転生先はガンダムの世界?え?生き残れ?は? 作:スウェーデンクラス
「――アイゼン機、反応消失!!」
オペレーターの悲痛な叫びが、艦橋に鋭く突き刺さる。
一瞬、時が止まったかのようだった。
次の瞬間、ざわめきが一気に広がる。
「……は?」
ハンスの口から、思わず漏れた声は、現実を拒むようにかすれていた。
「アイゼンが……? おい、ふざけんなよ!!」
叫びは怒鳴り声というより、縋りつくような響きを帯びていた。
それが冗談であってほしい――そんな願いが、言葉の端々に滲んでいる。
エーリッヒが即座にオペレーターへ詰め寄る。
「脱出の反応は?! 生体反応は出ていないのか!?」
矢継ぎ早に浴びせられる問い。
そのどれもが、「まだ生きているはずだ」という前提に縋っていた。
だが――
オペレーターは、唇を噛みしめ、ゆっくりと首を横に振る。
「あ……ありません……」
「脱出反応、生体反応、すべて……完全に消失しました……!」
その言葉が告げる意味を、艦橋にいる全員が、痛いほど理解してしまった。
誰も、すぐには声を出せない。
誰かが拳を握りしめ、
誰かが視線を落とし、
誰かがモニターから目を逸らした。
イオリは、気がつけば前に出ていた。
「艦長!!」
その声は、必死だった。
「今からでも遅くありません!!」
「すぐに格納庫の扉を破壊して、増援を出すべきです!!」
続けて、シーマも声を荒らげる。
「そうだよ!! 今ならまだ間に合う!!」
「あの二人を、見殺しにする気かい!?」
それは命令違反も覚悟した、純粋な焦りと恐怖からの訴えだった。
だが――ゲルハルト艦長は、静かに首を横に振った。
「……ならん」
短い言葉。
だが、揺るぎのない拒絶。
「これ以上の被害を増やすわけにはいかん」
その声は低く、抑えられていた。
イオリは食い下がる。
「しかし――!!」
「ならん!!」
遮るように放たれた一喝。
艦長の手が、艦長席の縁を強く掴む。
白い手袋に、じわりと赤が滲むほどの力だった。
その時だった。
「……信号弾、確認」
オペレーターの報告に、全員が息を呑む。
スクリーンに映る、空を切り裂く一本の光。
その色、その角度。
それが意味するものを、ここにいる全員が理解していた。
『合流できず、先に行かれたし』
それは、まるで
「追うな」
「来るな」
「任務を果たせ」
――クラウスにそう言われているようだった。
艦橋に、完全な沈黙が落ちる。
誰も言葉を発せず、ただその光を見つめていた。
その沈黙を破ったのは、艦長だった。
「総員!!」
一喝。
全員の背筋が、反射的に伸びる。
「発艦準備!!」
それは、命令だった。
第一小隊の覚悟を、無駄にしないための――
苦渋の、決断だった。
ーーーーーー
その頃。
瓦礫に覆われた市街地の一角で、二機のモビルスーツが、寄り添うように影の中に身を潜めていた。
新たに現れた敵部隊は、明らかに今までとは違っていた。
無駄のない動き。
互いの間合いを保ちながら、確実に包囲を狭めてくる。
隊長機と思しき機体が、手短な指示を出す。
それに応じ、二機が瓦礫へと歩を進めている。
「……クラウス。信号弾の打ち上げは終わったぞ」
グスタフの声は低く、落ち着いていた。
「了解だ」
クラウスは短く答え、少し間を置いてから続ける。
「……いいのか、グスタフ」
「お前まで付き合う必要は無い」
それは命令ではなかった。
隊長として、最後に用意した“問い”だった。
グスタフは、鼻で笑う。
「はん……今更どこに行けってんだよ」
「それにな、クラウス。お前こそいいのか?……家族が待ってんだぞ。俺が奴らを引きつけるから、その隙にお前は……」
