諸悪の根源って?……えっ、私ィ!?   作:不死穴

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嵐は大体唐突に起きる

「う~ん、どうしたものかなぁ……」

 

 そう呟く私の目の前、床に広げたるは部屋の明かりを反射して銀に輝く2発の銃弾。

 片方は、先日カタカタヘルメット団との戦闘時ハクアが煙管(キセル)で叩き落としたもの……もう片方は――

 

「カイザー社の闇工場のやつと瓜二つ……何か引っかかると思ったら、そういう事かぁ」

 

 アビドス高等学校の一室。護衛として先生について行く事になったリリアとは別行動の私たちは今回の依頼に対する()()()()()()()()()を解消するため調べものをしていた。

 『ちょっとした違和感』……それはヘルメット団襲撃時に私が抱いた「そこいらのヘルメット団にしては装備、物資が豊富すぎない?」という毒にも薬にもならない様な……本当にしょうもない感想()()()

 

 ……だがしかし、悪い大人が影を見せているとなれば話は別だ。今回の場合アビドスの生徒であるホシノちゃんに、黒服が――あの信用ならない七頭身まっ〇ろくろすけがコンタクトをとっていることが確定している。

 一度会ったから分かることだが、あの手の輩を相手取る時に情報を持っていないことは武器もなしに猛獣の住む檻の中に進むのと同義。何も知らないで突っ込んで行ったとして私たちの知らない「ナニカ」を手に盤面を壊されることなんて目に見えている。

 

 だからこそ、私はこの違和感を徹底的に調べ尽くそうと思った。

 ……誰か一人に先生の護衛を任せて他二人がフリーにしようと提案したのだってその為の時間を取ろうとしての事だ。

 ハクアは……まぁ、ホシノちゃん関連のいざこざで自由組になる事は確定だったけど、私とリリア、どちらが護衛をするのか本当に昨日まで悩んでいた……リリアが立候補してくれて本当に良かったよ、結果的に良い感じのヒントを見つけられたし……。

 

 ――さて、そもそもの話だが振り返って冷静に考えてみればヘルメット団がわざわざこんな僻地の学校を襲撃するという時点で何かがおかしかったんだ。

 ……私の経験上の話になるが、ヘルメット団はスケバンやゲヘナ生徒とは違いある程度の大きさを持つ集団で、快不快のみの襲撃はあまりしない。大人数の集団だからこそ、襲撃するのには凡その場合明確な理由があり、己に利があるからこそ行う。

 そして例えば……そう、例えばの話だが、カタカタヘルメット団がアビドスの襲撃に成功し、アビドスを占領できたとしよう。

 

 ――それで?ヘルメット団に目立った利益は()()()()

 

 あいつ等にめでたくも勝利の報酬に獲得できるのは、何にも使えない膨大な砂漠の一部と全校生徒5人のアビドス生、その処遇を決める権利ぐらい……。

 つまり、ヘルメット団のアビドスを襲撃する理由は一切ない……だがしかし、現にヘルメット団はアビドスを何度も何度も繰り返し襲撃をしに来ている……本来は貴重なはずの銃弾、爆薬……その他物資を大盤振る舞いでね。

 

 ……詰まるところ、だ。

 引っ張る事でもないし、さっさと言うけどヘルメット団の裏にアビドスの襲撃の援助をする何らかしらの集団、若しくは人物がいる――という推測に辿り着く。

 だからこそ、私は真っ先に銃弾を調べた。

 消耗品の銃弾……物資の援助としてはこれ以上とない物だ。

 一日中、私の影の空間をひっくり返して銃弾のカタログ、実物……持ち得るすべての物と照合させたら……天下の大企業『カイザーコーポレーション』、その違法な武器生産工場で作られた銃弾と材質・形状・構造に至るまで完全に一致したよ。

 

