これはあるライバーさんの誕生日に贈ろうと思って作った単発小説です。
自分にとって最初の推しのライバーさんの為に頑張って作ってみました!

もしそのライバーさんを知らない人でも楽しめる小説にしてみたので、どうぞご覧くださいませ。

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第1話

 その日は月が明るく満月で、湖の水面に映っている。

 まるで2つの満月があるような光景がその水面に出来ていた。

 湖の周りは森で、ここしか水面は無く、より幻想的な光景となっていた。

 その水面の上に、一匹の兎、いや、ウサ耳の生えた女性が1人立っていた。

 

 ある晴れた日の森の中、少年1人が森の中を歩いていた。

 少年が来ている服が学生服で、きっと学校を終えて帰宅する時間に森へ入った。

 森の中はまだ明るい時間帯なのに暗く、人の気配がない森で、とても不気味さを感じられた。

 だが少年は顔を伏せながら歩いており、その瞳は光が無く、まるで月を隠す雲のように曇っていた。

 

 ……疲れたな

 

 僕はこの森を歩きながらまず最初に思った事はそれだった。

 昼の時間なのに暗くて不気味なこの森に対して怖いという感情ではなく、疲れたなという言葉だった。

 

 今日、テストの返却日で帰ってきた点数は56点、まずまずな印象だと思うが、僕にとっては全然で、僕には優秀な姉と妹が1人ずついて、姉と妹はクラスの中でエリートの部類に入る頭脳を持っていた。

 それなのに僕は頑張っているがこのぐらいの点数しか取れず、家族の中で僕だけ取り残されている感覚がしていた。

 

 そんな孤独感に襲われた私生活を味わっている僕で、この森に入ったのは、1人で居られると思ったからだ。

 姉と妹やクラスメイトなどの人と比べてしまう気持ちに限界を感じ、暫く1人で居たかった。

 

 こうして僕は森の奥へ足を進めている。

 木々の自然の匂い、足を進める事に植物のカサカサ音、それらは今の僕にとって安心出来る精神安定剤となり心地よかった。

 

 そんな足を進めていると、ただ広い所へと着く。

 そこは湖があり、その周りを森の木々が囲んであった。

 森の中を歩いていたが、ここだけしか湖がなく、まるで神秘的な場所にいるような感覚がした。

 湖を覗くと、とても透明な湖で、きっと太陽が昇っている朝の時間帯に見ると、太陽の光が反射し、綺麗に映る程綺麗な湖であった。

 

 綺麗な湖を見ていると、不思議と気持ちが落ち着いて来て、段々と眠くなってくる。

 なんで急に眠くなってくるのかと眠くなりかけている脳で考える。

 

 湖の水面が風や森の葉っぱで波紋を作り、ゆっくり見ていられるのか?

 

 風で飛ばられた小石が湖に落ちて鳴るチャポン音が心地よく聞こえるのか?

 

 そんな考えを頭の中で思いながら、段々と目を閉じていった…

 

 

 …起きて…起きて

 

 そんな女性の声が聞こえてくる。

 その声色はとても優しく、まるで雲のふわふわとした感じに聞こえてくる。

 もう少し眠りたいが、森の中でうたた寝しているのを思い出し、僕は目を開けた。

 すると、目の前には驚きの光景が映っていた。

 

 僕の周りの空間は、なんと魚が宙に泳いでいるのだ。

 いやよく見ると、ゴポゴポと空気の入った泡が上へ向かって飛んでいき、ある程度昇ったら弾ける。

 まるで僕が水の中にいるような空間となっていた。

 

 そして目の前には、何故かお城があり、そのお城に僕よりかなり小さな生き物がせっせと頑張って働いている。

 その生き物の姿は、兎であるが妖精の羽が付いており、その羽を駆使して働いている。

 僕の拳ぐらいの大きさなのに凄いなと感じていた。

 

 「おはよう〜」

 と先程起こしてくれた女性の声がおはようと伝えたので、僕は振り替えてみる。

 そして、また僕は驚く。

 

 その女性の姿は、一見ふわふわの服を着た眼鏡の可愛い女性だと思うが、その頭にはウサ耳が生えており、そのウサ耳にイヤリングみたいな装飾を付けている。

 その姿に僕は(あ…また夢を見ているんだろうな)と思い、自身の頬つねってみた。

 

 うん…痛い

 

 これでここが現実なのを実感し、急いで家に帰らないとと思い、僕は慌て始める。

 その慌て始めた姿にウサ耳の女性は大丈夫大丈夫と落ち着かせようとしてくれた。

 そのお陰だろうか、慌てていた気持ちが段々と落ち着いてくる。

 何故かウサ耳の女性の声を聞くと、段々と安心感を感じる事が出来たからだ。

 不思議な力を持っているんだなと僕はそのウサ耳の女性を見ながら感じていた。

 

 「ねぇ、卯沫(うまつ)と一緒にお城へ来ない?」

 とウサ耳の女性、卯沫が右手を差し出して引っ張って連れて行こうと誘ってくる。

 それにはかなり警戒したが、何故か悪い人ではないのを感じ、迷ったが僕は自身の右手を差し出した。

 別に可愛い女性と手を繋ぐ事が出来て嬉しいと感じている訳でないよ!?