グスタフが言葉を最後まで発する前に、クラウスが遮る。
「グスタフ。俺はシーウルフ隊の隊長だ。隊長の俺が、何故部下の背中に守られて逃げることができる?……そんな無様なマネはまっぴらだ」
力強い言葉がグスタフの鼓膜を叩く。
『あぁ、おまえは、そういうやつだよな』
そして、モニター越しに、真っ直ぐクラウスを見る。
「最後まで、お前について行ってやるよ、隊長」
その言葉に、クラウスは、思わず口元を緩める。
そして、コックピット内に貼り付けたある写真を撫でる。
ーーーーーー
敵機の影が、瓦礫の向こうに近づいてくる。
クラウスは、静かに、そして、力強く告げる。
「行くぞ、グスタフ」
「……あっちで会おう」
グスタフは、笑う
「了解だ………クラウス」
そして、ゆっくりと敬礼する。
「……共に戦えて、光栄でした。隊長」
その笑顔に、覚悟が滲んでいた。
クラウスも、敬礼を返す。
「……今まで、そばで支えてくれたこと、感謝する。曹長」
二人の視線が、短く交わる。
言葉は、もう必要なかった。
ーーーーーー
敵機が、瓦礫の影へとじりじり距離を詰めてくる。
崩れたビルの残骸。砕けたコンクリートの山。
そこに潜む二機の存在を、敵は確実に嗅ぎ取っていた。
センサーが、瓦礫の裏をなぞる。
一機が、慎重に歩を進め、影の向こうを確認しようと――
その瞬間だった。
爆発的な推力音。
「――オラァァァァッ!!」
瓦礫を蹴散らし、グスタフのザクⅡMが飛び出した。
間合いは一瞬。
ヒートホークが、灼熱の軌跡を描く。
ガン――ッ!!
敵機の頭部が、音もなく吹き飛ぶ。
センサーとメインカメラが砕け散り、火花を撒きながら宙を舞う。
「お前らの相手は――俺だァァァァ!!」
グスタフの咆哮が、戦場を震わせた。
突然の強襲に、敵部隊は完全に判断を誤る。
撃てない。
近すぎる。
味方が射線に入っている。
その一瞬の躊躇を、グスタフは逃さない。
「どうしたコラァ!!」
巨体を無理やり捻り、間合いを詰める。
「不意打ちしか出来ねぇのかよォ!!」
ヒートホークが振り下ろされる。
袈裟斬り。
狙いは、もう一機のコックピット。
だが――
「チィッ!!」
敵機は、紙一重で身を引いた。
一瞬の反応。
一流の動きだった。
「クソがッ……!」
グスタフは歯を食いしばる。
「さすがだな……エース部隊は、伊達じゃねぇかよ……ッ!」
次の瞬間。
敵部隊が、ようやく冷静さを取り戻す。
ビーム。
実弾。
複数の照準が、グスタフ機を捉える。
「――来やがったか!」
グスタフは機体を倒し込むように転がし、紙一重で回避する。
瓦礫が吹き飛び、爆炎が背後を舐める。
そのまま、腰部に手を伸ばす。
「……これでも喰らえッ!」
グレネードを、力任せに投擲。
敵部隊が一斉に警戒する。
回避行動。
射線の変更。
だが――
爆発は、起きない。
代わりに、白濁した煙が、瞬時に広がった。
視界を奪う。
センサーを狂わせる。
「っ……!?」
敵部隊の統率が、一瞬だけ崩れる。
その中を――グスタフは、笑いながら突っ込んでいく。
「爆発すると思ったか?」
ヒートホークが閃く。
「残念だったなァ!!」
敵機の肩。
装甲ごと、腕を断ち切る。
火花と金属音。
切断された腕が、地面に転がる。
「どうだァ!!」
煙の中で、グスタフの声が響く。
「この中じゃ、満足に狙えねぇだろうがァ!!」
その瞬間、グスタフの脳裏を、ふと過るものがあった。
それは、ある訓練後の会話だった。
ーーーーーー
『煙幕弾が欲しい?』
イオリの怪訝な声がデッキに響く。
『あぁ、煙の中で暴れるのは楽しそうだからな。俺にも一個くれよ』
グスタフが豪快に笑いながら、イオリへ煙幕弾をせびる。