 「だから、犯人は『カイザーコーポレーション』!」って声高々に叫びたいところだけど……結局これは推測に過ぎない、その闇工場から盗み出されたものが流出して偶々ヘルメット団に渡ったって言えばそれまでだ……やっぱりこれだけじゃ推測として非常に脆い。

 

 ……更にここで仮にこの推測を真実だとしても、もう一つの疑問が出てくる。

 それは、カイザー社が何をアビドスに求めているのかという事だ。

 先ほど言ったようにアビドスの利用価値は相当低い。

 不毛の土地、労働力だって得られるものはそこまでないだろう。

 

 ならば、また一つの解答(こたえ)にして謎――

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()っていうのが見えてきてしまう。

 

 ……振り出しだね。

 一進一退どころか一進二退。よくある事だけど一つ分かったら、二つ分からなくなる……余計に謎が残る結果に終わったと……。

 

 全くさぁ、こういう理論理論(ロジロジカル)したのって疲れるし少し気楽にやらせてくれないかな?

 頭使うの苦手だから、こういう一度に何度も問題が押し寄せてくる感じの仕事苦手なんだよね。……あー、サボりたいし遊びたい。

 え?悪い大人居そうだからダメ?

 ……まぁ、それはそうなんだけどさぁ。

 

「……ふぁ~~~。やっぱり能力を使うと少々疲れるのぉ……」

 

「あ、おはよハクア」

 

「おはようなのじゃ……ん~……」

 

 私が自問自答しつつ銃弾とのにらめっこをしている間、ずっと隣で寝ていたハクアが目を擦り背筋を伸ばした。ハクアの目が半分開き私の胴に手を回す中、私は深く思考を沈め窓の外に映る暗く染まった夜の砂漠を眺める。

 

 あー……。もう、夕方過ぎて暗くなってる。

 影の中にある銃弾全部ひっくり返して照合してたから、大分掛かっちゃったな。

 リリアの方もそろそろ戻ってくる頃だろうし、床に広げたこの銃弾を片付けないと……。

 

「そういえば、ハクア。能力でカイザーの事を知っていそうなやつに話を聞きに行くとか言ってたけどさ……結局どこ聞きに行ってたの?」

 

「あー、そのことなんじゃが……」

 

 ハクアが言いにくそうな顔をして、器用に私の体の後ろで両指をつんつん合わせる。

 そんなハクアの様子に私は胡乱な目で彼女を見つめるが、その視線が気に食わなかったのかハクアは私の胴に回す手の拘束を一層固くしてぽつぽつと話し始めた。

 

「トリニティの人間なんじゃが……久しぶりに会ったら、個人的に襲撃されて表に出られる状況じゃないらしくての……どうやら最近の事は全く分からないと言われたわ」

 

 『個人的に襲撃される』って何さ?

 こっち側でアビドスの未来に一喜一憂するのよりも、明らかにハクアの知り合いの方がやばい状態になっていないかな?

 しかも連邦生徒会の方にはそんな報告が毛ほども来ていない事を鑑みると――確実に裏の方で処理しようとしている感じの薄暗い案件のヤツ……だよね?

 

「……ああ、そんな変な面で心配しなくても別に大丈夫じゃぞ。あやつ曰く、『後1,2ヶ月もしたら、事態は変わることだろう……それが好転なのか悪化なのかはさて置いてね』とかなんとか言っとったからの」

 

 私に向かってハクアがいつも通りのやる気を微塵たりとも感じない表情で語る。

 私の知らない誰かの声真似をしているのか古臭いハクアの口調とは違い、どこか役者ぶったような印象を受ける語りだ……まぁ、言葉からして多分その()()()()の喋り方を真似したのかな?

