諸悪の根源って?……えっ、私ィ!?   作:不死穴

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更新遅れて申し訳ありません。たぶん次からはもう少し早くなります。

今回のお話は次回からの次章との休憩期間的なものとなっているので体感的には短めです。



堕落の狐と災厄の狐

「だーめだ、進まない。何時になれば終わるんだよ。この書類の数々……」

 

 シャーレのビル、そのとある一室の机の上に存在する山積みの書類、部屋の天高くまでそびえ立つ紙束を眺めて、私は呟く。

 

 先生の護衛となり早一か月、私は先生の護衛らしく先生に襲い掛かる不良と戦闘をするとか、先生の手助けをするとか……そんな如何にも()()()()()行為を一つもすることなく護衛の私は机上の書類と睨めっこをしていた。

 

 本当にさぁ……どうして私だけこんなに書類あるんだよ。

 いや、理由は分かってるんだけどね?

 こうでもぼやかないと、とてもじゃないけど気が済まないっていうか……。

 

「なんじゃ、ルリ?サボりか?」

 

「お前が言える言葉か?」

 

 机の向こう側でソファーに寝転がってポテチを貪り食うハクアが寝起きなのかぼんやりとした眼で私を見やってそう言ってくる……んだけどさぁ、こんな状況になったの全面的にハクアのせいなんだよなぁ。

 

 知っての通り、ハクアはともかく面倒臭がり屋だ。

 もう、どんぐらいそうなのかって言ったら『この世に存在するありとあらゆる労働、学業……その他、他者に強制される行為の全てが唾棄すべきもの……』らしい。

 

 「堕落ここに極まれり」って言葉を体現したような人間であるハクアなんだが、そのくせ――。いや、そんなハクアだからこそ一つの得意なことがある。

 

 それは類まれなる話術だ。

 まぁ、話術というよりか他人から任される仕事がないように上手く立ち回り、誤魔化し、欺き、気が付いた時には自分に仕事が全くない状況までもっていくという人心掌握技能に長けている……否、()()()()()()()

 

 今回もそうだ、なんやかんやあって気づいた時にはしなければならない書類が全部私に押し付けられてた。

 しかも……先生の護衛部隊としてのリーダーとかいう一番面倒な肩書までついてきてしまった……。

 これについては本当にどうしてこうなっちゃったのか分かんない。

 年齢は……ハクアが一番上だし?

 場をまとめる力ならリリアの方が優れてるし?

 私に残された役割とか、主に賑やかし要員ぐらいしかないよ?

 

 

 私が、頭を抱えて積みあがる書類とこれに至ってしまったことから一生懸命に現実逃避しようとしている中……ハクアが天井の方を見上げて目を細めた。

 

「のお、ルリ」

 

「何?ハクア?見てわからないかなぁ……私は今とんでもなく悩んで___」

 

「言うの忘れとったが、ちょっと前から天井裏に人がおるぞ」

 

「……へぇ、天井裏に人ねぇ。まぁそのぐらい………ん?天井裏に人、天井………はぁ!?」

 

 私はハクアが何でもないことのような口調で発せられたとんでもない情報に目を見開き大声を上げる。

 ここは、シャーレのビル……それも最上階の一室だ。上に階層なんて当然ないし屋上を使う予定もないことなんて既に知っている。しかもハクアが言ったのは『天井裏に人』だ。天井裏に忍び込む人なんて整備士か不審者の二択ぐらいしか存在しない……。

 

「ちょっと待て。天井裏に人!?いつから!?

 気づいてるならさっさと言えよ。私達、仮にも先生の護衛だぞ!」

 

「んにゃ、だって〜。この気配、あいつなんじゃもん……ふぁあ」

 

 このハクアが!

 「あいつ」って知り合いかよ……おい、目を瞑るな、眠ろうとするな……!

 

 私は、力の限りを込めてソファーに身を任せるハクアを揺らし、またまた眠りかけていたハクアを強制的に叩き起こす。

 

「あいつ、って誰だよ!私さぁ、()()とか()()とかで会話が成立ができるほど鋭い人間じゃないんだよッ」

 

 騒がしく捲し立てるルリを見た、ハクアが「そんなご冗談を……」みたいな目をして口を開く。

 

「あれじゃ、あれ。ほら、矯正局におったじゃろ……んぅ……」

 

「矯正局って……十中八九犯罪者じゃん!?誰だよ、マジで!」

 

(わたくし)です」

 

 天井裏からそう声が発せられて……私たちの後ろ。先ほどまで私が座っていた書類が山積みになっている机の近くにひらりと人影が舞い降りた。

 

 その影は少女だった。黒髪で、狐耳を持つ和服の可憐な少女――その名も狐坂ワカモ……別名『災厄の狐』が私たちを少し遠くから見つめている。

 

「……駄目じゃん」

 

「……は?」

 

 駄目じゃん!圧倒的に駄目だよ!?

