬を伝い、彼は震える声で息を漏らした。

 

「な……な、な……」

 

イオリはその恐怖を見下ろすように、ほんの僅かに口角を上げた。

 

「それでは、もう一度聞こう。……連邦軍のルートと、現在の戦況は?」

 

その声は静かで、だが硝煙のように重く、誰もが息を呑むほどの威圧を放っていた。

 

ーーーーーー

 

「少佐!!」

 

金属の床を蹴る音が、薄暗い司令所の空気を切り裂いた。

イオリが息を荒げ、汗の滲む額を拭う暇もなくクラウスのもとへと駆け込んでくる。

彼の目は焦りを帯びており、ただ事ではないことを全員が即座に悟った。

 

その場には、作戦会議のために集められた各小隊の隊長たちがいた。

クラウスを中心に、シーマ、グスタフ、エーリッヒ、ハンスらが円を描くように立ち、湾岸都市までの進行ルートの地図をホロ投影した卓上で検討を続けていた最中だった。

 

クラウスは視線だけを上げ、静かに問いかけた。

 

「……どうした、少尉。何かあったのか?」

 

低く抑えた声が響く。

その声音には、戦場の将としての冷静さと、部下への信頼の色が同居していた。

 

イオリは一度深呼吸をし、短くうなずいて言葉を続ける。

 

「はい。先程、捕虜になっていた連邦軍の指揮官を尋問しました。現状の戦況と、連邦軍の侵攻ルートを聞き出しましたが……」

 

言葉の途中で、僅かに視線が揺れる。

その様子に、グスタフが葉巻を指先で弾きながら、にやりと笑った。

 

「ほぅ?やるじゃねぇか。どうだった?ジオンはまだ連邦を押してるって言ってくれよ」

 

だが、イオリの表情は重いままだった。

口を開きかけては、何かを飲み込むように沈黙する。

その沈黙に気づいたグスタフの顔が、徐々に険しくなっていく。

 

「……おい、どうした。まさか……」

 

シーマが低く言葉を挟む。

 

「イオリ、どうしたんだい?早く言いなよ」

 

クラウスは静かに彼の正面へ歩み寄り、真っ直ぐにその瞳を見据えた。

 

「少尉。その捕虜は……何と言った?」

 

イオリは一瞬だけ唇を噛みしめた後、覚悟を決めたように顔を上げる。

 

「……連邦軍は、すでにオデッサ基地北側の防衛線を突破しつつあります。明日にはオデッサ基地を直接攻撃するとのことです。さらに……我々が向かっているヘルヴォルの停泊する湾岸都市にも、別方面から進軍している部隊が都市を包囲し明朝より攻撃を開始する、と。」

 

その場に、重く鈍い沈黙が落ちた。

 

空調の唸りだけが耳に残る。

誰もが言葉を失い、視線だけが宙をさまよう。

 

最初に口を開いたのはハンスだった。

乾いた笑いともつかぬ声で、ぽつりと呟く。

 

「……じゃあ、何か?俺たちがここで必死にやってた遅滞戦闘ってのは……全部、無駄だったってことかよ。」

 

誰も返事をしなかった。

返す言葉など、誰の口にも浮かばなかったのだ。

 

クラウスは静かに瞳を伏せた。

彼の影が、ランプの光に揺れる地図の上に長く伸びる。

 

「……虚偽の供述、という可能性はないのか?」

 

その声は冷静だったが、わずかに疲労の滲む響きが混じっていた。

イオリは首を振る。

 

「それはありえません。死を目前にした者が、恐怖の中であんなに冷静に嘘を組み立てられるとは思えません。本気で、終わりを語っていました」

 

クラウスの瞳がゆっくりと閉じられ、深く息を吐く音が聞こえた。

その息はまるで、胸の奥に沈殿した重圧を吐き出すかのようだった。

 

「……そうか」

 

短いその言葉に、場の全員が顔を引き締めた。

クラウスは顔を上げ、再び地図に目を落とす。

そして、かすかに自嘲を含んだ笑みを浮かべる。

 

「この前哨基地が連邦に落ちていた時点で……嫌な予感はしていたさ。ジオンが劣勢に立たされているのではないかと、な」

 

誰もが息を呑む。

それは、ベテランのクラウスでさえ認めざるを得ない現実の重みだった。

 

エーリッヒが、沈黙を破るように前に出る。

 

「……隊長、どうします?このまま進軍するんですか?」

 

クラウスは短く笑った。

 

「変わらん。予定通りに行く。――ただし、一つだけ違う」

 

その瞳が、全員を順に見渡した。

それは死地へ赴く兵を鼓舞する、将としての眼だった。

 

「俺たちが向かうのは、すでに敵に包囲されつつある都市だ。その中に突入し、母艦ヘルヴォルと合流――脱出する」

 

息を呑む音がいくつか重なった。

無茶だ、と誰もが思った。

だが、クラウスの言葉には一分の迷いもなかった。

 

クラウスは最後に静かに言葉を落とす。

 

「……ほら、準備を続けろ。敵は待ってはくれん」

 

その声は低く、だが確かな力を宿していた。

シーマが無言で頷き、イオリもまた拳を握りしめる。

 

 

もしもシリーズのカール

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