 

「それで……これは?」

 

 ハクアが私の目の前にある銃弾の山を指さして問う。

 私はその内の二つの銃弾を拾い上げて見やすいよう掲げつつ、私の腰辺り――ハクアの顔があるであろう位置を意識しつつ口を開いた。

 

「えっと、こっちがこの前のヘルメット団のやつ。もう一つがカイザーの社外秘な感じの闇工場で作られたやつだね」

 

「なるほ____ちょっと待て?……今お主、『闇工場』と……何故そんな奇怪な場所の銃弾なんぞ持っておるのじゃ?」

 

「そりゃあ、言うの忘れてたけどちょっと昔転移ミスった時に、こう……偶々?」

 

 いやー、能力使って長距離転移しようとすると距離の離れ具合に比例して転移先の誤差がだいぶ大きくなるから、普通にカイザーのお店近くに転移しようとしたらその地下にある明らかに違法施設な所に飛ばされたんだよね。

 でっかい丸に『秘』って書かれてある設計図とか見たり、製造ラインのボタンを適当に押したり……途中で赤いランプがくるくるしてたけどちょっとした遠足みたいで楽しかったな、うん。

 

「……はぁ、相分かった。どうせろくでもない事を起こしたんじゃろ」

 

「ろくでもないとは失敬な!特に何も…………銃撃戦はしてないよ!物盗んだのに今何も言われてないし……うん!大丈夫なはず!間違いないよ、多分おそらく

 

「……本当かのぉ。お主に今更言っても無駄な事と思うが物盗んだらその時点で大体アウトなんじゃよ。そも、違法な物品の盗難となれば盗まれた側も公共機関に訴えることができるはずなかろうに」

 

「………だってさぁ、目の前にプレミア感あるマークつけられた銃弾があるんだよ?

 ちょっとは欲しくなるでしょ。ほら、アレだよ。旅行先でお土産屋に木刀があったら無性に買いたくなるでしょ?正にあんな感じの正当な欲求だよ」

 

 今回はその『木刀』があったところが、偶々企業の「見せられないよ!」な部分だっただけだから……。良心の呵責も一寸の躊躇いもなく、堂々と胸を張って盗み出せた。どうせロクでもない事に使う銃弾なら私が有効活用しても良いかなぁーって。

 

「悪いがわしには分からんぞ、そんな心情は。

 まぁ、良いか。……それよりも大事なのは――これで仕事は終わりでいいんじゃな?」

 

「うーん……どうしよっかなー」

 

 今回の違和感を解消しようとして、むしろ違和感――というか謎が増えちゃったわけだけど……まぁ、粗方の目星は付くには付いた。何よりも現在私達にある情報でこれ以上調べるのは無理そうだし、引き上げ時ってやつかな?

 

「オッケー……。いいよ、ハクア。今日はもうお休みっ……んーーっ……!」

 

 あ゛ー、屈んで長時間作業していたから腰が痛い……。

 こういう集中力のいる作業をした後は甘い物が食べたく__あ、そうだ。

 

「ハクア~、突然で悪いんだけど()()()しない?」

 

「……ほう?遊戯(ゲーム)と――此度は何を賭けるつもりじゃ?」

 

「ん~……今回は負けた方がアイスの買い出しに行く……で、どう?」

 

 よしッ、ハクアが興味のある目で食いついた。

 こうでもしないと動かないからな、ハクア……。というかそろそろ勝ちたいし、絶対に見破って見せる…!

 

 矯正局で捕まっている時から続くことで私達の間で『ゲーム』という言葉は、その殆どが賭けの手段の事を指している。

 始まりは、どうやっても――面倒臭い事には言葉通り梃でも動かないハクアに対して私が出した一つの譲歩だ。

 ハクアは面倒事は大嫌いだが、その反面『楽』――つまり娯楽、それもあまり自分に負荷が掛からない類の遊びは大好きな……遊び人と言えばまだ聞こえがいいほどのダメ人間な側面を持つ。関係ないけど、内面的に多分ハクアの持つヒモ適正は中々の物なんじゃないのかな?知らないけど。

 