 狐坂ワカモって矯正局で偶々、前にも会ったことあるけど――趣味、『破壊と略奪』って公言してきた人じゃん。護衛就任一か月にしてシャーレ崩壊の危機……。これ護衛としては大失態もいいところでは……。

 

「……まぁ、いいでしょう。久しぶりですねハクアさん」

 

「んぁ、久しぶり……か?ちょっと前に会わんかったかのぉ……」

 

「はぁ……。その興味のないことにはとことん無関心な性格は健在ですか……」

 

 ハクアとワカモが比較的親しみの持っているような声色で言葉を交わす。

 ワカモは呆れ、ハクアはほとんど寝ているような調子で話しているがその二人からは確かな関係性が見て取れるようであった。

 

「え?二人って知り合いなの?」

 

「ええ、知り合いも何も……私とハクアさんは、幼馴染です」

「まぁ、あれじゃ。近所付き合いじゃな」

 

 幼馴染……幼馴染!?

 確かにハクアの出身、百鬼夜行連合学院だったけどさぁ…………世間って狭いんだなぁって。

 つーかアレだな。もうこうなったらハクアの交友関係をいっそのこと全部知りたくなってきたよ……絶対普通な人いないじゃん、私含めて……。

 

「そういえば……ワカモ、何故ここ最近通い妻のごとくこのビルに来るのじゃ。昔の知り合いがこうも訪問してくるのは……正直鬱陶しいんじゃが」

 

「…………」

 

 そうだよ、なんで犯罪者がここに来ているんだよ?

 ワカモって確かアレだろ、何か暴れてたところをユキノのFOX小隊に捕まえられて矯正局にぶち込まれ、なんやかんやあって脱獄したっていう……。

 そういや、FOX小隊の子たち元気かな?しょーじき能力使っておちょくってたら激怒されて……地の果てまで追ってこようとする本当にしつこい子たちだったよな……あの子たちも狐か。やっぱ私狐苦手だわ、良い記憶そんなにないもん……。

 

 ……ってか、さっきからワカモなんで俯いて黙ってるんだ?

 

 私がワカモの方を見ると耳を真っ赤にしながら何かをうわ言の様に呟いている。

 

「か、通い妻、私が……」

 

「……ワカモ。お主……」

 

 そんなワカモの様子を見たハクアが信じられないといった目でワカモを見て、ワカモのすぐ隣。耳元の近くへと音もなく移動し、小さく、呟くようにして私には聞こえないほどの声の大きさで何かを話し出した。

 

「ワカモ……お主。()を知ったのか?」

「……え、ええ。お恥ずかしなが___」

「相手は誰じゃ、返答次第ではその存在__」

「せ、……」

「……せ?」

「先生、です」

「…先生。………はぁ、心配して損したわ。せいぜい頑張るが良い……まぁ、今後大変そうじゃがの」

 

 何話してんだ、あいつら?

 あ、戻ってきた。

 

 ワカモの元から私の目の前のクッションにハクアが再び寝転ぶ。

 ついでに何故か近くにいた私の足を抱き枕にするように抱きしめてきた。

 

「……仲がよろしいんですね」

 

「……これと?冗談は良してくれない?」

 

 ワカモが笑いながら話しかけてくるけど、ハクアと仲が良い?いや、こいつのとはアレだぞ。悪友的な関係だからね?

 

「いえ、本当に仲が良いですよ。ハクアさんは、興味のない相手には本当に無関心ですので……」

 

 ワカモは何かを思い返すように視線を虚空に向ける。 

 ……まぁ、ハクアにも昔色々あったんだろうな。そうじゃなきゃ、矯正局なんかに来るはずもないし。私は、転生してから逃げ続けた記憶しかないからそこまで重い事情とかないけど……。

 

「あれ……ワカモってどうしてシャーレに来たの?暴れないの?」

 

「暴れませんよ!……失礼ですね」

 

「えぇ……。あの『災厄の狐』が暴れない宣言って……逆に何をしに来たんだよ、あんた」

 

「……先生に会いに来ましたが。どうやら、いらっしゃらないようなのでこちらに来た次第です」

 

 先生、あなたこいつに何をした。

 『先生』という言葉を発するときのワカモの顔が赤く染まっていたぞ……私分かる、これアレだ……。ハクアから無理やり朗読させられた恋愛小説でやったところだ……!

 

「あの~、ワカモさん。あなた先生が好きだなんてことは……」

 

「はい。好きですよ」

 

 うん……寸分の躊躇なく断言してきたかぁ。

 先生と生徒、禁断の恋ルート行くか?先生の社会的地位を犠牲に幸せになってもらうか?