 

 そう差し出した僕の右手を卯沫は掴み、お城へと引っ張り案内する。

 先程働いていた妖精の羽を付けた小さな兎は、卯沫が来ると、礼儀正しくお辞儀をし迎え入れる。

 どうやら卯沫がこのお城のお姫様みたいなポジションなのを感じていた。

 後で卯沫にその小さな兎の名前を聞いて、彼らはウトと呼ばれる妖精みたいな存在が分かった。

 妖精という単語を聞いて、本当にここが現実なのかとまた疑問になりつつ、引っ張られていた。

 

 ある部屋に着く。

 そこは畳等の和風の内装となっていた。

 卯沫は両手でパンと手を叩くと、引き戸が開き、そこから料理を運んでくる沢山のウトが現れた。

 卯沫は合図を送って、ウト達に料理を運んでくるようにしたのを感じた。

 

 暫くすると沢山の料理が机の上に乗り、その机の後ろに座布団が2つひかれていた。

 片方に卯沫が座り、もう片方に僕が座るという、一緒に座るようにひかれていた。

 それにはとても緊張感を僕は感じ、正座で座布団に座り始める。

 

 卯沫と僕が座り終えると、目の前に一匹のウトが現れ、ようこそお越しくださいましたと分かるような深々と頭を下げ、これから何かを始めるのを僕は感じた。

 すると次々のウト達が出てきて、来客である僕を楽しませる為に出し物を始める。

 マジックショーや踊り、音楽をウト達は始め、時にはお城の外から泳いでいた魚が通ったりして、まるでウサギの竜宮城だった。

 料理もウト達が一生懸命に作ったのか、どれも美味しく、僕は目の前にある黄金色のスープをスプーンで掬って飲んでみると、とても美味しく、いつものコーンスープより甘く深みのある味で、かなりスプーンを動かしていた。

 

 そんな時間を過ごしていると、あっという間にお城の外は暗くなり、こんな場所でも夜になるんだと僕は感じていた。

 今はウト達が料理を出した食器を片付け、僕のおもてなしが終わった所だった。

 暗くなった外を僕が見ていると、隣に卯沫が来た。

 

 卯沫が僕の隣に来ると、

 「ねぇ、大丈夫?」

 と声を掛けていた。

 

 急に大丈夫?と聞いてきたので僕は何のことだろうと疑問になっていると、卯沫はその聞いてきた理由を話した。

 「ここはね、心に悩みを持った人が来る湖の中にあるお城で、それを癒す為に卯沫達はこうしておもてなしをするんだ」

 「こうしたおもてなしをして、そんな心の闇を安らいでくれる事が卯沫達は嬉しいんだ」

 と卯沫が話した。

 その目は細めて、とても優しい表情をし、それに僕はドキッとした。

 

 「だからね、もしよければ君の心の闇を聞かせてほしいな。君の心の闇はとても苦しそうにしていたから」

 と卯沫が話すと、それには僕の心がイラつき始める。

 これは僕にとって触れたくない闇で、それを触れようとした卯沫に、何が僕の闇を分かるんだと敵意を向ける。

 

 僕が敵意を向ける事で卯沫は図星だなと分かり、卯沫は僕の手を引いて抱き寄せる。

 急に抱き寄せていた卯沫へ僕は抵抗しようと暴れようとしたが、卯沫は僕を抱き寄せたまま、僕の頭を撫で始める。

 僕の頭を撫で始める卯沫に僕は驚き、目を丸くする。

 

 卯沫は撫で始めながら僕を安心出来るように、その優しい声で話し始める。

 「大丈夫、大丈夫。ゆっくりでいいから話してほしいな。話してくれるまで卯沫はこのまま待ってあげるよ。」

 そんな僕に向けられた優しさに、僕の闇を抱えていた心の壁を少しずつ壊し始める。

 そんな崩れていく心の壁と比例して、僕の両眼から涙が少しずつ流れ始める。

 一粒一粒溢れ、やがて心の壁は壊れ、僕は抱えていた闇をここで爆発させた。

 