 兎も角。このゲームという手段で私がハクアにさせたいことをやらせようとした訳だ。

 

 ――だが、だが……!その勝率は私が約0.3%というお前何する為にこんな勝負仕掛けたの?と自分に問いたいぐらいの惨敗ぶりである。

 

 こんなでは当初の目的など達成できたと口が裂けても言えないので、ちゃんと対策を練ろうとした……その結果発覚したのがハクアのイカサマ。

 冗談ぶって「ハクア、イカサマでもしてるんじゃないのぉ~?」とか言いつつ徹夜で立てた作戦を元に頑張って心理戦に持ち込もうとした私にハクアは当然の如く同意しやがった、しかも「えっ?まさかお主気づいておらんかったのか?」という言葉も付きで。

 当然の如く敗北したそのゲームの後、ハクアに聞いたよ「イカサマってどういうこと?……というかもしかして今までも全部イカサマしてた?」って。

 答えは動じることなく「そうじゃよ?」の一言……しかも至って普通のことを質問してきたことへの困惑すらあった気がする。

 

 ギャンブルはイカサマ込み込み派の私としては特に怒りは無いけど、問題はそのイカサマのタネが一切分からないこと。

 タネが分からないと対策も立てられないし、カモられるだけ。

 だから、私が現状ハクアとの「ゲーム」で考えるのはどんなイカサマをするのかの一点だけに絞っている……勿論勝てそうなゲームなら勝利を積極的に狙っていく所存だけど。

 

 いつになれば勝てるんだろうなー?

 只今、ハクアの連勝記録100辺りまで伸びていると思うんだけど……。本当に勝てるのかな?

 

 因みに、逆に何で0.3%勝てるのかという話は……信じられないくらい運の悪いハクアに運勝負したら普通に完勝は出来た……。まぁ、それ以来痛い目を見たからか運の絡む勝負は全力阻止されるようになったけどね。

 

「じゃ、今回は……ポーカーにしようか。ハクアが良かったらチンチロでもいいよ?」

 

「却下じゃ、却下……わしに勝ち目ないじゃろ、そのラインナップ」

 

「ちぇー、運ゲー勝負受けてよ。それか、一つでもいいからイカサマの詳細教えてよー」

 

「受けんし、教えん。そも、不器用なお主の使えるようなものじゃないに決まっておろう」

 

 いつも通りに運での勝負を早々に切ってくるハクアに私は意気揚々と影の内側より取り出したトランプと賽子を手で回しながらしかめっ面をする。

 

「嗚呼、そうじゃ…!」

 

 ハクアがそう声を出したかと思うと自身のポケットの内より不思議と引き込まれる輝きを放つ一枚の金の硬貨を取り出した。

 

「運の勝負……とは言わんが、この硬貨。わしが投げて、掴んだコレの()()()お主が当てる……というのはどうじゃ?」

 

「んー?()()()……?まぁ、いいよ?」

 

 ……硬貨の裏表を当てる?

 ハクアじゃなくて私が先に裏表を宣言するとなると……純粋な運と動体視力の勝負?

 でも、そんな簡単に私の勝てそうなモノを()()ハクアが選ぶわけがない――と、なると。ハクアのヤツ、イカサマしてくる?なら一瞬たりとも見逃すわけには……。

 

 

 いつものハクアの所業から硬貨に何らかしらの仕掛けをしているのではと感じた私が警戒し注視するのを他所に、至ってマイペースなハクアは硬貨を教室の天井に向けて緩やかに投げる。

 

 ――金の硬貨はクルクルと軽やかに宙を舞い、下に構えるハクアの手に吸い込まれて__

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……やっと終わった。目まぐるしい一日だったわ」

 

 アビドス自治区の一角。すっかく空も暗くなり、ビルや街頭の光が光源となり自治区を照らす時間帯。ようやく一日のアルバイトの業務が終わった黒見セリカが疲れの溜まった重い足取りで一人街中を歩いていた。