イオリの横ではシーマが、腰に手を当て眉を顰めていた。
『ちょっとグスタフ、アンタが戦場で煙幕なんて使ったら、味方のアタシらまで巻き込まれるじゃないのさ。面白半分で使うのはよしなよ。……あれは、イオリだからできるんだよ』
と忠告する。
グスタフはその言葉にも豪快に笑い
『これはこれは、イオリ少尉の奥方じゃねーか。大丈夫だ、皆んながいる前では使わねーよ。……御守りみたいなもんだ』
と言い返す。
グスタフのその言葉に、シーマは顔を赤くし、『お、奥方?!グスタフ!こっちにきな!』と叫び、グスタフに近付こうとするのをイオリが間に立ち、防ぐ。
イオリはシーマにまぁまぁと笑いながら、
『分かりました。あとでお渡ししますね。でも気をつけてください。使う時は、煙幕を張れる時間、敵の配置を煙幕の隙間から常に確認して動いてください』
と告げる。
その背後では、いまだにシーマが騒ぎ、いつの間にか、クラウスやハンスといった、他の隊員も混じって笑い合った。
いつもの光景だった。
ーーーーーー
ーーイオリの顔。
ーー笑いながら渡された、煙幕弾。
ーー格納庫内に響く笑い声。
(……面白半分でもらっといて、正解だったぜ)
グスタフは思い出し、静かに笑う。
だが、現実は非情だった。
煙幕は、一本。
広がり切り、そして――
ゆっくりと、薄れていく。
視界が戻り始める。
その中で、グスタフは煙幕の切れ目から見つけていた。
――あの機体だ。
――アイゼンを撃った、あの一機。
「……見つけたぞ」
低く、唸るような声。
次の瞬間、グスタフは最後の噴射剤を解放する。
「オオオオッ!!」
機体が弾丸のように加速する。
一直線。
一直線に、仇へ。
敵機は、反応が遅れた。
あまりに速い。
あまりに、迷いのない突進。
「お前だけは……!」
グスタフの叫びが、通信を震わせる。
「許さねぇぇぇぇッ!!」
だが――
部隊長クラスの敵機が、即座に判断する。
射撃。
ビームが、一直線に伸びる。
直撃。
グスタフ機の脚部が、爆ぜた。
だが、止まらない。
推力は、死んでいない。
慣性が、怒りが、憎悪が――
機体を前へ、前へと押し出す。
体勢を崩しながら、
それでも、グスタフ機は敵に取り付いた。
「オラァァァァ!!」
ヒートホークが、何度も振り下ろされる。
「死ねッ!!」
「クソが!!」
一心不乱。
理屈も、戦術も、もはやない。
叩く。
裂く。
砕く。
気付けば――敵機のコックピットは、原形を留めていなかった。
煙が、完全に晴れる。
そこにあったのは――ズタズタになった敵機に、馬乗りになるザクの姿。
だが、そのザクも、満身創痍だった。
片腕は失われ、
脚部は破壊され、
装甲は剥がれ落ちている。
敵部隊が、一斉に照準を合わせる。
警告音が、止まらない。
赤一色のモニター。
グスタフは、肩で息をしながら、呟いた。
「あとは……任せたぞ……」
一瞬、視線を上げる。
穏やかな声だった。
「……隊長」
次の瞬間、無数の閃光が、彼を飲み込んだ。
ーーーーーー
レーダーの中で、ひとつの光が消える。
グスタフ機――
その信号が、完全に途絶える。
「……ッ」
クラウスは、息を詰めた。
ほんの一瞬、思考が空白になる。
(……グスタフ)
胸の奥で、何かが軋む。
だが――
クラウスは、止まらなかった。
止まれなかった。
スロットルを絞らない。
速度を落とさない。
向かう先はただ一つ――
敵の砲撃機。
背後では、グスタフを撃破した敵部隊が、追撃を開始していた。
だが、その歩みは、鈍い。
数も、動きも、明らかに精彩を欠いている。
――グスタフが残した、傷跡だった。
(……さすがだ)
クラウスの口元が、わずかに歪む。
(さすがだよ、グスタフ……!)