 「…僕は障害者なんだよぉ!!」

 「こんな僕だから周りの子と比べて可笑しいと思われてしまうのが苦しいんだ!!」

 「家だって、優秀な姉と妹がいる事で、僕がそこで居て良いのか分からなくなるんだよ!!」

 「可笑しく思われないように僕はこうして陰で頑張ってきたんだ!!苦手な教科だって必死に喰らいつけるように勉強して、運動だって1人だけで必死に練習したんだ!!」

 「だけど、上手くいかない時は凄い苦しいんだよ…」

 

 僕は卯沫に抱きつかれたまま、心の闇を話した。

 あんまり人に言いたくない事をこうして話した事に、僕の心は苦しくなる。

 それに対し卯沫はギュッと強く抱きしめ、こんな苦しんでいる僕の心を落ち着かせようとする。

 「そっかそっか」と卯沫は聞いて、僕の頭を撫で続ける。

 

 僕の頭を撫で続けながら卯沫は

 「よく話してくれたね、聞かせてくれてありがとう」

 「結構大変だったんだね」

 と優しく言い、そんな優しい言葉に泣いている僕は口で呼吸を整え、止まらない涙を流しながら聞いていた。

 そして、次に卯沫が話す言葉で僕の心の闇は飛んでいく。

 

 …凄い頑張ったね、君は凄いよ

 

 卯沫の口からそう出ると、僕は大声で泣き始める。

 頑張ったね、そんな言葉が僕にとって一番欲しかった言葉だ。

 今まで僕自身を疑って、頑張ってないと思い込んだ日々を過ごしていた僕の心に響く言葉なんだ。

 

 涙を沢山流し、嗚咽を吐いている僕を卯沫は撫で続ける。

 そんな2人の姿は、まるで親子を見ているように見えていたという。

 

 沢山涙を流したのか、僕は急に眠気が走り、眠りそうになるが、それを卯沫は気にせずに、このまま僕を眠らそうと、僕の背をトントンと優しく叩く。

 

 そんな優しさに僕は段々と目を閉じてしまう。

 僕が完全に目を閉じた時、卯沫は「おやすみ、ゆっくり休んで」と言い、僕は意識を手放した…

 

 

 急に携帯電話の着信音が鳴り、僕は目を覚ました。

 そこは水の中で無く、あの湖が目の前にある森で、僕はその森にある一本の木に背中を寄りかかり寝ていた。

 急に景色が変わった事で、僕はかなり戸惑い、

 「あれ?卯沫は?ウト達は?」

 と目を動かして探し始める。

 

 僕がよく目を動かしても、あの竜宮城みたいなお城は無く、あるのは美しい湖だけであった。

 湖の水面はオレンジ色に輝き、どうやら夕方の時間になっていた。

 

 「え…?夢だったのかな…?」

 僕の口からそう溢れ、どうもリアルな夢を見ていたんだなと思っていた。

 着信音が鳴っている携帯電話を僕は取り出し、電話を掛けてきているその相手の名前を見る。

 

 お母さんだ。

 お母さんだと分かり、ピッと僕は電話を取った。

 するとお母さんが怒った声で、

 「大丈夫か!?」

 ととても心配していたのか声を荒げていた。

 

 お母さんが大声で話したので、僕の右耳の中はかなり響いて痛かった。

 「帰って来るの遅いから心配したんだよ!最近様子可笑しかったし、2人も結構心配してたから、帰り遅い事に心配し怖かったんだよ!」

 とお母さんは話した。

 お母さんが話した2人は姉と妹の事だと分かり、まさか心配していたのを聞いて僕は驚いた。

 見区切られていると思っていたからだ。

 

 お母さんとの電話を聞いてどうやら姉と妹は僕を今探しているのを聞いて、凄い迷惑を掛けてしまったなと僕は思った。そして、それと同時に謎の安心感があった。

 こんな僕でも家族として見てくれるんだと思ったからだ。

 

 お母さんとの通話を切り、僕は急いで家路につく事にした。

 湖から離れる時、僕は1回湖の方を向いて、ありがとうと伝えた。

 感謝の相手が湖なのに対し、他の人からしたら可笑しいと思われるが、何故か湖を見ていると、あの卯沫の姿がうっすらと見て、ありがとうと言いたかったからだ。

 

 ありがとうと伝え終わると、僕はこの森から急いで出た。

 そんな僕の後ろ姿を、卯沫は優しく微笑んで送ってくれたような感覚を後ろから感じていた。

 

 この出来事から数日後、僕はあの湖の事を調べて見ると、どうやらあの湖には不思議なウサギの妖精が住み着いているという噂があるのを知って、僕は驚いていた。

 もしかしてそんな噂の妖精に僕は出会えたんだと嬉しく思っていた。

 

 …もし、また出会える機会があれば、また出会いたいな

 

 とそんな考えを僕は思いながら今も頑張って過ごしている。

 

 〜水面兎 完〜


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