 

「みんなで来るなんて……騒がしいったらありゃしない。

 人が働いているのに、先生先生って、チヤホヤしちゃって。ホント迷惑、何なのアレ……」

 

「ちやほやっへ?」

 

「それは……!……みんなが寄ってたかって先生、と__?」

 

 自身の愚痴に見知らぬ人間が参加していることを察したセリカが振り返る。

 するとそこにはコンビニのビニール袋を握って棒アイスを口に咥え不思議そうな顔をする黒色のゴスロリ服少女――禍溟ルリの姿が唐突に現れていた。

 

「あなた……!なんでここに!?」

 

「ん?ふぉっとまっへ……ゴクンッ……っと――えっとねー、買い出し?」

 

 口に咥えていたアイスを急いで食べて、口元に着いた溶けたアイスの液体を袖で拭ったルリが困惑し叫ぶセリカに対してそう語る。

 実際買い出しではあるのだが、結局の所ルリの用事とは先刻のハクアとの賭けに負けた報酬を払いに来たに過ぎない。アビドス自治区のコンビニの少なさから先の紫関ラーメン訪問時見つけたコンビニに狙いをつけ、そこにアイスを買いに来たのである。

 

「そういえば、あなた()()『先生』の護衛なんでしょ?」

 

「そうだけど。……何か問題でもあった?」

 

「問題も何も……!()()、何とかしなさいよ。今日の朝だって、私の行く先にどこにでもついてくるし、お昼なんてバイト先にアビドスのみんなと別の護衛を連れてきたんだから!」

 

(なにやってんだ、先生!?

 身内に仕事現場に来られるのは気まずさランキングトップ100になるようなかなりの羞恥心を誇るアレだし、何より行く先々についてくるのは明らかにストーカーのそれじゃん!?いや、本当に何やってんの?)

 

「……いやぁ、ね?先生にも先生なりの考えがあったのかもしれないし…」

 

 心の内で溢れる先生の行動へのツッコミを懸命に堪えて、ルリがたどたどしい言葉を紡ぐ。

 

(いや、本当は打ち解ける為に――セリカちゃんの緊張を解す為にそういう事をしたのかもしれないけど……如何せん方向性が、なんというか……)

 

 ストーカー行為に身内+αとのバ先訪問――いくら昨日、気分の良くなさそうなセリカを元気にさせるためとはいえ他の手段もあっただろうというラインナップに思わずルリは頭を抱えた。

 

「……仮にそうだとしても、大人なんて信じられるわけ……」

 

「……」

 

 ルリは何となくだがこの時――その獄中生活、幾度もの経験で培われた人を観る眼を持って理解した。……セリカの事を、とりわけセリカがどれほど()()()のかを。

 矯正局で数々のロクデナシ、凶悪犯、人でなしを観察したルリにとって『誰かのために一生懸命に行動できる人間』はそれだけで輝いて見える程の善人……しかも、今回に至っては勘違いもあるとはいえ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と想い、実行している。

 

 「セリカちゃんは『良い子』、そしてアビドスの子達も皆『良い子達』」……陳腐な言葉だがその言葉が彼女の心中に湧いてきたという、その事実こそがルリの中でアビドスを護るべき存在と決めたという事でもあり、こんな良い子達を苦しめるようなヤツは完膚なきまでにぶっ飛ばす、と此度の依頼に於けるルリの方針が完全に定まった瞬間でもあった。

 

 それと身も蓋も無いことだがルリは思う『多分セリカちゃん、直情的な感じで素直になれないツンデレさんだし早いとこ誤解解いておかないと面倒なことになりそうだな』と。

 

「まぁ……先生、普段はあんなんだけど間違いなく()()()()じゃないから……一回だけでもいいから信じて見てもいいんじゃない?」

 

「……でもっ……あ___」

 