副官が、命と引き換えに削り取った敵戦力。
そして、時間。
その価値を、クラウスは誰よりも理解していた。
前方。
砲撃機との距離が、急速に詰まる。
敵も、ようやく気付いた。
鈍重な機体が、慌てて砲身を振り向ける。
照準し、発射する。
砲弾が、一直線に放たれる。
「――遅いッ!」
クラウスは即座に進路を切り替える。
瓦礫を蹴り、ビルの影へ滑り込む。
砲弾が、背後をかすめ、建造物を溶断する。
「そんな攻撃が――」
クラウスは吠える。
「当たると思うのかァ!!」
次の瞬間、背後からの警告音。
追撃部隊の射撃だ。
だが、それすらも――
クラウスは、走りながら躱す。
止まらない。
振り向かない。
その時、ビルの谷間から、敵モビルスーツが飛び出してきた。
「……邪魔だッ!!」
一切の躊躇なし。
グフカスタムのヒートソードが、閃く。
一閃。
敵機は悲鳴を上げる間もなく、両断され、爆散した。
さらに前方。
砲撃機の護衛に回っていた二機が、迎撃に出てくる。
――新手。
――エース部隊から割かれた機体だ。
クラウスは、走る速度を落とさない。
ガトリングシールドを構え、そのまま射撃し、弾幕が、敵を包む。
だが――
敵はそれを読んでいたように、軽快な機動で弾幕を抜け、即座に反撃する。
ビームライフルが、火を噴く。
クラウスは、あえて減速しない。
シールドで、受けるが、その瞬間、高熱が、装甲を侵す。
ガトリングシールドは、瞬時に融解し、歪み、機能を失っていく。
「……チッ」
舌打ち一つ。
次の瞬間、クラウスは迷わずシールドを投棄する。
不要な重量を捨てる判断は、一瞬だった。
ヒートソードを握り直し、距離を詰める。
敵はビームサーベルを振り上げ、斬りかかってくる。
火花が散る。
高音の剣同士が、激突する。
その隙を――もう一機が狙っていた。
真横から、振り下ろされようとするビームサーベル。
だが、クラウスはそれを読み、グフカスタムの左腕に装着されたバルカン砲で牽制する。
それにより、ビームサーベルを振り下ろそうとしていた敵機が後退する。
「舐めるなよ……ッ!!」
クラウスは、正面の敵のサーベルを受け流すと同時に、機体をひねり、回転するように、敵の背後へ。
そして――
背中から、突き刺す。
ヒートソードが、コックピットを貫いた。
敵機は、力を失ったように、静かに倒れ伏す。
残る一機が、間合いを測るように、サーベルを構える。
クラウスは、止まらない。
左腕から、ヒートワイヤーが射出される。
敵機は反射的に回避。
だが、それが――死を選ぶ動きとなる。
クラウスは、即座にブーストを噴かし、一気に距離を詰め、ヒートソードを、袈裟に振り下ろす。
装甲が裂け、敵機は、完全に沈黙した。
敵エース部隊の二機。
そのどちらも、クラウスに一太刀も浴びせることなく、破壊されていた。
――これが。
――曲者揃いのシーウルフ隊を、率いてきた男の実力。
だが。
その二機を葬る間に――
背後からの圧は、確実に増していた。
追っ手との距離が、縮まっている。
クラウスは、前を見る。
砲撃機は、もう目の前だった。
ーーーーーー
『チッ……! もう、あそこまで来ているのか……!?』
クラウスは歯を食いしばり、モニターの端に映る敵影を睨んだ。
背後――
グスタフを討ち取った部隊が、確実に距離を詰めてきている。
だが、視線はすぐ前へ戻る。
敵砲撃機。
その機体は、もはや満身創痍だった。
護衛機を失った今、損傷した脚部を引きずり、無様とも言える動きで後退しようとしている。
(――今、ここで逃せば)
クラウスの喉が鳴る。
(ヘルヴォルは……退却できん……!!)