 

 駄目だな……なんか脳内の生徒会長ちゃんがそうじゃないって言ってる。

 つーか、よく先生こんな趣味が破壊と略奪の高難易度物件攻略できたな……。

 

「……ん」

 

「なに、ハクア……い、痛い痛い痛いッ……足を絞めるな、血が止まるッ」

 

 ワカモと話していた私の足を、どういうわけかハクアが突然引き絞った。

 足を掴まれているため動けない私はじたばたと暴れようとするが……動くこともできずハクアのいるクッションとは逆向きの方向へと倒れこむ。

 

「どうして、いつも鈍いのにこんな時だけ鋭いのじゃ……阿呆め」

 

 

「ハクアァ!何すんだ!」

 

「いや、むかついたからの……まぁ、お主が悪い」

 

 むかついたって……本当になんでだよ。しかも私が悪いって……。

 まあいいや、一旦ここは___

 

「あ~、ワカモ。お前先生のどんな所が好き__」

 

「よくぞ聞いてくださいました!

 まず、あの方はとてもお優しいのです。その優しさがあの方の眼から窺えます……それにその眼もとても美しく、世界最高峰の宝石といえどあの輝きに勝るものはないと断言でき、ここだけの話ですがあの方はコンタクトをしていらしているのですよ。銘柄も○○社の一番最安値のものですが、そういった家庭的なところも素晴らしく、私の心を鷲掴みにします……。そういえば、私はここで初めてあのお方と出会った時もその一挙手一投足を一寸前のごとく覚えていますが、最近は腰の調子が悪くなっているそうですね、ここ数週間の間机の前で働きづめでしたししょうがないことかもしれませんが、やはり何か持ってきた方が良いかもしれません。すみません、少し百鬼夜行の方に行って滋養強壮の効果の薬をとってまいります。失礼しました」

 

 そう長々と……本当に長々と語ると、この部屋からワカモは飛び出していった。

 ……ビル数十階の窓から、飛び降りて。

 

 ……興味本位で藪つついたら、蛇どころかドラゴンが出てきたな。

 つーか、おい。これあれじゃないよな、リリアの能力に当てられていたりしないよな……あの子の能力ならこんな感じの言動にさせることも可能だけど……ハクア?多少の影響は受けてるけど根幹は違うって?そっかぁ……これほとんど素かぁ……。

 

「ルリよ、追加で悪い知らせがあるが聞きたいかの?」

 

「あ~、うん。拒否する権利は__」

 

「ない」

 

 もう疲れたよ……。

 流石にワカモがこんな感じで侵入してるより悪い情報とか……ないでしょ。

 ないと言ってくれ、頼むから。そろそろ私のキャパの上限近くだから。

 

「屋根裏に先の壱、机の裏・本棚の裏に参、先生の机周辺に壱、ここより離れたビルの屋内に壱じゃ」

 

「何の数字?それ」

 

「ここをのぞき見、盗聴、盗撮、無断侵入しとるやつらの位置と盗聴器の位置じゃよ……こんなに見られては、眠れんわ……わし自室に行ってくるから、あとは頼___」

 

 ……もう、この仕事辞めたいよ!?

 先生!この一カ月の間に、何人住居に進入するようなやばい女誑し込んでいるんだよ……。いっその事もうそいつら、矯正局にぶち込んでくれよ!私たちよりよっぽど法犯してるぞ!

 




Tips:こんなことを言っていますがルリの罪はそんなもんじゃありません。当然のように悪気なく機密文書を見たり流布したり、進入禁止の場所に進入したりしているので、ルリの方が罪が重いです。


Data NO.3:各々の銃

・ルリ
 武器種:ハンドガン
 名称:闇夜の輝き(エリニクス)
 詳細:キヴォトスでは最早型落ちの骨董品と言われる様な代物の銃だが、ルリは何故かそれを好んで使っている。
 本人曰く「コレが一番手に馴染む」との事。

・ハクア
 武器種:ハンドガン
 名称:御理夢中(ごりむちゅう)
 詳細:元々銃を所持していなかったが街中を裸で歩いているぐらい余りにも非常識と言われたので渋々買った。
 ハンドグリップに月と星を模した意匠が彫られている。

・リリア
 武器種:ショットガン
 名称:Only my LOVE
 詳細:トリニティの誰かから貰ったプレゼント。
 リリアの持つただ一つの愛の形。その愛は⬛︎⬛︎のために__

 ワカモさんの誕生日です!(数日遅れ)
 次回から活動報告に書いてた感じになるので楽しみにしていてください!

次回「口は災いの元、失言は戦闘の元」

どのキャラが"癖"だい?

  • 男口調が偶に漏れる黒ゴスロリTS転生者
  • 可愛いもの大好きピンク髪世話焼きお嬢様
  • 堕落ヤンデレ和服ロりのじゃ狐
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