 振り返って見たルリの表情が、軽そうな雰囲気を醸し出していた先ほどまでとは異なり硬い意志を感じさせる物となっているのを見て咄嗟に出てきたセリカの言葉が詰まる。

 

「……まぁ、別に命令って訳でもないただの元囚人の戯言だから……聞き逃しても良いけどねー。……後『あなた』じゃなくて『ルリ』って言ってくれると嬉しいよ。いや、私そういえば一応学籍上は2年にして貰ってたな……あ、やっぱり『ルリ先輩』でも__」

 

 ルリが無言のセリカに話しかけるような形で、取り留めのない会話を紡ぎつつ――街並みが少々砂で埋もれている中、夜空の下で二人でゆっくりと、横に並んで歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

「……あなた、学校に泊まっているんでしょ?」 

 

「ん?まぁ、そうだけど」

 

 街外れ、住宅街の外側に差し掛かった頃にセリカが突然そう言う。

 

「なら、このまま真っ直ぐ行けば着くから……私はこっちだから後は__」

 

「あー……大丈夫、大丈夫。私、方向感覚にはそれなりに自信がある方だし」

 

 親切心か、セリカはどういう訳かアビドスに詳しくない――いわばアビドス初心者のルリに帰り道を示してくれた。それに対して感謝しつつも『転移すればすぐだから気を遣わせちゃったな』とルリは少し反省し____セリカの肩越しにキラリと――薄暗い夜には似つかわしくない一筋の銀の光を見た。

 

「それじゃ、また明日__」

 

「__ッ…!」

 

 ルリの咄嗟の判断だった。

 別れの挨拶をしようとするセリカの後ろに瞬時に回って、銀の光が見えた方向に背を向けてセリカの頭を抱えた。

 瞬間――ルリの後頭部に衝撃が奔る。

 狙撃。反射的に体が動き、遅れてついて来た認識に未だ回らぬ頭をいつもの様に無理やり回しながら考えようとする。

 

 しかし、敵は考える時間なぞ与えてくれるはずがない。

 ハンドガン、アサルトライフル、サブマシンガン――多種多様な銃器の数々に加え、鳩のエサの如く気軽に投げ込まれる手榴弾の雨あられ。その一部……と言っても、たかが人二人に対しては過剰なほどの攻撃がルリの背に叩きこまれた。

 

「……こう、来たか……セリカ…ちゃん……大、丈夫?」

 

「ルリ……!な___」

 

 ルリの、目の景色が朦朧として深い霧の中に入るようにして消えていく。

 誰かが……何かを言っているような気がするが詳しく聞くことができない。

 

 視界の端に赤い何かを頭に被る人影と、それを中心に集まる大人数の集団を認識したのを皮切りに白く染まった視界が黒へと代わり、誰かが己の体を持ち上げるような感覚を味わった後、最後の最後まで残った意識も闇の中へと溶けていった。




Tips:ルリの今回の賭けの敗因はゲームの内容、その詳細を聞かなかったことにあります。
   イカサマでも何でもない只の詭弁ですが上手くルリは丸め込まれた様ですね。
   ヒント:ハクア『硬貨の()()を当てろ』
        ルリ『硬貨の()()を当てるんだね?』

Data NO.8:運の良さランキング

1位:リリア(くじを引いたら大体末吉、大吉も偶に出る……ちょっと悪いぐらいで至って普通)
2位:ルリ (三回に一回は凶を引く、それと何故か訪れた神社が崩壊する)
3位:ハクア(隧ヲ縺輔l繧九h繧願ゥヲ縺呎婿縲√↑縺企°豌礼嚀辟。)


次回「逃亡が恥?いいや、紛うことなき誉だよ」

どのキャラが"癖"だい?

  • 男口調が偶に漏れる黒ゴスロリTS転生者
  • 可愛いもの大好きピンク髪世話焼きお嬢様
  • 堕落ヤンデレ和服ロりのじゃ狐
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