迷いはなかった。
残りの噴射剤の警告が、コックピット内で赤く点滅しているのを、無視する。
スロットルを――限界まで、踏み込んだ。
機体が悲鳴を上げる。
だが、それでも前へ。
――あと少し。
――あと、ほんのわずか。
その瞬間だった。
鈍い衝撃が、クラウスを襲う。
「――グッ……!!」
コックピットが揺れ、視界が跳ねる。
警告音が、一斉に鳴り響いた。
「……クソ……なんだ……!?」
損傷確認。
表示されたのは――脚部被弾。
背後からの狙撃。
追いついたのだ。
グスタフを撃破した、あの部隊が。
敵砲撃機は、もう目と鼻の先だ。
「……こんな、ところで……!!」
クラウスは呻くように吐き捨て、破壊された脚を引きずりながらも前へ進む。
左腕を持ち上げ、ガトリング砲を砲撃機へ向ける。
――だが。
次の一撃が、容赦なく襲う。
直撃。
左腕が、吹き飛んだ。
ガトリング砲ごと、空中で砕け散る。
「……こんな……ところで……!!」
それでも、止まらない。
足を引きずり、砂塵を巻き上げ、ただ、前へ。
また衝撃。
今度は、脚部が完全に破壊される。
重力に逆らえず、漆黒のグフカスタムは、前のめりに倒れ伏した。
だが――目の前には、敵砲撃機がいた。
「……ここまで……来て……!!」
砲撃機は、ゆっくりと砲身を上げる。
もはや、クラウス機は眼中にないかのような、鈍い動き。
砲身を上げるその理由は、すぐに分かった。
背後で、轟音が響く。
振り向くまでもない。
この振動、この方向――
ヘルヴォルだ。
(……艦長……)
アイゼンベルグ艦長が、約束を果たそうとしてくれている。
この地獄から、部下たちを――
艦を――
連れ出そうとしている。
クラウスは、歯を噛みしめ、叫ぶ。
「……ふざけるな……!!」
声は、誰に向けたものでもない。
「艦長が……守ってくれたんだ……!!」
拳を、操縦桿に叩きつける。
「……今度は……俺の番だろうがァ!!」
背後から、敵の足音が迫る。
重い、確実な歩み。
ビームサーベルが起動する音。
トドメを刺すため、敵機が――近づいてくる。
(……ここまで、か……)
そう思った瞬間。
脳裏に、声が響いた。
『隊長!』
『クラウス!!』
『ふざけんじゃ無いよ!アンタを隊長になんて認めてないよ、アタシは!』
『今度、飲みに行きましょう!!』
『生きて帰るぞ』
次々と。
次々と。
失われた者も、今も戦っている者も――
すべてが、そこにいた。
クラウスは、笑った。
「……あぁ。面倒ばかり、かける奴らだった……」
だが、すぐに顔を上げる。
「……だが……!!」
残った、右腕を前に突き出す。
「最高の――奴らだ!!」
次の瞬間。
右腕から、ヒートワイヤーが射出された。
一直線に伸び、
敵砲撃機の装甲に絡みつく。
そして――
巻き戻し。
その反動を利用し、脚の破壊された機体が、あり得ない加速で前へ飛ぶ。
追っ手の敵部隊が、戸惑う。
想定外の動きだった。
モニターの奥。
空を切り裂くように――ヘルヴォルが、離陸していくのが見えた。
「……俺たちの……勝ちだ……!!」
クラウスは、静かに笑う。
そして――
コックピット内の、ひとつのボタンに、指を伸ばす。
その時。
写真が、目に入る。
寄り添うように立つ、2人の男女
その前で、狼のぬいぐるみを抱え、笑う幼い少女。
クラウスの家族。
『お帰りなさい、あなた』
『パパ!!おかえり!』
脳裏に響く声。
クラウスは、目の端から、涙を一筋流し――
呟いた。
「……アイリス……メアリー……」
短く、深く。
指が、ボタンを押す。
その瞬間。
漆黒のグフカスタムは、白い閃光に包まれ――爆発した。
地上を焦がす炎の柱の、はるか上空を。
ヘルヴォルは、静かに、――地球から、離脱していった。
彼らの背中を――守り抜いた男達の、覚悟と共に。
自分で書いてて、かっこいいと思いました泣
あ、自分はノリス・パッカード大佐が大好きです。